サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
今年の「#文学」
akihitosuzuki.hatenadiary.jp
アメリカの独立記念日にシカゴの近郊の街でパレードが行われていた折に、銃撃で6人が死亡したとのこと。どう表現していいのか分からないが、亡くなられた方のご冥福をお祈りします。 エコノミストはこの記事を載せていて、当然のように統計も使っていて、もちろん、この40年間、かなりのスピードで増加していることが示されている。 ふと感じたことを一つだけ。Covid-19 がアメリカで流行した時期には、銃撃大量死が減少する傾向があるのかもしれない。 www.economist.com
www.smithsonianmag.com www.nature.com 黒死病と呼ばれる第二のペストの巨大な波。いつヨーロッパに広まったのかという問いに対しては、1347年にクリミア半島の港町カッファにおける籠城戦から、ジェノヴァの商船が感染して、シチリアなどの港町に感染したと言われている。もちろんその前はどうだったのかだろうという疑問があり、私は答えられなかった。 Smythonian Magazine の今日の記事、そしてそのもとである Nature の記事で、かなりの前進があった。1347年よりも10年近く前に、現在のキルギス共和国の北部 (northern Kyrgyzstan) の村で死亡した患者の歯の骨のDNA検査をしたところ、ペストにかかったことが明らかにされた。年代は1338年と1339年、場所はシキク・クルという内陸湖の周辺にある村 Burana などである。それらの
しばらく前からネット上の英語サイトで話題になっている日本人のDNAについての記事。歴史的に古い人骨を分析して、これまでの二つのタイプに比べて三つのタイプのDNAのグループがあるとわかったとのこと。これまでは縄文型、弥生型の二つで説明できていたが、新たに古墳型があることがわかったとのこと。もともと日本列島にいた人々、朝鮮半島から移住した人々、そして中国から移住した人々であるとのこと。これまでのさまざまな事実から、そうではないかと思われていた理論を支える大きな証拠であるとのこと。本を楽しみにしていますが、ともあれ、おめでとうございます。 DNAを分類するという、私ができない議論なので、偉い先生たちにお伺いしたい問題ですが、有名な結核の問題は、このDNAの三つの型の問題と関係するのですか? 結核の死亡と罹患は、東北地方・関東地方では少なく、関西地方・九州地方では高いという事実があります。私には一
www.bbc.com BBCからのニュース。パリの科学技術の一つの拠点であるパリ・デカルト大学でのスキャンダル。状況が私にはよくわかっていないが、寄附されたはずの数百の死体から、数十もの死体が放棄され、部屋に積み重ねられ、眼を開けて、腐敗していたとのこと。 解剖学と死体の利用。大きなメリットがあり、それが医学の維持と前進にとって必須のものであることは承知しています。しかし、それを誰か関係者ではない人物がチェックしていく方向がないと、スキャンダルになる力も働いています。この主題の論文を書くこともあり、日本のこの部分がどうなっているのか、調べてみますね。
春を告げる温かい日々が続いています。皆様は、色々な希望と共に新年度を始めていらっしゃると思います. 私は、この4月より、東京大学・人文社会学系大学院の死生学・応用倫理センターで教鞭をとることになりました。生命倫理学が核となって、医学史という新しい学問が、人文系の学問はもちろん、医学部や看護学部をはじめとして、社会科学、薬学、理工、農学などの学問と実務と結びつける大きな転換期にいることを実感しています。 これまでは、慶應義塾大学で、24年間にわたって教えました。その中で、多くの方々にお世話になりました。三田の経済学部と日吉の教員の皆さま、学部と大学院の学生諸君、慶應の事務や図書館の皆さまから多くのことを学び、インスピレーションを得てきました。また、日本や外国の多くの大学の皆さまからも、多くを学びました。皆様に、心の底からお礼を申し上げます。 東京大学では、私たちが敬愛する研究者で、死生学と科
www.economist.com エコノミストの記事より。現在の段階では パンデミックを引き起こしているコロナウィルスであるSARS-Covid-2にとても似ているものはコウモリの身体にあること。その特定の種類のコウモリは中国本土というよりも東南アジアに数多く住んでいるとのこと。WHOが近々大規模な調査を始めるとのこと。楽しみにしています。とりあえず、コウモリの本を買っておきました(笑)
