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digitalnagasaki.hatenablog.com
昨日・一昨日に開催した国際シンポジウムで、人文学資料に人工知能技術を応用する研究をしているが発表する場がない(から知りたい)…とおっしゃっている人がいたので、改めてそういうことに関する情報をまとめておきます。 まず、分野名としては、国際的にはデジタル・ヒューマニティーズと呼ばれるもので、日本ではこのカタカナ表記以外にもデジタル人文学や人文情報学、文化情報学と呼ばれるものも概ねこの種の研究が対応しています。 ということで、まずは情報処理学会の分科会を見てみると、これに関連しそうな色々な研究領域が存在していて、基本的には査読無しで発表できる研究会を開催しています。なかでも「人文科学とコンピュータ研究会」は、年間3回の査読無し研究会を開催しており、人文系でも幅広く色々な分野の人が集まりますので発表しやすいと思います。もちろん、査読無しの発表ですので評価はそれなりにしかなりませんが、むしろ色々と議
前回記事の続きです。生成 AI が、いつの間にか新しい局面を迎えているように思います。問い合わせをするための文字数制限(正確に言えばトークンの制限)が大幅に増え、問い合わせの際に、前提知識として学術論文数十本、あるいは新書10冊くらいを読み込ませてから回答させることができるようになっています。これまでは「生成 AI が持つ知識」を問い合せる形になっていましたが、これによって、「こちらが持つ知識や情報を生成 AI に考えさせる」ことができるようになりつつあります。この流れがさらに進めば、今まではできなさそうだった有用性を発揮することができるようになるかもしれない、ということで、とりあえず今試せることをちょこちょことやってみています。 で、前回記事をみた人から、J-STAGEからPDFをダウンロードする方法についてのリクエストがありましたので、ちょこっと書いてみます。 生成AIに読み込ませる信
先週末、カリフォルニア大学バークレー校にて、ご招待をいただいて発表をしてきました。AIと仏教研究の未来、というテーマのイベントで、世界中から関連研究者が招待されて発表をしていました。要するに、世界のデジタル仏教研究者が集まって発表をする、という会で、年に数回、こういうことが世界の各地で行われているのですが、私はもうなかでも古株というか古参というか、20年近くこの界隈にコミットしてきております。最近はAIの進展でこの世界も新しい展開を見せつつあり、また新しい人が参入してきています。 イベント自体は、生成AIを作っている話とか使ってみた話とか、そこからAIのあり方や利用方法などについて色々な議論が行われていて、とても面白いものでした。私はと言えば、今回はトリをつとめることになったので、面白いネタを、と思いまして、一つはこれまであちこちで話をしてきた(そしてこのブログでもご紹介している)AI-O
3/15(金)、一橋講堂(千代田区一ツ橋)にて、DHの国際シンポジウム「ビッグデータ時代の文学研究と研究基盤」が開催されます。そこで基調講演をしてくださるTed Underwood先生は、ビッグデータ時代の文学研究に正面から取り組む英文学者として活躍しておられ、2019年、その成果として「Distant Horizons: Digital Evidence and Literary Change」をシカゴ大学出版局から刊行されました。この本の序文は、大変興味深いものであり、膨大なデジタルテキストをにどのように取り組めばよいのか、そして、それによって、人がただ読むだけではうまく見えてこなかった文学の様々な側面、特に文学史やジャンルがどのようにして見えるようになるのか、ということについて、ラディカルな議論と一つの解決の方向性を提示しておられます。本の全体としてはその具体的な方法も示されています
いわゆる「デジタルアーカイブ」があちこちで構築されるようになってずいぶん経ちます。ジャパンサーチが登場したことで、とりあえず構築した後にメタデータを提供すれば、利用者に発見してもらえる可能性も高まってきました。これからますますデジタルアーカイブは増えていくことだろうと期待するところです。 そのようななかで、日頃色々な方々からこの種の事柄についてのご相談をいただき、仕事を増やし過ぎてお返事もなかなかできない状況なので申し訳ないと思っているのですが、ここしばらく、多くの相談に共通することがあるように思って来ましたので、少しその点についてまとめて当方の考え、というか、やっているとそうならざるを得ない…ということについて少し述べておきたいと思います。テーマは、表題のとおり、「「デジタルアーカイブ」構築のロジと専門知識」です。 よりよいデジタルアーカイブを構築したいと思うと、詳しい目録情報が欲しいと
