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今年の「かわいい」
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夏の盛りに旬を迎えるとうもろこし。日本ではトウモロコシの調理法を検索すると、真っ先にゆで方が出てくる。かたや中国料理は、炒めたり煮たり焼いたり蒸したり、あらゆる調理法で楽しまれている印象がある。 なかでも蒸し暑い時期におすすめしたいのがトウモロコシとレンコンとスペアリブのスープ(玉米排骨蓮藕湯|玉米排骨莲藕汤)だ。その理由は三伏(さんぷく)にある。 三伏とは陰陽五行説における季節の捉え方で、夏至から立秋にかけて、一年で最も酷暑となる頃をいう(2024年は7月15日~8月14日)。日本でも古くは時候の挨拶、俳句の季語にもなっているので、耳にしたことがある方もいるだろう。 暑さが極まり、湿度は高くなるこの時季は、身体に熱や湿気がたまりやすく、胃腸が弱りやすい。一方、冷房にばかり当たっていると身体は芯から冷える。うっかり風邪をひいてしまうのは、まさにこんな時である。ゆえに、三伏の期間は胃腸をいた
今月から、横浜中華街の五目焼きそば全140皿を食べ尽くした男、五目ひでおさんの不定期エッセイが始まります。生まれも育ちも横浜の五目さんが、五目焼きそばに目覚めた理由とは?約1年半かけて食べ歩き、最も心に残った3店とは? 最初に、私が好む五目焼きそばの特徴は以下の3点です。 麺そのものから味と香りを感じられる、褐色の深蒸し麺 それぞれの具材の歯触りを楽しめるよう、丁寧に施された下ごしらえ 餡のとろみは程々で、味付けは濃過ぎない もうひとつ、大切なことをお伝えしておきたいと思います。 私は五目焼きそばに、お酢をかけません。ですので、お酢を入れた際に引き起こされる化学反応については、未知の状態でのご紹介になることをご容赦ください。ついでに、からしもつけません。 そんな風に考えてみますと、五目焼きそばには食べ方の作法のみならず、調理方法や具材も含めて、思いのほかバリエーションがあるようです。 同じ
いつ訪れても、朝から晩まで賑やかな高田馬場の駅前。だが、そこから5分も歩かないうちに、駅前の喧噪が嘘のように静かな、落ち着いた住宅地があるのをご存じだろうか。 「ここに行く」と目的を持って歩かなければ絶対たどり着かないその一角に、2024年4月末、中国茶のあるひとときを楽しむ茶館「虫二(ちゅうじ)」がオープンした。 「虫二(ちゅうじ)」外観。以前はイタリアンレストランだった。 ドアを開けると、茶菓子や茶の売り場、その奥に茶席を楽しむスペースが広がっている。photo by Chuji 実はこの店、中国茶カフェとして人気を集める西早稲田「甘露(かんろ)」が手掛ける二号店。「甘露」は中国のおやつと中国茶をアラカルトで楽しめるほか、イベントや語学教室などを通じて、日中交流の温かな拠点となってきた。 一方「虫二」は、厳選された中国茶と茶菓子をセットにしたコース、すなわち茶席を楽しむ場所。茶館をつく
大塚は普段着の街だ。ターミナル駅の池袋から山手線でたった一駅、隣の街にいくだけで、ぐっとカジュアルでおいしいものが楽しめる。 居酒屋、焼き鳥、洋食、ラーメン、カレー、もちろん中華もいろいろある。特にこの街は、ふらりと入って、びっくりするような中国郷土料理があったりするから侮れない。 そんな店のひとつが「豫見ハーラー麺(ユージェンハーラーミェン|豫见饸饹面|豫見餄餎麺)」だ。 河南省の非物質文化遺産、ハーラー麺とは? 2024年2月15日からプレオープンしている。 ハーラー麺とは中国語で饸饹面(フールーミェン|hélemiàn)と呼ばれるもので、中国北方を中心に作られている麺料理のひとつ。端的にいうと、ところてんのように生地を押し出して作る、押し出し麺である。 食べ方は、羊や牛のスープ麺に仕立てるほか、焼きそばなどにすることも。特に河南省の羊肉スープで食べる羊肉餄餎麺は名高く、同省では非物質
