学校の階段10 [★★★]
無駄足青春グラフィティ、ついに堂々完結!
ものすごい真っ当な青春モノであり、学園モノであり、部活モノだったと思います。
一年を通じて階段部の面々の成長や考え方の変化が見られたり、恋愛方面も読み始めたよりは大きく変化していますよね。いやしかし、本当にこれで最後だと思うと寂しいです。ちゃんと完結してくれて良かったと思う部分も確かにあるけれど、名残惜しいな。
それでも、ありがとう。大好きだ。
学校の階段 10 (ファミ通文庫)
「勝ちたい。勝たねばならない」刈谷との階段レースに敗れるも、再戦を渇望する幸宏。来るべきそれを確信しつつ、すべての始まりである「あの日」に想いを馳せる刈谷。勝負にこだわるあまり周囲から孤立していく幸宏を気にかける階段部の面々――。
しかし、彼等は知らなかった。2人の決戦に呼応するかのごとく創設以来最大の危機が階段部に迫っていることを……!
ビバ青春の無駄足! すべての『疾走る者たち』に贈る学園グラフィティ、堂々完結!
全てのその「先」へ――! 運命のラストラン!
私がこのシリーズに出会ったのは確か3巻が発売されてたころだったと思います。
そのときは階段走るの? やべえすごくねとか、四姉妹も必要かこれとか無駄な期待感に溢れて黙々と読んでおりました。そしたら意外になかなか熱い部活モノだったので、これまで愛読してきたのでここで完結と。
お話としては三年生の九重先輩と刈谷先輩の両名を含む卒業式、それと「三年生を送る会」を舞台に「階段部包囲網」となる全校生徒が一枚かんだ作戦に、階段部の面々が挑みます。
これには幸宏のクラスメイトでもある吉田と渡辺がメインという名の進行役になっているのですが、まさかこの三人にこんな繋がりがあるとは思いませんでした。そうだったのか、というかそれは素敵なことだ。
そして全校生徒もただ階段部をマジで廃部に追い込もうとしているわけではなく、最後の思い出に階段部と遊びたいという共通理念から生じたものだったんですね。というかこの学校の生徒ほぼ全員ノリいいな! 最後の筋肉部の人たちも見せてくれました。
それぞれが今まで対立し、かつては仲たがいをしてしまった人と、再戦を挑む。
九重先輩は二ノ宮に、井筒は凪原さんに、いずみちゃんは美冬に、三枝は見城さんに、刈谷先輩は遊佐に、そして幸宏は三島さんと御神楽に。確執が取れた各々の向かうところへと、足を進めます。
幸宏よ刈谷先輩のラストレースも大いに盛り上がったと思います。
階段レースでしかみえないその「先」を刈谷先輩はたどり着いたのか、はたまた乗り越えたのかは未知ですが、その「先」を先に行った刈谷先輩はカッコよかった。ショットだったからここは短かったんだけど。
思えば主人公の幸宏はこのシリーズで一番逞しくなったと思います。1巻のあのなよなよしたイメージとは全然違うじゃないですか。こんな精悍な顔つきになって。今回の幸宏はその「先」の不信感と期待感に煽られて大分人に当たっていたイメージが強かったですが、階段部やクラスメイトの人が支えてくれたおかげもあって、最後はやってくれたよ。
たださ、結局は誰を選ぶかまではちゃんとやってほしかった。候補はいずみちゃん、三島さん、御神楽さん、美冬ぐらいか。でも私的にはたぶん美冬にいっちゃいそうな気がするんですが、それはそれでどうなんですかみたいな。やっぱ御神楽さんで。
「階段部、大好きー!」
「「「「「大好きだーっ!」」」」」
階段をいかに速く走れるかを競う、すごいくだらなくてはた迷惑な階段部。
けれどそれに一生懸命な人もいて、惹かれる人間もいるわけで。刈谷先輩が階段レースへ打ち込み始める裏話も非常に興味深いものでしたが、きっかけってほんと些細なものなのですよね。
九重先輩が一緒の大学に行っちゃうんだから、マジで大学でも階段部してそうな予感がします。この二人は最後までいい夫婦でした。
不覚にも最後の集合写真の挿絵でほろりときそうになった。
無事に完結して本当に良かったと思います。感慨深いです。名残惜しいですが、階段部のみんなとはここでお別れ。
非常に青春していていいラノベでした。そんな無駄足青春グラフィティ。全11巻、超オススメです。
ありがとう。
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