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渡辺裕『日本文化モダン・ラプソディ』を再読。 日本文化 モダンラプソディ/渡辺裕 作者:渡辺 裕 発売日: 2002/11/13 メディア: ペーパーバック 内容は紹介文の通り、 邦楽改良、モダン芸者、大阪文化、レコード産業、新舞踊、宝塚、国民劇、戦時活動…大正・昭和期に沸騰するさまざまな改革の波。その試行錯誤の諸相を照射し、日本近代文化の変遷のありようと「日本」アイデンティティを再検証する試み。 というもの。 とりあえず、日本の文化に興味のある人は必読の本である。*1 以下、特に面白かったところだけ。 洋楽を取り入れた邦楽としての「春の海」 須永にとって、邦楽はいろいろと制約のある、不十分な音楽として認識されていた (42頁) 宮城道雄「春の海」は、シュメーによってヴァイオリン版として編曲されている。 これについて、原曲以上に作品の本来の味を引き出したと、評論家の須永克己は述べている。
大谷正『日清戦争』を読んだ(再読)。 日清戦争 (中公新書) 作者:大谷 正 発売日: 2014/06/24 メディア: 新書 内容は紹介文の通り、 朝鮮の支配権をめぐり開戦に至った日清戦争。平壌の戦いをはじめ各戦闘を詳述しながら、前近代戦の様相を見せたこの戦いの全貌を描く というもの。 日清戦争というのは、あとの日露戦争やアジア太平洋戦争と比べて、その実相があまり知られていないかもしれないが、知るべきことは多い。 以下、特に面白かったところだけ。 井上馨と甲申政変 井上は竹添公使が暴走して朝鮮の内政に干渉したことを隠蔽して、日本側が政変の被害者であったことを朝鮮に認めさせ、謝罪と賠償を要求した。 (13、14頁) 甲申政変において、井上馨はこうした振る舞いを行ったのである。*1 長崎とロシアの蜜月の時期 ロシアとの関係が深まるとともにロシア系住民の数が増え、一九〇〇年頃の調査では長崎在住
ダナ・ボイド『つながりっぱなしの日常を生きる』を読んだ(再読)。 つながりっぱなしの日常を生きる: ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの 作者:ダナ・ボイド 発売日: 2014/10/09 メディア: 単行本 内容は紹介文の通り、 本書は、若者メディア研究の第一人者ダナ・ボイドが、若者、親、教育関係者を含む、166人のインタビューからソーシャルメディア利用の実態を読み解くもの。若者たちを観察してみると、ネットにはまっているわけでも、ヘンなことばかりしてるわけでもなく、親や教師が顔をしかめる“ネットの問題”は、大人の窮屈な監視をかわすための処世術だったり、現実空間で仲間とつるむ場がないからネットに向かっていたり……、ネットでつながる事情はなかなか複雑です。そんな、つながりっぱなしの若者たちの実情に深く迫ることで、じつは、わたしたちのネットとの付き合い方も透けて見えてきます。 という内容。
広田和子『証言記録 従軍慰安婦・看護婦』を読んだ(再読)。((読んだのは、ハードカバー版の1975年のもの。)) 証言記録従軍慰安婦・看護婦―戦場に生きた女の慟哭 作者:広田 和子 メディア: 単行本 内容は、紹介文の通り、 1970年代初頭、生存していた従軍慰安婦や看護婦たちに長時間インタビューを試み正確に活字化。体験者が語った貴重な戦場の実態。 というもの。*1 *2 以下、特に面白かったところだけ。 芸者の延長だろうと思っていた あの当時で四千円近い借金があったの(ハガキが二銭のころ)。芸者というのはお金がかかるのよ。着物一枚買うのにも借金だし、踊りや三味線も習わなきゃならないでしょ。 (引用者中略) 結うたびに一円近くかかってしまう。だから借金は増えるばっかりだったわ (19頁) 芸者をやるにはカネがかかった。*3 南洋の島で頑張れば、そんな生活から抜け出せる。 そのように思って日
乳房文化研究会 (編)『乳房の文化論』を読んだ。 乳房の文化論 発売日: 2014/11/19 メディア: 単行本 内容は、紹介文の通り、 おっぱい、お乳、バスト、胸、時と場合によってまことに変幻自在、さまざまの呼び名で親しまれている乳房はまったくもって「不思議のかたまり」。そして、その不思議の分だけ乳房の研究、乳房の学問は奥が深い。20年以上にも及ぶ広範な研究のなかから精選された乳房論の数々。 という内容。 研究会だけあって、内容は実に真面目である。 この対象に関して興味のある方はどうぞ。 以下、特に面白かったところだけ。 (なお、以下に取り上げるのは、すべて、深井晃子「揺れ動くおっぱい―ファッションと女性性への視線」からのものである。) パッドとコルセットの歴史 現在の偽おっぱい、パッドの祖とでも言うべき小物を使って取り繕おうとする年配女性たちの、むなしくも切ない努力 (258頁) 1