餃子を山ほど食べたい。いろんな餡の餃子を、みんなでわいわい分け合って食べたい。そんな気分にぴったりな店が「餃子封神榜(ぎょうざほうしんぼう)」だ。 場所は「ガチ中華」のメッカ、JR池袋駅北口界隈。あらゆる中国料理店が軒を連ねるエリアだが、ここまで餃子に特化した店は、意外にもこれまで出現していなかったのではないだろうか? ここで食べられるのは、作りたての水餃子や蒸し餃子。注文が入ると、フロアに隣接したガラス張りの厨房で、面点師が皮をのばし、餡を包み、ゆでたて&蒸したての餃子がすぐに運ばれてくる。 厨房の中はまるで中国の餃子専門店そのもの。 餡たっぷりで皮は薄め。「薄皮大餡」な餃子を特製だれで召し上がれ 餃子の種類は約30種類。餡は、牛肉×大根、羊肉×香菜×白菜、牛肉×玉葱、鶏肉×ニラ×トウモロコシ、羊肉×ニンジン、豚肉×蓮根、豚肉×香菜、豚肉×フェンネル、豚肉×ピーマンなど実に多彩で、これだ
中国料理で最もよく使われる食材はなにか。それは恐らく、葱と生姜だ。炒め物、煮物、蒸し物、肉の下ゆでなど、多くの料理において、葱と生姜は縁の下の力持ちである。 ゆで湯に入れて肉や魚の臭みをマスキングしたり、炒めて食欲をそそる香りをつけたり、葱と生姜はいつも主役の引き立て役だ。しかし、この2つが主役に躍り出る料理がある。それは、葱油手撕鶏(チキンの葱生姜まみれ:ツォンヨウショウスージー:cōngyóu shǒusījī:葱油手撕鸡)だ。 作り方は実にシンプル。みじん切りの葱、すりおろした生姜に塩と砂糖少々を加え、煙がでるほど熱したピーナッツ油をヂヂヂーッと注いで香りを立てた葱姜油(ツォンジャンヨウ)をつくり、手で裂いた鶏肉を和えるというただそれだけなのだが、恐ろしくおいしい。 葱姜油(ツォンジャンヨウ)。葱、生姜、ピーナッツ油でつくる。白葱でもOKだ。 そもそも葱油手撕鶏(鶏の葱生姜まみれ)の
おいしそうな惣菜がずらりと並んだ台の上から、その日の気分で自分の食べたいおかずを選び、自分だけのお弁当や定食が作れる店。台湾の街中で、こうした飲食店を見たことはありませんか? これは台湾では自助餐(ズジュツァン|zìzhùcān)と呼ばれる飲食店のスタイル。自助餐の「自助」はセルフサービス、「餐」はごはんや食事の意味で、自分で料理を選ぶ食べ放題の店も、この自助餐に含まれます。 台北の自助餐。おかずがずらりと並んだ台。目移りして選べないほど!Photo by Takako Sato 台北の自助餐。肉も野菜も魚も!近くにあったら毎日通ってしまいそう。Photo by Takako Sato 台湾の自助餐。バットの上にお皿が乗っているのがいかにも台湾らしいですね。Photo by Yuka ここ数年間で、日本には魯肉飯、鶏肉飯、台湾料理の弁当を食べられる店がだいぶ増えましたが、ありそうでなかった
中国で食べ歩きをしていると、日本では見たこともない珍しい食材によく出会う。それは実に刺激的な体験だが、それと同じくらい刺激的なのが、よく知っているはずの食材が意外な形で食べられているところに出会ったときだ。 この連載では、「ところ変われば食べ方も変わる。知っている食材の意外な姿!」をテーマに、中国各地で出会った様々な料理をご紹介していく。最終回の今回は、ミント(中国語では、薄荷)についてお送りしたい。 ライター:酒徒(しゅと) 中華料理愛好家。初中国で本場の中華料理に魅入られてから四半世紀、中国各地の食べ歩きがライフワーク。北京・広州・上海に10年間在住し、帰国後は本場で覚えた本格中華料理レシピをnoteや各種SNSで紹介。2023年10月19日に初の著書『あたらしい家中華』を刊行。 X(旧Twitter)@shutozennin note https://note.com/chiji
