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山下範久 編『帝国論』読書中。面白い。 帝国論 (講談社選書メチエ) 作者: 山下範久出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/01/11メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブログ (9件) を見る とくに興味を惹いたのが、鈴木一人”「規制帝国」としてのEU──ポスト国民帝国時代の帝国”。 著者は、まず、現在隆盛を極めている議論──アメリカを中心とした世界秩序に「帝国」のレッテルを貼り、それを批判することが「了解」となっている「帝国論」への判断を、ひとまず留保する。 そして、アメリカのみが帝国として君臨するのではなく、アメリカ帝国と「競合しつつ共存」する帝国も存在するのではないか、と意識してみる──かつてイギリス帝国が世界帝国として覇権を遂げたとき、フランス、ドイツなど「競合しつつ共存」する帝国が存在したように。 確かにアメリカの影響力は強大であるが、既述し
不干斎ハビアンの思想:キリシタンの教えと日本的心性の相克 作者:梶田 叡一発売日: 2014/04/11メディア: 単行本つい最近まで不干斎ハビアン(1565 - 1621)という人物についてまったく知らなかった──それは後で引用する山本七平(イザヤ・ベンダサン)の著名な著書『日本人とユダヤ人』を読んだことがなかったということでもあるのだが。 この梶田叡一の『不干斎ハビアンの思想 キリシタンの教えと日本的心性の相克』を読んでハビアンという特異な「日本人」について基本的な情報を得ることができた。メモしておきたい。 ”キリシタン時代”をキリシタンの側から生きた日本人 不干斎巴鼻庵(フカンサイ・ハビアン)。本名はわからない。ただ、母親は豊臣秀吉の妻である北政所の侍女だったという。ハビアンは大徳寺で禅僧として修業をしていたが、19歳のとき、その母親に従いキリシタンになったという。時代はフランシスコ
2005年、デンマークの新聞『ユランズ・ポステン』がイスラム教の預言者ムハンマドを風刺した漫画を掲載した。これに対し、イスラム諸国から激しい抗議が巻き起こった。大規模なデモ、暴力的な騒動、重大な外交問題に発展した。 この風刺画はムハンマドの12のカリカチュアからなり、それらの中にはターバンが爆弾に模されているなど、イスラーム過激派を連想させるものがあった。 この風刺画掲載に至る経緯は次のようなものである。作家・ジャーナリストのカーレ・ブリュイトゲンがムハンマドの生涯を扱う児童向けの本を書いた際、この本への挿絵の執筆を依頼されたイラストレーターたちは偶像崇拝が禁じられているイスラム教徒からの反発を恐れ誘いを断った。ブリュイトゲンは3人に断られ、1人に「匿名でなら描く」と返答された。ブリュイトゲンの話は2005年9月17日にポリティケン紙によって報じられ、言論の自由を誇りとする一方、増加するム
私は、もちろん自分が手品師だとは思っていないが、私が創造しようとする空間は解読できない空間であり、ひとが目で見ているものの精神的延長となるような空間でもある。 ジャン・ヌーヴェル──『les objets singuliers 建築と哲学』より*1 パリで最も魅力的な建築──魅力的な建築がある場所──の一つであるアラブ世界研究所*2。フランスの建築家ジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel、b.1945-)により設計、1987年に開館した。特徴的なアラベスク文様は、カメラの「絞り」(ダイアフラム)と同じメカニズム=装置が採用され、外光を自動調整する。セーヌ川に面した側はガラスの曲面ファサードになっている。イスラム文化、イスラムのアイデンティティを建築によって体現したと評価され、西欧圏でありながら、アガ・カーン建築賞*3を受賞した*4。 ところで、ジャン・ヌーベルはアラブ世界研究所でも見ら
五十嵐太郎の『建築はいかに社会と回路をつなぐのか』でセクシュアリティ関連の著作への言及がなされていた。その多くが邦訳のないものであり、個人的にも「建築」という非常に興味のあるテーマなのでそこからメモしておきたい。 建築はいかに社会と回路をつなぐのか 作者: 五十嵐太郎出版社/メーカー: 彩流社発売日: 2010/01/20メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含むブログ (9件) を見る 建築のジェンダー論といえば、かつてはドリス式の柱を男性の身体、イオニア式の柱は女性の身体にもとづく──というような古典主義に関するものしかなかった。しかし、五十嵐によれば、1990年代以降、他分野の影響を受けた新しい地平を切り開く言説が飛躍的に増えたという。 1989年にスミソニアン協会から刊行された『建築、女性のための場所』には、デニズ・スコット・ブラウン*1の興味深い文章「女性建築家は頂上に
