氷菓 第10話「万人の死角」 感想!
やっべぇ、面白すぎる!
感想
いやぁ、素晴らしかった!
ワンシーンワンシーンが、本当に面白かったです。『氷菓』は氷菓編でも尻上がりに面白くなっていったけど、愚者編でも見事なクレシェンドです。
原作のストーリーテリングがいいということもあるだろうけど、今回の面白さの肝はむしろ演出と脚本構成にあり。
アニプレッションの記事で詳細に書くためにわざと簡略化して書くけど、カメラの配置に凝ってみたり、遠景・近景を使い分けてみたり、折木が入須に推理を披露しているところでは舞台を廃シアターへ移してみたり、と、手を変え品を変えの演出が面白くてたまりませんでした。折木が入須に乗せられ、見事に推理を完了し、最後に摩耶花から思いもよらない駄目出しを食らう……という流れを、十分すぎるほどに彩っていたと思います。
極めつけはラストですね。
折木の衝撃を表現するために、画面にノイズが走って配色がモノクロになる、という演出が取られました。
この演出が僕好みすぎてやばい! 体に電撃が走ったようでした。絶対の自信があった自分の推理を、極めて簡単なところから突き崩されたショック。この一瞬がすごい。折木の自信を一発で撃ち落とす、最高の演出でした。
画面にモノクロを使用する演出は、同じ京アニだと『CLANNAD』の第1話、岡崎と渚が出会うところがすぐに思い出されます。人生疲れ果てたような岡崎の灰色空間を、渚という色鮮やかなキラキラが吹き飛ばす、という演出でした。この回の演出は、監督の石原立也。
そういえば、『氷菓』で石原立也の名前を見ません。『中二病』の監督なのか……?
今回の絵コンテ・演出は、第6話「大罪を犯す」以来の坂本一也。
第6話でも演出の難しそうな回をあれこれカメラワークで工夫していて面白かったですが、今回はその比じゃねぇ。『氷菓』では第5話に次ぐ演出回だと僕は感じました。
ちなみに作画監督は、高橋博行。
彼の特徴なのか、はたまた前回作監の植野千世子が目を若干大きく描いていたせいか、今回はどのキャラも目が小さく見えました。もともと目の小さいキャラデザなので、こちらの方が「らしい」のか。でもやはり僕は植野千世子絵が好きです。
そしてもう一つは、脚本構成。
いやね、今回について、一つ危惧していたことがあるのですよ。クオリティに対する危惧ではなくて、これは視聴者側の都合なのですけどね。
今回折木は入須に素晴らしい推理を見せてくれたわけですが、ラストの通り、あっさり突き崩されるわけです。が、これ原作では、素晴らしい推理を見せたところで章が終わっているのですね。
章の終わりまででアニメも切れていたら、この10話で僕はなにも語れないところでした。インターネッツ時代恐ろしす。
ところが、そんな僕の勝手な危惧を『氷菓』は飛び越えてきた!
詳細はネタバレになるので言えませんが、今回の引き、すっげぇいいのです。僕は今回の引きを2種類ほど予想していましたが、そのどちらでもない、そしてそのどちらよりも素晴らしい引きでした。同じ原作既読者であれば、この気持ちが分かると思います。
この構成の仕方に感服。
脚本上でも、アニメ仕様に自然になるように、オリジナルシーンが追加されていました。ネタバレにはならないので言いますと、視聴覚室での試写会シーンです。
このシーンを挿入することにより、流れがとても分かりやすくなっていました。その上、探偵役の3人も再登場。原作ではあのあと出てこないんですよね、約1名を除いて。そして中城の腕の下からひょっこり登場の沢木口が可愛すぎて萌えた。
今回のお話
ストーリーの内容は当然知っていましたが、それでも抜群の面白さでした。見せ方がよかったのは上述の通りとして、基盤となるプロットも本当にいいですね。
折木をお茶に誘った入須が本当に空恐ろしかったw
見事すぎる話術で折木をたらし込んでいく過程がすごかったですね。省エネ主義の折木を、みるみるやる気にさせていく手腕が怖い。
こんな立派なお茶屋さん(←語彙が貧困)があるもんだなぁ、行ったことないなぁ、すごいなぁ……なんて思っていて気付いたのですが、見るからに高級そうな茶屋に誘ったのも入須の作戦だったかもしれない。
入須は総合病院経営者の娘で、自由にできるお小遣いも結構なものであると予想できますが、それでもただ話を聞くだけでこのような場所を選ぶでしょうか。実際に選んだということは普段から来ているということなんでしょうが、後手に回りながらもF組の惨状を解決に導こうとした人、話をしようというのに相手の気配りができない人物ではないでしょう。折木のように、店の雰囲気に飲まれて萎縮してしまいます。
しかしこれは作戦で、わざとこの店を選んで折木を萎縮させ、甘い言葉を使って持ち上げて……という感じ。雰囲気に飲まれて心に余裕のない折木は、隙間から滑り込む入須の甘言にあっさり染められてしまいました。
登校中の一幕も感慨深い。一瞬見せた里志の暗い表情が気になります。彼は「僕はシャーロキアンに憧れている」と自分で言う通り、憧れは持つのですね。しかしそれにはなれない。そして「羨ましい限りだよ」というセリフ。折木の才能を羨ましがっている、いや、妬んでいる?
「折木さん、あの、いえ、あとでです」くらいしかセリフのなかった千反田は二日酔いでダウン。なんということだ。
部室での一幕は、里志に続いて撤退していく摩耶花が印象的でした。「入須先輩ならともかくあんたを手伝う気はない」と言った直後に「こんなことになるって分かってたらあらかじめ予定を開けておいたのに」って、それ少し矛盾してますよ! 結局、仲間意識はあるのですね。
入須に披露する折木の推理は、うん、やはり見事すぎる。
原作読んだ時も「本当にこれで矛盾はないか」うんうん考えたものですが、改めてアニメ版の説明を聞いても、おかしなところは見当たりません。氷菓編の時と同じですね。
ただし、ザイルが使われていなかった。
折木の推理は見事だったが、本郷の意図がこれだったかという点においては、摩耶花の一言で否定されてしまいました。確かにこれでは、「血糊の量が足りない」ということで却下にした沢木口案と同じです。……いや、面白さで言えば折木案の方が断然上ですけどw
映画は無事完成し、F組内での評判も上々、神高祭でもいい評価が期待できそうですが、この件はまだ決着していない。
次回はクライマックス。楽しみすぎます。
----------
アニプレッション「こんなにも面白い『氷菓』の世界 第10話」は、6月26日の夜から深夜にかけて投稿予定です。
(6月27日0字54分)投稿しました。合わせてどうぞ。
----------
参考推奨リンク
所詮、すべては戯言なんだよ
レギュラーで賞をとった人が、補欠に対して、「私はあなたを買っているわ。もっと頑張れば私と同じように賞が取れるわよ」と声をかけるようなものだろうか。なんだかそう考えると悲しいですね。
この一文に衝撃を受けました。ヨークさん……あなたも折木サイドだ……
つぶやき
ボウリングに行った。
いつもより調子が出なかったのはまぁいいとして、数少ないストライクが、なぜか全て逆スポット。
- 関連記事
-
- 氷菓 第11.5話「持つべきものは」 感想! (2012/07/08)
- 氷菓 第11話「愚者のエンドロール」 感想! (2012/07/02)
- 氷菓 第10話「万人の死角」 感想! (2012/06/25)
- 氷菓 第9話「古丘廃村殺人事件」 感想! (2012/06/18)
- 氷菓 第8話「試写会に行こう!」 感想! (2012/06/11)