丸鶏料理というと、手間暇かけて作るご馳走といったイメージがある。しかし実際のところ、丸鶏を使えば、手間をかけなくても、ほったらかしでもおいしい料理を作ることができる。 なかでも中国家庭料理において、特におすすめしたい丸鶏料理が清燉鶏(チンドゥンジー|qīng dùn jī|清炖鸡|※清燉全鶏・清炖全鸡とも)、丸鶏のスープ煮込みだ。 この料理は、調理道具はほぼ使わない。鍋ひとつででき、難しい工程は一切不要。鶏ガラやひき肉でも鶏のスープはとれるが、丸鶏を煮てとった鶏スープの、まあるくふくよかでしっかりとしたうまみといったら、スープを飲むたび「おお…」「ふぁ…」「んん…」「あぁ…」しか言葉が出ない。 もちろん、そこにしっとりと火の通った鶏肉がついてくるのだから、ひとつで二度おいしいというか、鶏肉を満喫するのにこれ以上の料理はない。 そんな清燉鶏(チンドゥンジー)に必要なものはおいしい鶏肉。むしろ
ここ数年、日本では魯肉飯の知名度がうなぎのぼり。台湾料理店でなくてもランチで見かけるようになりました。一方、台湾ではよく知られているのに、日本であまり知名度がないごはんものが鶏肉飯(雞肉飯|ジーロウファン|北京語:jīròufàn|台湾語:ke-bah-pn̄g)です。 こういってはなんですが、見た目はかなり地味な鶏肉飯。しかし、ひと口食べてみると、予想外に「美味しい…!」が押し寄せてきます。 しっとりと火を入れた鶏肉に、油葱酥 (ヨウツォンスー|yóucōngsū|揚げエシャロット)と、鶏油の効いたタレがかかった鶏肉は、香ばしく、それでいてしつこくなく、一度この味を知ったらまた食べたくなってしまうはず。 同じ台湾のごはんものでも、豚肉を使った魯肉飯はこってりしていますが、鶏肉飯は比較的あっさりしているので罪悪感がなくていいですね。 台北晴光市場「嘉義雞肉飯」の鶏肉飯(写真提供:mitsu
<ポイント>卵の生臭みを消すために、生姜は使わず、黄酒(紹興酒)を加える。卵は香りが立ち上るまでたっぷりの油で加熱する。トマトは具を兼ねた調味料とするため、水加えて軽く煮て、片栗粉を少々加え、加熱した卵に絡めるように炒める。 ①にんにく、白ねぎをみじん切りにする。 左が白ねぎ、右がにんにく。 香りづけの薬味には、にんにくと白ねぎを使う。中華料理は何かとしょうがを使うが、この料理に関して、李さんはしょうがを使わない。なぜなら「しょうがを使うと“蟹の味”になってしまう」という。 「蟹⁉」と思うかもしれないが、卵と生姜の組み合わせは、たしかに蟹を思わせる要素がある。例を挙げると、西太后のために作られた宮廷料理、賽螃蟹(サイパンシェ)は、鶏卵に生姜を効かせ、蟹のような味わいを出した料理として知られる。 また、秋冬の風物詩、上海蟹を使った料理で、蟹味噌の生臭みを消すためにしょうがを合わせるあの感じ…
「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざがあります。 この解釈には「おいしい秋なすを嫁に食べさせてはもったいない」という説や、「秋なすはおいしいので、嫁が食べ過ぎると身体を冷やしてしまうから気を付けよ」などさまざまありますが、いずれにせよ秋茄子はおいしい。そんなイメージがありますよね。 事実、秋なすは夏に収穫されるなすとはちょっと違います。まず、夏のギラギラした日差しが弱まるため、皮が軟らかく、水分が多くて瑞々しい。さらに昼夜の寒暖差がでて、うまみや甘みがでやすいといわれます。 今回はそんな秋なすを使って、レンチンで手軽にできる四川風の中華おつまみ兼おかず、四川風なすの肉巻きをご紹介しましょう。 都内スーパーにて購入。 甜醤油と辣油が香る!四川料理の定番の前菜・雲白肉(うんぱいろう)インスパイア 四川風なすの肉巻きのベースになっているのは、四川料理の定番の前菜、雲白肉(うんぱいろう:云白肉:
