2024年10月26日

「世界の図書館を巡る 進化する叡智の神殿」ゲシュタルテン マール社

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【目次】
図書館という名の楽園
ストラホフ修道院図書館
デペトリュス(フフト市立図書館)
フューリ(キルッコヌンミ中央図書館)
マリア・ラーハ修道院イエズス会図書館
セイナヨキ市立中央図書館
クイーンズ公共図書館ハンターズ・ポイント分館
聖カタリナ修道院図書館
リンカーン・カレッジ図書館
ウィリアム・W・クック・リーガル・リサーチ図書館
ジョン・P・ロバーツ研究図書館(通称:ロバーツ図書館)
ロックハル
ベネディクト会メッテン修道院図書館
現代(ヒョンデ)カード・クッキングライブラリー
ジョアニナ図書館
シアトル市立中央図書館
ジョンズ・ホプキンス大学ジョージ・ピーボディ図書館
ティクセ・ゴンパ図書館
ポルトガル赤十字社図書室
シュレーグル修道院図書館
ウォーカー人類想像史図書館
フランス国立美術史研究所(INHA)付属図書館
OMAH図書館
フランス元老院(上院)図書館
ハンガリー国会議事堂図書館
ムインガの図書館
アルテンブルク修道院図書館
ベルリン国立図書館
ビクトリア州立図書館
モルガン・ライブラリー&ミュージアム
カイパース図書館
ジ・アンセンサード・ライブラリー(検閲なき図書館)
シンゲッティの図書館群
アル=カラウィーイーン大学図書館
イェール大学バイネッキ貴重書・手稿図書館
ピフェッティの図書室
ブータン国立図書館
コソボ“ピェタル・ボグダニ”国立図書館
カタール国立図書館
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念図書館
太平御覧書楼(皇帝の書斎)
ボドリアン図書館
新アレクサンドリア図書館
バスコンセロス図書館
オーストリア国立図書館
ガイゼル図書館
天津浜海図書館
トリニティ・カレッジ図書館
フィリップス・エクセター・アカデミー図書館(クラス・オブ・1945図書館)
王立ポルトガル図書館
第4代オーフォード伯爵ホレス・ウォルポール邸ストロベリー・ヒル・ハウス図書室
ヴィブリンゲン修道院図書館
ランプル・ラザ図書館
バーミンガム図書館


世界の図書館を巡る(amazonリンク)
ラベル:図書館 書評
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2017年07月07日

「美しい知の遺産 世界の図書館」ジェームズ・W・P・キャンベル 河出書房新社

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【目次】
【第1章】 失われた起源──古代世界の図書館(BC3400-AD600年)
メソポタミア/エブラの図書館/粘土の書字板の収納/アッシュールバニパルの図書館/ペルガモン図書館/アレクサンドリア図書館/ローマの図書館/トラヤヌスのフォルムの図書館/ローマの公共浴場の図書館/パピルス荘
【第2章】 クロイスター、冊子本、チェスト──中世の図書館(600-1500年)
高麗八萬大蔵経と印刷の発明/日本の書院/東アジアの蔵書コレクションの規模/イスラムの図書館/西洋における中世の図書館/ザンクト・ガレンの設計図/ブックチェストと仕切りのある棚とアルマリア
【第3章】 カボード、鎖、ストール──16世紀の図書館(1500-1600年)
中国の初期の図書館/イタリア・ルネサンス期の図書館/マルチアーナ図書館/ラウレンツィアーナ図書館/鎖でつながれた本の図書館/オクスフォード大学ハンフリー公爵図書館/ウェルズ大聖堂図書館/ケンブリッジ大学クイーンズ・コレッジ
【第4章】 壁、ドーム、アルコーブ──17世紀の図書館(1600-1700年)
エル・エスコリアル/アンブロジアーナ図書館/アーツ・エンドとボドリアン図書館/リンカン大聖堂図書館/セント・ポール大聖堂首席司祭図書館/ケンブリッジ大学トリニティ・コレッジ/ヘルツォーク・アウグスト図書館/コドリントン図書館
【第5章】 天使、フレスコ画、隠し扉──18世紀の図書館(1700-1800年)
ロック様式とロココ様式の定義/王立図書館/ジョアニナ図書館/ウィーンの宮廷図書館/カサナテンセ図書館/アンジェリカ図書館/パラフォシアナ図書館/メルク修道院/ヴィブリンゲン修道院/ザンクト・フロリアン修道院/ザンクト・ガレン修道院/アドモント修道院
【第6章】 鉄の書架、ガス灯、カード式目録──19世紀の図書館(1800-1900年)
18-19世紀のカントリー・ハウス図書館/ヴァージニア大学図書館/ブーレーのフランス国立図書館/フィンランド国立図書館とボザール様式の設計/鉄とサント=ジュヌヴィエーヴ図書館/アメリカ議会図書館/ピーボディ研究所の図書館/トマス・クレイン記念図書館
【第7章】 電気、コンクリート、鋼鉄──20世紀の図書館(1900-2000年)
アーツ・アンド・クラフツ/グラスゴー美術学校/ニューヨーク公共図書館/大阪図書館/ストックホルム市立図書館/スロヴェニア国立図書館/セイナヨキ公共図書館/ベルリン州立図書館/フィリップス・エクセター・アカデミー図書館/デルフト工科大学図書館
【第8章】 電子書籍時代の図書館の未来
日本の図書館/司馬遼太郎記念館/ブランデンブルク工科大学インフォメーション・コミュニケーション・メディア・センター/ユトレヒト大学図書館/中国国家図書館/ホセ・バスコンセロス図書館/ボドリアン図書館の書庫/ベルリンのグリム・センター

美しい知の遺産 世界の図書館(amazonリンク)
ラベル:書評 図書館 建築
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「図説 イスラーム庭園」フェアチャイルド ラッグルズ 原書房

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う~ん、グラナダのアルハンブラ宮殿のイメージと、千夜一夜物語のイメージから読みました。

パノフスキーのような神学との対応関係により図像学的に明快に割り切ったような説明とは全く別物です。
造園を人の営みとして位置付け、その庭園が置かれた周囲の風景、状況をも含めた総合的視点からの解釈の為、正直言って分かりにくく、私には面白くありませんでした。

また第二部では、実際に残っているイスラム庭園を紹介しているのだけれど、これもねぇ~。
写真もいまいち少なくて、説明も個人的にはあまりそそられない。

行ったことのあるアルハンブラ宮殿の部分の説明も自分の感覚とはしっくりこなったかったし・・・。
ただ、この手のものは私、あまり見たことがなかったので資料的にはあってもいいかなあ~って気にはなる。
でも、大判で場所取る割に写真もあまりよくないし、値段も高いからたぶん、購入しないなあ~。
図書館で観れば十分かと。
【目次】
第1部
はじめに
1章:イスラームの風景
   場所と記憶
2章:砂漠に花を咲かせる
   荒涼たる大地を変身させる
3章:園芸術
   農耕や造園に関する書物
4章:大地を整備する
   十字型庭園とチャハール・バーグ
5章:樹木と草花
   文献、および考古学に基づいた植物学的痕跡
6章:庭園と景観の表現
   彩色写本、織物などの技法にみる比喩的描写
7章:空想の庭園
   理想の庭園、文学に登場する庭園
8章:楽園としての庭園
   絵画表現の歴史的起源
9章:現世と来世
   廟と墓廟庭園
10章:景観としての庭園
   タージ・マハルとその先駆者たち
11章:宗教と文化
   非イスラームによるイスラーム庭園文化の採用
第2部 
【スペイン】
◆コルドバ  大モスク<メスキータ>/マディーナ・アッ=ザフラー
◆グラナダ  アルハンブラ宮殿/ヘネラリーフェ離宮
◆モンテアグド  城
◆セビーリャ  アルカサル
【イタリア シチリア】
◆パレルモ  ファヴァラ宮殿/ジーザ宮殿
【モロッコ】
◆フェズ  ダール・アル=バサ/アブド・アル=カリ・パシャの宮殿
◆マラケシュ  アグダール庭園/アル=バディーウ宮殿/クトゥビーヤ
◆ラバト  シェーラ墓所
【アルジェリア】
◆バニー・ハンマードの要塞都市  ダール・アル=バフル
【チュニジア】
◆カイラワーン  アグラブ朝の貯水槽
◆マヌーバ  ブルジュ・アル=カビール/ブルジュ・クッバト・アン=ナース
【エジプト】
◆カイロ  アズハル公園/アズバキーヤ庭園/フスタートの市街地
【トルコ】
◆アランヤ  ハスバフチェ
◆イスタンブル  ボスフォラス海峡沿いのあずまや/フェネルバフチェ/カラバリ庭園/スレイマニイェ墓地/トプカプ宮殿
◆マルマラ海  ウスキュダル宮殿/イュルドゥズ宮殿
◆マニサ  マニサ宮殿
【大シリア】
◆アッ=ルサーファ  宮苑
◆ダマスクス  アル=アズム宮殿/18、19世紀の住宅群
◆ウエストバンク  ヒルバト・アル=マフジャル
◆パルミュラ  カスル・アル=ハイル・イースト
【オマーン】
◆マスカット  スルターン・カーブース大学
【イラク】
◆サーマッラー   バルクワーラー宮殿/ダール・アル=ヒラーファ宮殿
【イラン】
◆イスファハーン  ナイチンゲール庭園とハシュト・ビヒシュト<八つの楽園>/チャハール・バーグ大通り/チヒル・ストゥーン<40柱殿>
◆カーシャーン  フィーン庭園
◆シーラーズ 玉座の庭園
◆タブリーズ  王の池の庭園
【アフガニスタン】
◆ヘラート  アブド・アッラー・アンサーリー廟
◆イスターリフ  キャラーン庭園
◆カーブル  バーブル庭園
◆ラシュカレ・バーザール  宮殿群
【トルクメニスタン】
◆メルヴ  スルターン=サンジャル廟
【パキスタン】
◆ラーホール  ラーホール城/ヒラン・ミーナール/ジャハーンギーリー、アーサフ・ハーン、ヌール・ジャハーンの廟/シャーリーマール庭園
【インド】
◆アーグラー  イイティマード・アッ=ダウラ廟/月光庭園/ラーム庭園/アーグラー城<レッド・フォート>/タージ・マハル
◆アンベール  アンベール城/ジャイガル要塞
◆ビージャープル  イブラーヒーム・ラウザ複合施設
◆デリー  ジュード庭園/ハウズ・ハース/フマーユーン廟/ラシュトラ・パティ・バワン<副王宮>のムガル風庭園/デリー城<レッド・フォート>/サフダール・ジャング廟
◆ドールプル  睡蓮の庭園<ニールーファル庭園>
◆ディーグ  ディーグ宮殿
◆ファテープル・スィークリー  後宮庭園
◆カシュミール  アチャバル庭園/ニシャート庭園/シャーリーマール庭園/ヴェールナーグ
◆マーンドゥー  宮殿群
◆ナーガウル  アッヒチャトラガルブ城塞
◆オルチャ  アーナンド・マンダル庭園
◆スィカンドラ  アクバル廟
◆ウダイプル  市街宮殿
【アメリカ合衆国】
◆ハワイ州、ホノルル  シャングリラ館
◆ワシントン  エニド・A・ハウプト庭園
図説 イスラーム庭園 (amazonリンク)

ブログ内関連記事
アルハンブラ宮殿の思い出(2002年8月)
「アルハンブラ散策」Edilux
「庭園の世界史」ジャック・ブノア=メシャン 講談社
「アルハンブラ」佐伯泰英 徳間書店
NHK世界遺産 光と影の王宮伝説 ~スペイン・アルハンブラ宮殿~
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2013年03月24日

「図説 キリスト教会建築の歴史」中島 智章 河出書房新社

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【目次】
古代・中世・ルネサンスの教会建築
1章 教会建築の誕生―バシリカ形式と集中形式
2章 ビザンツ建築―古代建築最後のきらめき
3章 地方性豊かなロマネスクの教会建築
4章 ゴシックの光―サン・ドゥニ修道院長の新たなコンセプト
5章 完全性をめざしたルネサンスの教会建築
6章 ゴシックとルネサンスの融合と衝突

宗教改革とカトリック改革以後の教会建築
7章 プロテスタント諸派の教会建築
8章 イエズス会の教会建築
9章 教皇のバロック―ベルニーニとボッロミーニ
10章 新古典主義の教会建築
11章 ゴシック・リヴァイヴァル
12章 近代建築運動と教会建築
個々の建築物の説明、全体の通史的な説明部分は紙幅を考慮すれば、可も無く不可も無くといった感じでしょうか。

勿論、充実した説明ではないですし、必ずしも適切な説明でなさそうなところも感じましたが、採り上げられている建築物は、定番であることを抜きにしても良いものがバランス良く選択されて紹介されていると思います。

そして、実際の建築物を紹介する為に載っている写真の選択も良いと思います。
少なくとも、私は載っている写真、好きですし、建築物の特徴を良く現していると思います。
他の建築の本で、なんでこの建築物でこの写真を使うかなあ~?というような違和感を本書ではほとんど感じませんでした。

実際に、自分でも見たことのある建築物が幾つも載っていましたが、自分の見た感じや自分でも大量に写真を撮った中で選らんだ感覚と一致するものが多かったです。「なんかこれは違う」というのが無かったです。珍しいことに。

また、逆に本書を読んで(見て)初めて、今度はここに行って見てみようと思った教会建築がたくさんありました。そういう意味で、本書は私には興味深かったです。

コラムもこの手の本にしては、なかなか面白いテーマをうまくまとめて説明されています。より深く調べようという気になる、いい契機になるような内容でした。

教会建築の歴史的概説としては、良い本ではないでしょうか?
バランスが悪い本や違和感のある写真が多く載っている本が多い中では、全体的にバランスの良い本だと思います。読んで悪くないかと。

図説 キリスト教会建築の歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「世界の建築第5巻 ゴシック」飯田喜四郎 学習研究社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
東京人「宗教建築」2006年07月号 都市出版
「新版 ヨーロッパ建築序説」ニコラウス ペヴスナー 彰国社
「世界歴史の旅 イタリア」池上俊一 山川出版社
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「高架下建築」大山 顕 洋泉社

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昔流行った、路上考現学とか、そういう系のやつです。
数年前に流行った「工場萌え」とかその手の著者だそうで、その点では目の付け所がいいですね!