このところ、少しずつ時間をみつけて改良を続けている、「大正新脩大蔵経と他の木版・写本を簡単に比較できる仕組み」ですが、表示を高速化できるように色々工夫を行いまして、割とお待たせせずに表示できるようになりつつあります。 それから、「木版大蔵経の版まるごと」の比較だけでなく、個々の経典の写本や版本でも対比できるように、全体的に枠組みを拡張しました。まずはお試し版ということで、短いけど有名なテキスト『般若波羅蜜多心経』で、フランス国立図書館に所蔵されている敦煌写本ペリオコレクションから2つの写本を組込んでみました。以下の画像で、左上の「大蔵経一覧」のところを選ぶとそれぞれの版と大正新脩大蔵経が表示できるようになっています。 https://sate.dhii.jp/VIEW/ZJK/TID/T0251_.08.0848c04 これらのテキストでは、黄色いマーカーがついていますが、そのうちで、「@
表題の通りのことを実現できましたので、とりあえずこちらにてご報告です。 やや説明が難しいのですが、何ができるように/便利になったのかというと、 「SAT大蔵経DBのテキストをクリックするだけでそれに対応する宮内庁宋版一切經の行や東京大学嘉興蔵の行がそれぞれ拡大表示される」機能が追加された、というものです。(最近はシステムを他の人に作っていただくこともありますが、今回は表示システムの部分は全部自分で作っています) SAT大蔵経DBはこちらです。 そして、この位置合わせを行うにあたって、NDL古典籍OCRで生成したテキストデータが非常に役立った、ということなのです。 例として、以下のURLで表示可能な経典を用いてみます。 21dzk.l.u-tokyo.ac.jp 先に具体的な使い方をご説明しますと、今回、下記のところに新たにチェックボックスが2つ追加されました。 たとえば、上記のように「宮内
デジタルアーカイブのためのプログラミングレッスン、ということで、国立国会図書館のNDLデジタルコレクションを対象として、主にIIIFのデータを扱うことを目指した基礎的なプログラミングレッスンの教材を作成中です。ようやく第7回を追加しました。ここまでの繰り返しになって恐縮ですが… バリバリの研究にすぐに役立つ手法ではないのですが、むしろ、色々さらっと調べてヒントを得たいとか、研究支援的な仕事などには応用できることがあるのではないかと思います。 また、これですべてできるようになるというわけではありませんが、入口として試してみていただいて、そこからプログラミングの基本に立ち返っていただいたり、モチベーションを高めたりするきっかけにしていただけますと幸いです。 「こういうことに役立った」というようなことがありましたら、ぜひお知らせいただけますと幸いです。 なお、以下のリンクはGoogle Cola
デジタルデータはなくなってしまいやすい…という話を時々耳にします。実のところ、紙媒体と同じくらいの手間をかけてよいのであればデジタルデータの持続可能性は十分に高いと思うのですが、そうだとしても、よりよくきちんと長期保存するためには何らかのルールを作っておいた方が安全です。というのは、なくならないけど読めなくなった、とか、読めるけど誰がいつ作ったものかはよくわからない、膨大過ぎてもう何がなんだかわからない…等々、保存しておくだけでは済まない落とし穴が色々あるからです。これも紙媒体と共通する事項が多いので、紙媒体でどうしてきたかということを確認しながら考えるのはとても重要なのですが、やはりデジタルに固有の課題もありますので、紙媒体での事情を踏まえつつデジタル媒体の特性もきちんと押さえた保存のための手続きのようなものがあるとありがたいところです。 そのような課題については、すでにOAIS参照モデ
このたび、一般財団法人人文情報学研究所より、「蔵書印ツールコレクション」が公開されました。 https://seal.dhii.jp/ 構築の経緯など、詳しくは「蔵書印ツールコレクションについて https://seal.dhii.jp/about/」をご覧ください。 このツールコレクションの目玉は、18万字の篆字画像を用いたディープラーニングによる篆字画像検索です。篆書で読めない蔵書印を、1文字でも2文字でも、画像で文字検索することで文字単位での確認を支援するものです。文字が確認できたら、そこから今度は蔵書印データベース検索にジャンプすることで、蔵書印そのものの検索もできるようになっています。すでに蔵書印データベースに登録されているものであれば、そこで同じ蔵書印を見つけることができるかもしれません。この使い方に関しては解説動画もありますので、そちらもご覧になるとよいかと思います。 このツ
