チャンミンが食べ過ぎたと部屋を出て行った
しかし、食べた量はいつもの半分くらいで
あきらかにおかしい
「ユノ様?」
「テミン、今夜は3人で眠るが
明日からは一人で眠れ」
「…何故ですか…」
「チャンミンは俺の…」
「チャンミニヒョンはユノ様の?」
「俺の…」
「…はい」
「…兎に角、明日からは一人で眠れ」
「嫌です」
真っ直ぐに俺を見てそう言うから
負けないように真っ直ぐに見つめて
「チャンミンは俺の妻になるから
俺と同じ布団で眠るが
テミンは違うであろう?」
大きく目を見開いたテミン
すると少しだけ考えて
「ならばテミンもユノ様の妻になります」
「…は?」
「そうすればユノ様と一緒に居られるのでしょう?」
「…何を、テミン…」
「それでユノ様、妻とは何をすればいいのですか?」
「……」
何かわからないのに、なりたいなどと
子供の言う事を真に受けて
「チャンミニヒョンのように沢山食べればいいのでしょうか…」
「…テミン、簡単に妻になるなどと言ってはならぬ」
「何故にございますか?」
「…お前の両親は覚えておるか?」
「はい、ですから父上と母上と弟と妹と一緒に寝ておりましたので」
「テミンの父から見たらテミンの母は妻、という事だ」
「…チャンミニヒョンは…ユノ様の奥方様なのですか?」
「……そうなる」
「…そうで、ございましたか…」
驚き言葉を繋げられないのか
テミンは黙って料理を口に運んだ
「テミンは何故生け贄となった?」
「…僕は…」
「村の長老達から言われたのか?」
「…奉公先の奥方様から…」
「…奉公先の奥方…」
「…役立たずなのだから村の為に役に立てと…」
「親は知らぬのか?」
「…親は…何も言えず泣いておりました…」
胸が痛い
こんな子供に村の為に死ねというのか
己の子供に言えぬ言葉でも奉公人ならば
誰も悲しまぬとでも…?
奉公人にも親は居るという事がわからぬのか
「ユノ様?」
「…テミン…」
「でも、まさか川の底にこのような場所があるなんて…
しかも食事は日に三度もあります
ここは極楽です」
「…なに?」
「え?」
「テミン、食事は日に何度あったのだ?」
「…朝と夜に…」
「…そのような…」
何でもないような顔をして
嬉しそうに食事をするテミン
チャンミンも沢山食べるのは
もしやそういう事だと…?
「チャンミン…」
お前も、そうして腹を空かしていたのか?
「…ユノ様?」
シウォンの所に行った時も
沢山食べていいと言っているのに
遠慮ばかりして
クッキーという菓子をひとつだけ食べ
嬉しそうに余韻に浸っていた
…また、シウォンの所に連れて行ってみるか…
*****
食事を終えてもチャンミンは戻らず
流石にこれは、と思った所に柚子が来て
部屋で話しをしているから安心しろと言う
「ユノ様、僕は部屋で眠ります」
「テミン、今夜は構わぬと」
「…チャンミニヒョンはきっと嫌なのでしょう
それに、自分の部屋だなんて嬉しいです」
「…いいのか?」
「はい、奉公先でも
旦那様と奥方様のお部屋には
入れませんでしたから…
奉公人部屋は狭かったので
広すぎて眠れぬやも知れませぬが」
そう笑うテミンに
強いな、と驚き
我が愛妻を迎えに行かねばと席を立った
「…柚子、テミンを部屋に案内してやれ」
「はい」
おなご達の部屋で
いったい何の話しをしているのであろうか
腹を空かしておるのではないか?
そう思えば歩も速くなる
「…チャンミンはおるか?」
扉の前で声を掛けると
林檎が出て来て
「ユノ様、チャンミンは眠ってしまいました」
「…寝たのか?
そうか、ならば連れて行こう」
すると林檎は不満げに
「テミンと3人で眠る布団にでしょうか?」
「…いや、今夜は二人で眠る」
「…今夜は?」
「…何だ、林檎、何か怒っておるのか?」
「…『チャンミン以外必要としておらぬ!!
肝に命じろ!!』とおっしゃってたのに
テミンと寝るのでは?」
「…テミンは部屋に行った
俺の部屋にはおらぬ」
「…本当にございますか?」
「…嘘など言わぬ」
「…無礼な言葉、御許しください…」
「構わぬ、それだけチャンミンを案じておるのであろう?」
「…はい」
部屋の中に入ると
可愛らしく眠るチャンミン
そっと抱き上げて
「迷惑をかけたな…」
「…いえ、」
「チャンミンがおらぬと
俺は眠れぬのだ…」
「…ユノ様…」
愛しい人をこの腕に抱いて
部屋へとゆっくり歩いた
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