この味を覚えたら後戻りできない!魅惑のトマたま麺 どちらかというと、卵よりもトマト優勢のトマト卵炒めに仕立てるのが英英(インイン)式。このまま食べてもトマトのうまみがしっかりとしてたいへん美味なのだが、麺と食べるとその相性に悶絶する。 とはいえ、麺は一般家庭で自作する人は少ないと思うので、ここでは店での作り方をご紹介し、想像を膨らませていただこう。 店では麺片子(短冊形の麺)や爆竹麺(爆竹型の麺)など数種類から好みの麺をリクエストできるが、おすすめはラグメン。下の写真は生地を延ばす前のラグメンだ。1本30gずつ棒状にして、油を塗って、くっつかないように整えてある。 これを手に「じゃ、やるよ!」といったら、数秒でびよーんと麺が伸びる伸びる! 延ばしてたたんで、ペシペシ!と打ち付けたら… ハイできあがり!できたら鍋の中に投入し、ゆで上げた麺を皿に盛る。 こちら、一連の動画でもどうぞ! こうして
<ポイント>中国料理定番の薬味3種類に、生トマト、水煮トマト、砂糖、水を加え、香りとコクを立たせた「食べるトマトソース」をつくる。卵はたっぷりの油でふんわりとまとめ、一度取り出してトマトソースで軽く煮るように仕立てる。 ①にんにく、しょうが、白ねぎをみじん切りにする。 まずは中国料理定番の薬味、にんにく、しょうが、白ねぎを、それぞれみじん切りにする。 にんにくは叩き潰さなくてもいいのか聞いてみると「きゅうりの和え物のように、香りを立てる必要がある料理の場合は叩くけど、この料理は叩かなくていいよ」とのこと。 ②トマトを小さめの乱切りにする。 ヘタを取り除いた後、1個を10片を目安にカットする。同じ10片に切るにも、串切りだと薄過ぎて加熱するとほぼ崩れてしまうし、角切りにすると食べる時にスッと口に入らない。 このような乱切りにすると、炒めたときにしなっと軟らかくなる部分と、食感が残る部分の両方
中国14億人の胃袋を満たす最強の家庭料理 中国の一般家庭で、ほぼどの地域でも作られている料理といえば、トマトと卵の炒めもの(西紅柿炒鶏蛋|西红柿炒鸡蛋)だろう。広大な中国は、地域によって主食が異なり、味付けもガラリと変わるが、トマトと卵は大陸のどこでも手に入りやすい食材で作れるとあって、中国人ならだれでも知っている料理といえる。 とはいえ、どこも同じかというとそうではない。砂糖を入れる派、にんにくを入れる派、炒めてから取り出す派など、細かく見るとそれぞれにこだわりがある。そんななか、見た目でわかる最も大きな違いは「つゆだく」か「つゆなし」かである。 つゆだくORつゆなし、どっちが好き? 「つゆだく」は、たっぷりのトマト汁の中に、炒めた卵と、少々ぐでっとなったトマトが入ったビジュアルがそそる。このタイプは、半分くらい味わったら麺を投入し、セカンドステージを楽しむのが最高of最高。むしろそのた
魯肉飯や小籠包は、日本でもおなじみの台湾の味ですが、もうひとつ、忘れてはいけないのが台湾牛肉麺(台灣牛肉麵)です。牛肉麺というと、中国には甘粛省の蘭州牛肉麺、雲南省の大酥牛肉麺、湖北省の襄陽牛肉麺、広東省の牛腩麺など各地に名物がありますが、台湾の牛肉麺にはどんな特徴があるのでしょうか。 覚えておきたい二つの味。紅焼(ホンシャオ)と清燉(チンドゥン)とは? 中国各地で名物となっている牛肉麺は、味わいの方向性が基本的にひとつであるのに対し、台湾の特徴は、スープの味が何種類かあります。 定番の味は、紅焼(ホンシャオ|hóngshāo)と清燉(チンドゥン|qīngdùn)の2種類。牛骨をベースにスープをしっかりとるのは両者の共通点ですが、紅焼牛肉麺は醤油味に豆板醤やスパイスで風味づけしており、甘じょっぱく、ちょっとスパイシー。清燉牛肉麺はクリアなスープ。生薬が効いているものの、さっぱりとした味わい