春日太一『なぜ時代劇は滅びるのか』を再読。 なぜ時代劇は滅びるのか (新潮新書) 作者:春日太一 発売日: 2014/09/16 メディア: 新書 内容は紹介文の通り、 かつて映画やテレビドラマで多くの人々を魅了した時代劇も、2011年には『水戸黄門』が終了し、民放のレギュラー枠が消滅。もはや瀕死の状態にある。その理由はひとこと。「つまらなくなったから」に他ならない。/「高齢者向けで古臭い」という固定観念、「自然体」しか演じられない役者、「火野正平(=いい脇役・悪役)」の不在、マンネリ演出を打破できない監督、何もかも説明してしまう饒舌な脚本、朝ドラ化するNHKの大河ドラマ・・・・・・。 (引用者後略) という内容。 正直、すごい煽り気味のタイトルではあるが、しかし、それに見合うだけの面白さと説得力がある。*1 以下、特に面白かったところだけ。 時代劇はマンネリと言われてしまうの背景 その結
阿部公彦『幼さという戦略』を読んだ。 幼さという戦略 「かわいい」と成熟の物語作法 (朝日選書) 作者:阿部公彦 発売日: 2015/10/09 メディア: 単行本 内容は紹介文の通り、 老人も子どもも持っている「幼さ」の底力!権力の語りに抗う「弱さの声」の可能性。太宰治、村上春樹から江藤淳、古井由吉まで、新しい視座と繊細な手触りのある文芸評論エッセイ。 という内容。*1 特に、個人的には武田百合子『富士日記』論と「かわいい」論がたいへん興味深く読めた。*2 以下、特に面白かったところだけ。*3 近代以前の「うさぎ」イメージ 「日本独自に歴史的に継承されてきた兎のかたち」は、これらの「キャラクター化された兎によって浸食されてしまった」 (92頁) 現在の日本のうさぎブームは、明治期に西洋のうさぎのイメージが輸入されてからのものだという。 日本にも伝統的なうさぎ文化はあった。 しかし、そうし
古関彰一 『平和憲法の深層』を読んだ。(再読) 平和憲法の深層 (ちくま新書) 作者:古関 彰一 発売日: 2015/04/06 メディア: 単行本 内容は紹介文の通り、 改憲・護憲の谷間で、憲法第九条の基本的な文献である議事録は、驚くべきことにこの七〇年間ほとんど紹介されてこなかった。「戦争の放棄」と「平和憲法」は、直接には関係がないし、それをつくったのは、マッカーサーでも幣原首相でもなかった。その単純でない経過を初めて解き明かす。また「憲法はGHQの押し付け」と言われるが実際はどうだったか。「日本は平和国家」といつから言われてきたのか。「敗戦」を「終戦」に、「占領軍」を「進駐軍」と言い換えたのは誰が何のためだったか…などについて、日本国憲法誕生の経過を再現し、今日に至る根本的重大問題を再検討する。 という内容。 現在の憲法を語るうえでは、やはり古関彰一を読まざるを得ない。*1 以下、特
高橋昌明『京都〈千年の都〉の歴史』を読んだ。 京都〈千年の都〉の歴史 (岩波新書) 作者:高橋 昌明 発売日: 2014/09/20 メディア: 新書 内容は、紹介文の通り、 平安の都、日本の〈千年の都〉として、今も愛される京都。しかし今の京都には、実は平安当時の建物は一つも残っていない。この都はいかにして生まれ、どのような変遷をたどり、そして「古都」として定着するに至ったのか? 平安京誕生から江戸期の終わりまでその歴史をたどり、「花の都」の実像を明らかにする。 というもの。 結果的に、「臭い」話ばかり取り上げるが、もちろん、それ以外の話題も、読みどころありである。 以下、特に面白かったところだけ。 悪臭都市・平安京 平安京も相当な悪臭都市だった (54頁) 平安京の溝渠には、人間の排泄物も流されていた。 ただでさえドブ化しやすいのに、そのうえ、溝沿いの家からは、汚水が垂れ流しとなっていた
上坂昇『キング牧師とマルコムX』を読んだ。 キング牧師とマルコムX (講談社現代新書) 作者:上坂 昇 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1994/12/16 メディア: 新書 内容は、紹介文の通り、 対照的な二大カリスマを通して読む黒人社会。マルコムXブームの意味とは何か? 台頭するブラックナショナリズムとは? 一見相反する二人の代表的指導者の思想と足跡から「黒人運動とアメリカ」を問う。 というもの。 1990年代の本ではあるが、しかし、今も読まれる価値があるように思う。 以下、特に面白かったところだけ。 すでに戦いは始まっていた その運動は実際には二〇世紀の前半からはじまっていた。 (10頁) 公民権運動について。 全国黒人地位向上協会はすでに、1909、10年に設立されている。 1954年には、公立学校での人種分離を禁止したブラウン判決を獲得しているのである。*1 キング牧師の論
