「構図がわかれば絵画がわかる」(その2)

81Ot3U20QIL_SL1500_.jpg 布施英利「構図がわかれば絵画がわかる」の2回目。

昨日の記事の最後に、第7章以降になると、構図というテーマから離れるように思うと書いたけれど、それもおもしろいので書き足すことにした。

まず第7章だが、古代ギリシアの彫刻とインドの彫刻についてひとしきり解説した後、仏像がいつ、どのように誕生したのかについての考察が続く。

釈迦在世中から長く、仏像というものは造られなかった。釈迦の事績をあらわすとき、釈迦自体は光輪のようなもので示され、人の形にはなっていなかった。
著者は、これはその必要がなく、またふさわしくなかったからとする。これらの事績を表すもの(多くの場合はレリーフ)が置かれている場所が仏塔であり、釈迦はその仏塔の中に納められているから、その外に人の形で現れるのはおかしいと考えたからだとする。

初期仏教では仏像がなかったことは私も知っているが、そのことをこのように考えたことはなかった。思うに、偶像を禁止したキリスト教も、ゲルマンやガリアの蛮族を教化する際に、彼らがわかりやすいように、崇める対象としてキリスト像を作ったのと同様ではないだろうか。つまり仏教が広く伝わるにつれ、仏陀も偶像化されたのではないだろうか。

 はじめに
 
Step 1――平面――
 第1章 「点と線」がつくる構図
1、点 /2、垂直線 /3、水平線
 
 第2章 「形」がつくる構図
1、対角線 /2、三角形 /3、円と中心
 
Step 2――奥行き――
 第3章 「空間」がつくる構図
1、一点遠近法 /2、二点遠近法 /3、三点遠近法
 
 第4章 「次元」がつくる構図
1、二次元 /2、三次元 /3、四次元
 
Step 3――光――
 第5章 「光」がつくる構図
1、室内の光 /2、日の光 /3、物質の光
 
 第6章 「色」がつくる構図
1、赤と青 /2、赤と、青と黄色 /3、白と黒
 
Step 4――人体一
 第7章 人体を描く
1、西洋美術史のなかの人体 /2、アジアの仏像 /3、なぜ仏像は誕生したのか
 
 第8章 美術解剖学
1、「体幹の骨格」を解剖する /2、「体肢の骨格」を解剖する /3、人体とバランス
 
 おわりに
本書でもインドのヒンズー教などではなまめかしい神像が作られていたことに触れているが、そうした宗教の信者にとっては、仏陀もまたそうした神として崇めさせることがもっとも手っ取り早い。そうした教団の考えではないかと思う。
もちろんこれは仏教素人の私が言うことだから、本当のところはわからないが。

それはともかく、仏像の誕生に関連して、仏陀(釈迦)の生涯(前世も含む)伝承に多くのページを割いている。

私も子供の頃、仏伝の子供向けまんが本を読んだ憶えがあるけれど、概ねそうした説話である。したがって歴史的に考証されたものではない。

仏教ではどのように教えられるのかを手っ取り早く知るのにはちょうど良いと思った。

もう一つ、構図と全く関係がないわけではないと思うけれど、第8章は美術解剖学となっている。
美術解剖学はWikipediaにも立項があるもので、生物の解剖学的な構造を美術制作(主に具象芸術)に応用するための知識体系だという。
著者の専門はこの美術解剖学で、今までに何体も解剖も行ってきたそうだ。

美術解剖学というものの存在すら知らず、このようなものが体系的知識、すなわち学問として探求されているということには正直驚いた。
人体の骨格や筋肉、場合によっては脂肪が、彫刻で正確に再現されているという評は、ミケランジェロの彫刻などで聴く話だし、レオナルド・ダ・ヴィンチが詳細な人体のスケッチを残していることも知っているけれど、これらは天才の彼らの仕事であり、後世の人たちがそれに習うことがあっても、まさか学問として成立しているとは。
東京芸術大学にはその講座があり、著者はその教授でもある。

美術の勉強って、色彩理論、遠近法理論、そして解剖学と、なかなか学ぶことが多いようだ。

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