日本では、たまごといえば半熟が人気だ。とろとろ、ふわふわは正義であり、癒しである。一方、中国ではたまごにしっかり火を通す。生食の習慣がないからともいえるが、火を通すからこそ際立つ魅力がある。それは香りだ。 とくに、焦げ目がつくまで焼いたたまごは、香りがぐわっと立ちあがる。それはメイラード反応が起きているからだ。 メイラード反応とは、材料に含まれる糖とアミノ化合物が熱されると、メラノイジンという褐色成分を生み出すとともに、さまざまな香りを発することをいう。例えば、肉をフライパンで加熱すると表面が茶色くなり、おいしそうな香り出てくるが、これこそがメイラード反応によるものだ。おいしい茶色、その多くはメイラード反応によるものといっていい。 さらに中国料理の場合、葱やニラなど香りの高い野菜とたまごは定番かつ鉄板の組み合わせである。こうなると、調味料は塩しかいらない。素材から風味も香りも引き出され、余
立春を過ぎたが、寒の戻りで寒い日が続いている。鍋などで温まりたいところだが、鍋の具の定番、白菜を持て余してはいないだろうか。 そこで中国料理の出番だ。中国料理は、野菜をおいしく食べる技の宝庫。白菜ただ一種類でも、主役を張れる料理がある。なかでもすぐ作れて、断トツで白菜を大量に消費できるのが醋溜白菜(ツゥリゥバイツァイ|cùliùbáicài|白菜の黒酢炒め)だ。 たかが白菜4分の1、されど4分の1。 甘酢ととろみは永遠の友達。白菜と酸味は永遠の恋人。 醋溜白菜の醋溜(ツゥリゥ:cùliù)とは、酢の酸味が効いた(=醋)滑らかな食感(=溜)を意味する。味付けは、平たくいうと甘酢の一種だが、酢豚とは違い、甘さよりも酸味が立っている。 このほのかな甘みは重要なポイントで、砂糖の甘味が酸の角を和らげ、ごはんに合うおかずへとがっちりシフトさせている。冷たくて酸っぱい料理は酒のつまみや前菜のイメージだ
羊飼いという言葉は、広大な大地と長い歴史と、異国の風を思わせる。事実、羊飼いは約5,000年前のアナトリア半島(アジア大陸最西部。現在はトルコ共和国のアジア部分)に生まれたといわれ、紀元前からある最も古い職業のひとつだ。 そのせいか「父は内モンゴルの羊飼いです」と言われると、それだけで別世界を感じるのは私だけではあるまい。オーナーシェフのスヨリトさんが、初めて羊を捌いたのは14歳だという。 『草原の料理 スヨリト』の3階の壁には、内モンゴルの風景がペインティングされている。エアコンまで丁寧に塗られており、まさに草原の風が吹く。 生まれた時から羊とともに。羊肉をおいしく食べさせるモンゴル族の知恵 『草原の料理スヨリト』は、中国の内モンゴル自治区烏蘭浩特(ウランホト)出身のスヨリトさんが開いた店だ。 羊飼いであり、料理人でもあった父上の背中を見てこの道を選んだ。現地の調理師学校を卒業した後、初
すすらず飲もう!台湾独自のかつおだし×とろみの世界 かつおだしの効いたとろみのあるスープに、小麦粉と塩でできた極細麺が入った麺線(めんせん|麵線|普通話miàn xiàn|台湾語mī-sòaⁿ)は、台湾の国民食のひとつです。 口当たりのよい、そして箸で持ち上げにくい麺は、レンゲですくって食べるのが定番。牡蠣やモツ、香菜などがとろとろのスープの上にのっていて、小腹を満たすにはぴったり。 見た目からは味を想像しにくい麺線ですが、一口食べるとかつおだしの風味が広がって、日本で育った人ならどこか慣れ親しんだ味に感じるはずです。 台北『藍家割包』の麺線。とろみをまとった麺をレンゲですくっていただきます。 台湾では、この麺線にさまざまな味変要素が用意されています。例えばすり下ろしたにんにく、ウスターソースにも似た味わいの烏酢(ウーツー:酢にスパイスなどを加えた調味酢)、辣醤(唐辛子ペースト)などが定番
羊の丸焼きも夢じゃない!スイカの皮とモンゴルバターが味の決め手 『草原の料理 スヨリト』なら、羊の丸焼きの注文も夢ではない。「地元では15~18kgくらいある生後10か月くらいの羊を丸焼きにしますが、ここではそれほど多くない人数で注文できるよう、10~11kgの仔羊も用意しています」とスヨリトさん。 ちなみに「これくらいの大きさなら、内モンゴル人は4人で食べる」そうだが、店では20人前としている。 48時間の漬け込みの後、ホエイ、ネギ油、モンゴルバターを塗って、土台に固定し、窯に炭火を入れて5時間ほどかけて焼いた仔羊の丸焼き。大きさは10~11kgだ。 その仕込みは3日がかりだ。肉を48時間漬け込むするところから始まり、素材にはトマト、にんじん、セロリ、玉ねぎ、ピーマン、生姜など野菜がたっぷり。中でも目を引くのがスイカの皮だ。 「スイカの皮は、羊の丸焼きをしっとりと焼き上げるのに必要な素材
