子供の頃からカメが好きだった。
静岡の町中に連れてってもらうと、必ず西武前の小櫛神社の池に立ち寄り、日向ぼっこしているカメを眺めた。
縁日のゼニガメはよく買ってもらったが、当時はカメの人工餌など田舎の町には売っておらず、結局、餓死させてしまうか、たらいから逃げ出されるかのどっちかで、長く飼ったことはなかった。
ところが、縁というものはあるもので、大学生の頃、下宿の駐輪場でミシシッピアカミミガメの子供を拾った。
ホコリだらけで衰弱していた。周囲に水場もないことから、一体どこからやってきたのか未だに疑問である。
体長7センチほどの子亀。最初は洗面器で飼い始めたが、すぐ逃げ出すので、慌ててプラ水槽を買った。
当時はミシシッピアカミミガメはそれほど敵視されておらず、わりとポピュラーなペットだった。
今は、飼うのも躊躇するけど。
名前は「流星号」と名付けた。
マッハ15のスピードだ(笑)。
なお、現在50際の俺でも、「スーパージェッター」はリアルタイムでは見ていない。
流星号は、よくなつき、手から餌を食べた。時折、水中であくびやくしゃみをして、愛らしかった。
特に病気もせず、3年がすぎた。私も就職して社会人になった。
流星号の体長も15センチほどになり、プラ水槽では手狭になったので、60センチ水槽を買ってやった。
慣れない仕事で疲れた私には、流星号の餌やりが癒やしだった。
転職して静岡にUターンするときには、コッソリ、宅急便の荷物の中に、紛れさせて送った。ごめんよ、黒猫さん。
ところが、実家で1ヶ月ほど過ごしている間に、たらいのフタの隙間から脱走した。
血眼になって庭じゅうを探したが、見つからなかった。
カメ一匹に、いい大人が、なんでこんなに泣けるかというくらい悲しかった。
見かねた母が「カメは水がある場所がわかるというから、たぶん家の前の用水路へ逃げたんだろうねえ。大丈夫だよ、どこかで生きているよ」と慰めてくれた。
その後、私は結婚し、子供が生まれて、子供の教育のためにと金魚やザリガニ、メダカなどの水生生物を飼うようになった。
この頃、インターネットが普及し、飼育の知識やコツも、昔よりも入手しやすくなった。
カメ飼育用の餌や水槽なども、ネット通販で安く買えるようになった。
よし、いつかカメを飼ってやろう!
とおもってはいたが、なかなか踏ん切れなかった。
というのも、カメを飼うというのは、意外と大変なのだ。
まず、糞が凄いので、水換えは頻繁にしなくてはならない。
そして、成長の速度が速い。あっという間に30センチクラスになる。
30センチというと、長さで考えると大したことがないように思えるが、面積体積で考えると結構な迫力だ。
例えるなら、ルンバが水槽の中でうごめいていると考えたらわかりやすいだろう。
んでもって、何と言っても寿命が30年以上ある。
つまり、一生の付き合いになるのだ。
その覚悟がなくて、踏ん切れなかった。
仕事も忙しかったしね。休みなかったし。
ところが、先日、ウォーキングで近くの黒石川のほとりを歩いていたら、大きなミシシッピアカミミガメに出会った。
「もしかして!」と思った。
なぜなら、実家の家の前の用水路は、黒石川と直結している。そのカメを見かけた付近から、さほど離れていない。
大きさからして、25年以上の成体。流星号が生きていたら同じくらいのサイズになっているだろう。
ああ、カメが飼いたい。
野生は無理だから、ペットショップで買うしかない。
今は魚などの生体も通販でも手に入るが、一昨年に法律が改正されて、カメ類は対面販売でなくては売ってはいけないことになった。
ところが、近所のペットショップでは、カメの扱いがない。
しょんぼりして諦めていた時、以前、扱いがなかったペットショップで、なんとクサガメの販売が始まった。
2,000円。やすいのか高いのかわからないけれど……。でも、欲しい。
体長8センチ。ああ、流星号とはじめてであった時とほぼ同じ(実際は、ちょっと大きいな)
こうして、本気でカメを飼うことにした。
名前はもう決まっている。
「流星2号」だ。
- 2017/06/21(水) 00:11:38|
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