菌糸
菌糸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/23 05:58 UTC 版)
担子菌類の菌糸は、子嚢菌類と同じく、はっきりとした隔壁を持ち、細胞単位に分かれている。細胞壁はキチン質である。子のう菌と異なる点は、隔壁の中央に複雑な構造が見られることである。子のう菌では、隔壁の中央には、単に穴が開いているだけであるが、担子菌の場合、この穴の周りが膨らみ、それにふたをするような帽子状の構造があるなど、複雑になっている。また、分類群によってこの部分の構造が異なることも知られている。 また、単独の菌糸が基質上にバラバラに広がる形の他、菌糸が互いによりあうようになった構造を作るものがある。簡単なより集まりの場合、これを菌糸束(きんしそく)と言う。中にはその表面が硬化し、先端部には菌糸の成長部分が並び、一見して種子植物の根のようになったものがあり、これを根状菌糸束という。 接合が行なわれる前の菌糸は一核のみを含むが、接合の後には、それぞれの細胞に2個の核がはいった状態になる。これを二核菌糸、あるいは二次菌糸という。二次菌糸には、菌糸の細胞間の部分にかすがい連結(クランプ・コネクション)というものを生じるので区別できる。これは、菌糸の成長につれ、細胞分裂が起きても、二核状態を維持するためのに生じるものである。二次菌糸の先端が成長し、核が分裂すると、一つの核の分裂面に隔壁を生じ、細胞質が分裂する。すると、片方の細胞には1つの核の分裂で生じた核1つが、もう一つの細胞には残りの核と、もう一方の核が入っていることになる。すると、これに続いてもう1つの核も分裂するが、この時、この分裂は先の隔壁のすぐそばで起こり、その分裂で生じた核は、あらためて隔壁の脇に作られる通路を通って、一つしか核の入っていない細胞に送り込まれる。その結果、細胞分裂終了後も、後で核が送り込まれた通路が、隔壁付近外側のふくらみとして確認できるのである。 担子菌の二核菌糸相は、キノコの中だけでなく、基質上の菌糸にも見られ、その場合も、菌糸の隔壁にはやはりかすがい連結が見られるのでそれとわかる。中にはそのままで分生子を形成するものもある。このようなカビが多細胞の分生子を作る場合、分生子の隔壁にもやはりかすがい連結が出る。二次菌糸の状態で菌糸体の成長が続くのは、担子菌類の特徴なので、これが確認されれば、その菌は担子菌類であるとの判断材料となる。
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「菌糸」の例文・使い方・用例・文例
- いくつかの菌類によってホストで生産される菌糸のマットからなるクッションまたは水膨れに似ている小さな無性子実体
- 分生子を作り出す特殊化された菌糸
- 菌糸組織の固まりでその中か上に有芽胞子構造が組み込まれている
- 菌核または硬くなった菌糸体の塊
- 生きている魚、オタマジャクシや卵を攻撃し、シロキクラゲ病を引き起こす菌類:特に周囲の(ひれのような)部位の白い菌糸の膜
- 地下菌糸体から生じている茎の端のかさからなる細別担子菌類の様々な肥満した菌類の総称
- 菌糸体が多年に渡り地下成長を行う周辺に跡を残す菌類のリング
- 菌類の菌糸を形成する糸のような糸状体
- キノコの生長する部分で糸状になった菌糸の集まりからなる
- さまざまな真菌類の中で、植物性の食物貯蔵体を構成する硬い菌糸の小さくて通常は暗い色の塊
- 海綿状の菌糸で成る付け根に向けて先細る実のなる物体の菌類の属
- 先端のふさの中で胞子を生む単純な前菌糸体を持つクロボキン
- 直接菌糸体で生産され、菌類子実体に集められない白または明るい色の菌糸と胞子を有する単性の菌類
- 黒色の菌糸と分生子柄を持つ不完全菌類
- 菌糸が集まった太い束、菌類の根のような働きをする
- マツタケ属の菌類の総称で、褐色の紐状の菌糸束がリンゴやカエデなどの根に根腐れを起こす原因になる
- 菌糸という,菌類の糸のような細胞
菌糸と同じ種類の言葉
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