ユノ様はヒチョル様を客間へ案内すると
不満そうにしながらも僕を紹介してくれた
「ふぅん、お前がチャンミンか…
なんだよ、まだ子供じゃん」
「…チャンミン、ヒチョル様の相手は俺がするから部屋に戻れ」
「なれど、」
「何でだよユノ!!
俺様はチャンミンに逢いに来たんだぞ」
不満そうにするユノ様とヒチョル様
「チャンミンに逢いに来たなど…」
「お前が溺愛だって言うからさ
どんな美女かと思ったら子供で、しかも」
「ヒチョル様」
「…はいはい、黙れって言いたいんだろ?」
ヒチョル様の『しかも』という言葉に続くのは
どんな言葉だったのだろう
「チャンミン、いいから部屋に戻れ」
「…はい…」
客間の扉を閉めて部屋へと歩くと
シウォン様とミノ様が杏子さんと歩いて来られた
「チャンミン、相変わらず可愛らしいね
君の唇にくちづけする許可を貰いたい」
「シウォニヒョン!?」
「あの、」
「シウォン様、ミノ様、
チャンミン様にお手を触れますと
ユノ様の術が発動すると先程申しておりました」
「…は?」
「…ユノヒョンの術?」
「はい、何でも強制的に滝壺へ飛ばされるそうでございます」
「…強制的に滝壺…」
「ふふ、ユノヒョンがそのような事をする訳が無い」
「いや、シウォニヒョン、そのまさかがあるかも…」
シウォン様は少し思案して
それからミノ様を掴むと
僕に向かって投げつけた
「シウォニヒョンっ!?」
「ぅわっ!?」
ぶつかったと思ったら
霧のようにミノ様は消えてしまった
「…本気か…」
「シウォン様もお気をつけくださいませ…」
杏子さんはくすくすと笑い
僕に一礼すると
シウォン様を連れて客間に入って行った
…ミノ様、滝壺に飛ばされたのかな…
それでも、皆様は位は違えどユノ様と同じ龍神様なのだから
滝壺など別に痛くも痒くもないと思うのだけれど
「…遠くに飛ばされたって事なのかな…」
…っていうか、杏子さんまで僕の事をチャンミン様と呼んだ…
それは、何だかくすぐったくて…
「チャンミン様、どうかなさったのですか?」
「…テミン…」
お茶の用意をしたテミンが歩いて来て
「ユノ様が部屋に戻っていろとおっしゃって…」
「あぁ、そうでございましたか
ではお茶をご用意いたしますね
しばらくお待ちください」
友達ができたかと思ったのに
テミンは突然変わってしまった
それはユノ様の言葉が原因なのだけれど…
*****
テミンが部屋に来て
温かいお茶を淹れてくれた
「そうだチャンミン様
シウォン様がこれをチャンミン様にと」
「…あ、これは…」
「なんでも異国の菓子だとか」
シウォン様の御屋敷にお邪魔した時に
ご馳走になった美味しいお菓子で
喜んで口に入れると
口の中にしあわせが広がった
「…美味しい…」
「初めて見る菓子にございます」
「テミンもひとつ食べなよ」
「いえ、これはチャンミン様の物でございます」
僕は皿に6枚クッキーを取り分けると
テミンに手渡す
「僕はこんなに沢山食べられないから
柚子さんや皆さんと食べて」
「ですが、」
「美味しいうちに食べなければもったいないし」
「ありがとうございます」
嬉しそうにするテミンが可愛らしくて
僕まで嬉しくなる
「そういえばチャンミン様
ユノ様のところにいらっしゃる筈のミノ様が
まだおいでにならないのですが」
「…あぁ、ミノ様…」
僕に触れたから滝壺へ飛ばされたのだ
それはどれ程の場所だったのであろうか
「シウォン様がチャンミン様のせいで
遅くなると申しておりまして…」
「…シウォン様…」
僕じゃなくて、貴方様のせいでありましょう
「…僕のせいと言うより…」
「ユノ様の術が発動なさったので?」
「そう、そうなんだよ…」
「それは、ミノ様自業自得にございますな…」
「いや、シウォン様がミノ様を僕に向かって突き飛ばしたというか…」
「…それはまた、シウォン様…」
「ミノ様は悪くないんだ」
「災難にございますね…」
滝壺に飛ばされたミノ様には悪いけど
ふたりでクスクス笑って
なんだか楽しくなってしまった
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