『大西巨人 抒情と革命』(河出書房新社、2014年)を読んだ。 大西巨人: 抒情と革命 作者: 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2014/06/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) 内容は、「先日、物故した戦後文学、最後にして最大の巨匠が遺した問いとは何か。対談、文選、論考など。」という紹介文の通り、大西が亡くなった頃に出たムック本である。 以下、特に面白かったところだけ。 「改札スト」について 「改札スト」は、戦後、京浜地区で実際に行われたことがあるんですよ。 (59頁) 過去の大西との対談での、武井昭夫による発言である。*1 大西は、スト中はただで乗客を乗せるというやり方なら支持するだろうと述べていた。 それに対して武井は、もうやっている、と返答した。 京浜地区で行われ、改札を無人にして乗客を無料でのせた。 大西は、そうした「柔軟な発想」を支持した。*2 武力革命路線と
多田治『沖縄イメージを旅する』を読んだ。 沖縄イメージを旅する―柳田國男から移住ブームまで (中公新書ラクレ) 作者:多田 治 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2008/08 メディア: 新書 内容は、紹介文の通り、 青い海、白い砂浜、穏やかな三線の音。「基地の現実」を一手に引き受けてきた島で、こうした南の楽園像は誰によって、いかにしてつくられたのか。数々の風景を通じて、沖縄のいまを探る というもの。 沖縄の現在抱かれるイメージと、過去の実像との間にある断層を、いくつも見つけることができる。 以下、特に面白かったところだけ。 「靖国化」と沖縄戦の語り 五〇年代後半から六〇年代前半にかけて、沖縄戦の語りは軍隊中心の戦史が主流になった。 (97頁) 実際この時期に、軍を顕彰する慰霊塔が林立するようになる。*1 五〇年代後半の沖縄の「靖国化」には、遺族年金給付開始が、影響している。
斎藤忍随、後藤明生『「対話」はいつ、どこででも』を読んだ。 「対話」はいつ、どこででも―プラトン講義 (1984年) (Lecture books) 作者: 斎藤忍随,後藤明生 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 1984/12 メディア: ? この商品を含むブログを見る 内容は、哲学者(哲学研究者)と小説家の対話、なかでもサブタイトルにもあるように、プラトンに関する話が一番の読みどころ。*1 以下、特に面白かったところだけ。*2 高貴な嘘 哲学者のくせに嘘を語るとは何事かと。 (125頁) プラトンは英訳すると、tell a noble lieをやっている。 これが後代批判されることになったが、ギリシャ語のウソにあたる「プセウドス」は、フィクションという意味もある。 そこら辺を押さえておかないと、プラトンについて、とんだ誤解をしてしまうのである。 ただ、詳細は、話すと長い。*3 *
斎藤美奈子『戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る』(のオリジナル版)を読んだ。 (サムネイルは、現代文庫版だが。) *1 戦下のレシピ――太平洋戦争下の食を知る (岩波現代文庫) 作者: 斎藤美奈子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/07/16 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る 内容は、解説文にある通り、 十五年戦争下の婦人雑誌の料理記事は、銃後の暮らしをリアルに伝える。配給食材の工夫レシピから、節米料理の数々、さまざまな代用食や防空壕での携帯食まで、人々が極限状況でも手放さなかった食生活の知恵から見えてくるものとは というもの。 「戦時下」というのがどういうものか、食の視点から実によくわかる一冊である。 以下、特に面白かったところだけ。 戦前における、料理に手間暇をかける余裕 このイデオロギーは婦人雑誌などのメディアによって「つくられた」部分が大き
中西宏次『戦争のなかの京都』を読んだ。 戦争のなかの京都 (岩波ジュニア新書) 作者: 中西宏次 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2009/12/18 メディア: 新書 購入: 5人 クリック: 45回 この商品を含むブログ (4件) を見る 内容は、紹介文の通り、「アメリカは、古都ゆえに空襲もしなかったのか? そんなことはない。数回にわたる米軍の空襲で、約100人の死者を出していた。西陣織などの地場産業は壊滅状態になったし、寺社も金属供出、宝物保護なでど大わらわだった。これまでほとんど語られてこなかった、戦争中の京都の姿を描く」というもの。 京都は空襲を受けていない、と思っている人も少なくないだろうと思うので、その点本書は読む価値ありである。*1 京都の寺社の金属供出 信仰の対象たる仏像もふくめ、梟の水(手水所)の竜の口(吐水口)、「音羽の滝」の滝口にいたる階段の金属製手すりにい