www.economist.com エコノミストからもうひとつ非常に面白いデータ。covid-19 のインパクトを国際比較したという記事である。いくつかの大切なポイントがあり、一番重要なのは、死者数に集中していることである。具体的には、必ず記録される死者数と、その中でcovid-19 によるとされた死者数の両者を較べてみるという手法である。これが最も重要な手法だと思う。いくつかの国家では第一波のピークが過ぎている、ある国ではこれから第一波ということがはっきりとわかる。面白い問題は、一般死者数とcovid-19 における死者数のズレである。ヨーロッパではだいたい一致しているし、スウェーデンやドイツやデンマークなどの福祉のお手本の国家ではきちんと一致している。一方、中南米ではズレが非常に激しい。 スウェーデンやドイツの一致したデータ 中南米諸国のズレたデータ 日本のニュースでは、この問題をめぐ
www.lrb.co.uk もう一つLRBから。イランのテヘランに住む女性の記事。トロントで勉強する従兄弟の学生が飛行機の事故で死亡し、テヘランからトロントに行き、家族のお見舞いや後の処理などをした。その間にパンデミーのために、カナダはイランとの通行をサスペンドし、街全体にロックダウンをかける。彼女はトロントで孤独な一か月を過ごし、5月になってようやくヨーロッパなどを回ってテヘランに帰る。空港やさまざまな場所で40時間かかったという。その間の深い孤独と無秩序と旅人への公衆衛生。とても面白いです。
historypsychiatry.com 1960年代から70年代にかけて、欧米各国では精神病院の病床の急激な減少がはじまった。一方、この時期に日本では急激な増加が起きる。これは大きな謎だったし、今ではますます大きな謎となっていた。「なぜ?」という問いに答える方法が見つかっていなかったが、とても大きなヒントの論文が出た。同じ時期の中東においても、精神病棟の急激な増加が起きているとのこと。震える手でクリックして、呼吸を整えて読んで、ものすごく多くのヒントに満ちた論文であることを知る。皆さまもどうかお読みください!
発疹チフスと腸チフス。医学史の初心者にとってこの二つを区別することが、ある意味で感染症の歴史家への第一歩である(笑)今回『医療英会話キーワード辞典』の「チフス」の項目で、<「チフス」には三つある、一つは腸チフス、一つはパラチフス、もう一つが発疹チフスである>という記述があった。これは私が教えていることとかなり違って、静かに驚愕して、ちょっと調べたが、やはり現在の日本でもこういう三つのチフスという考えは少数派であるとのこと。日本語の wikipedia を見てください。 しかし、日本語の wikipedia でも驚いたのが、アンネ・フランクが「チフス」で死んだという指摘。これも私が驚愕した発言である。確かに腸チフスと発疹チフスは見た目が似ているけれども、発疹チフスは昔から刑務所などで流行するから、アウシュヴィッツでは発疹チフスが流行し、アンネ・フランクも「発疹チフス」の被害者と考えられている
www.lrb.co.uk LRBに速報。感染症、免疫、細胞生物学を専門とされるルパート・ビール先生が、今回のパンデミックはどのようになるかというエッセイを書いています。20世紀末からの経験を書き、20世紀の感染症の歴史学者としてもとても面白いです。彼が最後をまとめている3つのポイント。かなり大きいと予想しています。 1. これは通常のビジネスではなく、1918年のインフルエンザ以来の大流行になるだろう、2. 初期の段階で社会において距離付けをすることが必要だろう、3. この大流行を人類が乗りきることができるだろう、しかしパンデミックやワクチンについて新しい大きな変化を経験するだろう、とのこと。ぜひ全体もお読みください! 1. This is not business as usual. This will be different from what anyone living has
学校閉鎖が今回のコロナウィルスの感染にどのような影響を及ぼすか。もちろん非常に難しい問いですが、医学史研究者としては、かなりの貢献があると思います。詳しくは Akihito Suzuki, "Measles and the spatio-temporal structure of modern Japan", Economic History Review, vol.62, issue 4, 828-826をご覧ください。 麻疹は、1890年代までの日本においては、15年から30年に一回くらい、全国に広がる大流行があるというパターンでした。天然痘が奈良時代に日本に襲い掛かったようなものだとお考え下さい。これは、当時のイギリスにはないパターンでした。2年か3年に一回の割合で小流行があり、患者は乳幼児ばかりであるというように移行していました。そして、日本のデータは、当時の疫学の大きなパラダイ
私が見るTV番組にNHK の(おそらく)人気番組の『ブラタモリ』がある。土曜日の晩ごはんを食べて、お茶を飲みながら楽しい番組を見る。今日は秋田がロシアや渤海と深い関係があるという話だった。その中でちょっと本気になった話題がある。 ポイントは古代の時期、ことに平城京の時代の日本における感染症の移動の向きの話である。天平の天然痘は福岡から入って都の奈良に向かった。これは日本国内の西から東への移動である。 一方で、その反対に、ある感染症が渤海から秋田にはいり、そこに基盤を持ってから東から西に移動したと考えたほうがよく分かる記述がある。かなり長い文章なのだが、以下のようなものです。 <律令制度とサーキットの確立> 天平の天然痘は、律令制のもとで確立していた、それぞれの「国」の国衙を中央と結び、国の中では、国衙と「郡」を結ぶ行政と交通の機構によって、全国に伝播したと考えられる。詳細は不明であるが、防
