氷菓 第11話「愚者のエンドロール」 感想!
本郷脚本を全部読んでみたい。
三者三様に否定される折木
を、見ているのはかなり辛いものがありました。絶対の自信があった推理を、片っ端から崩されていく。答えが間違っていたことよりも、間違った答えを自信満々に提出していた自分にショックを受けていたことでしょう。
映画はすでに出来上がったのだから、これ以上考えるのは省エネに反する。でもどうしても考えてしまってむしゃくしゃする。折木もとんでもない女性につかまったものだ。「俺は力かもしれない」と自嘲する姿が胸を打ちます。
摩耶花曰く、あの映画にはザイルが出てこなかった。
里志曰く、ホームズの時代に叙述トリックは登場していなかった。本郷がゼロから叙述トリックを編み出す器だとは思えない。
千反田曰く、あの映画から本郷の意思は感じられなかった。
僕は原作既読ですが、千反田のシーンに衝撃を受けました。
入須は本郷と仲のいい江波から、脚本の結末を聞くことができたはずだ。しかしそれができないということは、話すこともままならないような容体なのでは。だとするとおかしい、江波はそんな状態にまで親友を追い詰めたクラスメイトたちに対し、もっと怒るはずだ、案内役なんて引き受けるはずがない……。
映像の破壊力というものは、つくづくすごい。
一瞬だけ映された、本郷の眠る病室のベッドの横にたたずむ江波のシーン。もちろん、そんな事実はない。しかしこの映像が僕に衝撃を与えました。
もし、仮に。本当に、本郷が昏睡状態にまで陥っていたのだとしたら。
映画制作を「興味がなかった」と言い暗いイメージがあるものの、本郷のことになると少し声色を和らげて「私の親友です」と誇らしげな江波が、怒らないはずがない。絶対に、勝手なアドリブで暴走したクラスメイトたちを責め立てる。
その光景を想像してしまい、僕は身が震える思いでした。そんなことがあってはいけない、そんなことがあっては悲しすぎる。
しかしこれは仮定の話で、江波は案内役を引き受けているのだから、本郷の容体は軽度のはず。
ほっと安心してしまいました。千反田の想像力は恐ろしいぜ。
怒れる折木
入須との対決シーン。原作ではそこまで怒っている印象はなかったので、アニメの折木はかなり怖かったw
あんな大声を出したら、店員が飛んでくるのでは。まぁそんな些末な問題は置いといて。
前回の時点で、折木を見事に調子づかせて映画を完成に導いた入須の手腕には舌も尻尾も巻いてしまうところですが、あれだけ感情たっぷりに折木を説得したくせに、心からの言葉ではなかったと。脚本の本郷を助けるために、折木を躍らせ、必要な結果だけを引きずり出したと。
空恐ろしい思いです。結果的に、入須は見事に最善の結果を導き出していますね。
折木が怒るのも無理はないところです。
お前には推理の才能があると言われて、頑張ってみたら、実際に求められていたのはシナリオ能力だった。
実際、折木が今まで披露してきたのは、どちらかというとシナリオ能力なのかもしれません。真実が重要なのではなく、千反田を納得させることが重要。折木は今まで、千反田を納得させるシナリオを用意していた……のだと考えると、この結果はなんとも皮肉に満ち溢れていますね。こんな形で能力を求められても、嬉しくなんてない。胸糞悪いだけです。所詮は盤上の駒だったということなのだから。折木にチェス盤をひっくり返す能力はなかった。
もし折木が、前回の時点で本郷の気持ちまで正確に読み取り、本当の正解を導き出していたなら、逆に大変なことになっていた。
死体発見のシーンから撮り直すことにより映画は完成するかもしれないが、本郷とクラスメイトたちとの関係は確実に悪化します。
ほんと、皮肉にもほどがある。折木が挫折を味わうことにより、2年F組の映画は完成し、本郷が真実を胸の中に秘めておく限りクラス内の関係もそのまま。
でも折木には、面白くない。でも面白くないからって、声を上げることなどできない。
I screamじゃないですが、シャッターに拳を叩きつける折木が可哀想でなりません。余談だけど、ちょっと岡崎と被った。
本郷の脚本
実際の脚本では、トリックらしいトリックなどなく、鴻巣がザイルで控室の窓から侵入して上手袖に入る前の海藤を刺した……と。
まぁ折木の推測でしかありませんが、ここまでは間違っていないでしょうね。
人の死ぬ話が嫌いな本郷は、会議では無効票にされたにも関わらず、脚本で死者を出すつもりはなかった。
最後の千反田のセリフで千反田と本郷がつながって、なかなか気持ちのいい終わり方でした。千反田は「ミステリーをあまり楽しめないのかもしれないと思うまでは読みました」と言っていましたが、人が死ぬのが嫌だったのですね。
理屈とは違う本能の部分で本郷に自分と似たところを感じていた千反田は、全ての探偵役の案を否定していた、と。
千反田は、タロットカードで言うと愚者。
なるほど、では本郷も愚者であるということですね。だから「愚者のエンドロール」。本郷の真意が半分だけでも明かされるこの11話こそが、愚者、つまり本郷の作ったエンドロールである、という少々メタ要素の入ったタイトルでした。米澤穂信はメタフィクションが好きなのかもしれない。
……ハッ!?
