『語られなかった敗者の国鉄改革』秋山謙祐、情報センター出版局 いま、JR東海の社長・会長をつとめた葛西敬之が日経で「私の履歴書」を連載していますが、そのあまりの歴史修正ぶりが我慢できなくなり、その対極の本を読みたくなって一気読みしました(敬称略)。葛西が分割・民営化で参考にしたのは電力で、国鉄改革の初期に推進派の立場の大谷健『興亡』と、分割反対の立場から書かれた近藤良貞『電力再編成日記抄』を読み比べたというんですから、こういうのは必要かな、と。 葛西は連載している「私の履歴書」でも、2001年に上梓した『未完の「国鉄改革』でも、まったく触れていないことがあります。それは、国鉄改革が国鉄の分割・民営化という形に決着した最大の理由は、田中角栄が1985年2月27日に脳梗塞で倒れたこと。それまでは田中曽根内閣と呼ばれていた中曽根首相が、田中派の大部分を引き継いだ竹下経世会をバックに、戦後政治の集