大山礼子『日本の国会』を再読。 日本の国会――審議する立法府へ (岩波新書) 作者: 大山礼子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/01/21 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 44回 この商品を含むブログ (27件) を見る 「政党間の駆け引きに終始し、実質的な審議が行われない国会。審議空洞化の原因はどこにあり、どうすれば活性化できるのか。戦後初期からの歴史的経緯を検討した上で、イギリスやフランスとの国際比較を行い、課題を浮き彫りにする」という内容。 本書は2011年と古い本となってしまったが、しかし、相も変わらず読まれるべき書物である。 そのくらい、立法府の課題は放置されたままである。 政治に失望する前に、立法府を活性化させるためにできることはあるのだ。(もちろん問題は、立法府だけにあるのではないのだが。) それにしても、「『ねじれ国会』が常態化した今、二院制の
アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ』を読んだ。 寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門 作者: アントワーヌ・コンパニョン,山上浩嗣,宮下志朗 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2014/11/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 内容は、紹介文にある通り、「知識人の教養書として不動の地位を占める世界的名著『エセー』。味わい深いモンテーニュの言葉を豊富に引きながら、その大著のエッセンスを見事に凝縮した40章。本格派の入門書」という内容。 もとはラジオ番組*1がもとになっているという。 特に面白かったところだけ。 不公平と文明 インディオにとっての第二の衝撃は貧富の差である。 (24頁) インディオが欧州に来たときのこと。 いくつものことでかれらは驚いたという。 その中でも、欧州が貧富の差が激しく、そうして貧困にあえぐ人々が、こうし
木庭顕『笑うケースメソッド 現代日本民法の基礎を問う』を再読した。 [笑うケースメソッド]現代日本民法の基礎を問う 作者: 木庭顕 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2015/01/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 内容は、紹介文にある通り、「基本書を開けばどれも当たり前に出てくる民法の用語たち。だが現代日本の民事事件とがっぷり四つに組んだ本書を読んだら最後、そこにはこれまでとは違った世界が広がり、根本的な問題が浮かび上がっているはずだ。有名判例を一つ一つ、事案の細部にわたって笑いとともに解きほぐす」といった内容。 読んで笑えるかどうかはともかく、説かれる内容は実に知的で面白い。 「占有」をキーワードに、有名な判例を読み進めることで、民法、特に現代日本民法の問題点が浮き彫りになる。 以下、特に面白かったところだけ。*1 「占有」とは何か。 占有という、
木庭顕『笑うケースメソッドII 現代日本公法の基礎を問う』を読んだ。 [笑うケースメソッドII]現代日本公法の基礎を問う 作者: 木庭顕 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2017/02/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る 内容は、紹介文にある通り、「公法の根底にある、近代ヨーロッパ概念である政治システムとデモクラシー。そしてそれらが全面的にギリシャ・ローマの観念体系に負うことを踏まえ、人権概念へと迫る」という内容である。 AMAZONのレビューでは、「本書の脚注に挙げられている数多の文献のうち、ほとんどを読んでいないことに絶望感を覚える読者が大半なのではないだろうか」と書かれているが、その絶望感をやり過ごして、以下に、特に興味深かったところだけ、書いていきたい*1。 占有呼ばわり 私もロースクール棟の廊下で見ず知らずの学生にいきなり「あ、占有!」と指差
