至高のクォータービュー
のっけからカミングアウトしてしまうが、見下ろし型や横スクロールのシューティングにはあまり魅力を感じない。ただ、なぜかクォータビュー(斜め視点)のシューティングを見るとむずむずしてきて、それがどんな出来栄えのゲームであっても好きにならずにいられなかったりする。クォータビューのシューティングは数が少ないので、実はそれだけでときめきを覚えてしまうのかもしれない。 そういったマニアックな嗜好を差し置いても、本作はクォータービューが持つゲーム性を見事にゲーム化している。面白さと悔しさのあまり、ゲーム中に絶叫したくらいだ(ゲーム中にうるさいのはいつもだが)。かつて別のクォータービューシューティングでも同じことを書いたが、クォータービューのシューティングが好きな人は今すぐ本作を購入していい。そうでない人には、当コーナーに少しだけお付き合いしていただこう。
前菜はFPS
クォータービュークォータービューと連呼しているが、本作はそれだけのゲームではない。まずFPS(自分視点)で敵の戦闘機とドッグファイトする面があって、そこで敵を一定数撃破するとクォータービューのステージに行けるようになっている。
実はこの面もなかなかいい具合なのだ。敵の戦闘機からロックオンされて誘導ミサイルを打ち込まれた時の、生命の危険を伝える甲高い人工音声。喉がカラカラになるような緊迫感と、誘導ミサイルをチャフ(誘導ミサイルを妨害するための防御兵器)で振り切った時の安堵感。言うまでもなく最高だ。ゲーム開始当初は敵機撃破のたびに拳を握ったりするのだが、そのうち冷静なベテラン飛行士のような気分になってくるのもいい。敵を倒した時にちょっとだけ出てくるアイテムもいい味を出していたりする。
なかでも楽しいのがミサイルでの敵戦闘機撃破。最初は敵追尾能力が低いミサイルしかなく、慣れるまではちょっとだけ苦労する。だが、先のステージに進むと、敵戦闘機を一撃で破壊するレーザー兵器や炸裂兵器、さらには敵戦闘機を撃破するまで追い続ける究極誘導ミサイルだの、非実在兵器が山盛りで登場してくるのだ。
こんなに盛りだくさんの内容ではあるが、FPS面はあくまでもメインディッシュ前の前菜なのだ。クォータービュー面での標的や敵兵器の多彩さに比べ、FPS面の敵は1種類の戦闘機だけしか登場しない。それがなによりの証と言えるだろう。
しかし、前菜には前菜なりの役割がある。FPS面における自機のダメージや弾倉は、本作のメインであるクォータビュー面に引き継がれる。だから、プレイヤーは「なるべくノーダメージ&弾を残したい」と考えることになる。わかっていないゲームの場合、やたらと前菜の難易度をあげてしまい、メインディッシュ前にプレイヤーを疲れさせてしまう。
しかし、当然のように本作のFPS面は難易度が控えめに調整され、誘導ミサイルをはじめとする搭載兵器が実に強力な設定になっている。これにより、プレイヤーはストレスなくメインディッシュを味わえるのだ。この「遊ぶ側の心理をわかっている感」が最高だ。
メインディッシュでイェアー
さて、FPS面を突破するといよいよメインのクォータービューである。
で、本題に入る前に質問。縦画面や横画面のシューティングとクォータービュー画面の明確な違いは何でしょうか。
「クォータービューだけがカタカナ!」
おいしい答ですが違います。当コーナー的に望ましい正解は「高低(立体感)があること」。縦画面にせよ横画面にせよ、空間を二次元の世界に切り取った平面的な画面構成である。高低もしくは奥行きはゲーム性から切り離されてしまい、せいぜい演出に使われる程度なのだ。縦画面では地上専用攻撃とかあるけれども、メインのゲームはあくまでも平面上で展開されていく。
そこで本作のクォータービューである。この斜め視点のステージでは、地上物を攻撃することがメインになっている。ここでポイントなのは「地上物に高さと耐久力がある」ことだ。地上物を破壊する前に自機が地上物に激突すれば、もちろん自機は大破する。ちなみに、本作は自機が大破すればミッション失敗となり、再びFPS面からスタートになる。よって、地上物の高さを把握するのはとても重要なのだ。特に手ごわいのが電波発信用の鉄塔。他の地上物と違い、こやつはかなり「高い」のだ。そのため、気をつけないとあっという間に激突する。気をつけていても激突する。っていうかしたんだよ、何回も! この手痛い経験から得たものは、本作は高さにちゃんと意味を持たせているんだなぁという感想でした。
