原点回帰ウォーカーズ2 [★]
明らかに面白くなっていると思う。
というのも、一巻ではやたらごっちゃごっちゃキャラがいた印象しかなかったんですけど、前巻でやたら目立ってた三奇人のキャラが立ちまくり。特に今回表紙をも勝ち取った、零流小説家の芝蘭さん。というか森田さんが作るキャラと、そのキャラ同士の掛け合いはすごい面白いと思うんだよね。
この2巻で短編集形式になってるけど、今後もこのスタイルでいくのかな……?
原点回帰ウォーカーズ 2 (MF文庫 J も 2-4) (2009/05) 森田 季節 商品詳細を見る |
私立御伽坂学園の最高峰である三奇人の一人にして女子高生小説家の天ノ下芝蘭に、学園のアイドル・新発田が小説対決を挑んできた。「素人の新発田なんかに負けるはずがない」と余裕の芝蘭だったが、勝負の審査方法は全校生徒の投票によるもの、そして生徒のほとんどが新発田のファンという、芝蘭にとって絶対的に不利な内容で――(第一話)。
【神をも召喚する男】渡会竜太朗と【魔道サイエンティスト】物理火燐による因縁の対決再び――(第二話)。
「しばく」先輩・久我原いすみがついに登場――(第三話)。
独特ワールド全開の奇天烈学園ファンタジー第2弾!!
三奇人の矜持と、隠された想いと、見えざる絆――。
この「原点回帰ウォーカーズ」ってタイトルは、1巻のタイムループから来ているんだと勝手に思ってるんですが、2巻ってそういう要素ないよね。それとも3巻以降でやっていく感じなんでしょうか。
それはともかくとして、まさか続刊が出るとは思いませんでしたよ。
前回で主人公のアキラが三奇人とかいう、もうぶっ飛んだ感性をお持ちの芸術家たちがいるんですが、今回はその三奇人を主点に置いたお話が1つあります。それと入れ替え戦で十哲落ちした竜太郎が、自分を蹴落とした物理火燐に再戦を申し込むお話と、「しばく」の久我原先輩とアキラの百合――ではなく、師弟関係っていうのか上下関係(嫌な言い方だな)というか、まあそんなお話。
この3篇でこの2巻は構成されています。短編集っていうか、番外編みたいな?
1話は三奇人のお話でしたね。序盤から「なおきっ!(直木賞受賞)」「あくたが!(芥川賞受賞)」で小説家デビューした零流小説家の天ノ下芝蘭さんが主点。このセンスがいかにも森田季節らしい。
入れ替え戦をかけてジャニーズ系アイドル新発田が芝蘭さんに小説で勝負を挑む。素人相手に余裕かましていたが、新発田は小説ではなく、元々人気で勝とうとしていたことを知って慌てる彼女。しかしそのスランプから自分が書きたいものを見失ってしまい、自暴自棄になってしまうところはなんか親近感湧くというか、私もそういうの目指してるからやっぱ気になっちゃうのよね。
そこに他の三奇人である、鵺子と周参見が遠まわしに励ましにきているところがいいですねー。三奇人ってその才能からプライドの高いやつばかりだから(特に芝蘭さんは)、普段はいがみ合ったり詰ったりする対象なんだけど、二人の不器用な優しさに当てられて立ち直る姿がいいよなー。でも、この三奇人はみんなそれぞれのことを心の片隅で信用してるからこそ、ここまで思い切ったこといえたりするんでしょうね。というか周参見はいいフラグ立てたな。
2話は十哲落ちしら渡会竜太郎が、自分を蹴落とした物理火燐へ呪いをかけるお話。
しかし火燐ちゃんは呪いを受けつけない体質でして、どんな強力な呪文も呪詛のへの河童。しかしその体質のせいで火燐ちゃんは殺し屋の家系である実家から「いらない者」扱いされる。それを知った竜太郎の行動は、なんというか男らしいな。これだけで動機としては十分だと思うんだ。
そしてこの二人がまさかラブ方面にいってしまうとはね。
3話はアキラが彰夫に振り向いてほしさに、惚れ薬なる惚れ香水を使ってしまうお話。
というか久我原さんマジいいわ。私がしばいてほしい。久我原の部下であるアキラのことを、みんなが羨むんだけど、本人は気乗りしないご様子でしたけどね。まああんだけパシられればそうなっちゃいますか。
そしてその薬は女の子にも効果が出るようで、まさかあんな素晴らしい百合を書いてもらえるとは思いませんでした。『ビキニブラの上でカップアイスしゃぶしゃぶ』とか……想像したらものすごくキました。しかも相手が局長とかハイレベルだー! あとへるふぁいあちゃんつええー!
というわけで、超個性的なキャラが面白く動いてくれて満足な一冊です。オススメ。
今回はとにかく芝蘭さんと久我原先輩の無双すぎた気がする。
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