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空と海が交ぐ合う、遥か彼方の水平線上に、気がつくと、それはひっそりと姿を現していた。 東京から真南に下ること 6 6 0 k m 。團伊玖磨が『九つの空』に記し、開高健が『完本私の釣魚大全』に書いている[孀婦岩]は、空と海が曖昧模糊となって溶け合うハザマの中に霞んでたたずみ、懸命に凝視していると現れ、目を離せば消える、モロくて危なげな幻であった。 地図を開くと八丈島の先に小島と岩礁の連なりがある。 北から順に青ヶ島、べヨネーズ列岩、明神礁、須美寿島、そして無人島となって久しい鳥島。 孀婦岩(北緯29 度47 分38 秒、東経140 度20 分07 秒)は更にその先に位置するのだから、絶海のど真ん中である。 周囲は伊豆・小笠原海溝と駿河トラフのに挟まれた世界でも有数の深海。 その水深 2 , 0 0 0 m の海底から、垂直にグググーンと立ち上がって、頂上部分の 9 9 m を海面からのぞか
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