マクロスフロンティア第22話「ノーザン・クロス」感想
ランカはついにバジュラ本星へ。「恋と友情と惑星の運命が交差する、超銀河ラブストーリー!」の「惑星」かな?
地球によく似てるけど、衛星が3つあってさらに低軌道に雲(?)のようなものと鳥の人の紋章(?)のようなものが。バジュラがいなきゃ植民に適してそう。
バジュラ母星。
一方、SMSメンバーの多くが何と海賊になって別行動。
「宇宙怪獣との戦いは単調になるんじゃ?」「異世界や古代文明の謎解きより、人間同士の主義主張のぶつかり合いの方がイメージしやすい」「マクロス世界は船団が沢山あるし、人間同士の戦いとかもっと描けそう」と思っていたら、その通りの展開になってきた。
謎はまだまだ残ってます。強引にまとめるのか、視聴者に判断を投げるのか、やっぱり終了後の展開があるのか。どうも、2クール体制じゃない感じがして…。
制作側はわかって作っているらしい
第19話のミシェル、今回のルカやオズマの台詞から、
- アルトが鈍い。「空を飛びたい」以外にはっきりした目標がなく流されてる
- ランカの行動が突飛
- ルカが大局を見失っている
- オズマや艦長など、大人が妙にカッコよく見える
などは、制作側が意図的にそう描いていると思われます。「記号要素詰め込みではなく、なるべく歳相応の自然なキャラ」という方向性? 吉野弘幸さんインタビューを思い返すとなおさらそう感じる。
だとしたら、キャラ萌え重視の今のアニメでは結構な冒険だと思う。アニメファンも純粋培養が増えてるだろうし(人気属性キャラばかりだと、大局的には衰退するとは思うけど)。ネガティブに捉えるようになった人の感情を覆すのは簡単じゃないよ?
まぁ、マクロスだからこういうキャラ付けが出来たのかも。それに、
- たった10数年しか生きてないのに、善にせよ悪にせよ強烈な目的意識を持っていたり、短期間で『成長』とやらを強いられ目標を持たされたりする
- 現実にはそんな人はごく一部。人は迷い続けるのが当たり前。漠然とやりたい事はあっても定まらず、他人にはっきりしろと言われてもなお迷う
- 温室では明確な目標だの決意だの、そうそう固まらない。生きるか死ぬかのギリギリまで追い詰められて初めて決意出来る
- 強い決意は小賢しい計算や小奇麗な理念よりも、『失いたくない物を守る』『勝ちたい』『生き残りたい』といったプリミティブな感情による事がままある
…といったメッセージをこのマクロスFに込めたなら、納得は出来る。さて、制作側の真の意図はどうなんだろう。
アルトは一般的な主人公じゃない
- × 強い意思で目標に突き進むヒーロー。彼の行動に引かれて世界が変わる
- ○ 彼以外(ランカやシェリルなど)が目標を見つけ物語が進行するのを、助けるキャラ
いわゆる
狂言回しです。こういうキャラが主人公なのは珍しいかと。
第15話でグレイスの仲間が指摘した通り、物語に深く関わってはいるけど特別な存在ではない。
主役に超常の力や目的意識や成長を求める人は結構いそうだけど、アルトは「俺は万能だと思っていたけど、実は全然だった」「漠然とした憧れなんて、現実では大して意味ない事に気づいた」「俺は空を飛びたいだけなのに、何でこんなに振り回されてるんだ?」に見える。…ある意味自然な成長かも。
正直、自分も「アルトが成長してない」と感じていたけど、今ではアルトをあまり責める気にはなれないです。「ストーリー物では、主人公は成長せねばならない」という常識にとらわれていた気がするし。
行動はそんなにおかしくないし、ランカやルカやシェリルをよく助けてます。行動原理が定まってないだけで、決断力と行動力は高い。普通、目の前で敵が人を握り潰してるのに逃げずに戦えるか? 後輩救出に特攻かけられるか? 猛獣に襲われてる女の子を助けにいけるか?
