ファッションに多少なりとも興味を持つ身として、この世界の服は中々地獄だ。
多くの人がダサく思われたくない、おしゃれと言わないまでも平均値でいたいと考えているのに、世の中にはそうした需要と相反する服が多い。
何故ならアパレル業界というのは「おしゃれな服」ではなく「売れる服」で回っているからだ。
服を売るためにはまず客の目に留まらなくてはならない。遠目から見てもパッと視界に入る目立つ服でなくては売れ筋にはならない。
服の素材やシルエットよりも、色や柄という要素でまず勝負する必要がある。
着てみたら意外といいな?と思う服よりも、一目でキャッチーだと認識できる服が量販店の店頭の一番いい場所に並んでいる。
しかしそういう服は得てして着こなしが難しい。客の目を惹きつけるのと同様に、それ一枚で印象を決めてしまう服だからだ。
そういう難しさは実際に着てみると客にも理解できるが、そうした服が売られている構造を理解していないので、「ファッションは難しい」という印象だけを残してしまう。
そもそもが難しい服の中から選択を迫られているという自覚が世間の人には無い。
トップスよりボトムスを重視すべきだとか、顔の美醜なんていくらでも小細工が効くみたいな豆知識も誰も解説しない。
量販店にしろショップにしろ、「いかに売るか」が全ての世界だ。
ファッションは誰でも失敗する。どれだけおしゃれな人でも、ワードローブの肥やしになる服というのは存在する。
それを当たり前のこととして次に行くのか、そこで挫けるかだけの違いなのだが、この服の売り方は明らかに基礎を学ぶ妨げになっていると思う。