私もこういうの好きです。
但し、本書はわざわざ高い代金を払って買うほどの価値は無いです。
だって・・・、個人的には、こういうの好きで良く見てるし、デジカメやスマホでしばしば撮ってるんですが、撮ってる場所、かなりのところ知ってるし、自分でも過去に撮影した場所なので正直、新鮮な驚きが無いんですよ~。

浅草橋、力説されてると、うんまあ~特徴的で面白いけれど・・・・それは知ってるので、そこから先は・・・と思ってしまう。

秋葉のもうちょい外れた裏のところには、別な面白さの漂うところがあるし、東武浅草駅の地下通路の商店街とかの怪しさは基本中の基本でしょ。

これを出した出版社さんの企画の目新しさは評価しますが、内容は物足りないですねぇ~。
もっと街中を歩き回ると面白いのが転がっているんですけどねぇ~。

結論、企画は良いが価格に見合うだけの情報や付加価値は無し。
【目次】
関西
首都圏
おすすめ高架下建築鑑賞コース
高架下建築考
高架下住宅の研究
高架下建築(amazonリンク)
ラベル:建築 書評
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2012年06月10日

「世界歴史の旅 イタリア」池上俊一 山川出版社

率直なところ、それほど期待して読み始めた訳ではありませんでした。
著者の書かれた中世関係の本は、何冊か読んだことがあり、興味深いものが幾つもあったものの、建築はご専門ではないでしょう・・・と思い込んでいました。

来月イタリアへ行く前に、観光ガイドとは別次元のイタリアの建築について、少しでも知りたいと思ってたまたま見つけたのが本書でした。しかし、当初の予想に反して、本書は良い方向で裏切ってくれました!これは当りかと♪

フランスのロマネスクや特にゴシック好きの私としては、スペインまでは建築として意識に上っていたものの、イタリアはちょっとピンとこなかった、というのが正直な気持ちでした。

でも、本書を読んでイタリアの建築に非常に強い関心を覚えました。
本書では、イタリアのロマネスク、ゴシック、バロックなどを中心に、地域的・時間的に幅広いスパンをとって、あるがままの建築を紹介していきます。

そして写真と共に紹介されている、それらの建築物が実に美しく、調和が取れており、これぞイタリアってのが実に如実に現れていたりする。

私の大好物のフランスのゴシック建築、神の整然とした合理性に貫かれた表現とは、全く異なるものの、世俗にどっぷりつかりながらも、市民的(人間的尺度での)合理精神や進取の気性を体現するかのような建築物というのも、なんというか実に興味深くて、魅力的だったりする。

また、建築物の紹介に際し、それを生み出した建築家を取り上げ、その人の生まれ育った環境や時代的な背景、社会風俗の流行までも含めて、それらがその土地で、その人の手により、生み出されるに至る過程まどを説明してくれており、説明も通り一編のものは少ないです。

読んでいるうちに、是非ともその場所に行って、その建築物を見てみたい!!
強く思わずにはいられません。まあ、そうしたら何日あっても足りないぐらいですけどね。

慌しく、駆け足で有名所を周るなんて、もともと好きではありませんし、そういうのはしない主義ですが、本書で紹介されるような作品は、じっくりとそこにいて、じわじわと体感されてくるまで待たないと感じられないんですよねぇ~、たぶん。

結構、内心ではなめていたイタリア建築の凄さをまざまざと実感させてくれるような本です。
絵画だけではなかったりする、イタリア。何よりも建築は総合芸術ですしね。

中世においては、画家としての評価は、単なる一職人としての腕前の評価に留まり、建築家の全人格的崇敬の対象とされるまでの、社会的ステータスの伴った評価とは別次元だったりするそうですし。

本書を読んで改めて、もっといろんなイタリア建築を見たくなってしかたがありません。
実際に観たことのあるラウンレンツィアーナ図書館の階段でさえ、その価値を十分に理解していたと言い難いことを改めて知りましたもん。そういうのがたくさん書かれています。

紙質的なものもあり、重いので旅行に携行するのはどうしょうかと思いますが、これ見ながら、自分の目と脚で是非とも、味わい尽くしたいです。

本書は建築に興味ある方にお薦めです。なかなか無い本だと思いました。
【目次】
第1章 円かなる黙考―初期キリスト教建築
第2章 海辺の白い貴婦人―プーリア式ロマネスク
第3章 壁面のリズム進行―ピサ式ロマネスク
第4章 花咲くファサード―イタリア・ゴシックの真骨頂
第5章 調和と比例―アルベルティのルネサンス
第6章 ヴィッラの快楽―マニエリスト、パッラディオ
第7章 黄金のスペイン残映―バロック都市レッチェ
第8章 脈動と幻惑―王都トリノのバロック
おわりに―様式から意匠へ
世界歴史の旅 イタリア―建築の精神史(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「イタリア都市の諸相」野口昌夫 刀水書房
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
「シエナ」池上俊一 中央公論新社
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2012年03月18日

「スペイン・ロマネスクへの旅」池田健二 中央公論新社

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ロマネスク建築というと、どうしてもフランスの片田舎の寂れた教会をイメージしますが、スペインにもあるんだよねぇ~。そういえば・・・!

カタルーニャ・ロマネスクとか部分、部分はモノの本とかで知っていたものの、本書で扱っているロマネスクは、ゴシック建築に先駆ける純然たるロマネスクに限らず、むしろプレ・ロマネスク時代ともいうべきカール大帝以降の地方的特殊性にあふれた教会建築を多分に紹介しています。

ただでさえ、イスラム勢力圏に長年に渡って組み込まれ、その支配下でイスラム建築の影響を色濃く受けた土地柄に、サンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼路として、クリュニー修道院の影響が混在として一体化し、フランスのものとは近いようでいて、明らかに異なる建築物を生み出しています。

幾何学文様的な装飾や浮彫のデザイン、強烈な色彩感覚のもので描かれ、表現される壁画等、やっぱり明らかな差異を感じます!!

ロマネスクはローカル色豊かで、個々に独自性を有する建築・美術ではありますが、本書の中でも紹介されるものもこれまた、そこでしか無い、っという一品物で非常に好奇心をそそられます。

本書で紹介される写真も大変興味深いものが多くて、目を奪われるのですが・・・問題点もあります。
写真に番号が振られておらず、本文中の解説と写真がなかなか一致しないのです。

おそらく・・・文章は別に書かれ、本としてのレイアウトを考えつつ、写真の取捨選択、サイズ等が編集サイドでやっていて連携が取られていないのでしょう。

正直、写真自体は良くても、文章とは分離しているうえに、レイアウトだけで写真のサイズ等を勘案しているのか、文章で力点を置かれているものが写真として出ているとは限らず、出ていてもサイズが小さくて良く分からないなど、多大な考慮すべき出来上がりとなっています。

かなり勿体無いという感じがしてなりません。
本を買った人向けに、写真をWEB上で閲覧したり、取得出来る様にとか工夫してもらってもいいような気がしますけどねぇ~。

とにかく、本書は見るべき価値がある内容ですが、見せ方というか本としては、不満足な点が多いのも強く感じました。すっごく惜しいです!!

是非、生で見てみたいけど、ロマネスクって交通が不便なところが多く、公共交通機関ではたぶんなかなか行けないんだよね。国際免許で海外で車運転することも考えるけど、国内でもペーパードライバーなのに・・・・。

大都市にあるゴシック建築を働いているうちに見ておいて、時間が出来たら、周ることにして残しておくしかないかなあ~。行きたいな~♪
【目次】
カタルーニャ地方
アラゴン地方
ナバラ地方
カスティーリャ・イ・レオン地方
アストゥリアス地方
ガリシア地方
スペイン・ロマネスクへの旅―カラー版 (中公新書)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展~国立西洋美術館
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「中世が見た夢」小佐井伸二 筑摩書房
「スペインの大聖堂」菅井日人 グラフィック社
「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社
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2012年02月19日

「日本建築遺産12選」磯崎新 新潮社

とんぼの本は、写真が多くて綺麗ですからね。
こういう系のいささか変わった建物とか好きですし、是非行ってみたいと思っているさざえ堂や三仏寺投入堂が載ってたので、とりあえず読んでみました。

う~ん、内容は正直大したことないかと。

でも、説明は建築家としての著者の視点からですが、この手の本によくある視点とは、いささか異なるせいか、それはそれとして面白く読めます。

勿論、ど素人の私がいうのははばかれますが、著者が読み解く説明には、なかなか全てにおいて首肯できませんけどね。

堅いのをくずすのが、日本流の文化受け入れと消化というは、なるほど・・・とは思いましたが、余談で載ってた都庁のコンペの話は、どうかと思いましたが・・・。

コンペの条件にあえて合致しないものを出したということですが、日本が一番欠如しているであろう、権力的示威面の象徴性を前面に出さない、否、今更市民と調和しても意味ないかと・・・。

水戸のアートタワーだっけ?
これ著者の設計だったんだ。

個人的には何度も実物見てるけど、その度にセンスのない税金無駄使いのゴミの象徴だと思ってきましたが・・・やっぱり、ゴミだよねぇ~。

周囲との景観との間に、調和やバランスのカケラもないかと。

個人的には大嫌いな部類ですね。いかにもこけおどしで、何も強い意志が感じられないし・・・。
ル・コルビジュも個人的にはどこがいいのか分かりませんけどね。

今年は、去年行き損なったイスタンブール行くので、見るべき価値のある建築物を観に行こうっと♪
【目次】
はじめに 「柱」と「架構」から日本建築史を読みかえる
1 神を感知するために
出雲大社
伊勢神宮
2 「柱」原理主義
浄土寺浄土堂
唐招提寺金堂
3 のびゆく内部空間
円覚寺舎利殿
三十三間堂
4 二つのフリースタイル
三仏寺投入堂
西本願寺飛雲閣
5 テーマパークの近世
さざえ堂
修学院離宮 上の御茶屋
6 20世紀日本建築の到達点
代々木オリンピックプール
水戸芸術館アートタワー
おわりに 「やつし」の美学をめぐって
日本建築遺産12選―語りなおし日本建築史 (とんぼの本)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
ラベル:書評 建築
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2011年12月14日

「サン・ドニ修道院長シュジェール」シュジェール 中央公論美術出版

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ゴシック建築に興味を持ってゴシック建築の創始者たるシェジェールを知り、また、最初のゴシック建築と言われるサン・ドニ修道院の献堂記(他)があると知ってずっと読みたいと思っていました。

国立西洋美術館のミュージアム・ショップに並んでいるのは手にとって見た事あるんですが、さすがに買う気にまではなれなくて・・・・。はんぱなく高いうえに、本が大きくて読み終わったら絶対に邪魔になりそうだし・・・。

調べると地元の国立大学にあるみたいだけど、うちの母校ちゃうし、面倒。近所の図書館から取り寄せると1ヶ月ぐらいかかるんだよね。以前、別な本でやったことあるけど、待ってらんないって!

いつか機会をみてと思っていましたが、今週京都旅行を中止したので久しぶりに行って読んできました。せっかく作っておいた国会図書館のカードは期限切れになっていたけど、しかたないです。

さて、まずは目次から。
【目次】
序1 シュジェールの著作
序2 シュジェールー人と業績

ルイ6世肥満王伝
ルイ王の息子である、栄光に満てるルイ7世王について

1140年に作製された定め書
 1序
 2改築の諸理由
 3改築開始
 4石切場の奇蹟
 5摂理による梁の発見
 6前部(西側)の献堂
 7教会堂頭部の建設
 8作業の継続のための年収の設定について
 9作業の完成
 10殉教3聖人の遺体の墓
 11嵐の奇蹟
 12摂理による羊群の到着
 13献堂式の展開
 14諸遺物の奉遷
 15諸祭壇の奉献

サンドニ教会堂献堂に関する覚書

サンドニ修道院長シュジェールのその統治においてなしたる事ども
 第一部 所領
 第二部 教会堂
  1教会堂の装飾について
  2教会堂の最初の拡張について
  3奉献について
  4青銅で鋳造し塗金した諸門について
  5祭室部階上の拡張について
  6袖廊
  7両側の建物の接合について
  8教会堂の装飾について
  9階上祭室の金の祭壇前立てについて
  10聖遺体の墓
  11金の十字架磔刑像について
  12主祭壇
  13装飾類
  14聖祭壇
  15聖遺物匣の開被と奉献
  16金の大十字架
  17修道士の座席、説教壇、「ダゴベールの」王座及び祭室部の鳶
  18硝子絵
  19祭壇の装飾
序1、及び序2が本文を読み解く前に前提としての説明になります。

個人的にはそこに書かれたディオニシウス・アレオパギータ(偽ディオニシオス)の著作「天上の位階論」がビザンティンから伝わり、西洋中世の思想的底流になっていく経緯が大変、勉強になりました。
(別途、抜き書きメモ)

そうそう、献堂記にゴシック建築の面白そうな事が書かれてると予想していたら、そちらではなく、統治記の方に、一番大切な『光の形而上学』の思想が描かれています。特に「13装飾類」のところ。

「18硝子絵」の意匠(デザイン)の説明も、非常に興味深いです。貧者の聖書ですねぇ~。聖職者以外の民衆が説明を受けてもどこまで理解できたのかは微妙ですが・・・。

ステンドグラスに描かれた図像の意図と意匠を説明しているのですが、以前読んだ『神の水車』みたいな奴で知れば知るほど楽しめます。改めて、これ読んでからサン・ドニ修道院に行きたくなりました。去年行ったけどね。

個々の章ではないけど、全編に奇蹟譚も散りばめられています。
中世当時ですし、あれだけのものが出来たのは、まさに神の思し召し、神のご加護の賜物であり、個人が頑張ったから・・・とかいうあさましき自己主張がおおっぴらに出てくるルネサンスとは違いますからね。
みんな、奇蹟=神様の御意思、って感じです。

そうそう、中世のステンドグラスや建物についてあちこちで読んだ本に宝石他、貴重で高価な宝物を埋め込んだり、溶かして混ぜたりの記述がありましたが、本当にそうやって飾り立ててるんですね!
どれだけたくさんの宝石や貴重品が集められ、このゴシック建築に費やされたか、実感できるような記述が満載されています。

