その福祉施設は重度の知的障害者がいる施設で、遠足などで外に出なければならないときの付き添いが必要なときに、ボランティアを使っていた。私は学生のときに、そこへよくお手伝いに行っていた。 利用者の年齢は皆18才以上で成人している人も多く、中には50代の人もいたが、知能レベルは一番高い人でも5才程度だという。 私がその日に付き添うことになった女性は19才で、利用者の中でも最も知能レベルが低く0才程度、「最近、やっと親の判別がつくようになったんですよ」と職員が言う。1人で歩くこともできないので車椅子に乗っていて、バスの中では寝ているのか起きているのかよく分からないような表情、目も常にうつろで口は半開き、時々手のひらを目の前にかざしてそれに興味があるのかそれとも本能のままに動いているのか、自分の指や、指と指の間にある空間をゆっくりと眺めているようだった。 バスの中では私は彼女の隣の席に座ってい