デジタルアーカイブのためのプログラミングレッスン、というのを少し作成してみています。今のところ、第一回~第四回ができております。 デジタルアーカイブに興味を持ったり、関わったりしているものの、内容面だけでなく技術面からも本格的に取り組もうと思って普通に一からプログラミングを勉強しようとすると、何に役立つのかのイメージを持ちにくくてなかなか気が進まない、という経験をお持ちの方は少なくないと思います。 そんな弱まりがちな気持ちをブーストするために、あるいは、かつてやめてしまったことに再挑戦するために、ちょっと直接的に役立ちそうなプログラミングのレッスンと課題を、まさに実践経験の場からご用意いたしました。第四回までいくと、任意のNDLコンテンツをMiradorやIIIF Curation viewerで直接開くリンクを作成できるようになります。 これですべてできるようになるというわけではありませ
プログラミング言語Pythonは、自然言語処理のライブラリが充実しているので、自分のメインの言語ではなかったのですが、10年くらい前に、授業で教えられるくらいの勉強をして、授業で教えたりしていました。その後、ディープラーニングへの入口として注目されるようになったので、このところは、人に教えるとき、特に若者に教えるときはPythonが基本です。インタラクティブなものを作りたいという人にだけはJavascriptをやりますが、やはり今は猫も杓子もPythonを使えるようになっているのがよいのではないかと思っております。 というわけで、漱石書簡の3つのTEI/XMLファイルに含まれる座標情報をPythonで地図上にプロットできるようになるチュートリアルをGoogle Colabに作ってみました。ご興味がおありの方はぜひ以下のURLにアクセスしてみてください。 colab.research.goo
いま、日本近世研究、とくに文学研究のあたりがすごいことになっています。膨大な国費が投入されて数十万点の日本の歴史的典籍がデジタル化・公開されてしまっていますが、大半は江戸時代の版本のようですね。そして、さらに、そこに書かれたくずし字にOCRをかけたテキストが無料で公開されようとしており、一方で、グーグルが雇用している研究者が、フリーソフトでくずし字OCRソフトやアプリを開発・公開してくれています。さらに、お金があれば、凸版印刷もくずし字のテキスト化をしてくれるそうです。こういった流れを受けて、12月にはイギリスでもThe Digital Turn in Early Modern Japanese Studiesというシンポジウムが開催されるそうです。 実際のところ、そんなこと頼んでないのに…と思っておられる研究者の方々も多いのではないかと思います。が、他の周辺分野からみると、うらやましいと
先週は、イギリスのニューカッスル大学にてTEIカンファレンスが開催されていました。TEI (Text Encoding Initiative)というのは、人文学のためのテキストデータを構築するために1987年から策定され続けている国際的なデファクト標準のガイドラインであり、それを策定する団体のことでもあります。前者をTEIガイドライン、後者をTEI協会(Consortium)と言います。 このTEIガイドラインの詳細については、最近、日本語の解説書『人文学のためのテキストデータ構築入門』(文学通信)が出まして、アマゾンのKindleでも読めますので、よかったらぜひご覧ください。お金を出すのは大変だけどなんとかして読みたいという場合は、公開前提のレビューを執筆してもよいのであれば、「『人文学のためのテキストデータ構築入門』刊行記念レビューキャンペーン」から申込んでいただければ無料で読むことも