ツルンと口当たり軽やかで、噛めばモッチリ。食べごたえはしっかりとして、これからの季節にぴったりの中国小吃(軽食)といえば、涼皮(凉皮|リャンピー|liángpí)です。 涼皮は、西安をはじめ陝西省の伝統的かつ代表的な小吃(軽食)のひとつといわれます。主材料は、小麦粉から取り出したデンプンを蒸して麺状に切ったもの(詳しくは3ページ目にて)。これを黒酢やにんにくが入ったたれ、ラー油、きゅうりなどと一緒に混ぜて食べれば、梅雨のジメジメ感も猛暑もなんのその!つるり、ぺろりと食べ切ってしまいます。 日本では、中華物産店のレジ横に平積みされていることが多いので、目にしたこともある方も多いのではないでしょうか。中華料理店の冷菜メニューでも見ることもありますね。 池袋友誼商店レジそばの冷蔵ケースに並ぶリャンピーのパック。 現在、涼皮は陝西省のみならず、中国のより広い地域で食べられており、特に東北地方では「
食べるとぷにゅっとした食感がたまらない肉圓(バーワン|bah-oân ※台湾語)。ジブリ映画の影響もあり、台湾料理のなかでは知名度抜群! 大人気の軽食ですね。 しかし、いったいどうやってこの独特な食感をつくっているのでしょうか。今回は肉圓(バーワン)を深掘りしつつ、都内でおすすめの肉圓が食べられる店、ぷにょぷにょの食感が自宅で再現できるレシピをご紹介します。 肉圓(バーワン)の歴史-福建省泉州から台湾彰化県へ 弾力のあるでんぷんの生地で、豚肉の餡を包んだ肉圓(バーワン)。そのルーツとなる料理は、福建省泉州市の小吃「粉丸(地瓜粉丸)」といわれています。料理が台湾に伝わったのは100年以上前のこと。それが彰化県を中心に独自に進化を遂げ、現在の形になったものと思われます。 「粉丸」は、さつまいもに粘米粉(うるち米の粉)、糯米粉などを加えて生地をつくり、中に肉餡を詰めて団子にし、スープ仕立てで食べ
中国料理FROM天台山!当企画は、2021年にオープンした中国浙江省の山岳リゾートホテル「星野リゾート 嘉助天台(かすけてんだい)」総料理長・山口祐介さんの中国食探訪記です。仏教の聖地・天台山から、ここに住み、食を生業として働く料理人の目線で見た《中国の食》をご紹介します。★1回目から読む方はこちらからどうぞ! 豚バラ肉をじっくり煮込み、プルプルの食感がたまらない杭州名菜・東坡肉(トンポーロウ)と、一口大の肉塊にうまみの凝縮した中国全国区のおかず・紅焼肉(ホンシャオロウ)。 前編では、同じ角煮といっても似て非なる両者の特徴をご紹介しましたが、この後編ではそれぞれの作り方をご紹介します。これを読めば、あなたも角煮名人に! ▶前編から読む:中国二大「豚の角煮」の違いに迫る!東坡肉(トンポーロウ)と紅焼肉(ホンシャオロウ)|山口祐介の江南食巡り④ 水は使わず紹興酒で煮込む!本場杭州の東坡肉(トン
「天上龙肉,地上驴肉(天上龍肉,地上驢肉)」。中国では、その美味しさを「天上には龍の肉あり、地上には驢馬の肉あり」と讃えられる、ロバ肉。 調理法は、炒め、煮込み、鍋などさまざまありますが、特に人気が高いロバ肉料理といえば驢肉火焼(ロバ肉バーガーまたはロバ肉サンド:リュロウフォシャオ:驴肉火烧:lǘròuhuǒshāo)です。 「天上龙肉,地上驴肉」とキャッチコピーに書かれた広東省広州市のロバ肉バーガー店(2019年7月撮影)。photo by Tsutomu Kosugi 北京郊外にあるロバ肉専門店のメニュー。推しはロバ肉バーガー(2016年4月撮影)。photo by サトタカ 北京郊外にあるロバ肉専門店のロバ肉バーガー。肉の部位が選べる。(2016年4月撮影)。photo by サトタカ 甘粛省敦煌のロバ肉専門店に貼ってあったロバ肉料理のポスター。ここでは「天上的龙肉,地上的驴肉」とい