ということは、本郷も千反田と同じく、好奇心・行動への衝動・冒険心に溢れているということか!?
いろんなものを見付けてきては江波に「見て見て」「これどうだろう?」と好奇心旺盛にじゃれつく本郷を想像したらなんだか幸せな気分になってきました。
ちなみに、「あ・た・し♪」が「脚本がつまらなかったのがそもそもの~」って言ってたけど、本郷の脚本はトリックがつまらなかっただけで、実際はちゃんと面白かったんじゃないか、なんて僕は思うのです。
中城ではないですが、本郷が重視したのはドラマの方。なぜ鴻巣は犯行に及んだのか、なぜ海藤はそれを許し、自ら密室を作り出したのか。
折木の言う通り本郷が口を開かない限り知り得ない物語で、そして本郷は絶対に口を開かないでしょうから、物語の結末は迷宮入りということになります。
でも、すごく読んでみたい。鴻巣が犯行に及んだ理由、海藤が許した理由。とても面白そうです。映像で表情豊かに描かれていたせいもあって(実際にはあんな演技できないのでしょうけどw)、本当に続きが気になります。
ちなみに、最後の折木と千反田のシーンは、アニメ仕様にいい改変をしてくれました。原作では「L」と「ほうたる」のチャット上の会話でしたが、アニメでは部室。
「では、わたしらしく言ってみましょうか」と折木に質問した千反田が天使すぎるなど、後味のよくない物語の余韻を柔らかなものに変えてくれました。
入須の真意
気になるのは入須です。
特に、「あ・た・し♪」とのチャット。
……タイプするの面倒くせぇな、供恵って書こう。
供恵は「そもそも脚本がつまんなかったのが問題だったんでしょう?」と言っていましたが、それに対する入須の返答は、「私はあのプロジェクトを失敗させるわけにはいかない立場でした」。
どっちとも取れる言い方です。本当につまんなかったから却下したかったのか、本郷を助けるために動いたのか。
原作を読んだ時は判断がつかなかったので、「読者の想像に任せたのかな……?」とも思ったのですが、アニメでは少し描写が追加されていました。「そもそも脚本が~」と言われて、はっと息を飲む入須の描写。
……この描写もいろいろな意味に取れますが、僕は「そんなことはない、私は本郷を助け、そしてプロジェクトを成功させるためにこそ一計を案じた」という意味だと考えたいです。
冷徹で、折木を駒のように使い、結果だけを求めた入須にも、その結果を求めるための動機は必要。その動機くらい、本当に本郷を思いやってのものだったのだと、僕は信じたいです。
前回や第8話の時に見せていた穏やかな表情を嘘だったとは思いたくない。
ついでに僕は、本郷の脚本は面白かったんじゃないかと思っていますからねw
次回
次回からは次の長編、クドリャフカの順番編が始まりますよー!
(たぶん)原作人気一番のお話。僕も大好きです。このお話で僕は摩耶花好きに転びました。アニメは、第2話から摩耶花が可愛くて仕方がないですけどw
ちなみに原作の長編エピソードは、たぶん映像化されない『ふたりの距離の概算』を除けばこのクドリャフカ編を残すのみですが、こんな早くやっていいものだろうか。
京アニサイトをで第14話までのあらすじが公開されていますが、ふむ、14話の話は原作の中ごろ。5話は使うと見ていいでしょう。もしかしたら6話使うかもしれない。
6話使うとして、クライマックスは第17話。残り5話。短編エピソードがあと4つ残っていますが、それぞれに1話当てるとして、残り1話。
オリジナルで埋めればいいとして、でもそうすると最後は短編が連続して終わることに。どういう構成で仕上げてくるんだろう、と、わたし気になっています。
次回予告の映像は、なんかすげぇwktkしちゃうw
千反田がすごく楽しそうです。可愛い。
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アニプレッション「こんなにも面白い『氷菓』の世界 第11話」は、7月3日の夜から深夜にかけて投稿予定です。
(7月4日1時31分)投稿しました。合わせてどうぞ。
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つぶやき
『みなみけ』一期から三期まで全部見直し中。今三期の途中。
全部面白いけど、やっぱり一番面白いのはおかわりだなぁ。映像の気持ちよさが段違いだ。
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