すでにあちこちで告知をしておりますが、『人文学のためのテキストデータ構築入門』 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B81SHFBH/ 刊行を記念して、この本を踏まえたTEI入門セミナーを開催します。 このイベントは、参加費無料・要申込みです。 今回は、『人文学の…データ構築入門』の第一部、第二部のうち、TEIガイドラインに関する部分を中心にしてセミナーを実施します。Transkribusの話はしませんので、あらかじめご了承ください。 予定している内容は大体以下の通りです。 10:00-11:30 人文学のためのテキストデータ構築とTEIガイドライン 12:30-14:30 TEIガイドライン実践演習 14:45-16:15 続: TEIガイドライン実践演習 16:30-17:15 Susan Schreibman先生によるVersioning Machineに関す
京都大学高等教育研究開発推進センターが9月末に廃止されることに伴い、「京都大学オープンコースウェア(OCW)」が閉鎖されるというニュースに接した。実際のところ、これがその後どうなるのかはわからないが、現在知らされている範囲では、とにかくなくなってしまうようだ。 基本的に、Webコンテンツの持続可能性について、私は、「とにかく再利用可能なライセンスをつけておけば存続できる」という点を大切にしているのだが、それは必ずしもうまくいかない面がある。貴重資料の画像で、それにメタデータを付与して一緒に流通させ、ハッシュでデータの改ざん可能性を管理したりすれば、さらに、そもそもIPFSでなんとかすれば、と考えたりしつつ色々なことを試しているのだが、しかし、オープンコースウェアの場合、またちょっと話が変わってくる。オープンコースウェアは基本的になまものの教育コンテンツを志向するものであり、それ単体で価値を
https://bungaku-report.com/blog/2022/07/tei1.html 初めての日本語によるTEIガイドラインの入門書が刊行されました。『人文学のためのテキストデータ構築入門』[1]というタイトルで、株式会社文学通信によるものです。TEI ガイドラインは、人文学のためのテキストデータ構築におけるデファクト標準として国際的に普及しており、とくに欧米先進国ではこれに準拠したテキストデータの膨大な蓄積があるが、日本語文化圏においては諸般の事情により普及が進んでいなかったものです。日本語文化圏でも、TEI ガイドラインに取り組むにあたっては Web に様々な情報が各所に蓄積されて点在しており、検索すれば必要な情報は大体集まる形になっていました。とはいえ、Web の海に浮かぶそれらは、論文であったり、Web コラボレーションシステムに組み込まれたサイトであったり、英語で書
正規表現検索といえば、テキスト検索に凝ってる人なら知っているけど、そうでもない人は「何それ?」という感じだと思います。 人文系とか質的研究で電子テキストも扱うことがある社会科学系の人は、絶対に知っていた方がよい技術です、が、そう言われても、「何ができるか」わからないとやる気は全然出てこないと思います。ここで 良いあんばいのツールとして登場したのがNDL Ngram viewerの正規表現検索機能です。 lab.ndl.go.jp 正規表現の「.」を試してみる たとえば、「..新聞」で検索すると、「○○新聞」という検索をしてくれます。 そうすると、以下のように、○○新聞で、数十万冊の明治大正期の資料をざくっと数えてきてくれて、 さらに、新聞ごとにカウントしてグラフにしてくれます。 「正規表現」での検索というのは、「○○新聞」で検索してくれるところまでで、 そのあと分類してカウントしてくれるの
いわゆる10兆円ファンドの運用主体としてますます注目を浴びる科学技術振興機構(JST)が、最近、プレプリントサーバの運用を開始したそうです。その名もJxiv。すでに海外にいくつか著名なプレプリントサーバがあり、国内でも筑波大学が筑波大学ゲートウェイというプレプリントサービスを含む包括的なサービスを開始していることもあり、どういったところで個性や存在意義を打ち出していくのか、気になるところです。とりあえず「誰でも投稿できる」「日本語論文でも大丈夫」「人文系でも大丈夫」というのが特徴になるような印象を持ちました。(間違っていたら申し訳ありません) プレプリントサーバは、サイエンスの崇高な理念を体現する存在であり、オープン性を踏まえた知識循環の基盤となるものと認識していたところであり、また、それゆえに、そのラディカルなオープン性に親和性が高くない分野やワークフローなどにはちょっと縁遠いものかもし