ゴシック建築の貴重な資料とは聞いていましたが、やっぱり読んでおかないといけないでしょう♪

ただ、別なゴシック建築史の本を読んだら、シュジェールの『天上位階論』の理解は、表面的で浅かったという説もあるようですが・・・(確か)直接的な言及は無いものの・・・でも、やっぱり本質は理解して、それを現実に表現した、という一般的な説の方に私も賛同します。本書を読んだ限りではね。

とにかくゴシック建築を愛するなら、読んでおくべき本でしょうね。
当然、サン・ドニ修道院やシャルトル大聖堂に行くことも必須ですけど。(まだ、アミアンやランス大聖堂に行ったことのない私がえらそうに言うのもなんですが・・・・)

どっかで文庫本で出してくれたらいいのに・・・・。岩波とかさ。
通常サイズの本でも、この内容なら買うんですけどね。需要がないのかな・・・残念です。電子書籍化してくれてもいいのだけれど・・・・。

以下、読書メモ:
サン・ドニ修道院長シュジェール~読書メモ

サン・ドニ修道院長シュジェール―ルイ六世伝、ルイ七世伝、定め書、献堂記、統治記(amazonリンク)

ブログ内関連記事
サン・ドニ大聖堂1~フランス(20100625)
シュジェール ゴシック建築の誕生 森洋~「SD4」1965年4月より抜粋
「フランスの中世社会」渡辺節夫 吉川弘文館
「ロマネスクの図像学(上)」~メモ
ゴシックということ~資料メモ
中世思想原典集成 (3)~メモ「天上位階論」「神秘神学」
ステンドグラス(朝倉出版)~メモ
中世の哲学~読書メモ1
「岩波哲学・思想事典」岩波書店 ~メモ
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2011年11月16日

「中世が見た夢」小佐井伸二 筑摩書房

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中世のロマネスク建築に魅せられ、自らの心の中にある何物かに揺り動かされるように、フランス各地のロマネスク教会を訪ねた著者の旅行記、否、心象記録とでもいうべき文章です。

本書を読んでいて、専門家ではないものの、フランスの教会のステンドグラスにとり憑かれた方が撮ったステンドグラスの本をふと思い出した。

著者は専門家と言えば、専門家ではあるものの、あくまでもフランス文学であって、建築学、ましてロマネスク建築とは直接の関わりはなさそうですが、本書を読む限りでは、どっぷりと浸かっている姿が目に浮かびます。

また、本書のあちこちに散りばめられた建築に関する説明、というか著者自身の内面的理解の確認、はどれだけの関心を持って、関連する本を読んできたかを否が応にも指し示している。

本書を読んでゴシック好きの私ではありますが、ロマネスクに対しても深い共感を覚えました。ただ、実際に行くのって、ロマネスクは辺鄙な場所が多く、大都市で交通の要衝にあるゴシックとは比べ物にならないくらい大変なんですよね。

実際にロマネスク建築をあまり見ていない私が簡単に『共感』というのはなにぶんにもおこがましいのですが、著者のかなり入っちゃてる感じは、相当伝わってきます。

但し、残念なことも。
少なからず写真はあるのですが、建物に関する説明はどうしても文章のみのところが多く、しかも著者の心象的風景としても重ねて表現されていることもあり、なかなか本書を読んだだけでは、イメージし切れません。

また、ロマネスクやゴシック建築の基本的な部分を常識として知らずしては、本書をエッセイとしても楽しむ事は甚だ困難かと思われます。

アンリ・フォション、エミール・マール、偽ディオニシウス・アレオパギタ、この辺は普通にそこかしこに引用されていますが、基本ではあるものの、一般向けとしては相当ハードルが高いかもしれません。

しかも、それだけ知っていても本書はエッセイでしかなく、新しい知見を得るような本でもありません。最初から最後まで、著者の独り言の共感者でいなければならず、値段以上に読者を絞り込んでいる気がしてなりません。

たぶん、売れてないし、買って最後まで読んだ人も少なそう。
ただ、個人的には嫌いじゃないです。

後半に出てくるクリュニー修道院なんかも好き。パリの中世美術館とかを思い出しました。

以下、抜き書きメモ。
偽ディオニイシウスの「神名論」のうちの『神の顕現』について。

その第一章第一節にいう。

「事実、存在を超えて秘められた神性については、聖書がわれわれに神にふさわしく開示したこと以外に、あえて語ることも、考える事もしてはならない。理性や思考や存在を超えているあの超越的なものを認識しないこと、それが超存在的なものの認識の目的である。

それゆえ、神性原理の聖なる言葉の光そのものがわれわれに明示されるその範囲においてしか上方へわれわれは目を上げるべきではない・・・事実、もしきわめて賢明かつ完全に真実な神の学を信じるべきであるならば、それぞれの知性にふさわしい範囲において、神のさまざまな秘密は明かされ、示される。」


第二節の冒頭に、聖書を通してしか神は、その超越性ゆえに、自己をわれわれに啓示しない、と繰り返した後、

「しかしながら、それ自身における善はいかなる存在者ともまったく交わらないままにとどまってはいない。

なぜなら、善は自らすすんでその善意にふさわしく、自らの内にとどまる超本質的な光をたえまなく示現して、各被造物にその受ける力に応じて照明するのだから。

そして、善は清らかな魂を自らの方へ引き寄せ、魂が善を観照し、善と交わり、かつ、善に似るようにするのである。」
パリのサン・ヴィクトール修道院のユーグ。

「魂は自分らを越えて見えないものにまで上昇する。純粋な魂はかの純粋な観想に自らを委ねる。そうして、純化され、照明されて、魂は自らをすっかり神の方へ運ぶのだ。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
【目次】
1 オルシヴァルの永遠
2 ソリニャックの光とル・ドラの影
3 トゥールニュと西欧の曙
4 フルーリ―天上のエルサレム
5 コンク―聖女フォアの奇蹟
6 悪魔について
7 モアサック―神の顕現
8 ブルゴーニュ―「天の重み」
9 ヴェズレーの春とオータンの夏
10 ポアチエと抒情詩の誕生
11 プロヴァンスの3姉妹
12 トゥールーズ―白鳥の歌
中世が見た夢―ロマネスク芸術頌(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展~国立西洋美術館
「サンチャゴ巡礼の道」イーヴ ボティノー 河出書房新社著者の共訳本
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
中世思想原典集成 (3)~メモ「天上位階論」「神秘神学」
中世美術館1回目~フランス、パリ(20100623)
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2011年11月01日

「イタリア都市の諸相」野口昌夫 刀水書房

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イタリアの町並みを愛する方、古代ローマ遺跡の一部を普通に部屋の壁に利用していたりすることに憧れる方、その他もろもろ、ある種の人達には、絶対にお薦めするイタリア建築関係の良書です。

すみません、私はただ安かったので購入し、たまたま手元に本がない時に電車で読んだのですが(じゃなきゃ、数年積読コースだったかも?)、正直結構、感動しちゃいましたよ!

つ~か、改めて自分がなんにも知らずにイタリアの街中を歩いていたこと。感性・注意力の無さ、うかつさに赤面する想いです。西欧によくある古き物を尊び、小さな町故に周囲との調和(主に美観)を大切にして古い時代のものと新しい時代のものとを並存させている、その程度の薄っぺらな認識をしていたのですが・・・自分、愚かでしたね、ハイ。

著者は、フィレンツェの設計事務所で実際に古い建物をレスタウロ(再生)する実務に携わりながら、自らの経験したことを踏まえ、自らの気付きと学んだ事を紹介しています。

古ければ古代ローマ時代以来、現代へと連綿として続く歴史を経てきた建物。当然、建てられた当初や途中の時代時代で改修された設計図などがあるはずもなく、まずは、自らの目で確かめて、その建物が経験してきた各時代の『層』を見出していくことから始るそうです。

そして、その層の積み重なりを認識したうえで、更にそのうえに新しい層を重ねていく作業こそが、レスタウロに他ならないんですねぇ~。

日本で新しい建物を立てる時や改修する際の、一定の基準をクリアしていれば、すぐに下りるような許可とは異なり、イタリアでは、その建物の歴史的な位置付けを把握したうえで、更に街区や町として、周囲との調和を考慮して総合的に判断されるそうで、そりゃ許可下りるのに膨大なエネルギーと時間を費やさねばならず、いやあ~ちょっとやそっとの覚悟では、マネできないですね。

もっともだからこそ、あの町並みが偶然ではなく、あるべくして存在していることを初めて痛感致しました!

広場や街区のことなども、町歩きをしていた時に漠然とは気になっていたのですが、本書を読んで改めてその必然性と存在意義を理解しました。もう、本当に勉強になります!

そうそう、ヨーロッパ建築と言えば、ファサードなんですが、本書でもフィレンツェ駅の裏(?)のサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂とか採り上げられています。

私も初めてアレを観た時に立派で思わず写真を撮った後に、なんか建物と比較していささか浮いてるなあ~って感じたことを思い出しました。見た目が映えることを認めつつも、建物を立派に見せるだけの、いささか陳腐なこけおどし的な感想さえ抱いたものでした。

あ~、モノを知らないとはいえ、恥ずかしいです私。

本書を読んでファサードの有する本来の意味を、これも初めて知りました。そもそもファサードは、建築的に建物とは全く別物として考慮され、設計・建築されるというのも驚きでした。

原義は「顔(face)」から来ているのは、なるほどと思いましたが、ファサードは聖堂に属しているだけではなく、そこが前面の広場に所属し、まさに都市空間における顔として機能しているなんて・・・・。

ファサードが広場の良し悪しを決定づける要因なんて、思いもよりませんでした。うかつだ!

広場に向いたすべての建物の顔のうち、最も美しく威厳のある顔が望まれるのが聖堂なんだって。う~む。

あとローマのスペイン階段。
私はパニーニかじりながら、コークで流し込みつつ、信号無視してたのを思い出しましたが・・・どんなジャポネだ(苦笑)。

空間認識や人々の視点を意識さえしてなかったもんなあ~。まあ、あれは初めてのローマだったし、余裕無かったので仕方なかったこともあるのだけれど・・・。もったいなかったかな?

他にも本書で目を開かされる知見が多かったのですが、別荘についての考え方も非常に感銘を受けました!! 先日、中古マンションを購入してリフォーム、なんて本を読んだこともあるのだけれど・・・ね。

崩れかけたような廃屋を非常に安く借り、自分で材料と労働力を提供してそれを修復して別荘にする。貸主もただ朽ち果てるよりは、タダ同然に安い値で貸して、まともに住めるぐらいにしてもらえるなら、願ったり&叶ったり。まさにWIN&WINの関係って奴です。

幼少の頃に「大草原の小さな家」とか「コロボックル」とかの本を読んで育った私と致しましては、人が設計し、作った家をそのまま受容するのは、やっぱりいささか腑に落ちない点もあったんですよ。実際。

本書を読んで改めて強烈に自分で作りたい!と思っちゃいましたよ。実際にできるかどうかは分かりませんが、やっぱり自分の手で家を作りたいですね。土地があれば、まずは物置とか小物を作って、経験値を積み上げたいところです。

建築の本、読んで勉強しようかな?
つまらん資格試験の勉強よりは、はるかに面白そうだしね。友人で大学院の建築学科出た奴に、聞いてみよっと。ウィルトルウィルスの本で、建築学の基礎を基礎を学ぶ、とか・・・楽しそう♪(笑)

上記以外にも、中世都市としての発展等、本書は実に盛りだくさんで刺激と知見に満ちています。定価でも惜しくないです。興味あるなら、読むべきでしょう♪

「JT○」とか「地球の歩き○」とか、あんなレベルの観光ガイド本では絶対に味わえない、本当の旅行の楽しみ、街歩きの楽しみを学べます。(もっとも私も観光ガイド本、よく読むんだけれどね)

いやあ~これだから、本との出合いはワクワクしますね。
滅多にないけど、こうした凄い価値観の変革を迫るような本と出合えることもあるんですから。
ディープなイタリア(建築、街並み)好きには、お薦めです。本書を読んで世界遺産を巡れば、得られるところは無限大かと(笑顔)。
【目次】
第一章 イタリア都市の連続性と持続性
 1. ロンドンからフィレンツェへ
 2. 連続する空間の形成
 3. 視覚化された時間の形成
 4. 歴史に建築を組み込む職能
 5. 再生の理念と実践
第二章 舞台としてのイタリア都市
 1. 劇場空間と都市空間
 2. 表層の自立
 3. 建築と都市の床面
 4. 虚構と現実の階段
 5. ヴィラとランドスケープ
第三章 イタリアの都市と田園の生活
 1. 世帯境界と街路
 2. 都市住宅の現実
 3. 歴史的都市に住む
 4. 田園に潜める
 5. 別荘と田園生活
第四章 イタリア中世都市というテクスト
 1. 中世都市の起源と形成
 2. 中世都市の形態学
 3. 中世都市フィレンツェの形成
 4. 中世都市ピサの形成
 5. 中世都市シエナの形成
第五章 トスカーナ小都市という鏡
 1. 歴史的風景と丘上都市
 2. 中世都市へのルネサンスの介入
 3. メディチ家が落とす影
 4. 小都市の類型化
 5. 小都市と地域の形成
あとがき
イタリア都市の諸相―都市は歴史を語る (世界史の鏡 都市)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
イタリアだけの贅沢、民家の壁からラファエロの複製
「シエナ」池上俊一 中央公論新社
エスクァイア(Esquire)VOL.19
「新版 ヨーロッパ建築序説」ニコラウス ペヴスナー 彰国社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「芸術空間の系譜」高階秀爾 鹿島出版会
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2011年09月11日

「建築学」の教科書 彰国社

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教科書とタイトルに入っているが、単なるエッセイ集です。
建築に関わるテーマで、いろんな建築家が語ったものをまとめたものになります。

一応、だいたい全てに目を通しましたが、興味ないテーマは読まなくても・・・というか興味あるものだけど読めば十分な本です。

ほとんどはつまらないし、価値を見出せませんでしたが、幾つかは面白いのがあったのでそれだけで読んで無駄では無かったかと思いました。

拾い読みすると、建築に関心のある方には良いかも?

