

脱兎リベンジ [★★★]
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「宇宙人」と揶揄され、友達もいない内気な高校生・兎田晃吉。軽音楽部に所属する彼の唯一の趣味はギター。文化祭を控えるも、彼にはバンドを組む仲間もなく、イケメン部長・志鷹の嫌がらせで練習場所もない。そんな兎田と偶然出会い、事情と実力を知った漫研の部長・兎毛成結奈は、彼にリベンジを達成させるため、なにやら妙な友達を集め始めるのだが……。軽音部の笑われ者と、漫研の実力者、ふたりの残念な出会いが新しい才能を開花させる! クソッタレな世界をねじ伏せろ!! 第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作!!
間違っているのはこの世界のほうなのだと。そう、青春はこうでなくっちゃ。
僕たちは、何一つ間違っていないのだと。
今はまだ報われないけど、それでも戦うことを止めなければ、いつか必ず勝ち名乗りをあげられるのだと。
それを今、証明しよう。
まず結論から言いますとめちゃくちゃおもしろかったです。この青臭さと終盤の爽快感は抜きん出たものを感じました。
どうにも同レーベルで同じ時期に発売された「寄生彼女サナ」に話題を持って行かれがちでしたが、是非とも読んでいただきたい作品であることは間違いないです。こういうの超好きです。
才能が輝けない世界なんてねじ伏せろ! 全身でこのメッセージを浴びるといいです。
背の低さと声の異常な高さゆえに、クラスからは「宇宙人」と揶揄され続けた主人公・ウサ吉。そんな境遇を自分にはお似合いだと諦観している彼は、あるときたった一人の漫研部員・兎毛成結奈と出会う。お互いの趣味とその実力を赤裸々に明かし、才能を認めながらとある協力関係を結ぶ。埋もれるべきではない才能を、いままでバカにしてきた連中を見返してやる、と。
メインの二人もさることながら、結奈先輩の同級生でこの計画の協力者の皆さんがまた素敵でした。特に乃ノ香先輩がかっこよかったです。かなりクセのある人物たちには間違いないのですが、他でもない彼らがウサ吉の背を押し、数々の妨害にも屈せず立ち向かう姿は熱いのなんの。彼らも各々なんらかの「いわくつきの過去」を抱えているにもかかわらず、ウサ吉にその思いを託しているんですよね。絶対成功させるんだ! って勢いが本当にいい。ストレートにいい。
軽音部の先輩にタンカ切るところはとてもかっこよかった。お膳立ては結奈先輩がしたけど、それでもウサ吉がいままでの自分と決別した瞬間だったと思う。
結末は予想の斜め上をいった感じでしたが、こういう終わり方のほうがたしかに余韻が残りやすそう。
日常はいつも通りに流れる、それでもウサ吉や結奈先輩の中で変わったものがたしかにありました。
ラブ要素はあんまりなかったんだけど、七元リュウの正体に気づくとすごいニヤニヤしてしまった。ああ、そういうことみたいな。
それから、絵師さんの仕事もすごい丁寧で好感が湧きました。白黒絵でのキャラの表情とか特に印象に残ってます。
いやもうホントにおもしろかった。重ねて言いますがおすすめです。
ついったーとかでも散々言いましたが、今年のガガガ大賞で一番おもしろかった。
これを機に手に取ってくれる人が増えればいいなー。続刊はあるかわかりませんが、作者さんの次の作品も買おうと思いました。
素晴らしい青春をありがとうございました。
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