www.igaku-shoin.co.jp 森島, 祐子 et al. 医療英会話キーワード辞典 : そのまま使える16000例文. 医学書院, 2019. 『医学界新聞』で書評されていた『医療英会話キーワード辞典』の新版が出たので買ってみた。例文は 16,000もあり、膨大に多い。それよりも重要なことは、英語が一字一句の対応しているのではなく、日本語の表現にうまく対応していることである。たとえば、「あいだ」という日本語をみると、<時間><空間・場所><関係・間柄>のように大きな分類をされ、その中でそれぞれどのように英語で言うのかという例文がならんでいる。だから時間でいうと Please take medication between meals. という表現があり、関係でいうと Good communication between doctors and patients is the
御前隆先生という医師が「D・ゲンゴスキー」という筆名で2006年の『医学界新聞』の連載した「教養としての医者語」という文章がある。日本の医師たちが使っているドイツ語崩れの日本語の話である。私には非常に面白いし、エクセルのファイルにせっせと入力している。 その中で、衝撃中の衝撃の情報。「カルテ」という日本語に関して巨大な衝撃を与えた情報である。「カルテ」という日本語は「医者が書く診療日誌」という意味を持つ。「この研究が用いた史料は症例誌、いわゆるカルテです」という文章を何度も使った医学史研究者は誰なのか、私にわざわざ教えてくださらなくても結構です。その文章には、ドイツ語の Karte は、医者が書く診療日誌という意味をもつドイツ語があり、それは die Karte であるという巨大な錯覚がある。それが大間違いに間違っている。ドイツ語の die Karte は、もちろん基本は card で、そ
20世紀前半の朝鮮人の移民 Korean workers について、英語の本からデータを拾って、背景の部分を作った。 朝鮮移民は、帝国主義の歪みの中で作られた悲惨な状況を味わった人物が非常に多かった。ことに患者Aに関しては、1920年代から30年代にかけて非常に多かった公共土木工事の労働者である可能性が非常に高い。 朝鮮において日本に売るための米作が非常に発達するが農村の小作農が貧困化していくことと並行して、多くの朝鮮移民が公共土木工事の労働者になっていく。日本人でも多数の下級労働者が土方として労働していたが、朝鮮移民に関しては、東京周辺でも日本人の労働者よりも数的に多かった。これは1928年の東京市の統計で、失業登録をする日雇労働者に関して、それまでの職業のタイプを答えてもらったものである。この中で、工場労働者、商業関係、交通関係などに関しては日本人労働者が圧倒的に多いが、公共土木工事と
これは別の仕事だが、精神疾患と隔離を必要とする犯罪者の問題を考えているなか、JSTOR の週間記事でテロリズムの話があったのでメモ。 犯罪と精神疾患をどう区別するかという問題は非常に難しい。私が具体的に取り上げていることは、制度の外で起きていた精神病院への隔離というのは、かなりの少数派であったが、実際に存在していた。そのような隔離が継続されるためには患者は何をしてしまうのか、逆に、その隔離をやめて解放するには何が必要なのかということを考えることである。 ある行為を犯罪と呼ぶか精神疾患と呼ぶかは、その事件を起こした人物の人柄にもよるし、私たちの判断基準にもよるし、あるいは日本が死刑がある制度を持っているかどうかということにもよるのだろう。麻原彰晃の行為自体は犯罪と呼ばれることにふさわしく、相模原障害者施設殺傷事件の殺人者は精神疾患の結果であるという色彩が強い。戦前の日本で言うと、特高警察は、
1979年から2015年まで、中国は「一人っ子政策」を引いていた。それが中国の人口をうまくコントロールできたことは重要な貢献である。一方、中絶を中心にして、胎児の生命が大規模に終わらされた時期であることも、漠然と予想していた。それに関するドキュメンタリーが出版されたとのこと。ある産婆のインタビューでは、彼女個人で40,000-50,000件の中絶をしたとのこと。期間を40年とすると、一年に1,000件、一日に3件の中絶をしたということになる。ううううううむ。 エコノミスト・エスプレッソの記事と huffworld の記事を。 “One Child Nation”: China’s one-child policy “Of all the things in the world, people are the most precious,” Mao Zedong, founder of co
