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『プロメテウス』Prometheus 2012年(米) 監督:リドリー・スコット 脚本:ジョン・スペイツ、デイモン・リンデロフ キャスト: ノオミ・ラパス マイケル・ファスベンダー シャーリーズ・セロン イドリス・エルバ ガイ・ピアース 上映時間:124分 ■ボディ・ホラーの集大成■ マヤ、メソポタミア、エジプトなど接触のないはずの場所や時代に描かれた古代壁画に、共通したサインを見つけた調査団は、サインが示す惑星に人間を創造した地球外生命体(創造主、クリエイター)がいると推測し、ウェイランド社のプロメテウス号に乗って謎の惑星へと旅立った。実際にその惑星には、彼らの想像を凌駕する知的生命体が存在しており、生命体のサンプルを船に持ち帰るのだが…。 一見すると、「未来的で想像的な科学技術や特撮技術によって驚嘆の喜びを与えることに重点を置く映画」、すなわちSF映画の形態を取りながら、「人類の起源」
書名:『アンドレ・ブルトンの詩的世界』 発行:慶應義塾大学法学研究会 発売:慶應義塾大学出版会株式会社 初版発行:2015年10月30日 定価:4,900円(税別) 朝吹亮二の『アンドレ・ブルトンの詩的世界』を読んで驚いた。ストレートに言えば、朝吹氏がここまでシュルレアリストだったとは思っていなかった。朝吹は慶應大学の先生だが、日本に初めて本格的にシュルレアリスムを紹介したのは慶應大学の先達で詩人の西脇順三郎である。西脇門下から自他ともに正統シュルレアリストを称した瀧口修造が出た。戦後になってその影響下に東大系の飯島耕一、大岡信、東野芳明らがシュルレアリスム研究会を結成し、戦前は不十分な受容に終わった日本のシュルレアリスムが、理論研究でも実践面でも軌道に乗ったのである。ただシュルレアリスムはすでに終わった過去の文学運動のはずだった。 もちろん〝シュルレアリスムが終わった〟というのは言葉の綾
奇書である。しかし最大限の賛辞をもっての。ならば奇書とは何か、という定義から始まらなくてはならない。それは単に字面から浮かぶ「変わった書物」という意味ではない。だったら少なくとも「普通の書物」とは何かを定義できなくてはならなくなるし、それはほとんど意味がない。「普通」だとわかっている代物をわざわざ読もうという者はいないからだ。 「普通の書物」などという凡庸なものは議論に値しないけれど、書物を編もうとするときの人の心性の通常のあり様というものはある。それはテーマと呼ばれるものの存在で、著者の価値観の中心的なあり方に関わる。奇書とは、テーマそのものが奇であると言うより、テーマと著者との関わり方、その距離感に独特のずれがあるものと言える。何からずれているのかはたいした問題ではない。それこそ通常の感覚から、と言うしかないし、それよりも何故にずれているのか、ということの方が興味深い。それがわかれば、
『アクト・オブ・キリング』(2012年、デンマーク・ノルウェー・イギリス合作) 監督:ジョシュア・オッペンハイマー 共同監督:クリスティーヌ・シン、匿名希望 出演:アンワル・コンゴ、ヘルマン・コト、アディ・ズルカドリほか ある日、太陽が照らす寂れたビルの屋上に、優しげな老人がキャメラの前に立っている。この老人の名は、アンワル・コンゴ。彼は針金を取り出し、それを柱に括り付け、一緒に来ていた男性の首に巻きつけた後に引っ張り始める。彼がキャメラの前で上演(act)しているのは、40年前にこの屋上で彼が行った絞殺という行為(act)である。悪びれるどころか、陽気で生き生きとしたアンワルの姿が、何の虚飾もなく観客の目に運ばれていく。『アクト・オブ・キリング』のキャメラはこうした事実を冷徹に捉えてしまう。 我々は映画を鑑賞する際に、ある種の幻想を抱かずにはいられない。映画という虚構性の強いメディアに感
『風立ちぬ』 2013年 (日) 原作・脚本・監督 宮崎駿 プロデューサー 鈴木敏夫 制作 星野康二(スタジオジブリ) 音楽 久石譲 主題歌 荒井由実 『ひこうき雲』 上映時間 126分 ヒロインとの最初の邂逅の直後、汽車のデッキに腰かけた主人公がヴァレリーの詩句をつぶやくと、ショットは切り替わって彼の後ろ姿を画面の後景におさめる。そしてその前景には、煙管をくわえて渋い顔をした初老の男が腰をおろしている。公式資料によれば、彼はどこぞの魚屋のおやじらしい。ともあれ、いかにも宮崎駿の描く世界になじんだその男の、人生の年輪を重ねた見事な面構えをお見逃しなきよう、未見の方にまずは強く勧めておく。 恥ずかしげもなく告白すれば、この何気ないショットを目にして以降、思いがけず胸を衝かれた私は、「おわり」のクレジットが表示されるまでずっと目頭を熱くさせ
『戦争と一人の女』 2013年(日)監督:井上淳一 監督:井上淳一 キャスト: 江口のりこ 永瀬正敏 村上淳 柄本明 上映時間:98分 戦争中の日本。飲み屋の女将であり元娼婦の女(江口のりこ)は、ある日偶然店にいた小説家の男(永瀬正敏)と戦争が終わるまで夫婦になり、滅茶苦茶な淫乱生活を送ろうと半ば絶望的口調で約束を交わす。そして生活感のない小説家の家に住むことになった女は、男と淫らな新婚生活を送ることになる。その頃、戦争で片腕を失くした帰還兵(村上淳)は勃起不全に悩んでいた。彼はある日女性が強姦される姿を見て、性的興奮を催す自分に気付くこととなる。そして彼は女の首を絞めながら強姦するというサディスティックな犯罪に身体を染めることになるのだが…。 戦争に絶望し、性に溺れる男女の行く末を描いた坂口安吾の同名小説の映画化である本作は、その性的描写の過激さや戦争責任という題材を扱っていることから、
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