村田純一『技術の哲学』を読んだ。 技術の哲学 (岩波テキストブックス) 作者: 村田純一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2009/07/17 メディア: 単行本 クリック: 15回 この商品を含むブログ (15件) を見る 内容は、紹介文にあるとおり、「これまで主題的に取り上げられることが少なかった『技術』について哲学の立場から考察」し、「技術に関係する多様な要因を探り出し、技術の実相に迫ると同時に、技術についての従来の考え方の底にある『哲学』そのものの再検討を行う」というもの。 紹介文は随分と抽象的だが、勉強になる本ではある*1。 以下、面白かったところだけ。 プラトンと「自然と人工」 プラトンがもちだすのが、自然物もある意味では技術的に製作された「人工物」(ただし神(ないし魂)によって制作された「人工物」)であるという論点だった。 (37頁) 他から動かされずに自らを動かす始
山田奨治『禅という名の日本丸』を読んだ。 禅という名の日本丸 作者: 山田奨治 出版社/メーカー: 弘文堂 発売日: 2005/04/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 38回 この商品を含むブログ (6件) を見る 内容は、紹介文にある通り、「弓・石庭・禅など、日本文化の情報がどのように外国に伝わり、それが日本にどのように環流して、日本文化を組み替えていったか。意表をつく視点から日本人のセルフ・イメージを探る」という内容である。 「禅」という、日本文化を説明する際に便利すぎるこの言葉を疑う者には、必読の書である。 とりあえず、面白かったところだけ。 仏教の教えに反している 戦災にあった同国民の受け入れを拒否するのは、やはりどうかと思う。現代風にいうならば、「人道上の罪」というのだろうか。 彼が傾倒した仏教の教えにも反する。 (145頁) 『弓と禅』の作者・ヘリゲルは、ナチ
片桐頼継『レオナルド・ダ・ヴィンチという神話』を読んだ。 レオナルド・ダ・ヴィンチという神話 (角川選書) 作者: 片桐頼継 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版 発売日: 2003/12/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 紹介文にあるとおり、「自らは画家を称したこのルネサンスの巨人は、しかし、いっさいフレスコ画を描かず、一方で、完成された作品の数に比して膨大な素描・スケッチの類を遺した」、「素描、それを駆使して生きた、『イメージ・クリエーター』としての人間レオナルドを描き出す」のが本書の狙いであり、その狙いは成功しているように思う。 以下、特に面白かったところだけ。 すでに親方 ヴァザーリがこの作品を理由にレオナルドを早熟と評していることが誤りであることは、すでに諸研究者の指摘するところであり (33頁) ヴェロッキオとの共作「キリストの洗礼
遠藤正敬『戸籍と国籍の近現代史 -- 民族・血統・日本人』を読んだ。 戸籍と国籍の近現代史――民族・血統・日本人 作者: 遠藤正敬 出版社/メーカー: 明石書店 発売日: 2013/09/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 内容は紹介文にもある通り、「日本国家は歴史的に『国籍』のみならず『民族』『血統』といった概念を、戸籍という装置を用いて操作してきた。戸籍*1は近代日本においていかにして誕生し、国籍と結びついて『日本人』を支配してきたのか」をまとめたものである。 「入籍」と言葉は養子縁組をも含む*2、ということや、旅券が国籍の証明として国際的に共通の制度となるのは第一次大戦後の出来事、など基礎(豆)知識として読むべきところも多い。 戦後の朝鮮籍の話*3 や戦後の国籍選択の話題*4 、ドイツにおける血統主義の変化*5等も取り上げたいが、今回は大きく取り上げるこ
浅見定雄『にせユダヤ人と日本人』を読んだ。 にせユダヤ人と日本人 (1983年) 作者: 浅見定雄 出版社/メーカー: 朝日新聞社 発売日: 1983/12 メディア: ? クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 紹介文にある通り、「ベンダサンこと山本七平氏の世紀の詭弁師ぶり」を喝破した名著。 ある書評にある、「イザヤ・ベンダサンこと山本七平の文章は、あまりにもメチャクチャで本来は読む価値もないのだが、たとえ論理的でなくても・事実誤認があっても、自らの主張と方向性を一致するならば良しとする『読みたいように読む』人々からの支持はいまだにあるらしい」*1という言葉は、最近の某書への一部読者の反応を想起させる。 本書もぜひ、図書館で借りてでもご一読いただきたい。 以下、特に興味深かったところだけ。*2 *3 皮なめし人のシモン 新約聖書にも「皮なめし人のシモン」などという人物が