標題の件につき、少し頭を整理するためにメモを残しておく。多分これが本来的なブログの使い方なのではないかと思うので、情報収集したい人にはあまり有益ではないかもしれず申し訳ないがご容赦いただきたい。 テキストデータベースを作る、という取組みは、テキスト研究をしているとどうしても関心を持たざるを得ない。もちろん、 テキストとして書かれたものだけを対象としたところで人間文化の何が明らかにできるのだろうか、という立場もあるとは 思うのだが、テキストほどに高度に集約的で持続性も高い情報伝達手段はなかなかないので、一定の有用性は認めてよいのでは ないかと思っている。 一方で、テキストは、Unicodeなどの文字コードに準拠して並べていけば割と高度な処理が比較的容易に可能となるので、 テキストデータベースをどういう風に作っていくかということは結構重要なのである。 もちろん、Unicodeなどが出てくる以前
今度の土曜日、1/22に、日本学術会議の公開シンポジウム「総合知創出に向けた人文・社会科学のデジタル研究基盤構築の現在」が開催されます。 日本学術会議には「分野別委員会」があり、それぞれの委員会が分科会を設置して特定のテーマについて議論します。多くの分科会は 1つの分野別委員会の下で活動をしますが、今期は、心理学・教育学委員会、言語・文学委員会、哲学委員会、社会学委員会、史学委員会、地域研究委員会、情報学委員会の 7つの委員会が合同で「デジタル時代における新しい人文・社会科学に関する分科会」を設置して、デジタル・ヒューマニティーズやデジタル技術を用いた社会科学の現状と課題についての議論を行っています。その活動の一環として開催されるのが、1/22の公開シンポジウムということになります。 プログラムは以下のようになっており、人文・社会科学、なかでも、これまであまり採り上げられてこなかった質的研
最近、サンスクリット写本のデータベースを作りました。といっても、文字起こししたテキストデータベースではなくて、 デジタル画像のデータベースです。世間ではむしろ「デジタルアーカイブ」と言った方が通りがいいでしょうか。 一人で作ったわけではなくて、メタデータを作ってくださった人と、デジタル画像を撮影してくださった企業、 撮影された画像を検品してくださった人、撮影等の費用を捻出するために助成金を取ってくださった人、 その助成金を出してくださった組織、といった色々なステイクホルダーがあり、また、そういったデジタルに 関することとは別に、この資料を集めてくださった人たち、大事に整理・所蔵してきた図書館の方々、という、 現物に関するステイクホルダーの方々もおられます。 私の役割は、そういった方々の間を回って話をしたり色々作っていただいたりしながら、 現物のサンスクリット写本の「デジタル代理物」としての
※書いていたら長くなってしまったので結論だけ先に書いておきますと、「学術出版社の皆さま、明示的に査読制度を作っていただくとよいと思います」という話を書いております。 研究業績とはどういうものか、ということについて、ずっと考えております。先日はパワポ資料が業績になるかどうか、ちょっと書いてみたところでした。もちろん、業績の「評価」は 評価する主体が基準を決めるものですから、自由に決めてよいのですし、パワポ資料を他のスタイルの研究発表と公平に 評価する基準を作れるのであれば何の問題もありません。個人的には、粗製濫造が可能であり記号の標準化も 不十分なパワポ資料を評価するのはすごく難しいだろうと思いますが、内容に踏み込まずに何がが作られていることさえ 確認できればよいとか、あるいは、altmetricsを評価基準に持込むというようなことであれば結構いけるかもしれないとも思います。 ということで、
科学技術基本法は、しばらく前までは「科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)」という 文言で人文学を除外していましたが、令和3年4月、「科学技術・イノベーション基本法」に変更されて 施行され、これにともない、人文・社会科学が含まれることになりました。今後は、人文学に関しても政策的な 研究事業のある部分はこれに沿って進められることになるようです。いわば、科学研究一般の一部として 学術政策により強く組み込まれることになるのだろうと思っております。 では、人文学はどういう風に組み込まれたのでしょうか? ここでは、筆者がネットで調べられる範囲で、この基本計画にどのように人文学が組み込まれているのかを 関連資料とともにみてみましょう。 内閣府の 第6期科学技術・イノベーション基本計画 の頁にこれまでの経緯や、今回の法改正を受けた基本計画の文書(PDF)などが掲載されています。 全84頁の