広野伊佐美『幼児売買 マフィアに侵略された日本』は、幼児、主にアジア周辺国、中南米の子供たちを、その性を搾取するための「現代の奴隷」としてだけではなく、臓器摘出用の「生贄」として売買している人物たち──著者である広野氏は”悪魔”と呼んでいる──の存在を取材したルポルタージュである。1992年に発行された。 著者は、知り合いの空港関係者との何気ない会話──成田空港に赤ん坊ばかりの集団が月に数回の割合で降り立つという出来事、大半が男児で、付添の両親や出迎えの家族がいないという事実、そしてどこかの航空会社の制服を着た外国人男性や日本人の中年女性がその子供たちを両脇に三、四人ずつ抱え特別待合室に駆け込み、その後、欧米行のフライトに乗り継いでいく事態──にジャーナリストとしての勘が働く。そして入管、税関職員、空港関係者とコンタクトを取り、「謎のベビー集団」が実は幼児売買に関わっていることをつきとめて
大越愛子『フェミニズム入門』より「エコロジカル・フェミニズム」について記しておきたい。エコロジカル・フェミニズム(エコフェミニズム、Ecofeminism)とは、人間と自然的なものに階層を置く近代的自然観を最も先鋭に問題化にしているフェミニズム思想・運動である。人間による自然支配、その構造は、男性による女性支配、その構造とリンクしている──そのような認識においてエコロジーとフェミニズムは接点を見いだすことになる。その先駆者としては、環境科学者エレイン・スワロー*1と『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソンが挙げられる。 シャーリーン・スプレトナクによれば、現代のエコ・フェミニズムの源泉は以下の三つの線に由来している。 ラディカル・フェミニズム。家父長制の女性支配は、男性原理の自然支配と一体的である。したがって、女性の自己解放と自然との親和感の回復は同一の問題である、と。 霊的体験。女神の宗教
パリ第8大学ヴァンセンヌ校に「女性学センター」を立ち上げた、エレーヌ・シクスー(Hélène Cixous、1937年アルジェリア生まれ)の著書『メデューサの笑い』の「新しく生まれた女」と題されたエッセーに、同性愛に関する興味深い記述があったので引用しておきたい。 シクスーはフランスのフェミニスト*1で、「エクリチュール・フェミニン」(女性的エクリチュール écriture féminine*2)の提唱者。英文学専攻で、ヘンリー・ジェイムズに関する論文「ヘンリー・ジェイムズ、投資としてのエクリチュールあるいは、利息の両義性について」も邦訳されている(筑摩世界文学大系49『ジェイムズ』所収)。また、小説、詩、戯曲など創作の分野でも実に多彩で旺盛な活動をしている。 邦訳は他に『狼の愛』(紀伊国屋書店、asin:4314007044)、『ドラの肖像』(新水社、asin:4883850226)があ
メトロ12号線Trinité - d'Estienne d'Orves 駅周辺は閑静な地区であった。目の前にはサント・トリニテ教会(Église de la Sainte-Trinité)が白く輝いていた。 この雪のように白いサント・トリニテ教会から歩いて数分のところに、ギュスターヴ・モロー美術館(Musée Gustave Moreau)が、ひっそりと建っていた。 通りには誰もいなかった。本当に静かな場所だった。 入口から階段を上がり展示室へ向かう──もうすでにギュスターヴ・モローの作品そのものの中に入っていくような感じがした。 静かで美しい広間にモローの作品が数多く展示してあった。ギリシャ神話と聖書の物語からなる豪奢な世界。その色彩が眩かった。 精神の快楽と眼の歓びのために、彼は何か暗示的な作品を求めていた。つまり、おのれをある未知の世界に投げこんでくれるような、新しい臆説の跡をあばい
