火目の巫女 巻ノ二 [★]
杉井光のデビュー作の二作目。
1巻で続けるところなくねって思ったら、普通に話繋がってました。手堅い和風ファンタジーと言ったところか。しかし設定はすごく堅いのに、サクサク読めてしまうのはやはり杉井さんの技量なんだろうなと思います。
火目の巫女〈巻ノ2〉 (電撃文庫) (2006/05) 杉井 光 商品詳細を見る |
“化生” と呼ばれる魔物から都を守る巫女―― “火目”。
その役目を終えた先代の火目・時子を埋葬する廃火の儀の最中に、時子が化生となり逃亡した。
“火護(ひもり)” 唯一の弓衆となった伊月は、その追跡を開始するのだが……。
巫女たちの成長と戦いを描く、和風ファンタジー・第2弾!
“火目”から“化生”へ。人を射抜く、覚悟――!
1巻があまりにもあんまりな鬱展開だったのに対し、こちらは割と落ち着いて続編書いてるなーという印象。
星の数を下げてはいますが総じてクオリティは高いと思います。ただ1巻のインパクトが強すぎて、なんか物足りなくなった感じがしただけ。これは私だけかもしれませんがね、ええ。
でもやっぱり平安を舞台とした手堅い和風ファンタジーには興味がもてます。この物語の不思議なところはこういう正統派でいかにも「堅い」ファンタジーなんですけど、すごく読みやすいところなんじゃないかなー。もちろん個人差はあると思いますけど、他の人の感想見ている感じだとやっぱり読みやすさが挙げられていたと思います。
化生を使って暴れまくった佳乃を救った――いや、救ってしまった伊月が、佳乃へ必死に歩み寄ろうとするとこはやっぱりぎこちなくなってしまうんですよね。佳乃は自分のことを殺してくれまで言ってるし。でもそれを見捨てられなかった伊月は、彼女を救って良かったのだろうかという葛藤に悩まされながらも徐々にその溝は埋まっていったような気がします。
そして1巻で尊き犠牲となった常和におもかげが重なる茜がものすごく健気。火目の真実を知る伊月はそんな彼女へどう言葉をかけるか、どう接するか悩む。そりゃあそうでしょう。なんせあの事実を前にすれば、正直今すぐにでもやめさせたいはずです。
しかし、そこで簡単にそうはいかせないのがこの物語の救いのなさ。いい意味でバランスが取れていますよね。これはホント見事としかいえない。
この火目の巫女は、そんな痛々しさに淡々としているけど読みやすい文章が重なってクセになってしまう部分があると思います。
そして、いつでも誇りと信念を忘れない<と>組みの頭領と仲間達、そして双葉のあまりに献身的すぎる生き様は読んでいてほろりときそうになってしまいました。気さくなおっちゃんすきーにはたまりませんな。
そろそろ豊日についても語られるのではないかと思う次第です。
面白い。少女達が救いのない中で、僅かな希望に向かって生きるとかそういうの大好き。
あともっと百合百合ってください。主に伊月と佳乃が。
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