中国料理FROM天台山!当企画は、2021年にオープンした中国浙江省の山岳リゾートホテル「星野リゾート 嘉助天台(かすけてんだい)」総料理長・山口祐介さんの中国食探訪記です。仏教の聖地・天台山から、ここに住み、食を生業として働く料理人の目線で見た《中国の食》をご紹介します。★1回目から読む方はこちらからどうぞ! ★福建の旅前編「海鮮が呼んでいる!長崎ちゃんぽんのルーツに出会う福建省福清市」から読む方はこちらからどうぞ。 中国料理で、圧倒的に贅を尽くしたスープといえば佛跳墻(ぶっちょうしょう|fótiàoqiáng|フォーティャオチァン ※佛跳牆の表記もあり)でしょう。 丸みを帯びた壺の中に、干し鮑、ふかひれ、なまこ、魚の浮袋、干し貝柱などの高級乾物がぎっしり。仕込みには何日もかかり、長時間かけて山海の美味から食材のエキスを抽出したスープは、幾重にも旨みが折り重なる贅沢なうまみに満ちています
日本では、焼肉店のシメや盛岡名物のイメージも強い冷麺だが、実は中国料理でも冷麺のファンは少なくない。それは「中国十大面条(中国十大麺)」にも数えられる延吉冷麺(延吉冷面:イェンジーランミェン:yánjílěngmiàn)である。 キリッと冷えた甘酸っぱい牛スープをゴクリと飲み、細くコシのある麺を啜れば、蒸し暑い夏でも脳天までスッキリ。冷麺醤(냉면장:ネンミョンジャン)などと呼ばれる唐辛子と香味野菜のペーストをスープに溶かせば、コクと辛さがみるみる広がり、さらなる奥行きが感じられるのも味わい深い。きっと、韓国料理店で水冷麺(물냉면:ムルネンミョン)を食べ慣れた人からすると「こんな冷麺もあったのか!」と思うはずだ。 そんな延吉冷麺の故郷は中国東北地方にある。省の南方をロシアおよび北朝鮮と接する吉林省(きつりんしょう)だ。 なかでも延辺朝鮮族自治州(연변조선족자치주)はそのメッカ。南方約522.
「池袋で中華を食べよう」となると、まず足が向かうのは池袋駅駅西口から北口エリア。 これまで80C(ハオチー)で紹介してきた店の中でも、冒菜定食の『蜀簽(しょくせん)』、ドクダミ料理を紹介した『品品香(ピンピンシャン)」』、ハラル中華『阿麗婭(アリヤ)』、煎餅果子も出している『串串香麻辣湯』や『阿蘇米線』 、肉まんがおいしい『章記点心』 といったように、このエリアには多くの魅力ある中華料理店が登場。 しかし最近は、東口も中華が熱い!『四川魚料理 蜀魚記(しょくうおき)』は、新たな“熱”の発源地として、池袋東口での存在感をじわじわ大きくしています。 多彩な四川の魚料理を調理するのは、都内の四川料理店などで腕を振るってきた5人の四川人厨師(料理人)。料理長は、2019年10月「麻哥麺(マーゴーめん)」で80C(ハオチー)に登場した、馬さんです! 3月15日のプレオープンから、いち早く情報をキャッ
中華圏では、同じ調理法による料理や食材でも、地域や民族よって呼び名が変わることも多々。特に繁体字を使用する台湾や香港は、大陸の食文化とはまた違った美味の世界が広がっています。2022年から新たに始まるはっしーさんの記事では、そんな繁体字文化圏の食文化を中心にご紹介していきます。 TEXT&PHOTO:はっしー 学生時代に中華圏の近代史を学び、中華POPSを愛聴。上海および香港在住を経て、現在は日本在住。中華料理は食べる専門だったのが、作るほうにも目を向けるようになったのはここ数年。上海界隈から南の沿岸部、香港、マカオ、台湾の味が好み。 中華圏のおやつ「豆花(トウファ)」とは? 数ある中華おやつの中でも、人気がでてほしいと思う中華おやつが豆花(トウファ)です。想像以上に甘さ控えめで、トッピングは豆類や芋圓(さつまいも団子)など健康的なものが多いのが特徴。私自身、豆花が好きで、なにを隠そう豆花
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