1月12日金曜日午前7時51分、ラッシュアワーの米ワシントンDCの地下鉄。駅構内で、ジーンズに野球帽を被った一人の青年がヴァイオリンを弾く。ありふれた光景かもしれないが、しかしそのヴァイオリニストが世界的に有名な人物だったとしたら……。 『ワシントン・ポスト』紙がそんな実験を行った記事を以前読んだ。起用された──あるいは協力(共犯)した「世界的な」ヴァイオリニストは、ジョシュア・ベル(Joshua Bell)だ。 Gershwin Fantasy アーティスト: Joshua Bell,Gershwin,Williams,Lso出版社/メーカー: Sony発売日: 1998/07/28メディア: CD購入: 1人 クリック: 98回この商品を含むブログ (2件) を見る Pearls Before Breakfast (Can one of the nation's great music
スペインのピアニスト、アリシア・デ・ラローチャ/Alicia de Larrocha が9月25日、彼女の生まれ故郷であるバルセロナの病院で亡くなった。86歳だった。 Alicia de Larrocha, Poetic Interpreter of Mozart and Spanish Composers, Dies at 86 - Obituary (Obit) - NYTimes.com via kwout アルベニス、グラナドス、トゥリーナ、モンポウといったスペイン音楽はもちろんのこと、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、グリーグ、そしてあの小柄な体にもかかわらずラフマニノフでも得難い音楽を聴かせてくれたラローチャ。 彼女の訃報を知って、無性に聴きたくなった音楽は、カタルーニャの作曲家にして聖職者であったパドレ・アントニオ・ソレール(Anton
ゲイの大学生マシュー・シェパード(Matthew Shepard、1976 - 1998)さんがワイオミング州ララミーで惨殺されてから11年。アメリカで性的指向を理由にした暴力がヘイトクライム法の適用範囲になる。 House Widens Hate Crimes Law to Cover Gays - CBS News via kwout CBSの記事によれば、今回のヘイト・クライム法拡大(マシュー・シェパード法/[http://en.wikipedia.org/wiki/Matthew_Shepard_Act:title=Matthew Shepard Act])は、キング牧師──マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺による1968年以来の大規模な法改正だという。 [http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009102300606:title=同性
イラクのバグダットでイスラム主義者のグループ/民兵組織によるゲイ男性の虐殺が相次いでいる。その手口は、インターネットのゲイ・サイト/チャットを利用して犠牲者を誘きだし、誘拐し、拷問を加え、殺害するというものだ。『ガーディアン』が凄惨な写真とともに報じている。 How Islamist gangs use internet to track, torture and kill Iraq's gays | World news | The Observer via kwout 例えば Abu Hamizi という人物は、ゲイのウェブサイトで、友人を求めるゲイを装って「ゲイの犠牲者」を探し出す──コンピューター・サイエンスを学んだ Abu Hamizi はイスラム教の伝統的な服を着て、何時間もゲイ・チャットルームを彷徨う。そして、犠牲者を炙り出し、虐待を加え、神の名のもとに殺す。"We make
Gunman kills two at gay center in Israel - Los Angeles Times via kwout イスラエルのテルアビブにあるゲイ&レズビアン・センター(Tel Aviv Gay and Lesbian Association/Tel Aviv gay and lesbian center)で銃乱射事件が起きた。2人の死亡が確認され、(メディアによって人数が異なるが)11人が負傷。同性愛者を狙ったヘイトクライムと見なされている。 テルアビブ・ゲイ・アンド・レズビアン・センターでは、10代のゲイの若者──家族にゲイであることをまだ伝えていない──のためのミーティングが行われていた。犠牲になったのも彼らティーンネイジャーたちだ。 Gunman Kills Three at Israeli Gay Club Three killed in Tel Av