以下、私が面白かったもの。

謎のお雇い建築家。Thomas James Waters ウォートルス。
日本の近代建築の流れの幕開けの人物らしく、ウォートルス→ジョサイア・コンドル→辰野金吾 へと続くらしい。

コンドルや辰野の作品は、幾つか実物見てるし、このブログ内でも写真載せて紹介してましたが、ウォートルスは知らなかったなあ~(まあ、建築は門外漢ではあるので当然かもしれませんが)。

薩摩藩紡績所、大阪造幣寮、竹橋陣営、銀座煉瓦街、等を設計した人物らしい。

著者はその足跡を丹念に調査したらしく、奄美大島での白糖工場を実地で検分・調査した話やその後、上海での足跡を追い、それからアメリカのコロラドでシルバーラッシュで一山当てて、大成功したそうです。

コロラド(デンバー)では、鉱山技師、鉱山経営者として記録されているとのこと。

確か荒俣さんの明治産業遺産(?)とかの本、読んでことありますが、あの系の話です。個人的にはこういうの好きなんだよねぇ~。大変興味深く読みました。

その辺の本も出てるらしいし、機会があれば読んでみたいかも?
ーーーーー
技術と芸術の融合。
ガウディが出てくるんだけど・・・私もスペインでサクラダ・ファミリアやカサ・ミラとか見てるんだけど、確かに悪くないんだけど、私の趣味には合わないってのが実物を見た感想です。
私には、ちっとも美しく見えないんですよ、これが・・・。

まあ、晩年のガウディのストイックなまでの執念にはそそられるものがあるのですが、う~ん、何故あれほどまでに世界で賞賛され、評価されるのか個人的には謎です!ハイ!

ガウディはゴシック建築を十分に研究し、その問題点(推力の均衡を取る為にフライグ・パットレス等を必要とする点)を克服しようとして、あのサクラダ・ファミリアを設計したというのですが・・・・。

サクラダ・ファミリアにゴシック建築の崇高さ、明晰な合理性、絶対的な『上』への上昇志向等々を感じることはできなかったんですが・・・私にはね。

違うんだよね。
特にシャルトルとかとは。

元々が聖地であり、未だに地下奥深いところに、水が湧き出るその場所を覆い隠すかのようにしてひたすら天へ、天上のエルサレムへと人々を誘うゴシックの大聖堂。

正直、格が違うと思うんだけどなあ~。
両者に行ってみれば、分かるはずだけど、その労を惜しむ人が多いのか・・・。

まあ、余談は置いといて、ガウディがゴシック建築を念頭に置いていたことを知れたのは収穫でした。まあ、スペインだったら、アルハンブラ宮殿の方がはるかに素敵ですけどね。

コルビジェのシンプルさよりも、シンプルでいながら、繊細さを伺わせる意匠にこそ、価値を見出しうる私ですから。お金儲けたら、自分で設計した家に住みたいなあ~。

自分で勉強して資格取っちゃってもいいもんね。
そこまで、金と暇が確保できるかがまず問題ですけど・・・(苦笑)。

建築は、形になり、目に見えるのでいいよね。楽しいです。
その代わり、自分一人では何もできないってのもあるけれど・・・・難しいものです。
【目次】
はじめに 教科書にないもうひとつのドラマ 鈴木博之

Lesson1 朝の授業
建築と出会う―揺れ動く心(安藤忠雄)
建築は美しい―技術と芸術の融合(佐々木睦朗)
建築を結ぶ―人間のもつ豊かさの多様な発露としての建築(松村秀一)
建築は広い―密林の奥には何がある(内藤廣)

Lesson2 昼の授業
建築はしぶとい―建築の強さについて(鈴木博之)
建築を感じる―小さき場のために(松山巖)
建築は大変だ―建築家という職業(妹島和世)
建築はかよわい―自然の力は偉大なり(水津牧子)
建築が毒になる―シックハウス問題(田辺新一)

Lesson3 夜の授業
建築を探る―謎のお雇い建築家(藤森照信)
建築に刃向かう―歴史を見直す、歴史から見直す(山岸常人)
建築は直せる―技と心と心意気(西沢英和)
建築はあやしい―お城も給電も原爆ドームも(木下直之)
建築と闘う―巣のビスとに毒だみ茶を(石山修武)
「建築学」の教科書(amazonリンク)
ラベル:書評 建築
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2010年07月11日

「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社

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最近よくみるビジュアル重視で、文章量のきわめて少ないタイプの新書です。新書にしては値段が高いが、文字を読む層ではなく、本を眺める層の方が圧倒的に多いのでしょう。

売れているんではないかと思います。
紙も厚めのしっかりしたタイプで写真の発色はいいですし、綺麗です。

でも、この説明でどれだけの人が内容が分かるかは、はなはだ疑問です。あまり馴染みのない珍しい写真があって、十分な説明が必要なのに、紙面の少ないところで無理に説明しているので相当内容が飛んでますし、この手のビジュアルを好む人が基礎知識や前提となるものを知っているようには、とうてい思えません。

巻末に用語の説明があるのはいいのですが、無理があります。
個々の解説で現地の様子から、歴史、意匠の説明、多作品との相違点の指摘等、盛りだくさんにしてしまっている為に、本としての出来はいいように思えません!

もう少しテーマを絞って一点の解説を期待したかったけど、万人向きにする為に、こうなってしまったんだろうなあ~というパターンみたいです。

写真と説明文がしっくりこないです。ただ、著者の翻訳された本は、私もだいぶ読んでいたりするので、本来きちんと書ける方なのでしょうが、まあ、いろいろな制約下故なのかなあ~と勝手に推測していたりします。

是非、行ってみてみたいと思わせるだけの魅力ある建築物、壁画等を紹介してくれているのは、貴重だと思います。非常に手軽だしね。

でも、わざわざ購入して手元に置いておくほどではないし、邪魔になるので個人的には一度読めば十分の本でした。
【目次】
第1章 ロンバルディア地方
第2章 エミリア・ロマーニャ地方
第3章 ヴェネト地方
第4章 トスカーナ地方
第5章 ラツィオ地方
第6章 アブルッツォ地方
第7章 プーリア地方
第8章 カンパーニア地方とシチリア島
用語解説
カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅 (中公新書)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「フランス世界遺産の旅」山田 和子 小学館
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
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2010年03月20日

「大聖堂」パトリック ドゥムイ 白水社

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今年の夏、ようやく数年振りにシャルトルに行けることになりまして(6月22日より8日間)、嬉しさいっぱいでゴシック建築の本を再び読むことにしました。

そのタイミングで見つけた本です。クセジュにこんなのあったの知らなかったのですが、それもそのはず、今年出たばかりの本でした。

しかし、さすがはクセジュ。新書なのに、その内容の質がなかなかに高い! よくぞこの厚さで、ここまでの内容を詰め込んだものと拍手したくなります(笑顔)。

それっくらい、類書に見られないだけの学術レベルの高さと、昨今の学問の成果を取り込んでいる感じです(もっとも、素人の私の目には、そう思われるという視点なのであしからず)。

実に勉強になるかと思います。

ゴシック建築たる、大聖堂の建築を可能にした社会的・歴史的・経済的背景を初め、そこに描かれた図像学的な意味等、基本は押さえてある一方で、美術史・建築史的なものよりも歴史的な視点の方がより重点を置かれているかもしれません。

シュジュが元にしたディオニュシウス文書(ディオニシウス文書)の光の形而上学についても、きっちり説明されているし、ゴシック建築を可能たらしめた『棟梁』についての説明も過不足無く、なかなか正確だと思いました。

一方、本書の特徴としては、聖堂参事会についての説明に、一章を丸ごと費やしています。

私有財産を保持しつつ、神へ使える集団組織であり、長期に渡る大プロジェクトである大聖堂建築を支え、且つ可能にした重要な要素でありながら、類書によっては全く触れられる事さえなかったりしますが、本書はかなり詳しく述べています。

この章の為だけにでも読んでもいい本です!

あとジュベについても、かなり詳しいです。これも類書にはあまり見られない点ですね。

あとそれほどまでに素晴らしい大聖堂建築を破壊に導いた、その後の歴史についても淡々と、しかし、鋭く記述されています。イギリス人とは違い、皮肉の一つもありませんが、なかなかに手厳しいですよ(笑)。

でも、良書だと思います。

しかし、エッセンスが凝縮されているわけでもあり、本書を堪能するには、是非、類書も読まれることをお薦めします。本書だけ読んで、本書の内容をきちんと理解できる、ということはかなり難しいと思いました。

あ~、この本読んでいて改めて、シャルトル大聖堂行きたくなりました♪

本書で興味を持った箇所は以下で抜き書きメモ:
大聖堂~読書メモ
【目次】
序 大聖堂とは何か

第1章 西暦一〇〇〇年以前の司教とその教会
司教の権能
どのような建物にするか

第2章 聖堂参事会、大聖堂の魂
聖堂参事会の成立
神を讃える仕事
教育事業
慈善事業
参事会境内

第3章 大聖堂の黄金時代(一一四〇~一二八〇年)
隆盛期
聖なる思想家たち
新しい建築術
発展過程と伝播
内部空間
ファサードのメッセージ
建築作業の流れ
資金調達

第4章 傷ついた大聖堂、再発見された大聖堂
大義をかざす偶像破壊者たちの蛮行
ロマン主義時代の再発見
今日の大聖堂
大聖堂 (文庫クセジュ)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin
「ストラスブール」宇京頼三 未知谷
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
中世思想原典集成 (3)~メモ「天上位階論」「神秘神学」
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット ソフトバンク クリエイティブ
その他、うちのブログ内にはいっぱい・・・(笑)。
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2010年01月05日

「新版 ヨーロッパ建築序説」ニコラウス ペヴスナー 彰国社

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かなり分厚い本で分量があるので、読むに値する本かまずは私の一番好きなゴシックに関する3章、4章を読んでみました。
(買ってから、確認するのもなんですが、購入前にじっくり読む機会が無かったので)

う~ん、確かに建築について書かれてはいます。間違ってはいませんが、ただそれだけ。中世ゴシック建築を生み出した背景、理念、パッション等、ちょこっと触れてはいるものの、それはおまけかな?

逆に言えば、私が一番知りたいものが何一つ書かれていません。

これぐらいの内容だったら、別にどんな本読んでも同じような気がします。少なくとも私は、本書からゴシック建築に関する限り、何も得るものはありませんでした。知ってるもん、これぐらい。

勿論、たった一冊でヨーロッパ全体の長い歴史に渡る建築物を紹介すること自体、困難、つ~か無理なのをやっているのは重々承知なのですが、ほんの一箇所でも何かキラリと光る鋭い考察や着眼点、明晰な分析等あるかと思いましたが、全く見受けられません。

端的にいうと、感動しないもん、こんなんじゃ。

近くの図書館に寄贈するか、どっかに売ってしまおう。高かったけど、無用な本は、邪魔なだけです。大失敗!

2章のロマネスクも少し読んだけど、これも駄目だったので残りは読まないことにしました。金よりも時間がもったいないです。今年最初の失敗でした。
【目次】
1章 微光と夜明け(4世紀‐10世紀)
2章 ロマネスク様式(1000年ごろ―1200年ごろ)
3章 ゴシック様式の初期と盛期(1150年ごろ―1250年ごろ)
4章 後期ゴシック様式(1250年ごろ―1500年ごろ)
5章 ルネサンスとマニエリスム(1420年ごろ―1600年ごろ)
6章 ローマカトリック教国のバロック様式(1600年ごろ―1760年ごろ)
7章 16世紀から18世紀までのイギリスとフランス
8章 ロマン主義運動、復古主義、近代運動のはじまり(1760年―1914年)
9章 第一次世界大戦の終わりから今日まで
アメリカ建築についての補記

新版 ヨーロッパ建築序説(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「世界の建築第5巻 ゴシック」飯田喜四郎 学習研究社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「ゴシック美術」エリー・ランベール 美術出版社
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
その他、多数。
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2009年11月29日

「ストラスブール」宇京頼三 未知谷

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物凄く分厚いうえに、値段6千円。デフレのこの時代にこの価格ですか・・・と思いつつも、読んでみると中身が実に&実に、濃いのですよ。

クリスマスでも有名ですし、あのレースで編んだかのような繊細で美しい大聖堂の建築で知らぬものはいないであろう・・・(知らぬ者は切り捨てます)ストラスブール大聖堂を中核に据えつつ、歴史的な側面や建築面、文化面など大変多様な観点から、ストラスブールという街を遡上にあげてもう百科辞典並みに情報を集めているのが立派です。

著者は学者さんですが、少なくともゴシック建築の専門家ではなく、又、著作に建築に関するものも無いようですが、「アルザス」という地域に対して関心を持って、長年研究をされている方のようです。

従って、ゴシック建築に関する部分で頻繁にエミール・マールやルイ・グロデッキ、アンリ・フォション、ヴォリンガー等の定番中の定番のゴシック建築の著作を踏まえて、そこでの引用がなされていますが、実によく調べられているんだなあ~と思います。巻末にあがっている、ゴシック建築の関係の文献なら、ほとんど全部私の既読でしたので、引用されている部分もなるほどねぇ~と納得しつつ読みました。

時々、そんな文章あったっけ?という私の記憶力の無さは、まあおいといて・・・・それはそれで勉強になりました!(ハハハ)

そうそう、フルカネリまで引用されていたのは、ちょっとビックリ。

ご自身による研究の成果というよりは、百科全書的に・網羅的に資料を集め、取捨選択しつつ、ストラスブールという都市を、地域を浮かび上がらせるような作品となっています。

第4部、第5部は、私個人の関心から言うと、不要で興味無かったかな?本書は過去の歴史から踏まえて、現在までを映し出そうというので本来の主題にはあってるんでしょうが、私の関心はあくまでもゴシック建築と歴史的な都市成立等なんでね。

でも、本書は価格には十分ペイするだけの価値があると思いますよ~。しょうもないビジネス書に1500円出して、何冊も読むよりは、人間として幅が広がるかと思いますが、買う人(更に言うなら読む人)は少ないんだろうなあ~。もったいない!

