ゲーム自分史「1.モノポリー(Monopoly)」
- 2013/11/14
- 07:07
交渉は創造的ゲーム内行為である
いきなりドイツゲームじゃないという、出オチ。
それでも、ボードゲーム/カードゲームと言えば、人生ゲームかトランプ(神経衰弱、ババ抜き、大貧民etc.)かという初心者ゲーマー※1の私からしてみれば、このゲームは大変刺激的なものと映りました。それはひとえに、プレイヤー間の合意に基づいて自由にリソースの移動を許すシステム-交渉の存在です。
ゲームのルールを簡単に説明しましょう。
1周40マスのゲームボードを2D6ですごろく風に巡りながら、
ことで、お金を稼ぐゲームです※2。
ここで土地は、同じ色のもの(各色2枚ないし3枚)全てを揃えると、お金を払って家を建てることが出来るようになります。家を建てると、レンタル料が元の十数ドルというオーダーから、何百ドルという額に跳ね上がります。凄まじいインフレ率です。まさに、アメゲーです。
さて、この同じ色の土地を揃えることを独占[Monopoly]といいます。当然、さいころ運任せでは独占が生じる確率はきわめて低いもの。そこで、交渉が発生するのです。
「あなたが持っている黄色の土地、$700で売ってくれませんかねぇ?黄色の土地の独占がしたいんですよ。」
「あなたが持っている橙色の土地と、私が持っている赤色の土地、交換しませんか?私は橙色の土地を独占できますし、あなたも赤色の土地を独占できますよ。」
などなど。各プレイヤーは土地の独占とその後の家の建設を目指して、手持ちの土地の権利書やお金を元に様々な交渉を繰り広げるわけです。
土地の状況
プレイヤーA:黄、黄、橙
プレイヤーB:赤、赤、黄
プレイヤーC:橙、橙、赤
(黄、橙、赤はいずれも、3枚揃えれば独占になる土地です)
Aは潤沢な資金を持っており、そろそろ黄色の独占を行い、家を建て収入を増やしたいと考えています。周りを見渡すと、Bが黄色の残りの一枚を、Cが橙色の2枚を持っていました。
「Bはどうすれば黄を売ってくれるだろうか?それとも不本意ながらCに2つの橙色を売ってくれるように交渉すべきだろうか…?」
そこではたとAは気付きます。-「こう交渉してみよう」-
A「Cさん、私の持っている橙と、あなたの持っている赤を交換しませんか?」
Cは喜びました。念願の橙の独占が叶うのですから。一も二もなく交渉に乗り、嬉々として家の建設をはじめました。
この時点での土地の状況
プレイヤーA:黄、黄、赤
プレイヤーB:赤、赤、黄
プレイヤーC:橙、橙、橙
そんなCを横目に、Aは続けざまにBに交渉を持ちかけました。
A「Bさん、私の持っている赤と、あなたの持っている黄を交換しませんか?」
なるほど、これによりAは黄を独占できる一方、Bもまた赤を独占できます。Bは交渉に乗ることにしました。こうしてA、Bともそれぞれに黄または赤の独占を果たし、家の建設が開始されました。
最終的な土地の状況
プレイヤーA:黄、黄、黄
プレイヤーB:赤、赤、赤
プレイヤーC:橙、橙、橙
例えば、こんな感じ。独占を実現するために、他プレイヤーが乗ってくれるような内容の交渉を創造していくという。
それまで私は、これほどプレイヤーである自分が能動的に(言い換えれば、ゲームシステムとは独立に、ゲームシステムから強制されることなく)ゲームの状況を動かしていくことができるゲームを知りませんでした。この「交渉」というゲーム内行為の存在は、私にとってのゲーム観に大きな変革をもたらす一大事件であったのです。そうしてこの「交渉」の誕生は、ボードゲーム史上においても大きなブレイクスルーであったと確信します。
とはいえ、モノポリーが本当に世界で初めて交渉というシステムを導入したゲームなのかそこのところ全く分からないので、やはりモノポリーの重要性というのは自分史の中だけのものでしかないのですけれど。
はい、今日はここまで。次は「カタン」の予定ですよ。
※1 嘘つきました。TRPGも、M:tGも既に経験していました。でもむしろそういう経験があったからこそ、ルール的に厳密に規定されるリソースを、このような形でプレイヤー間を移動させるシステムは新鮮だったと言えます。
※2 本当は稼ぐのが目的ではなく、他プレイヤーからレンタル料を巻き上げて自分以外のプレイヤー全員を破産に追い込むのが最終目的です。「稼ぐ」のと「破産させる」のとは全然違うものなんですが、説明の簡略化と言うことでご容赦ください。
※3 この事例は、ゲーム内意味の発見という観点を孕んでいますが、それはまた別の機会ということで。
いきなりドイツゲームじゃないという、出オチ。
それでも、ボードゲーム/カードゲームと言えば、人生ゲームかトランプ(神経衰弱、ババ抜き、大貧民etc.)かという初心者ゲーマー※1の私からしてみれば、このゲームは大変刺激的なものと映りました。それはひとえに、プレイヤー間の合意に基づいて自由にリソースの移動を許すシステム-交渉の存在です。