アンドレア・ドウォーキン(Andrea Dworkin、1946 – 2005)の主著『インターコース 性的行為の政治学』よりメモしておきたい。他者のアイデンティティの破壊(追放)と、それに乗じた──むしろそれゆえに──「性的特色」の〈ねじ込み〉の暴力性を論じた部分である。 人種ゆえに価値を奪われるという喪失感は、安部公房の『他人の顔』に出て来る顔のない男にも見られる。彼はテレビでハーレムの黒人暴動を見ながら、「ぼくのような顔を失くした男女が、数千人も、一緒に集まった」光景を目にする。彼は自分をハーレムの黒人と同一視するし、さらに、日本ではしばしば差別され、低劣な人種と見なされている朝鮮人とも同一視する。日本人とは異なる顔の朝鮮人は、まるで顔を持っていないかのように扱われている。彼は意識的には認識しないまま、朝鮮人が「しばしば偏見の対象にされる」ために、「知らずに親近感をおぼえ」るようにな
スラヴォイ・ジジェクについての本、トニー・マイヤーズ著『スラヴォイ・ジジェク』の第六章「なぜ人種差別は常に幻想なのか」を中心に、ジジェクの人種差別をめぐる分析についてメモしておきたい。 人種差別は「汝なにを欲するのか?」(Che vuoi?)という問いかけではじまる、とジジェクは主張する、とマイヤーズは語る。「汝は我にかくのごとく語る。だがそれによって汝は何を欲するのか。汝の目指すところは何か」。 ジジェクはこの「汝何を欲するか」について、例のごとく、ヒッチコックの映画『北北西に進路を取れ』を引き合いに出し例証する。 ロシアの秘密諜報局を攪乱するために、CIAはジョージ・カプランと名の、実際には存在しない諜報員をでっちあげ、彼の名を使ってホテルを予約し、彼の名で電話をし、彼の名で航空券を購入する、といった細工をする。すべてはロシアの諜報局に、カプランが実在しているように信じさせるためである
『人権について オックスフォード・アムネスティ・レクチャーズ』に収録されているアグネス・ヘラーの講義録「自然法の限界と邪悪のパラドックス」より、〈邪悪〉についてメモしておきたい。アグネス・ヘラー(Agnes Heller、b.1929 - )はハンガリー生まれ。1973年に政治的理由でブダペスト大学を免職され、オーストラリアを経てアメリカに渡った人物だ。 アグネス・ヘラーの問題提起は、 暴虐な政治体制のもとでなされた悪事が、処罰されうるか、処罰されるべきか、処罰されることになるか 殺人や誘拐や大量投獄や差別行為の責任者に、みずからの行為の償いをさせることが可能か、実際に償いをさせることになるか、あるいは当然償わせるべきか である。彼女はナチス体制とソビエト体制──全体主義の名のもとにおかされた極悪非道な犯罪──に焦点を当てる。このような犯罪の実行者を処罰するべきかどうか。直面しているのは、
BBCのテレビドラマ『ケンブリッジ・スパイズ』(Cambridge Spies)のDVDが届いたので、早速観ているところ。ガイ・バージェス、キム・フィルビー、アントニー・ブラント、ドナルド・マクリーンら「英国を裏切った」スパイたちの活躍を、BBCが英国の人気俳優を起用してヒロイックに描いたものだ。 Cambridge Spies Cambridge Spies [DVD] [Import] メディア: DVD購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る この『ケンブリッジ・スパイズ』では、スペイン内戦が、彼らスパイにとって「1930年代の政治の季節」の重要なターニング・ポイントとなっているのだが、それで思い出した記事があった。『ミステリマガジン』で連載されていた井家上隆幸の「20世紀を冒険小説で読む」の第60回、日米開戦について。ここで「精読」される小説は、佐々木譲
ローマ・カトリック教会の歴史 作者: エドワードノーマン,百瀬文晃,Edward Norman,月森左知出版社/メーカー: 創元社発売日: 2007/12/01メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (5件) を見る エドワード・ノーマン著『ローマ・カトリック教会の歴史』は、図説(An Illustrated History)と銘打っているように絵画や美術品、遺跡の写真が数多く収録されていて、宗教美術史の本としても見応えのあるものになっている。 しかも、その中には、敵対勢力=プロテスタント側が描いた風刺画や、聖職者というよりもまるでマフィアのボスのようなローマ教皇の肖像画*1、「旧ソ連時代の社会主義リアリズム芸術を先取りした」と著者が(思わず?)称えるようなポスター*2など、普段美術書などであまり見かけることのない「貴重な」図版もあって、なかなか興味を惹いた。 改めて、