publicdomainreview.org 日本では捕鯨をどうするかが問題になっている。その時に、私たちが読んでおくと素晴らしい記事が北極に関してあったからメモ。 基本は、オランダが17世紀初頭に現在のノルウェー領土であるスメーレンブルク (Smeerenburg 発音は確かではありませんが、これからスメーレンブルクと表記します)に築いた捕鯨の基地の問題である。欧米で長いこと存在した歴史学の伝説によると、17世紀にはスメーレンブルクの捕鯨基地は非常に栄えていた。人口は18,000人程度であり、当時のボストンの人口が約15,000人であったことを考えると、中都市である。そこには捕鯨した鯨から脂を取る大きな作業場、仕事をする男性たちの娯楽の場、そして彼らを色気で誘うあでやかな娼婦たち。生き生きとした中都市になっていた。18世紀にはスメーレンブルクは消滅していたが、それから19世紀、20世紀ま
世界の刑罰・性犯・変態の研究 : 絵画・写真集. 復刻版 edition, [出版者不明]. Noyes, John. The Mastery of Submission: Inventions of Masochism. Cornell University Press, 1997. Cornell Studies in the History of Psychiatry. 国際的な研究プロジェクトで、戦争が精神疾患と精神医療に与えた影響を調べるものがある。シェルショックや戦争神経症やPTSDと呼ばれている疾患があり、日本のその問題に関しては、中村江里さんが深く広い貢献をしてくださるだろう。私ができることとしては、もちろん1920年代から1945年までは症例誌があるが、それ以前に関してどうしようか考えていて、試してみる案を思いついた。 伊藤晴雨(いとうせいう 1882-1961) が書
Steiner, George et al. アンティゴネーの変貌. みすず書房, 1989. 今年の一般教養は身体の歴史を教えている。これまで、医療の歴史、狂気と精神医学の歴史、疾病の歴史という三つの主題を教えていた。「身体の歴史」は今年から始めて、最初は多少の不安があったけれども、意外と教えるのが楽しい。一つの理由が、文化、社会、芸術を織り込むのが、他の主題に比べて楽しい話題になりやすいということがある。医療の歴史、疾病の歴史は、どうしても理系の話が多い。文学や人々の態度も、もちろん入れ込むことが可能だけれども、結構むずかしい。狂気と精神医学も、まだバランスが分からない部分が多い。身体の歴史は、文学などを自然に入れることができる。 これを強く感じたのは、シュタイナーのアンティゴネー論を読んでいて、18世紀から19世紀末にかけて人体が生き埋めにされ死後の人体と交流できる主題が、多くの人々
Enloe, Cynthia H. Maneuvers: The International Politics of Militarizing Women's Lives. University of California Press, 2000. フェミニズムの論客の一人であるシンシア・エンロー先生の著作を読んでみた。『策略』として日本語に訳されているが、これは抄訳である。日本が韓国やフィリピンで行った慰安婦や現地女性のレイプの問題が取り上げられている章や、私が読みたかった看護婦と軍隊を扱った章が訳されていないようである。慰安婦に関しては、日本が行ったことはもちろん、イギリス、アメリカ、フランス、韓国などが行った問題として各国の軍隊が売春のシステムを前線の直近に作ることが鋭く書かれているという印象を私は持った。ぜひお読みください! 軍隊の看護婦については、まずはクリミア戦争でのナイチンゲ
『週刊 医学界新聞』に新しい連載である「図書館情報学の窓から」が始まった。佐藤翔先生という方が、ある意味で歴史的な手法で始まった。図書館情報学は、原子爆弾計画・マンハッタン計画に一つの起源をもつという議論である。とても面白そうだし、引用されているご自身の論文を見てみよう。 www.igaku-shoin.co.jp
knoema.com 医療や疾病の歴史をしていると、現在の世界における状況に触れる必要があることが非常に多い。「結核の死亡率は2017年にはこのようなもので~」というセリフを言う必要がある。もちろん自分でがんばればできるが、時間がとてもかかる。そこで、データがぱっと手に入り、それを地図で表現できるという、非常に便利なウェブ上のソフトが提供された。月に2万円払うと素晴らしい機能が提供され、おそらく自由にデータを集め、地域も自由に選ぶことができ、地図の表現も素晴らしいのだろう。ただ、正直に言うと、今のところはそれをしなくてもいい。無料で提供されるデータも素晴らしい。たとえば、以下の地図は、世界各国で感染症による死亡率が高い地図である。無料でこのような地図が入手できるのは素晴らしい。 無料で作られた感染症死亡率の地図です。とっても便利です!