さておき、自機の高さを調整しながら目標の地上物へと向かい、機銃で銃撃したり爆撃したりする。ここでもう1つのポイント、「地上物の耐久力」について話を進めよう。
地上物に機銃を当てるには、基本的にものすごく接近するか逆に遠くから撃つかの2種類しかない。本作の機銃は基本的に斜め下を向いていて、機銃の弾も斜め下へ飛んでいく。ただ、遠くからの銃撃だと地上物に当てるのが難しいし、適当に撃っているような感じがしてあまり面白くないのだ。そのため、本作で地上物を壊す時はたいてい至近距離まで近づくことになる。この距離感が絶妙な調整になっていて、「あーいま自分は地上物を狙い撃ちにして壊しちゃってるぜ、うっへへへ」というシューティングハイみたいな感覚を味わえるのだ。
しかも、嬉しいことにその感覚は何回も味わえる。地上物には耐久度が設定されていて、ちょっと弾を当てたくらいじゃ本作の地上物は壊れないからだ。壊せなかった地上物を上昇か左右への迂回で避け、大きく回りこみながら目標の地上物へ再び近づいていく。目標にたどりつくのにいったん離れ、さらに旋回して戻ってこなければならないというじれったさ。自機を旋回させるための十字ボタン操作にも力が入ってしまう。これは縦や横画面の強制スクロールシューティングでは絶対にありえない。ゲーム性の根本から違っちゃっているのだ。旋回しつつ上下に機体を振っちゃったりするのも楽しいし、本来の目標に戻らず離れた位置にある目標を破壊するのも最高だ。まさにクォータービューかつ任意スクロールシューティングならではのゲーム性である。うまいこと地上物を配置して、プレイヤーの心をあおりまくりなのだ。
しかも、本作の制作者はさらにプレイヤーを煽情的にさせる仕掛けを用意していた。地上物を壊した時、自機の耐久度やエネルギーを回復したり、ミサイルの弾数を戻してくれるアイテムをぽわっと出現させるのだ。場所は破壊した地上物の真上あたり。そのアイテムを取るにも、再び旋回して地上物があった壱に戻ってこなければならないのだ。さらに、そのアイテムはふわふわと飛んでいるため、取り逃がしたりすることもある。アイテムはだいたい旋回を2回する時間で消えてしまう。それゆえ、消える前に何としても取らなければ! という意気込みと、アイテムからさえも離れなければならないじれったさが入り交じり、もうなんというかさんざんじらされてしまうのである。散々じらされたあとのアイテム取得が嬉しいのは言うまでもない。本作の制作者は本当にじらし上手なのだ。
基地から森から港まで
目標の地上物へ近づくまでに、トーチカや高射砲といった地上兵器やトラックや戦車がどかどか攻撃を浴びせてくる。さらにFPS面でドッグファイトを繰り広げた戦闘機や、戦闘ヘリなんかも自機へ襲いかかってくるわけだ。やっぱ敵だらけの戦場に単機突入って最高だよねッ!
もちろん地上物へ近づく時だけでなくまわりこむ時も襲撃されるわけだが、それらに加えて壊さなくてもいい地上物も登場してくる。その地上物がまた厄介で、目標の地上物のまわりを取り囲むように配置されているのだ。よって、安直に地面近くを飛ぶと余計な地上物に激突してしまう。目標までは一定の高度を保ち、目標を見つけたら急降下攻撃! そのうち目標と関係ない地上物も攻撃しはじめたりすれば、すっかりあなたもエイセスジャンキーである。
地上物地上物と散々書いているけれども、海が舞台の面もある。港の撃破から始まって、補給船、巡視船、そして空母と、目標がどんどんパワーアップ! 目標の守りもボリュームアップ! おまけにゲーム全体の面も種類も山ほどあって、飽きることなく目標撃破にいそしめてしまうのだ。
奥行き、高さ、飛翔感。破壊に回避、緊張と緩和。クォータービューを構成する要素すべてが見事に調整された逸品だ。目標の地上物を破壊すると「ヒャッハー」という人工音声が流れる。地上物を壊しまくって、みんなも一緒に歓声をあげまくろう。破壊工作って最高だぜ! イェアー!
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