村上伸 著『ボンヘッファー』を読んだ。ドイツのルーテル派教会の牧師・神学者ディートリッヒ・ボンヘッファー(Dietrich Bonhoeffer、1906 - 1945)の生涯とその思想について書かれたものだ。「ボンヘッファーとは何者か」──このプロテスタント牧師の持つ三つの側面を、まず、この本の序文から記しておきたい。 1. 生来の才能と最上の環境に恵まれ、わずか21歳の時に神学博士の学位を取得、24歳でベルリン大学私講師として学界にデビューした天才的神学者。 2. ヒトラーが政権を獲得すると直ちに批判的立場に立ち、「牧師緊急同盟」、ひいては「告白教会」の最も急進的なメンバーの一人として教会的抵抗を行った良心的キリスト者。 3. やがてこのような抵抗が限界に直面すると、国防軍部内の反ヒトラー陰謀の拠点であった情報部(アプヴェア)に身を投じ、暗殺計画に加わったために逮捕され、敗戦のわずか一
ローマ教皇ベネディクト16世は4人の司教の破門を撤回した。その一人がリチャード・ウィリアムソン司教/ Bishop Richard Williamson だ。彼はホロコースト否定、反ユダヤ主義、ゲイ差別、9.11陰謀論……それらを臆面もなく発言してきた。 この人です↓ Bishop Richard Williamson - Gas Chambers, Anti-Semitism and the Truth Bishop Williamson said recently: "I believe there were no gas chambers". Pope in bid to dampen bishop row [BBC NEWS] ローマ法王、ホロコースト否定の司教破門を撤回 [CNN] 破門を撤回されたのは、聖ピオ十世会所属のウィリアムソン司教ら4人。同司教は先日スウェーデンのテレビ
風邪をひいてしまったので、部屋に閉じ込もってデリダでも読もうかなと思う──なんでも、デリダを読むだけで、良いことがありそうなので、本棚からデリダ関連の本を取り出してみた。 で、古いのから新しいものへ。というわけで、まず、『エクリチュールと差異』より「コギトと『狂気の歴史』」のページをめくった。フーコーの大著『狂気の歴史 古典主義時代における』を批判したものだ。冒頭、デリダはまず、「弟子意識」について述べている。この「独白」がなんだかとても印象的だった。 それ(フーコーの『狂気の歴史』)は、まことに多くの点において驚嘆すべき書物、力強い息吹と文体を兼ねそなえた書物でありまして、かつてたまたまミシェル・フーコーの教えを受けたことがあり、讃嘆と感謝の念をもった弟子としての意識を依然として抱いているわたしにとりましては、それだけにまたいっそう恐るべき書物なのであります。 ところで、この弟子意識とい
ジョン・エヴァレット・ミレイ展@Bunkamuraザ・ミュージアムに行ってきた。《オフィーリア》を始め、↓ の Youtube で紹介されている作品の多くを見ることができて、とても満足した。 John Everett Millais 今回の展覧会でとくに印象的だった作品をいくつか挙げると、まず、殉教した聖人を描いた《聖ステパノ》(St Stephen)。オフィーリアとはまた違った死の描写に惹かれた。次に火事の現場から子供を助け出す消防士を描いた《救助》──人物たちが炎に照らされて赤く染まっている。この迫真的な「赤さ」に眼を奪われ、しばらく絵のまえから放れられなかった。それと《露にぬれたハリエニシダ》の幻想的な美しさにもグッときた。この3作品を見ることができて、ちょっとミレイへに対する個人的な評価が変わった感じだ──ま、《マリアナ》のような上流婦人(なんといってもあの「青」だ)や《木こりの娘
『生きることを学ぶ、終に』で、ノエル・マメール市長による同性婚容認を「ためらわずに署名によって支持した」デリダが、同書でホロコースト否定論について何といっているか記しておきたい。 ジャン・ビルンバウム──この観点から(大学の無条件的自由に対する絶対的な要求)、ガス室の存在とショアーの現実性を否定する否定論者たちのケースをどのように考えるべきでしょう? ジャック・デリダ──あらゆる問いを提出する権利はあります。その上で、問いに応答する仕方が偽造や明らかに事実に反する断言を言い募ることであるなら、その挙措がもはやまっとうな知や批判的思考に属さないものであるなら、その場合には事情は違ってきます。それは能力欠如あるいは正当化されない道具化であって、その場合には制裁を受けることになります。出来ない生徒が制裁を課されるように。教授資格を持っているからといって、大学で何を言ってもよいということにはなりま