恋愛に疎いしあまり興味ないのに「好かれてるのに気づけ、さっさと決めろ」と非難されるのは、ちょっと不憫。さらに、バジュラの大群に船団が襲われてランカに「歌ってくれ」、シェリルが倒れたら「もう歌わなくていい」というのは当たり前で、逆の事言えよとかエスパーじゃあるまいし…でも、
- 「俺はシェリルのそばにいる!」「シェリルぅぅぅぅぅ!」
- →→「くそーっ!」「何なんだよ一体!」
- 最終話の一番重要な場面で「ランカぁぁぁぁぁ!」
となったなら、アルト総叩きは必至だろうなぁ。「ランカもシェリルもどっちも同じぐらい好きなんだ!」で通せるキャラじゃないし(08/09/30追記:
第25話まで見て、一見あり得なさそうな着地点にも演出次第でうまく持っていける事はわかりました)。まぁ、黙って関連商品を買う大多数のファンの判断待ちではあります。
S.M.Sはなんで海賊になったのか
大人が格好いい作品だと思ってたけど、ワイルダー艦長とオズマさんがやってくれたわぁ。アニメをもう少し自由に作れるなら、こっちが主役でもよかった。全く想像外の展開だったけど、意外に納得出来る。そういや、マクロスプラスも微妙にこんな感じだったような。
ジェフリー艦長と、ランカモンスターのラクガキ。
- オズマとキャシーは命を狙われている
- SMSが解体され新統合軍に吸収される
- レオンは大統領を暗殺したし、今までもおかしな動きがあった。そもそもいけ好かないヤツの下で命を賭けて戦う気にならない
- 市民はレオン新大統領に同調。証拠資料は失われたし、正式な手続きでレオンを追い落とすのは困難
- (人によっては)守りたいものを守るには、フロンティアに留まるのは不都合
- よって、離脱した方がいい
という流れに乗ったのが7割、事情や思惑があって残ったのが3割。クランは反バジュラやミシェルとの思い出、ルカは反バジュラやL.A.Iやナナセ、アルトはシェリルを見捨てられなかったという事でしょう。
あと、この作品は宇宙大航海時代。地球とは移動時間にして年~10年単位で離れ、遠すぎて新統合政府の統制は徐々にきかなくなり、国家は解体されつつあって企業体が国家の真の主役に。
巨大船団で新天地を探すグループもあれば、ボロ船で一攫千金を狙う連中もいる。マクロスクォーターはバイオプラント船じゃないし、サイズも小さめで身軽。
要は、別船団や小規模な移民惑星に行くとか、単独で移民惑星を探すとか、それこそ宇宙海賊を続けるとか、やりようがあるわけ。
といっても、宇宙の彼方に飛び去るんじゃなく、鍵を握ってそうなランカを追いかけて真相を確かめるんだろうけど。
ナナセはやっぱりランカ好きなの?
「ランカ好きと見せかけて、実はアルトを小さい頃から好きだった」と思ってたんだけどなぁ。そこまでひねってはいないのか。病室の油絵は
第11話でナナセが眺めてたのと同じだろうし。
キノコは銀河皇帝になりたいの?
キノコ杉田が妙に小物っぽく見えて、少し残念。銀河の支配者って…もっとこう、すごい事を計画してるのかと思った。それに、待てば次期大統領になれそうなのに。
まぁ、「バジュラが現れた今、大統領になるまで何年も待つ時間が惜しい(作中ですでに半年経過)。バジュラ母星攻略時に権力を掌握している方がいい。銀河の支配者は一人でいい」というスピード感を持ってそうですが。
ただ、「グレイスは始末し、ビルラー氏と手を組む」理屈が今ひとつわからない。グレイスは危険、ビルラーは組し易いと見た?
名言
今回は、ワイルダー艦長とオズマの名言が沢山。
艦長とオズマにはそこそこ目をつけていた立場としても嬉しい。
艦長「諸君、正義を気取るつもりはない。だが我々は、ただ上の命令にのみ従う事をよしとせず、自ら、選択の余地のあるこのS.M.Sに入ったはずだ」「我々は現時刻を持って、兵隊から海賊へ鞍替えする。最初の獲物はこの船だ! いくぞ、野郎ども!」
艦長「皆が右を向いていると、つい左から見直したくなる性分でな」
オズマ「止めたきゃ止めてみろよ。そんな間に合わせの改造をした機体で、俺に勝てるつもりならな!」
オズマ「気に食わんトップのために血を流すのは趣味じゃなくてな。俺の大事な女たちを守るには、これがベストのやり方なのさ」
オズマ「悪いが、俺は大人じゃなくて、男なんだよ!」
オズマ「お前こそ、ただ流されてるんじゃないのか? 状況に! その時々の感情に!」
オズマ「早乙女アルト! お前の翼は何のためにある!」
オズマ「アルト、ランカは自分の道を選んだ。俺も、俺自身の道を選ぶ。お前はどこへ行く?」
…おいおい、いい事言ってんの大人たちばっかりだよ。アルトやルカの方が教科書的でまともではあるんだけど。フツーの作品ならこういう台詞言うのはアルトたちの方だわな。
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