負の歴史をみつめる 昨年上梓した『ディープヨコハマをあるく』(辰巳出版)は、約4年がかりで横浜の各所をあるきまわり、同時に多数の文献資料などにあたって書き上げた「まちある記」本だ。 当初から考えていたのは、「おしゃれな港町・横浜」をただやみくもに礼賛するような本にはしたくない、ということだった。どんな場所にも、輝かしい歴史もあれば、負の歴史もある。指針としたのは、今年4月に亡くなった海野弘さんの「一つの場所は一つの顔を持っているわけではない。そこには歴史の時間が何層にも堆積していて、私たちが現在の表皮をくぐっていけるなら、いろいろな時代の顔を見ることができるのではないだろうか」(『東京の盛り場』六興出版)ということばだ。 横浜は、言うまでもなく開港、震災、敗戦、その後の占領軍による接収と歴史上いくつもの転換点を経て現在の姿を形づくってきた。 敗戦後30年以上経ってから東京で生まれ、小学生の