或る現象を癌と名附けるのは、暴力の行使を誘うにも等しい。政治の議論に癌を持ちだすのは宿命論を助長し、「強硬」手段の採択を促すようなものである──それに、この病気は必ず死に到るとの俗説をさらに根強くしたりもする。病気の概念がまったく無害ということはありえないのだ。それどころか、癌の隠喩そのものがどことなく集団虐殺を思わせるとの議論も成り立つと思われる。 勿論、いずれかの政治観のみがこの隠喩を独占するというのではない。トロツキーはスターリン主義をさしてマルクス主義の癌と呼び、中国では最近四人組が「中国の癌」ということになった。ジョン・ディーンはウォーターゲイト事件をニクソンに説明して、「内部に癌があります──大統領のすぐ近くに──しかも、大きくなっています」と述べた。アラブ陣営の論説のなかで中心的な隠喩となっているのは──イスラエル国民は過去二十年に亙って毎日ラジオでそれを聞かされてきたのであ
AfterElton.com で Greatest Gay Movies と銘打ったゲイ・ムーヴィ50作が選ばれた。 ゲイ映画ベスト50発表!第1位は「ブロークバック・マウンテン」 [eiga.com] The Fifty Greatest Gay Movies! [AfterElton.com] ま、妥当か……いや、なんか微妙に僕のタイプと違う。なので、僕も10作ほど選んでおきたくなった──だってアレもコレも入ってないし。一応断っておくけれど、僕は第1位の『ブロークバック・マウンテン』は「まだ」観ていないので、そのつもりで。 CONNIVENCE 共謀 愛する人のことを競争相手と話し合っている自分を想像する。奇妙なことにこのイメージは、恋愛主体の心に共犯者としてのよろこびを育てる。 ロラン・バルト『恋愛のディスクール・断章』(三好郁朗 訳、みすず書房) p.97 *1 1.アナザー・カン
前エントリーで書いたヘンリー・カウエルとレフ・テルミンが発明・製作した、世界初のドラム・マシーン/リズム・マシーンこと「リズミコン」(Rhythmicon)を紹介している「教育的な」映像が、 YouTube にあった。現代音楽およびエレクトロニック音楽に関心がある人は必見だ! John Came - Rhythmicon Rhythmicon アーティスト:John Came発売日: 1995/06/09メディア: CD [関連エントリー] テルミンの瞑想曲/ Be Happy on Theremin!!! テルミンのある風景 ジョルジオ・モロダーの「ミッドナイト・エクスプレス」 蝸牛は薔薇の歯の夢を見るか 〜マトモス ”ボクハ、オンガクカ、電卓カタテニ” クラフトワーク
ヤン T.グロス著『アウシュヴィッツ後の反ユダヤ主義 ポーランドにおける虐殺事件を糾明する』(原題『Fear: Anti-Semitism in Poland After Auschwitz』)*1を読み始めた。 アウシュヴィッツ後の反ユダヤ主義―ポーランドにおける虐殺事件を糾明する 作者:ヤン・トマシュ グロス発売日: 2008/05/01メディア: 単行本 これは衝撃的な書物である。アウシュヴィッツ以後に、しかもナチスの被害国であったポーランドに起こった──アウシュヴィッツ以前からずっと続いている──反ユダヤ主義を克明に追ったものだ。 著者のヤン・トマシュ・グロス(Jan T. Gross)は1947年生まれという戦後、つまりアウシュヴィッツ以後に生まれたユダヤ系ポーランド人で、プリンストン大学の歴史学教授。アメリカ国籍を取得している。グロスがこの本を書く契機になったのは、あるポーラン
ドキュメンタリー映画『A Jihad for Love』(愛のためのジハード)で、イスラムと同性愛を描いたペルベス・シャルマ/Parvez Sharma がデモクラシー・ナウ!に出演した。シャルマ氏は現在ニューヨークを拠点に活躍しているジャーナリストだ。そして彼自身、ゲイでありイスラム教徒である。 “A Jihad for Love”: New Film Explores Challenges Facing Gay Muslims Worldwide [Democracy Now!] このインタビューで何よりも注目したのは、『A Jihad for Love』に登場する、ゲイであることを公言している南アフリカのイマーム(イスラム教指導者)の存在だ。彼の名前は Muhsin Hendricks。次のようなやりとりが放映されている。 MUHSIN HENDRICKS: God is every
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