www.2queens.jp 昨日は夕刻に映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』を観た。イギリスの歴史映画は、だいたい実佳とともに大好きで、点が甘くなるのは事実だけれども、非常に優れた映画である。史実に関して、特に性的な描写と人種の描写に関しては、現代にかなり寄っている部分がある。性的な振舞いは戦略に沿って自由奔放に描いているし、人種に関しては、アフリカ系、中近東系、アジア系の俳優が数多く用いられている。史実に合っているのかなあと思う。しかし、全体のメッセージに関しては、二人の女王が、どのようにして支配者を行うのかという話を深く描いていて、とても面白い。 実は、同じ史実のジャンルだけれども、強調されているエピソードは、エリザベスが33歳の時に罹患した天然痘である。この天然痘はエリザベスの顔にすさまじい爪痕を残していき、その後も髪の毛や対人関係に大きな影響を与えた。別の人格になったといっ
戦前日本のコカイン産業についての研究論文を読む。文献は、Karch, Steven B., “Japan and the Cocaine Industry of South East Asia, 1864-1944”, in Paul Gootenberg, Cocaine: Global History (London: Routledge, 1999). 知らなかったのは私だけかもしれないけれども、かなりショッキングな内容の論文だった。1920年代から30年代、40年代にかけて、台湾や硫黄島・沖縄などで三菱合資会社の出資によってコカが大量に栽培され、それが三共製薬・星製薬をはじめとする日本の大手の製薬会社によってコカインに精製されてインドの闇市場などに売られ、日本の官僚はコカ・コカインの輸入・生産量を偽って国際連盟に報告し、密輸コカインの輸送には海軍の軍艦も使われていたという驚くべき内
日本の薬学の歴史において、<日中薬用量相違>という問題がある。私が知る限りでは貝原益軒『養生訓』が最初にそれを指摘している。それから300年ほど続いている(と思う)大きな謎である。 簡単に言うと、同じ薬であるのに、日本と中国を較べたときに、薬の量が日本はとても少ないという点である。同じ年齢、同じ性別、似たような程度の症状であるのに、だいたい1/3 から 1/10 くらいの、ものすごく少ない量で、日本においてはその薬が効く。日本は1匁、中国では3匁から10匁すらが一服である。なぜかという問いに対して、貝原益軒は3つの要因を出している。以下のサイトの第7巻を読んでいただきたい。 www.nakamura-u.ac.jp 実は、同じような現象が19-20世紀の日本において西洋の薬と並行して起きているかもしれない。上村直親と林春雄の二人の医師が書いている『日本内科全書』の「薬物療法」を読んでいたら
www.prospectmagazine.co.uk イギリスの中道系の雑誌 Prospect で、面白い記事が掲載。過去の数十年において、アメリカ、ヨーロッパ、AU&NZ などの先進国では男性の精子数が鮮明・劇的に減少してていること、一方南米、アジア、アフリカではそのような減少はないことが確定されており、そのさまざまな意味を論じているものである。この記事では、この本!この論文!という形で報告されていないが、記事に登場する科学者の名前を入れて検索するとそれらしい業績やインタビューがあるので、それを見ればいいのだろうと思う。また、日本がここで先進国パターンの精子減少なのか、そうでない国家の精子数保持なのか出ていないが、私の記憶では先進国パターンであった。 たくさんの話題に触れているが、技術と文学の二つの話題が面白い。「シャーレの上での受精」と呼ばれている、受精と生殖を、現在の性行為から切り離
www.economist.com 昨日もエコノミストでヨーロッパの反移民と保守反動の政党についての記事を読んだが、今日も似たような内容の記事。この数年にわたり、反移民で保守反動の政党がいくつもの国で大きく伸びている。一方で、そのような政党の成長はピークに達したのではないか、またそのような政党がそもそもない国家もいくつかあること。このことを地図とグラフで表現してくれた。うまい利用だと思う。医学史研究者としては、イタリアとバルト海沿岸の地図を見ると、イタリアから侵入してぐるりと時計回りに旋回するとか馬鹿なことを考えますが、14世紀の黒死病とは何の関係もありませんね(笑)しかし、精神病院の患者の現住所の表記もこのように表現してみよう。
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『akihitosuzuki's diary』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く