ゲームのルールを簡単に説明しましょう。
1周40マスのゲームボードを2D6ですごろく風に巡りながら、
- 土地(一部のマスを除き、各マスはプレイヤーが権利を購入できる土地となっている)を買って、その後、その土地に止まったプレイヤーから土地ごとに定められたレンタル料を得る
- 1周することで$200の収入を得る
ことで、お金を稼ぐゲームです※2。
ここで土地は、同じ色のもの(各色2枚ないし3枚)全てを揃えると、お金を払って家を建てることが出来るようになります。家を建てると、レンタル料が元の十数ドルというオーダーから、何百ドルという額に跳ね上がります。凄まじいインフレ率です。まさに、アメゲーです。
さて、この同じ色の土地を揃えることを独占[Monopoly]といいます。当然、さいころ運任せでは独占が生じる確率はきわめて低いもの。そこで、交渉が発生するのです。
「あなたが持っている黄色の土地、$700で売ってくれませんかねぇ?黄色の土地の独占がしたいんですよ。」
「あなたが持っている橙色の土地と、私が持っている赤色の土地、交換しませんか?私は橙色の土地を独占できますし、あなたも赤色の土地を独占できますよ。」
などなど。各プレイヤーは土地の独占とその後の家の建設を目指して、手持ちの土地の権利書やお金を元に様々な交渉を繰り広げるわけです。
土地の状況
プレイヤーA:黄、黄、橙
プレイヤーB:赤、赤、黄
プレイヤーC:橙、橙、赤
(黄、橙、赤はいずれも、3枚揃えれば独占になる土地です)
Aは潤沢な資金を持っており、そろそろ黄色の独占を行い、家を建て収入を増やしたいと考えています。周りを見渡すと、Bが黄色の残りの一枚を、Cが橙色の2枚を持っていました。
「Bはどうすれば黄を売ってくれるだろうか?それとも不本意ながらCに2つの橙色を売ってくれるように交渉すべきだろうか…?」
そこではたとAは気付きます。-「こう交渉してみよう」-
A「Cさん、私の持っている橙と、あなたの持っている赤を交換しませんか?」
Cは喜びました。念願の橙の独占が叶うのですから。一も二もなく交渉に乗り、嬉々として家の建設をはじめました。
この時点での土地の状況
プレイヤーA:黄、黄、赤
プレイヤーB:赤、赤、黄
プレイヤーC:橙、橙、橙
そんなCを横目に、Aは続けざまにBに交渉を持ちかけました。
A「Bさん、私の持っている赤と、あなたの持っている黄を交換しませんか?」
なるほど、これによりAは黄を独占できる一方、Bもまた赤を独占できます。Bは交渉に乗ることにしました。こうしてA、Bともそれぞれに黄または赤の独占を果たし、家の建設が開始されました。
最終的な土地の状況
プレイヤーA:黄、黄、黄
プレイヤーB:赤、赤、赤
プレイヤーC:橙、橙、橙
例えば、こんな感じ。独占を実現するために、他プレイヤーが乗ってくれるような内容の交渉を創造していくという。
それまで私は、これほどプレイヤーである自分が能動的に(言い換えれば、ゲームシステムとは独立に、ゲームシステムから強制されることなく)ゲームの状況を動かしていくことができるゲームを知りませんでした。この「交渉」というゲーム内行為の存在は、私にとってのゲーム観に大きな変革をもたらす一大事件であったのです。そうしてこの「交渉」の誕生は、ボードゲーム史上においても大きなブレイクスルーであったと確信します。
とはいえ、モノポリーが本当に世界で初めて交渉というシステムを導入したゲームなのかそこのところ全く分からないので、やはりモノポリーの重要性というのは自分史の中だけのものでしかないのですけれど。
はい、今日はここまで。次は「カタン」の予定ですよ。
さて、交渉と家の建設で始められずにいたCがサイコロを振ってコマを進める手番を開始します。Cの振ったサイコロので目は5で、赤の土地に止まってしまいました。Cは泣く泣く家を売り、Bにレンタル料を支払います。続くAは7を出して自分の黄色の土地に止まったので何も起こりません。最後に、Bは6を出して、黄の土地に止まってしまいました。家の建設の際に手元に残したお金と、Cから受け取ったレンタル料とで、なんとか家を売ることはせずに済みましたが、Bにとってこれは大きな痛手です。Bは先ほどの交渉でいったい誰が一番得をしたのだろうと考え、Aをちらりと見ました。※3
※1 嘘つきました。TRPGも、M:tGも既に経験していました。でもむしろそういう経験があったからこそ、ルール的に厳密に規定されるリソースを、このような形でプレイヤー間を移動させるシステムは新鮮だったと言えます。
※2 本当は稼ぐのが目的ではなく、他プレイヤーからレンタル料を巻き上げて自分以外のプレイヤー全員を破産に追い込むのが最終目的です。「稼ぐ」のと「破産させる」のとは全然違うものなんですが、説明の簡略化と言うことでご容赦ください。
※3 この事例は、ゲーム内意味の発見という観点を孕んでいますが、それはまた別の機会ということで。