少し前に、パワポ資料は研究業績にならないのか、という記事を書きましたが、 最近、以下のツィートを拝見しましたので、今度は、翻訳はどうなのか、ということについて少し思うところを書いてみたいと思います。 いつからでしょう、学術の世界で翻訳が研究者の業績としてカウントされなくなってしまったのは。自分の世代で考えると、サイードやフーコーなどの翻訳がなかったら、多くの英米文学が翻訳で読めなかったら、今の自分はあるのかとか真剣に考えてしまう。翻訳文化は学術の基礎研究のはずなのに。— Yoshiyuki Kido (@ykido66) 2021年8月20日 まず、細かいところに突っ込むようですが、しかしこの種の事柄を検討する上で大事なポイントだと思うので 抑えておきたいのが、 「研究者の業績」を「カウント」するということ自体が、少なくともここで問題になりそうな 人文系においては割と最近のことだったのでは
久々に、いかにもブログらしいという感じの何の役にも立たない記事を書きます。 研究業績はなぜ論文でなければならないのか? ということは自分としては長年の謎の一つでしたが、では、パワポ資料が研究業績だと言われたらどうするだろうか、と 考えてみることにしました。 パワポ資料、研究業績だと言っても悪くないような気がします。ファイルの形式にこだわって内容を見ないなんてナンセンスです!はい終了! …と一瞬思ってしまいそうですが、しかし、これを研究業績として評価しようと思った場合に少し難しさが生じてくるような 気がしてきました。 パワポ資料は自由です。テキストや矢印や図があちこちに登場して、 それがなんとなく重なったりつながったりしながら何かをわかりやすく 伝えようとしてきます。いらすと屋さんのかわいい絵がさらにそれを助けてくれる こともあります。 では、目の前にある素敵なパワポ資料の内容が研究業績に値
筆者は、2000年くらいからTEI (Text Encoding Initiative) ガイドラインの勉強を開始し、デジタルテキストを用いた研究の可能性と課題について、探求と実践を繰り返してきた。デジタル化とは、単にデジタルカメラで撮影してメタデータをつけるだけでなく、全文テキストを作成し、その構造を何らかの方法で機械可読な形で共有することも含んでおり、そのようにすることで、テキストを主に用いるタイプの人文学を大いに振興することができるとともに、テキストを扱う研究の伝統的な営みを未来につなげていくことができる。 一方で、「楽譜」のことは横目に見つつ、いつも気になっていた。音として再現できるようにデジタル化するのは重要だが、それだけでなく、たとえば中世写本において、テキストの内容そのものが重要であるだけでなくそこに含まれる多層的な内容もまた歴史や思想の様々な痕跡の探求に寄与するが故に構造的
(2021/07/06 午前、追記あり) 海外ではデジタル・ヒューマニティーズ(DH)が普及しつつあるのに日本では…という話は最近よく聞きます。 日本でDHについての話題が出ると、人文系のベテラン研究者の方々からは 「しかしデジタルに手を出しても評価されないんだよね…」という話をよく聞きます。 ではそれは 海外ではうまくいっているのかというと、海外でも完璧にうまくいっているわけではなさそうです。 ただ、多くの大学にDHセンターが設置されたり、DHのカリキュラムが提供されるようになったりして、 ポストがかなり増えてきていて、そうすると、そういったところで自分の分野での取り組みが なんらかの形で評価軸を持てるようになれば、そこで自分の分野の若手がポストを確保しやすくなると いった状況は生じるように思います。たとえば、文学や歴史学でデジタルに取り組んでいる人が そういったポストに採用されようと思
今夜は慶應義塾ミュージアム・コモンズのシンポジウム「KeMCo国際シンポジウム|本景——書物文化がつくりだす連想の風景」を 拝聴して勉強させていただいた。 前大英図書館収書・司書部長のクリスチャン・イエンセン氏、トロント大学の中世英文学教授、アレクサンドラ・ギレスピー氏、オクスフォード大学ボドリアン日本研究図書館長のアレッサンドロ・ビアンキ氏という豪華な海外メンバーに加えて、日本からも松田隆美氏、佐々木孝浩氏、徳永聡子氏、という豪華メンバーに加えてディスカッションは本間友氏が仕切るという、慶應大学の盤石さを感じさせる素晴らしい構成のシンポジウムだった。 ベンヤミンのアウラを媒介としてミュージアムと図書館における価値の在り方の違いを明快に示した冒頭のイエンセン氏の講演は、このシンポジウムのみならず、ミュージアム・コモンズや、さらに、議論の場の形成に課題を抱える日本のデジタル・アーカイブにヒン
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