出版社の未知谷。
実は、こないだまで潰れてると勝手に誤解していて大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。昔から高額でマニアしか手を出さないような本を出版されてましたが、健在なんですね。喜ばしい♪

以前も買いましたが、数少ない読者なんで許してもらって、今後も是非、読む価値のある本を出していって頂きたいですね。値段はキツイですが、図版も豊富だし、説明の文章をうまく助けていて意味のあるカラー口絵となっているしね。価格はしかたないのか・・・でも、もうちょい安いといいんだけど・・・。

でもね、結構、いい挿絵を使っていますよ。「阿呆船」とかも結構好きだし、ステンドグラスの写真も悪くないでしょう(笑顔)。

私の大好きな大聖堂にまつわる伝承・伝説の類いも豊富に紹介されていますし(面白いのがいっぱいある)、ゴシック建築の説明としても、結構水準高いと思います。

ゴシックを支える「光」の説明や、シュジェとかもきっちり説明されてますし・・・。ただ、どうせなら、もう一歩突っ込んで光の形而上学そのものや新プラトン主義まで行けば、ほぼ完全だと思ったんですけどね。

ステンドグラスの「青」については、すみません、自分の知識の欠如を痛感しました。貴重で聖母マリアに使われる色というレベルは押さえていましたが、青の語源として古典ラテン語の語義では、「不安定・不正確」であり、キリスト教が光になると、光は空の天を示し、つまり、青(い空)になるのだそうです。

知らんかったです無知な私。今度、その辺についての資料を読んでみよっと。

それから天が青になり、聖母のベールも青になり、写本(たぶんランブール兄弟のあの時祷書もそうじゃん!)へも広がっていくそうです。
う~む、頭良くなっちまった~(笑顔)。

彫刻の予型論などもちゃんと触れてるし、機械仕掛けのからくり時計(天球儀とかとも連動)とかも他の地域のものと関連させつつ、ストラルブールで故障から修理して動くまでのエピソードなども盛り沢山に紹介されています。

とりあえず、ストラスブール行くなら、絶対に目を通しておくべき本でしょう。読了しなくても良いでしょうが、実物を観に行く前日に、関連するところを読んでおけば、どれほど楽しさが倍増するか分かりませんね!

見終わった晩に、ホテルでゴロゴロしつつ読んだりするのも楽しそう。重くてかさばるか? kindleみたいな電子書籍にして欲しいかもしんない?

この本を読むと、絶対にストラスブールへ行きたくなるのが困ったところかな? 元々、カルカソンヌの次の次くらいに行きたいところだったしね。

たぶん、行っても私の中ではシャルトルの絶対的な地位は揺るぎそうにありませんが、これからのクリスマス、さぞかし世界中から観光客が訪れて混雑してそうですね、行きたいかも~♪

値段が、正直ちょっと抵抗感ありますが、手元に置いておく価値はある本でした。あとね、個人的な話だと、シャルトル版でこの手のものを書いてみたいというのが、ここ数年来の目標なんですが、資料読んでないんだよねぇ~。

人生短いんだし、少しづつでも作業を進めないとなあ~。なのに・・・データベース関係の資格試験の問題集が山積みでそちらもあまり手をつけていない私は、怠け者なんでしょうね。頑張らねば!

本書の中で気になった部分は以下へ抜き書きメモ。
ストラスブール~読書メモ
【目次】
プロローグ―ストラスブールとは?
第1部 川と森から生まれた町
第2部 ストラスブール大聖堂―石のレース編み
 第1章前史―大聖堂への歩み
 第2章ストラスブール大聖堂建立
 第3章ストラスブール大聖堂を飾るもの
 第4章大聖堂の不思議な物語と伝説 
第3部 ストラスブール―暮らしと文化
 第1章衣食住
 第2章祭りと音楽
第4部 ストラスブールの文学散歩
第5部 ストラスブール―「ことばはドイツ、心はフランス…」
エピローグ ヨーロッパ文明の十字路・ストラスブール
ストラスブール―ヨーロッパ文明の十字路(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
ゴシックということ~資料メモ
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
中世思想原典集成 (3)~メモ「天上位階論」「神秘神学」
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
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2009年04月12日

「世界の古塔」佐原 六郎 雪華社

実はこの本、4ヶ月か半年以上読み終わるまでかかってました。別に分量があるとか、特別つまらないからとかそういうわけでもなく、他の本も並行して読んでいたら、本書は小説とは違って章毎に独立していたのでつい一つの章が終わるとしばらく放っておいて、また読むということを繰り返していたら、こんなに読了まで時間がかけてしまった。

決して、面白くて読むのを止められないという本ではないのですが、無用な知識が満遍なく散りばめられていて、まさに教養の為の教養みたいな本です。

ビジネス書を熱心に読み漁る効率至上主義の方からは、『無駄』とか『時間の浪費』とか切って捨てられそうですが・・・、だからこそ、本書は価値があるのでは・・・と思います。

本書を読んで、お釈迦様の真骨が実在し、それが日本にあることを初めて知りました。まして、それが外務省のホームページで紹介されているなんて夢にも思いませんでしたよ~(笑)。新泰寺のことです。

超宗派の【新泰寺】が何故名古屋にあるのかも疑問でしかたありませんでしが、『トヨタ伝』の本を読んでいて、トヨタと関係がありそうなことを知り、びっくりました。

これこそ、知識が新たな知識(情報)と結び付いていくパターンですね! 楽しいです♪

具体的な内容はというと、主に文献を中心としていて実際に直接現地で確認したというものは少ないです。その代わり、本当に縦横無尽にいろんなところから、情報を集めてそれをきちんと整理分類しつつ、まとめてあり、ある種博物学的な趣があります。

塔にとり憑かれた観のある著者が営々と興味に任せて、資料を集めたパワーを感じさせる内容で、世界中の『塔』の形や扱われ方などを通じて、これだけ文化的な意義を見出せるものかと素直に驚きました。

日本の古塔から、キリスト教の塔、イスラム教の塔など、その対象が塔であるならば全てを含み、その多岐に渡る幅広さも加えて、読んでおいて悪くないかも?

私、そんなに塔に興味はないんですが、本書のところどころに引用されているエピソード等に、実に面白いものがあったりして、見逃せません。

受け入れるキャパが広い方、何か新しい発見があったりするかもしれません。もっともそれを見出せるだけの素地がなかったら、単に退屈なだけの本かもしれません。だけど、私はこういうの嫌いじゃないです(笑顔)。
【目次】
I東西の仏塔
 大和の塔婆
 朝鮮の石塔
 中国の仏塔
 古代インドのストゥーパ
 セイロンのダーガバ
 
Ⅱオベリスクと塔
 オベリスク
 ワシントンのオベリスク塔

Ⅲキリスト教の鐘塔
 イタリアのカンパニーレ
 サクソン塔とその社会的背景
 アイルランドの円塔

Ⅳ回教塔
 回教塔概観
 螺旋形光塔
 クトゥブ・ミナールその他
世界の古塔(amazonリンク)

ブログ内関連記事
日泰寺 本物のお釈迦様の遺骨(仏舎利)があるお寺
「塔のヨーロッパ」佐原六郎 日本放送出版会
ラベル:建築 書評
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2008年10月19日

「聖なる空間をめぐる」前川道郎 学芸出版社

う~ん、ゴシック建築で定評のある前川氏の本ですが、著者ご自身が書かれていますが「ゴシックということ」や「ゴシックと建築空間」が理論的な本であるのに対し、本書は具体的な個々の建築物に重点を置いた本となります。

第1章は包括的な説明になりますが、う~ん、私的にはもう散々あちこちで読んだレベルで、特に意味はないです。

第2章以降、具体的な建築物を採り上げ、説明されていますが、その解説水準の深さや分量には、かなりのバラつきがあります。興味のあるものだけ拾い読みするので良いのではないかと思います。

個人的には、サン・ドニとシャルトルだけを重点的に読んだのですが、シャルトルの部分は、「凍れる音楽 シャルトル大聖堂」で著者が書かれた文章の一部に加筆・再現したものだそうで、そちらを既読の私には、あえて本書を読む意味が無かった!

ゴシック建築の持つ精緻な理論的背景などは、本書では軽くしか触れられず、あくまでも具体性を主眼においているうえに、私の一番好きなシャルトルは他の本からの引用だもんな。買う前にチェックしておいて正解でした。

この本は購入を止めました。あまりにも物足りなくて得る物ないんで。さて、この分の購入代金は別な本にあてることにしようか。
【目次】
第1章 中世の聖堂
キリスト教的フランスの成立
プレロマネスクの教会堂
ロマネスクの教会建築
シトー修道会
ゴシックの大聖堂
聖堂にかかわる用語について
聖堂の平面構成
聖堂の主廊の立面構成
聖堂の天井形式
修道院建築の構成について

第2章 ロマネスクの聖堂
ジェルミニ・デ・プレの小礼拝堂
クリュニ大修道院
パレ・ル・モニアルのサクレ・クール巡礼聖堂
オータンのサン・ラザール大聖堂
ヴェズレーのサント・マドレーヌ巡礼聖堂
トゥールニュのサン・フィリベール大修道院
フォントネ大修道院
ル・トロネ大修道院
セナンク大修道院
シルヴァカーヌ大修道院
サン・ネクテール大修道院
オルシヴァルのノートル聖堂
コンクのサント・フォワ巡礼聖堂
モリサックのサン・ピエール大修道院
セラボンヌ小修道院
サン・ミッシェル・ド・クーシャ大修道院
サン・マルタン・デュ・カングー大修道院
サン・サヴァン・シュル・ガルタンプのサン・サヴァン大修道院
カーンのサンテチエンヌ聖堂
ペリグーのフロン大聖堂
その他

第3章 ゴシックの聖堂
サン・ドニ大修道院付属教会堂
サンスのサンテチエンヌ大聖堂
ノワイヨンのノートルダム大聖堂
ランのノートルダム大聖堂
パリのノートルダム大聖堂
シャルトルのノートルダム大聖堂
ランスのノートルダム大聖堂
アミアンのノートルダム大聖堂
ボーヴェのサン・ピエール大聖堂
ブールジュのサンテチエンヌ大聖堂
パリのサント・シャペル
クータンスのノートルダム大聖堂
その他
ブログ内関連記事
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版
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2008年07月13日

「シャルトルの大聖堂」ジャン・ジャック ブリズバール 西村書店

イラストが多用され、漢字ではなくひらがなが多く、基本的には子供の読む絵本といった体裁の本です。

しかし、書かれている内容は本質的にポイントを押さえており、決して侮るべきものではないと思います。下手な解説本よりは、はるかに本質を突く素晴らしい内容を分かり易く表現しています。

たとえば、教会の中にある井戸のこと。その水には病気を治す効力があるとされ、たくさんの人を呼び寄せるようになったとか、同様に教会にあった黒い聖母像は、ドルイド僧が祭ったものだとか、さりげなく書いてあって、私的にはびっくりしました。

そう、一つは「聖なる井戸」でケルト信仰の名残りであり、地母神を祭ったものをそのまま聖母マリアにすり替えたのが、現在のものに続く黒い聖母であり、感慨深いです。

聖遺物たる聖母の御衣をかざして敵を退けた話などまで紹介されています。

また、ゴシック特有の建築や彫刻、ステンドグラスに至るまで簡にして要を得た記述は、なかなか子供向けとは思えないものがあります。だって、普通にゴシック建築に関心がない大人のどれほどの人が、ここに書かれた内容を知っているでしょうか? 私も数年前の状態だと、この本を読んだ子供に負けますよ、きっと!

シャルトル大聖堂に行ったことのある方、厚い本を読むのが苦手なら、本書をお薦めします!! ちょっとこどもっぽいに抵抗を覚えますが、それを我慢するだけの価値がある本です。

最後に本書を読んでいて強く共感した部分を引用:
シャルトルの大聖堂はまたたいへんふしぎな場所なのです。そこで生活し、そこで働いている人は大聖堂にほれこんでいます。ある人々は偶然に足を踏み入れたのですが、次の瞬間、彫刻や柱頭やステンドグラスや石がかれらをその場にくぎづけにしてしまいました。まるで魔法にかかったとしか思われません。大聖堂を案内するガイドはそのような人たちなんです。
私が行ったことのある世界遺産の中では、ここが一番かもしれません(二番はアルハンブラ宮殿)。実際に、日本語でシャルトル大聖堂に書かれた本の著者は、おしなべてこの魔法にかかった人達であることが分かります。

あのナポレオンの言葉を引くまでもなく、シャルトル大聖堂で『神聖さ』や『聖域』を感じられない人は、ちょっと私の友達ではいて欲しくないなあ~。

私も未だにこの魔法からさめておりません・・・。

シャルトルの大聖堂 (フランスのくらしとあゆみ)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂の案内パンフ
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店
「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin
「大聖堂ものがたり」アラン・エルランド・ブランダンブルグ 創元社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「Cathedral Of The Black Madonna」Jean Markale  Inner Traditions
「シャルトル大聖堂」アンティークポストカード
他にも中世哲学やゴシック建築関係まで広げると、相当数の本を読んでますのでご興味のある方は、当ブログ内を検索してみて下さい。
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2008年06月15日

「昭和初期の博物館建築」博物館建築研究会 東海大学出版会

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本書で扱われるのは、上野にある東京国立博物館と国立科学博物館の二つの建築物である。両者は元々1つだったものが、大正14年に自然科学系資料を東京博物館(現在の国立科学博物館)へ移管し、東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)は、歴史系・美術系としての性格を明確にしたそうです。

東博(東京国立博物館)は、年間パスポートをもっているのでそこそこ頻繁に行っているし、文庫分片手に用もなく椅子に座って読書して時を過ごしていたりして身近に感じていました。

しかし、本書で紹介される建物の意匠は今までも気になってはいましたが、漠然と疑問に持つだけだったのが目から鱗とはまさにこのことです! 休憩室の換気口金物とかいつも椅子に座って眺めた時に気になってたんで、やっぱりきちんと意図して作られてたんだなあ~っと率直に嬉しくなりました。

当時は展示物の照明として、天然の自然光を利用せざるを得ないところもあり、当初は自然光を間接的に取り込む前提で展示室が作られていたというのも実に納得のお話でした。しかも、相当に試行錯誤と事前に調査・実験が繰り返され、その経過も資料としてまとめられたうえでどのように展示物が見えるか、見えたときの感じ方までも含めたかなり突っ込んだ調査であり、当時の関係者のひとかどならぬ熱い想いをうかがわせます。

予算や資源の制約、意見の対立等々、いつでもどこでも生じる普遍的な問題ですが、それらを一つ一つ克服しながら、より願わしい理想の形へ一歩で近づけようとする強い意志。まさに、あの時代の中で人々の想いがこもっています。

いやあ~実に面白いです。

西洋式的な建物がもてはやされた明治から一転して、東洋的・日本的な建物こそ、日本人が作り出すべき建物とする様式論の変遷など、まさに建築は時代の産物であることを痛感させられます。

今でこそ、数年前に修復されたあの表慶館も味わいがあるとおもわれていますが(踊るサテュロスが展示されてたとこ)、本館を再建する際には、どうしょうもない安っぽい西洋かぶれ的な散々たる評価をしています。本館のデザインと調和しなかったら樹木をまわりに植えて隠せばいいとか・・・おいおい~本音ベースだとかなり凄い発言がされていたようです。それが故に、読んでて楽しいのですが(笑顔)。

最新式の技術もふんだんに採用され、国産技術の向上にもずいぶん資したようです。シャッターとかいっぱいあるんだって。

そうそう、あと館内にある75台の電気時計は、どの時計も同じ速度で進み、同じ時刻を示すんだって。これらは子時計で地下の設備室に隠された「親時計」によって制御されているんだそうです。へええ~。

とにかく、知られていない建物の素晴らしさを教えてくれる素晴らしい本です。巷にあふれる「博物館に行ってみよう~♪」的な薄っぺらなものではなくて、こりゃやってくれるね!と思わず、感嘆しちゃう情報の宝庫です。

科学技術館のステンドグラスとかも、確かに見たとき、なんでこういうのがここにあるんだろう・・・と思いましたが、その裏に製作者は誰なのか?という謎があったり、本当に楽しいし、興味深い!