前の記事の続き*1 私の1960年代 作者: 山本義隆 出版社/メーカー: 金曜日 発売日: 2015/09/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (12件) を見る 法の常識が通用しない医学部 疑わしきは罰せずとは法の常識ではあっても、わが東大医学部には通用しない (112頁) もともと、東大医学部の学生処分問題が、著者の学生運動にかかわるきっかけとなった。 実は、医局長とのトラブルの件でなされた処分者には、実際にその場にはいなかった学生までも含まれていたという。*2 この件に対して、医学部長が言い放った言葉が上記のものである。*3 *4 「私たちが求めていたのは、処分が誤りであったことを認めたうえで、その責任を明らかにすることを当然含意していた」(277頁)。 「安全パイ」 私は、どの党派の色もついていない安全パイみたいなもので (155頁) 著者が東大全共
新田一郎『相撲の歴史』(文庫版)を読んだ。 相撲の歴史 (講談社学術文庫) 作者: 新田一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/12メディア: 文庫 クリック: 10回この商品を含むブログ (10件) を見る 相撲は大好きである。 あれはすぐに決着がつく、素晴らしいものだ(ソコカヨ でも相撲、実際の歴史ってどんな感じか、意外に知られていない。 フランシスコ・ハビエル・夕ブレロによると、鎌倉時代だと力士は盗人や浮浪者、恐喝者と同列の扱いであったり、相撲節会というのは、実は平安時代の天皇と宮廷人のためだけが観戦するものであったり、土俵は歴史的には比較的新しいものであったり、大銀杏髷が義務付けられたのは明治42年(1909)のことだったりする。 こうしたことは知られていないだろう。(詳細は、この記事を参照。) 相撲を正しく把握するには、相撲とは何だったのか、「伝統」という言葉の抽
またも、齋藤希史『漢文スタイル』 を読む。 漢文スタイル 作者: 齋藤希史出版社/メーカー: 羽鳥書店発売日: 2010/04/13メディア: 単行本 クリック: 32回この商品を含むブログ (10件) を見る 著者曰く、今の時代に必要なのって、韓愈じゃなくて、焚紹述樊紹述かも、と(119頁)。 どういうことか。 今の「国語」の衰退をめぐる議論は、近代の「国語」以前の型の集積を訴えたりはする(『声に出して読みたい日本語』とか)けど、結局、その型へ反発する力というのは養われない。 (型を養うこと自体が不必要なわけでは、もちろんない。) 文章って、書けば書くほど、何かか言い切れないようなものが残ってしまうもの。 そういう言い切れなさの中から、それに立ち向かう初発のエネルギーが出て、新しい表現が生まれる。 韓愈は、その初発のエネルギーを古の文章に感じて、道を開いた(彼は、単なる"いにしえの文章オ
増田聡『聴衆をつくる』を読んだ。 ぜひ手に取って読んでいただきたい。 さいきん、増田先生で話題になったことと言えば、戦略的な「パクリレポート課題」*1の話題か。 とりあえず、特に面白かった箇所だけ 聴衆をつくる―音楽批評の解体文法 作者:増田 聡発売日: 2006/07/01メディア: 単行本 音楽批評と形容詞 形容詞はすぐさまコード化され、言葉を制度的な意味空間の中に閉じ込めようとする。 (15頁) ロラン・バルトが参照されている。 音楽は、荒々しい、いかめしい、悲しげな、などの形容詞を介して言語と出会う。 音楽の価値を、即自的、万人にとっての価値であるかのように話す言説である。 だが、それは「愛」ではないのだ、と著者は言う。 「愛」は、そうやすやすと他人に理解されるはずもない。 音楽批評から形容詞や隠喩を取り除いたとき、本当の「愛」が試される。*2 「Jポップ」成立以前の音楽のくくり
白鳥あかね『スクリプターはストリッパーではありません』を読んだ。*1 面白いというしかない。 賞も得ているので、本書を読んでいる方も多くいるだろう。 スクリプターはストリッパーではありません 作者:白鳥あかね発売日: 2014/04/30メディア: 単行本 以下、特に「面白い」と思った所だけ。 忙しいぞ、スクリプター でも、ビデオが発達してから、現場でもモニターテレビで見て演出する監督が増えてきているんですね (20頁) スクリプターという職業は大変である。 スクリプト(記録)用紙は、500カットの場合、500枚。 どんな細かいことでも書かないといけない。*2 パンなど、カメラの動きも記録し、当然、俳優の動きも記録しなければならない。 こうしたポジションであるため、スクリプターは現場でも良いポジション(監督の隣)を確保している。 そうした監督に近いポジションゆえ、場合によっては、監督やほか
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