だてに日本を誇る収蔵物があるだけではなく、それを支える器としても建物自体が既に、価値ある存在であることに気付かされます。心ある方、是非、読んでみて下さい。なんか嬉しくなって、博物館(or科学技術館)に出掛けたくなる事、間違いなしです。


話が前後してすみません。これも忘れないうちにメモ。東博は元々上野にあったのではなく、湯島聖堂にあったんだって! これって絶対に知っている人は、ほとんどいないと思います。私は、あの近くで働いていたことがあり(神田明神の前を毎日通って通勤してた)、湯島聖堂にも入ったことありますが、かなりの異界な感じの場所なんですよ~。

あの湯島聖堂の建物が実は、博物館として利用されていたとは・・・・!! 意外!意外過ぎる~! 
是非、行った事ない方、一見の価値ありです。東京もこうしてみると、なかなかに面白いです(満面の笑み)。
【目次】
第一章 東京博物館本館
ステインドグラスの製作者は誰か
本館復興計画案の推移
科学の殿堂を支えた技術
石材に職人の技を見る 石工 森田定吉さんに聞く
展示配置図

第二章 東京帝室博物館
形態決定のプロセス
宮内省設計技師
実施設計での意匠
復興本館の照明計画
国宝を支えた技術
陶芸家が鬼瓦を造形
「国産化」建築の極み-昭和十三年、東京帝室博物館の意味
上野の総理官邸
展示配置図
昭和初期の博物館建築―東京博物館と東京帝室博物館(amazonリンク)

ブログ内関連記事
東京散策シリーズ~神田明神、湯島聖堂、東京国立博物館(1月2日)
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2008年06月11日

「大聖堂ものがたり」アラン・エルランド・ブランダンブルグ 創元社

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もう何冊もゴシック建築に関する本や大聖堂に関連した本を読んできたが、本書はちょっと毛並みが違うタイプの本です。建築史や美術史的な観点からではなく、また中世特有のあの熱情に駆られた民衆の精神や社会的側面からでもなく、職人達の視点から見たものというのがもっとも適切なのかもしれません。

サブタイトルに「聖なる建築物をつくった人々」とあるが、それが指すのは民衆ではなく、職人の方だったりする。その意味で、「カテドラルを建てた人びと」とは似ているようで微妙に違いがあるのでご注意を! あちらの方がはるかに面白く、感動的ですらあった。

写真や図版が多く、ヴィジュアル的に分かり易いのは長所だが、大した分量の無い本の為、説明がいささか散文的で面白みに欠ける。基本的に知っていることばかりだったのだが、シャルトル大聖堂に関する文章で大変珍しいものが引用されていた。これはシャルトル好きの私としては、めっけもの! それだけで読む価値があった。

なんせ、シャルトル大聖堂が今の言葉でいうならば建築確認を受けたところ、あちこちに不備・欠陥が見つかり、このままだと崩れてしまう危険があるから修繕せよという報告書なのだから、実に興味深い! 是非、原文でこの資料を探して読んでみたいものである。現代フランス語に翻訳されたものを日本語に更に翻訳しているわけだが、フランス語で読んでみたいと心から思う。やっぱ、アテネ・フランス通わないといけないかなあ・・・。

以下、抜き書きメモ。
シャルトル大聖堂の鑑定(「教会参事会記録簿」1316年) P164~

シャルトル大聖堂の建築の品質を心配していた司教座聖堂参事会は、鑑定を依頼した。鑑定を行ったのは、国王付きの建築家ニコラ・ド・ショーム、パリのノートルダム大聖堂の建築家ピエール・ド・シェル、パリの木大工の親方代表ジャック・ド・ロンジュモーである。

参事会に対し、私たちはここに、丸天井を支える4つのアーチが十分堅固なものであること、それらのアーチを支える柱が十分な強度を持っていること、ヴォールトの要石が十分堅固であることを確認する。

鑑定に当たっては、丸天井を取り除く必要があると思われる場合でも、その半分以上を取り除いてはならない。足場については錯綜したステンドグラスの上部分から組み、この足場によって、大聖堂の内陣仕切りと、下を行き交う人々を守る。

また、この足場を利用して、鑑定に必要な、丸天井内部に造られるべき別の足場を組む事とする。

 年齢順に、イタリア出身のシャルトル司教座聖堂参事会員ジャン・ド・レアテ、施行者シモン・ダギュオン、木大工シモン、施行に関わった親方代表ベルトー面前で、パリの建築家ピエール・ド・シェル、国王陛下付きの建築家ニコラ・ド・ショーム、パリの木大工の親方ジャック・ド・ロンジュモーが発見した、シャルトルのノートルダム大聖堂の欠陥をここに述べる。

 私たちはまず、中央交差部の丸天井を検査した。この部分は修繕が必要である。早く修繕しないと、大きな危険を引き起しかねない。

 さらに、丸天井を支える飛び梁を検査した。この部分は、目地の目塗りをし直して再検査する必要がある。早く行わないと、大きな損害を引き起しかねない。

 さらに、柱廊玄関上部の歩廊の柱を大々的に修繕する必要がある。また、各開口部の中に、その上のものを支える支柱を立てるのが望ましい。その際、1本は、角の支柱の上にある外側の台石から取り、もう1本は大聖堂の主要部分の増強部から取る。さらに、上からの加重を小さくするために、この支柱を補強する。必要だとおもわれるあらゆる固定材を使用する事。

 さらに、衝撃を与えることなくマドレーヌ像を元の場所に戻す方法を吟味し、それをベルトー氏に伝えた。

 さらに、大塔において(私達の鑑定では、これも大がかりな修繕が必要である)、一方の側面に亀裂が入り、小塔の一つが破損していることを確認した。

 さらに、正面の柱廊玄関にも欠陥があった。屋根が破損しているのである。各屋根に支えとして鉄製のつなぎ材を設置する事が望ましい。そうすれば、あらゆる危険を取り除くことができるであろう。

 さらに、中央交差部の丸天井にて作業を行うために、錯綜したステンドグラスの上から第1の足場を組む事に決定した。

 さらに、小天使が取り付けられた真束が完全に腐っている上に、身廊のもう1つの真束とぴったり合っていないことを確認した。そのもう1つの真束が、木組みとの上部接合部分において破損しているからである。いい作業をしたいのであれば、後陣の上にある真束を二層にし、小天使を第2の真束に取り付ければいい。こうすれば、後陣の外構えに用いられた木材の大部分は、再利用することができるであろう。

 さらに小さな鐘がいくつか設置された鐘楼も、満足のいく状態ではない。鐘楼が建設されたのが随分前で、もはや古くなっているからである。大きな鐘が設置された鐘楼も同様である。これらは早急に修繕を施す必要がある。

 さらに、屋根組みに用いられているつなぎ材4本は、一方の端が腐っているため、取り替えるべきである。もしそれらを取り替えたくないのであれば、私たちが提示した方法でそれらのつなぎ材を修繕する必要がある。

 V・テルモ篇「考古学会議」(1900年)所収 H・プランディエ訳
【目次】
第1章 新たな世界
第2章 建築家
第3章 表現手段
第4章 建設現場
資料編 大聖堂の建設者たち
大聖堂ものがたり―聖なる建築物をつくった人々 (知の再発見双書 136)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版
「ゴシック美術」馬杉宗夫 八坂書房
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「世界の建築第5巻 ゴシック」飯田喜四郎 学習研究社
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin
う~、もっといっぱい読んでいるのですが、キリがないのでこの辺で。
ご興味のある方、うちのブログ内検索してみて下さいませ。
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2008年05月05日

「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新

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新書にしては、実に美しい写真が豊富に入っており、写真を眺めているだけでも初心者の方にはロマネスクというものが漠然とイメージできると思う。

使われている写真もロマネスクの特徴を的確に捉えた、何よりも美しいものが多くて楽しい♪

本書が企画として成功し、売れているのは納得がいくだろう。しかし、逆に言うと、本書にはそれだけしか価値が無いように思える。フランス各地にあるロマネスク建築を紹介した本としては、質より量を優先させてしまった結果、必然的に個々の建築についての解説が不足しています。

率直に言うと、エミール・マールの本の翻訳をしていた著者への期待が大きかった故に、失望がより大きかった! ロマネスクの解説という点では、はなはだレベルが低すぎる。頁数が足らなくて、魅力が十分に伝えられていないと強く感じました。非常に残念だ。

また、よく読むと分かるが写真と文章の解説は相互の関連がなく、文章はそれだけで書かれた後に、ビジュアル的なレイアウトだけで写真が要れられているのが分かる。一見すると、華やかだが、ロマネスクの深い理解には至るわけがない。

そもそも、図像的な点を考慮するならば、写真へは番号が振られ、個々の写真への言及があってしかるべきだが、本書の場合、写真への直接的な言及は一切無い。

実にたくさんの場所・建築物を採り上げ、素敵な写真が多いもののただ眺める以上の価値が無いのが惜しい。大衆に媚売って、レベルを相当落とした結果の売り上げ増だろう。個人的には、この本はいらない!

でも、量のみを優先させた成果もある。普通では、ロマネスク建築の大判な美術百科でもそれほど出てこないような珍しい場所が出ており、その写真は、日本ではあまりお目にかかれないものでしょう。

でもでも、やっぱり写真が文章と遊離しているし、その建築についてもっと知りたいという好奇心を満足させるには程遠い解説は、ストレスになりそう。かえすがえすも残念な一冊でした(涙)。
【目次】
1章 ブルゴーニュ地方(ヴェズレー、オータン、トゥールニュ)
2章 オーヴェルニュ地方(オルシヴァル、サン・ネクテール、コンク)
3章 プロヴァンス地方(セナンク、アルル、ル・トロネ)
4章 ラングドック地方(サン・ギレーム・ル・デゼール、モワサック、トゥールーズ)
5章 ルシヨン地方(セラボンヌ、サン・ミッシェル・ド・クシャ、サン・マルタン・デュ・カニグー)
6章 リムザーン地方(ボーリュー・シュル・ドルドーニュ、ソリニャック、ル・ドラ)
7章 ポワトゥ地方(ポワティエ、ショーヴィニー、サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ)
8章 ベリー地方(ノアン・ヴィック、サン・ブノワ・シュル・ロワール、ラ・シャリテヒ・シュル・ロワール)


フランス・ロマネスクへの旅 カラー版(amazonリンク)

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2007年12月12日

「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社

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とにかく写真が素晴らしい! 写真の撮り方もさることながら、どれを対象に選ぶか、その「選択」が冴えていると思う。本のサイズにしては非常に大きく写真が載せられていて、写真を最大限に生かすべく文字のレイアウトも考えられている。

解説はエッセイ風で気軽で読み易く、親しみ易い。ロマネスク建築を全く知らない人でも抵抗感無く読めるし、知っている人なら単純な旅行記(取材記?)として読んでも楽しめる。観光ガイドよりは、かなり詳しい説明になっているし、アクセスなども丁寧に説明されているので通常の観光ガイド+αとして現地に持参してもいいかもしれない。

本書を見ていると、改めてロマネスク建築を自分の目で見てみたいと強く感じる。ただ、アクセスの悪い所が多いのでそれだけが難点だけどね。

ロマネスク建築や美術に関する本や全集の写真はしばしば見ているが、本書はそれらに負けず劣らずの価値を有すると思います。きちんとした解説は、他の本を読むとして建築や美術はまず眼から入っていかないとネ! 最善は実物を見ることですが、それが無理ならせめて写真で見たいものです。本書の写真は、ロマネスク建築の理解に大いに役立つと思います。

もっとも堅いこと抜きにして、柱頭の怪しい彫刻などがとにかく好き。タンパンなども素敵だし、Simple is best.を地でいくシトー派の教会堂なども雰囲気が素敵♪

手紙流用形式のロマネスク紹介もいいけど、ちょっと紙幅を取り過ぎかな? もう少し割合を減らせば更に良いかもしれません。手元に置いて眺めていたい本です。
【目次】
ブルゴーニュ地方
 ロマネスク建築の宝石箱
 小さな教会を訪ねる ブランシオン
 トゥニュ 初期ロマネスクの空間美
 オータン 中世彫刻の甘美なささやき
 ヴェズレー 永遠の丘に座す栄光のキリスト

プロヴァンス=コート・ダジュール地方
 シトー派の三姉妹に会いに行く
 ル・トロネ 信仰をはぐくむ光の回廊
 セナンク うしろ姿に宿る気品
 シルヴァーカーヌ 修道士の夢のあと

ロマネスクからの手紙 中村好文

ラングドック=ルション地方
 ピレネー山麓の隠れ寺詣で
 ブール・ダモン 緑に埋もれた小修道院
 カスタイユ よみがえった絶壁寺院
 モレイヤス・ラス・イヤス 小堂を彩る仰天壁画

ミディ=ピレネー地方
 巡礼路の至宝をもとめて
 トゥールーズ 巡礼者が集う薔薇色の教会
 モワサック フランスでいちばん美しい回廊
 コンク 山里に息づく聖女の魂

ロマネスク美術談義 木俣元一

中世美術を見るヒント
旅案内
とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅 (とんぼの本)(amazonリンク)

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2007年11月22日

「奇想遺産」鈴木博之/藤森照信/隈研吾/松葉一清/山盛英司 新潮社

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世界中の変わった建築物を紹介した記事で、朝日新聞の日曜版に掲載されたのをまとめたもの。

うちは日経新聞で以前は、朝日新聞も併せてとっていたけど、だいぶ前にとるの止めたからリアルタイムでは数回しか読んでいません。何か面白いものがあるかなあ~と手にとってみましたが・・・。

結論から言うと、あまり面白いものがありません。ここ100年ぐらいの最近(私の建築についての感覚では)のものが圧倒的に多くて、数百年前に遡って時代を生きてきた建築物は一部しか採り上げられていません。

私の感想でいうと、テスト的に作られた建築物でまだまだ現在もテスト中で海のものとも山のものともならないモノかなあ~って感じです。

でも、今まで知らなかった建築物で関心を持って、もっと知りたいと思える物がありましたので読んでいて完全に無駄というわけではありませんでした。

あと気になったのは解説の文章。肝心の建築物の説明は、平易な反面、あまりにも簡略化し過ぎて内容がほとんどなく、知りたい由来などが全然足りない。それなのに、朝日新聞故か、わざわざ文化論的な(つ~か、現代社会批判的な文章)直接建物と関係のない文章が入っていることが多く、いらいらする。

同一著者によるそういった文章なら、それはエッセイ的な要素として甘受すべきかと思うが、複数著者により、それぞれの論調の方向性が微妙に異なっているその手の文章をまとめて読まされると、余計な文章を入れるな!と切に思う。

何故、素直に建築物の解説だけにしないのだろうか? はなはだ疑問だ?

それはおいといて。個人的に気になったものをメモ。

マレ=ベルニエ村の芝棟。この『芝棟』という言葉を私は本書で初めて知りました。これは、茅葺の屋根の上に植物を植えたもので植物が根を張ることで棟をしっかりさせる狙いがあるらしい。なかなか面白いですね。

しかし、この部分の説明が本書ではきちんとされていなかったりしてやっぱり解説に難有りかも?

笠森観音 千葉県長生郡長南町笠森 16世紀。天台宗の寺院で開基は784年。

投げ込み堂みたいな感じに写真では見えましたが、それとも清水寺の舞台みたいなのかな? 千葉なら遠くないし、今度行ってみようと思います。

武雄温泉 桜門・新館浴場。佐賀県武雄市武雄町武雄550、1915年 辰野金吾の設計。ご存知、日銀本店や東京駅舎の建築家ですね。竜宮城みたいなゴテゴテした温泉街の建物で、どこぞの風俗街のお店のようです(失礼!)。でも、こういうセンスってなんか好きで惹かれるんですよ~。機会があれば、行って温泉に浸かりたいな。佐賀県って行ったことないし、一度くらい行ってもいいかも。

聖ワシリー聖堂、モスクワにあるあの有名なアレ。グリム童話のお菓子の家みたいだけど、ネギボウズがあるからイスラム版みたいなの? すごい言いようですが、やっぱりモスクワに行ったら寄ってみたいところですよね。まさに中心部にある建物だし、TVでなら見たことあるけど、やっぱし楽しそう♪

ゴルのスターブ教会、木造のゴシック教会で有名なものだと思う。さすがはバイキングって感じでこれはリアルタイムの記事で見たけど、その時から気になっていました。どっかにファイリングした記事があるはず? 

本当に世界中にはたくさんの見て回りたい建築物がありますね! 読みたい本もあるし、死ぬ前にできるだけたくさん見てから死にたいですね! 読みたい本も腐るほどあるし、頑張って長生きせねば。今頃になってラテン語勉強しようと本読んでますが、ラテン語できたら楽しい本がたくさ~ん更に原書で読めるもんね! いつマスターできるか?挫折しないかが問題ですが・・・(苦笑)。
【目次】
1章 (時には風景までをも歪める)「奇景・奇観」
ル・ピュイ=アン=ブレ
ナショナル・モニュメント
シアトル中央図書館
名護市庁舎
カンピドリオ広場
カール・マルクス・ホフ
マレ=ベルニエ村の芝棟
ラ・ビレット公園
アンドレ=シトロエン公園
タ・プローム
笠森観音

2章 (都市の奇怪な象徴を意図した)「奇塔・奇門」
キューガーデンのパゴダ
プラターの大観覧車
サグラダ・ファミリア教会
戦勝記念塔
新凱旋門
ワシントン記念塔
ゲートウェー・アーチ
太陽の塔
通天閣
武雄温泉 桜門・新館浴場

3章 (不思議な形をきわめた)「奇態」
シドニーオペラハウス
ロンシャン礼拝堂
ポルト・ドーフィーヌ地下鉄駅出入口
アブラクサス
パーク・メールバイク
メーリニコフ邸
ジョンソンワックス本社
フラットアイアンビル
泥の大モスク


4章 (知的研鑽を提起する)「奇智」
サン=シュルピス教会
パンテオンとフーコーの振り子
オックスフォード大学博物館
サイオンハウスの大温室
テート・モダン
大英博物館グレートコート
オーストリア国立図書館
ベルリン・ユダヤ博物館
クロイスターズ
ウッドストックの音楽堂
屏山書院

5章 (自己流の風流をここまでやるかと思わせる)「数奇」
シュバルの理想宮
旧ムニエ・チョコレート工場
パサージュ・ジュフロワ
マジョルカ・ハウス
サー・ジョンソン・ソーン博物館
ツリーハウス
カステル・コッホ
ワッツタワー
ハースト城
児島寅次郎邸茶室
耕三寺

6章 (神仏の霊験を表現した)「神奇」
聖ワシリー聖堂
キージ島の教会
サンタンジェロ城
ゴルのスターブ教会
聖ミハエラ教会
クリシャン・サイエンス派第1教会バークリー
ファットジェム大聖堂
昌徳宮
首里城正殿と玉陵
御塩殿の天地根元造
会津さざえ堂

7章 (既成概念に確信犯的に叛く)「新奇・叛奇」
アインシュタイン塔
オリンピック競技場
ドイツ連邦議会議事堂
ソニー・センター
ウィーン郵便貯金局
セセッション館
ロースハウス
シュレーダー邸
ル・ランシーのノートル=ダム教会
イタリア文明館
メルモンテ日光霜降
奇想遺産―世界のふしぎ建築物語(amazonリンク)
ラベル:書評 建築
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2007年08月23日

「ランスの大聖堂」ジョルジュ バタイユ 筑摩書房

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バタイユによるランスの大聖堂について書かれた文章。それだけが読みたくて読んでみました。

著者の生きた時代において、大聖堂はなお人々の心の拠り所であったことが痛いほど感じられる作品です。中世ほどの熱狂的な想いとは異なるものの、当時を振り返られることはない現在では考えられないであろう想いが、この作品が書かれた時代には、まだまだ切実に存在していたのを感じます。

世界遺産が残っているようなところには、共通しているのかもしれませんが、何よりも地元の人が大切に思い、慈しみ、守る気持ちがその時代、時代にあり、それが継続してこそ、今の姿があるんだろうなあ~って思わずにいられません。

法隆寺を守ってきた人々なんかも相通ずるものがあるのかもしれないですね。

とまあ、ありがりな感想ですが、悪くはないんですが、正直、心を打つほどではなかった。ユイスマンスの「大伽藍」とは比較にならない!

何故、私がここまでゴシック建築、とりわけステンドグラスに強い関心を持つに至ったか、その原因たる『聖別された空間』への描写はここには無い。しかし、ユイスマンスの作品には、それがある。

他の人がどう評価するかは分かりませんが、私は本書をまた読みたいとは思いません。実際、他の作品は更に興味がないものばかりで、心がピクリとも動きません。エミール・マールの解説を読んで感じるような新鮮な驚愕がありません。勿論、感動もね。
【目次】
Ⅰ 一九一八(ランスのノートル・ダム大聖堂)
Ⅱ 一九三七‐四〇
悲劇=母

プロメテウスとしてのファン・ゴッホ
天体
風景
幸運
戦争の脅威
聖なるもの
星を食べる人々―アンドレ・マッソンの天才
Ⅲ 一九四六‐四八
半睡状態について
アンドレ・マッソン
よみがえるディオニュソス
取るか棄てるか
神の不在
神話の不在
シュルレアリスムと神
ランスの大聖堂 (ちくま学芸文庫)(amazonリンク)

関連ブログ
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
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2007年08月22日

「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版

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翻訳をされているのは、前川道郎氏。前川氏の本でゴシック建築の基本文献として頻繁に出てくるヤンツェンの著作を、ドイツ語から翻訳された資料本。原書で読めない私などには大変有り難い本なのですが、翻訳者ご自身が言われているように、訳がこなれていないうえに原文自体の問題があるのかもしれませんが、本書は非常に読み難い&理解しにくい。

もっとも意訳され過ぎて原文本来から意味が遠ざかってしまうものよりは、逐語訳のような文章の方がこの手の学術書としては、はるかに好ましいと思います。でも&でも、異様に読み難いし、理解するのが難しいです。パノフスキーよりは、まだマシですけど・・・。

ちなみに前川氏自身がゴシック建築という研究対象をいかにして捉えていくかを悩まれていた時に、『空間』として認識するという方法論を採用する際、非常に参考にした一冊が本書であったりするんだそうです。

そう言われてみると、以前読んだ前川氏の「ゴシックということ」で書かれていたことのかなりの部分の源泉が本書であったことが分かります。勿論、あちらの本は、あくまでも本書を踏まえて前川氏が論を進めている訳ですが、これがあって初めて成立した経緯がよっく分かります。

そういう意味で、きっと重要な基本文献の一つなんでしょうね! でも、嫌ってほど読み難い本です。いきなり最初に本書を読んでも普通の人ならまず理解できません。読んでて何語の本かと、息が苦しくなりましたもん、私。おそらく誰かの解説が必要でしょう。それぐらい、難解だと思います。

本来の順序とは逆になりますが、「ゴシックということ」を読んでざっと基本的な流れを一通り頭に入れた後に読んだ方がはるかに理解しやすいです。それでも私は苦労しましたが・・・(涙)。

丸々1日つぶして読書&メモしたが、どうでもいいところ(私的に関心が持てない細かい部分)は、一部飛ばし読みしても相当時間を費やしました。あっ、でも今、平行して読んでるエミール・マールの「ゴシックの図像学」と重なる部分もあって、そこは説明不要だったので結構助かったかも?

おそらく、避けては通れない基本文献です。日本語であるだけでも喜ぶべきでしょう。つべこべ言わず、さっさと読んでおきましょうね。ゴシック建築に関心を持つ方は。どうせ、すぐには理解できませんが、そのうち他の本を読んでいて絡んできた際に役立つかもしれません。

淡い期待と共に義務感から読みました。もっとも、分かり難いけど、分かる範囲では大切な示唆に富む指摘や解釈だと納得がいきます。そういう本です。もっとも、どうしても辛くて読めないなら、前川氏の前述の本に集約されてますのであちらだけで読んでもそれほど困らないかもしれません。あちらが、凄く分かり易くて学ぶ事が多い素晴らしい本だからなあ~。

でも、本書のゴシック大聖堂を「空間(空間限界の認識)」で捉える方法論は、やっぱり慧眼ですね。

本書の内容に関するメモはこちら。
【目次】
第1部 ゴシック教会堂の空間について
第2部 ゴシックの芸術―フランスの古典大聖堂、シャルトルとランスとアミアン

序論 ゴシックと現代
第一章 建てられた大聖堂
 第一節 長堂
 第二節 内陣
 第三節 袖廊
 第四節 光
 第五節 空間とゴシックの空間限界
 第六節 大聖堂の技術について
 第七節 外部の建築構成
 第八節 扉口と彫刻
 第九節 モニュメンタルなステンドグラスの絵
第二章 解釈された大聖堂
ゴシックの芸術―大聖堂の形と空間(amazonリンク)

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「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
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「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
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2007年06月07日

「世界の建築・街並みガイド(1)フランス・スペイン・ポルトガル」羽生修二、西山マルセーロ、入江正之 エクスナレッジ

基本的なノリとして旅行のガイドブックに近い感じで、コンパクトに見るべきものがまとまって小さな写真入りで紹介されている。個々の説明は必要最小限なのだが、なにはともあれ、建築物(街並み)にポイントを置いて見るべきもの、見る価値のあるものをほぼ網羅している点がポイント高い。

通常の旅行ガイドブックだと、いわゆる観光名所全般や行くまでのアクセス等が入っているので焦点がぼけてしまうのだが、本書は対象を絞って(=建築物の解説のみ)厳選されており、私が実際に行った所はかなり重なる『選択』をしているので私的には便利が良さそう。また、行ったことのない所に関しては、是非見たいと思うようなところがしっかり選ばれているので、勝手に納得しちゃいました。

基本的には、本書で旅行に行く際に行くべきところを大まかにざっと見渡し、概要を確認しながら、更にその中で絞る為の資料として使えそうです。実際に行く時には、その絞ったものそれぞれのアクセス等を他の旅行ガイドやサイトで調べる手順になるでしょう。

本書だけで旅行の準備は完結しませんが、実に素敵な建築物を素晴らしい選択眼で選んでいるし、普通のガイドブックでは漏れてしまうか、粗略に扱われる情報が最低限きちんと入っているので旅行の目的がショッピングや食事メインではなく、「建築物」なら価値がある本だと思いました。
【目次】
フランス
1プロヴァンスのシトー会修道院を訪ねる
2巡礼路の聖堂と装飾は訪ねる
3中世の城から城館をたどる旅
4イル・ド・フランスのゴシック大聖堂を魔ぐる
5アール・ヌーヴォーの建築を訪ねる
6ル・コルビュジェの生涯をたどる旅
7パリの個性的な美術館を訪ねる

スペイン
8アンダルシアのイスラム建築を訪ねる
9スペインのバロック建築を訪ねる
10バルセロナにガウディの建築を訪ねる

ポルトガル
11ポルトガルの家と街並みを訪ねる
世界の建築・街並みガイド〈1〉フランス・スペイン・ポルトガル(amazonリンク)
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2007年05月22日

「スペインの大聖堂」菅井日人 グラフィック社

写真が豊富に使われており、その多くがカラーなのは良いが、写真自体は全然良くない。構図が適切であるとはいい難いうえに、大聖堂そのものを中心にしたタイトル通りの意図を持った写真ではなく、余計な人物や景色に貴重な写真を用いて大変もったいない。

一方で肝心な大聖堂の姿を十分に写真として撮っておらず、本末転倒も甚だしい。建築物としての大聖堂を的確且つ十分に捉えていないので、大聖堂理解に役立っていないのが、なんともイタイ本である。

また、写真そのものの色調や色合いも綺麗とは言えず、発色も良くない。コメントでさんざん美しいステンドグラスというものの、そこに載っている写真は、黒っぽくつぶれていたり、平板に写っていてお世辞にも美しいとは思えない。著者はプロの写真家であると経歴が書かれていたが、全くの期待外れで本当かどうか私には信じかねる?(勿論、印刷時の問題もあるのかもしれないが・・・それでもね) 小細工など要らない。対象を正確に、且つ的確な構図で美しく写したものが見たかった。やや独り善がりな技巧的な写真(しかも美しくない)が目につく。

本書は、ある種写真集に近い感じで、説明として文章が入っているのだが、この説明もいただけない。必要な記述が欠けている反面、エッセイ的な要素を入れてしまい、結局意味のないコメントになってしまっている。むしろ、割り切って旅行ガイド的な名所説明の方が、はるかに有用で好ましい。

いろんな意味で、お金を出して買う価値を見出せない本だった。申し訳ないが、現在の高性能のデジカメだと、素人でもかなりのものが撮れるし、ネット上にある写真に負けている。この本。

これを買うなら、芸術新潮などで組まれている特集号を購入しましょう。あちらなら、まず外れはありません。
【目次】
スペインの大聖堂
アンダルシア地方
ラ・マンチャ/マドリッド地方
カスティーヤ・イ・レオン地方
ナバラ/バスク/リオハ地方
カンダブリア/アストリアス/ガリシア地方
ムルシア/バレンシア地方/バレアレス諸島
アラゴン/カタルーニャ地方

スペインの大聖堂(amazonリンク)

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「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
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2007年05月15日

「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社

だいぶ前に格安で購入したまま、忘れていた全集タイプの一冊。編集があの柳宗玄氏の手になるもので、解説の9割もご本人が書かれている。

当然、この手の全集ものとしては十分過ぎるくらいの解説が書かれているし、写真が大変多いのもポイントが高い。解説がどんなに優れていても実際にどういったものかイメージできなければ、ロマネスク建築やゴシック建築といったものは価値が無いのでその意味で本書は十分に読むに値する。

とにかく非常に大型の紙面であり、一部の物は更にそれを両開きで一つの写真として掲載し、大聖堂のタンパンなどの細かい彫刻が一つ一つはっきり認識できるようになっている。美術関係である以上、当たり前のことだが、この点をクリアできていない全集物が結構あるので、本書はその点、問題がない。

但し、私が気付いた問題点がある。ステンドグラスの写真も大きく入っているのだが、綺麗に写っているとは言い難い。かろうじて、そのデザインされているものを認識できる程度で、ステンデグラス本来が有する神々しいまでの、ある種究極的とまで思えるような素晴らしい美術作品になっていない。私がデジカメで撮ったものの方が綺麗だと思えるほどで実際、悲しい。

これはやはりカメラの性能故なのだろうか?それとも印刷上の技術的な問題のせいだろうか? 私には理由が分からないのだが、最近出版されているステンドグラスの印刷物の方がはるかに美しいのでそれだけは、本書に期待できない。まあ、1970年に出たものなので、時代性を割り引いて考えるべきだろう。

しかし、それ以外の点では、カラー印刷の経年劣化を踏まえても十分に分かり易い及第点の写真だと思う。この写真を見ながら、解説を読むと大変勉強になる。解説の充実ぶりからも読んでおいて良い本だと思う。

個別な解説はおいておくとして、柳氏もシャルトル大聖堂が本当に好きなんだなあ~と思った箇所があるので引用しておく。世界中の美術作品、建築物を見たうえでのこの発言なので値千金だろう。私もまさに、同感である!
中世という語は極めて曖昧なものだと先に私は言った。シャルトルについて述べる場合、この曖昧な語を使ってもよい。いや語は曖昧な茫漠たる広がりをもったほうがよい。シャルトルは時代を超えた人間の理念そのもの結晶である、とまで言いたい。人類はかつてこれ以上のものを作ったか。またこれ以上のものを作れるか。

 ともかく、シャルトル大聖堂は中世の門であり、そして中世の奥殿である。それは私たちに、中世人の夢と現実を、中世芸術の豊かさとその規模を、十二分に示してくれる。中世を暗黒視する者は、シャルトルを訪れたことのない人間に違いない。訪れてなお妄言を弄する者は、何かよほどの理由によって、その心の潤いを喪失した人間に違いない。「いかなる無神論者も、シャルトルへ来ては勝手がわるかろう」とナポレオンが言ったとか。
また、他にも以下の言葉を紹介している。
「シャルトルは中世思想それ自体が形をなしたものである」(エミール・マール)
私自身もそれまでいくつかのゴシック大聖堂を見たことがあったのだが、シャルトル大聖堂だけは別格であり、本当に神様がいるのではないかという気持ちになった。この懐疑論者である私がだ。

いつ行けるか分からないが、少なくとも5年以内には再訪するだろう。前回は何も知らないままであったが、今回は少しだけ分かったうえで行ってみたいと強く思った。

そんな場所を、本書を見ることで見出せるかもしれない。少なくとも私には、引用した文章を見れただけで満足でした。
【目次】
1 ロマネスクの世界

(写真)
アーヒュン大聖堂
ヒルデスハイム大聖堂
ヴェルデン修道院聖堂
エッセン大聖堂
サン・タンブロージョ教会
サン・ゼーノ教会
サン・タンジェロ・イン・フォルミス教会
ピーサ大聖堂
オータン大聖堂
ヴェズレー修道院
フォントネー修道院
サン・サヴァン・スュール・ガルタンプ教会
モワサック旧修道院
サン・マルタン・ド・フノヤール教会
サン・フワン・デ・ドゥエーロ修道院
レスタニー旧修道院
サンティヤーゴ・デ・コンポステーラ大聖堂

(解説)・・・解説者名の記入無しは全て柳宗玄
聖堂とは何か
中世の深い根
先史よりの再出発
西洋の父カルロス大帝 辻成史
聖像の誕生
光と色彩の神学
ロマネスクの空間
瞑想の寂境
清貧の芸術
聖遺物と巡礼
天界のミクロコスモス
壁画―技法と様式 長塚安司
大彫刻の時代
彫刻の建築性

2 ゴシックの世界

(写真)
シャルトル大聖堂
アミヤン大聖堂
ル・モン・サン・ミシェル
カンタバリ大聖堂
グロスター大聖堂
バターリャ修道院

(解説)・・・解説者名の記入無しは全て柳宗玄
シャルトル大聖堂
ゴシックの空間 馬杉宗夫
自然と人間の再発見
ゴシック大聖堂と民衆
光の交響詩
彫刻の自立
世界の文化史蹟〈第12巻〉ロマネスク・ゴシックの聖堂(amazonリンク)

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「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
その他、多数読んでますので記事検索してみて下さい。
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2007年05月14日

「世界の建築第5巻 ゴシック」飯田喜四郎 学習研究社

目次を見てもらうと分かりますが、ゴシック関係の有名どころの学者さんがこれでもかと集められていますね。それだけでも大したもんですが、阿部先生が総説を書かれているのには、ちょっと驚きました。そりゃ、ゴシック建築は中世に関しての事柄ですから、冷静に考えれば、それほどおかしくないのかもしれませんが、建築関係でお名前を拝見するとは夢にも思いませんでした。

しかも、読んでみると何気にポイントをついた文章で、ふむふむ~と頷く事しきり。やっぱり阿部先生、凄いです。こないだお亡くなりになったのがなんとも残念です。

さて、本書全体ですが、写真がかなりの量を占めます。そうですね、写真については、まあまあってとこかな? 大きな写真で建築という点ではそこそこいけますね。ステンド・グラスや彫刻については、もう少し期待したいところですが、とりあえず及第点かと。

解説は、それぞれの先生が一冊丸ごと書かれている本を何冊も読んでいるので、私にとっては基本的に既知の事柄ばかりでしたが、内容もそこそこ良いと思います。

もっとも本書の中で、私的に一番勉強になったのは、阿部先生が書かれた文章です。中世のこの時期に、いかにして大聖堂建設が行われるに至ったか、農業革命、それに伴う商業革命と都市の勃興だけではなく、実は古代ゲルマン以来の贈与慣行という社会システムの存在を指摘されています。

ローマ帝国の「クリエンテス」ではないが、グルマン民俗には贈与慣行があり、この場合の贈与はもらったら、もらっいぱなしの片務的な行為ではなく、必ず対等の返礼を伴う双務的な行為らしい。ある人から何かをもらって、それのお返しができない場合、もらった人に対して臣従するなどを要求されるものだそうです。

また、富を持つ者である王が下の者にそれを与えることに対し、家臣は従軍などの奉仕を提供する関係であった。同時に、富を持つことは人間の能力と幸運の現れであり、幸運が盗まれたりしないように地中に埋めたり、湖に沈めたりする習慣もあったらしいです。

その後、国王は政権の安定を図る為に教会からの支援を取り付け、教会側も国王への塗油を行う一方で、国王は神への贈与を地中や湖に沈めることから、教会への寄進。即ち、大聖堂建設へと転換させていった。

この場合、国王への返礼は聖職者の祈りによって天国で与えられるとし、形は変えても実質的な贈与慣行は生き続けた、と説明されている。

中世における『贈与』については、しばしば目にする話ではあるが、改めて大聖堂建設にも当てはまることを知って、目から鱗だと思いましたよ、ホント! 勿論、日本においても平安貴族が極楽往生を願って、寺院を建立する例はありますが、意味がかなり違います。本書の解説ではそれをより大きな枠組みで捉え、歴史的且つ社会的な慣行の一部として理解しようとするこの解説は、素晴らしいと思います。

他の本では、ここまで明確に指摘されていませんからね。実際。また、巡礼についても、妻子や財産全てを投げ打つこの行為は、まさに自らの全てを神に捧げる贈与であるという理解で説明をされています。う~む、贈与おそるべし。賄賂のようなマイナス評価とは違って、当時では大変重要な行為だったんですね。ふむふむ。

ルターの贖宥状批判が、神への贈与を否定した時、中世の中に生きていた古代が完全に終わった、というのは、そういうことなんだそうです。逆に言うなら、何故、中世人が金銭と引き換えの贖宥状を進んで受け入れていたのか、疑問に思ってましたが、ようやく納得いった感じです。いやあ~、物事って何でもそうだけど、複合的な視野から見ないといけないもんですね。決して一面的視野だけでは、理解できるものではないと実感します。

以上、阿部先生が書かれた部分についてでしたが、他の方の文章も本で未読なら読む価値ありますよ~。どっかで見つけたら、目を通してみましょう。結構、面白いと思いますし、私は好きだなあ~。
【目次】
総説
 ゴシック大聖堂の世界 阿部謹也

本文解説
 ゴシック建築の構造と空間 飯田喜四郎
 ゴシック建築と彫刻 馬杉宗夫
 ステンド・グラス 黒江光彦
 ヴィラール・ド・オンクール―ゴシックの建築家像 藤本康雄

エッセイ
 アメリカの旅から 宮脇壇
 神々の奇巌城
世界の建築 (5)(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「ゴシック美術」エリー・ランベール 美術出版社
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2007年05月01日

「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート

著者が趣味にあかせて自分の足で訪れたロマネスク建築を紹介している。写真多数で、一見するとかなり期待できそうだったが、内容はかなりお寒い限り。

著者自身は、決して知識がないのではないと思うのだが、とにかく数を紹介しようとしてしまい、個々の建築に対する説明が全然足りない。説明があたかも安っぽい旅行ガイドブック並みか、それ以下の水準で甚だ失望した。

エッセイだろうがなんだろうが、それはどうでもいいのだけれど、作品の解説に徹するか、その場所に至るまでの旅行記にするのか、明確にして欲しかった。ただでさえ、説明が足りていないのに無意味にたくさん紹介されている写真が悲しい。

更にマイナスな点として写真が良くない。著者自身が撮ったものかもしれないが、平板過ぎて見せたいポイントが不明。また写真を並べた紙面としてのレイアウトも最悪に近い。写真に番号が振られてはいるものの、写真と本文がバラバラ過ぎて何の説明をしているか、きちんと追っていけないし、頻繁に頁をめくっても大したこと書かれていないし、実に読み辛い。

珍しい写真もありそうだけど、微妙に小さいし、相対的に役に立たない本。あえて絶版の本にお金を出して買うまででもなかった。大失敗でした。どうせなら、紹介する建築物を3分の1とか4分の1に絞って詳しい解説をすれば、もっと充実した本になったと思うんですけどねぇ~。もったいない話です。
【目次】第1章 聖堂とばんな所にあるか
第2章 聖堂を外からながめる
第3章 聖堂の内側
第4章 回廊と外廊
第5章 柱頭
第6章 その他の彫刻
第7章 シトー派とビザンス
第8章 廃墟と修復
ロマネスクの園(amazonリンク)

関連ブログ
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
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2007年03月16日

「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版

chartres20070315.jpg

これも国会図書館に行ったときに借り出して読んだもの。といっても、大判なうえに頁数も多くて分量が多く、とてもじゃないが一日で読破できません。他の文献も調べていたので結局、こちらの本は第2章の途中までと、ざっと他の章を眺めてみたくらいです。

従って、書評にもならないのですが、自分自身への覚書代わりにメモ。目次だけ詳しく載せておくので調べ物をする時に少しは参考になるかな?

さて、シャルトル大聖堂関係の本を読むと頻繁に名前を見かける木俣氏が当時の文部省の助成金を受けて研究した成果物を出版したものがこの本です。

その為、最新の研究成果なのだと思いますが、あまりにも細かい点が多くて私のような一般人にはかなり辛い。ここで述べられている分節とは、要はステンドグラスを成立させている鉛枠でガラスとガラスを押さながら、つなげている仕組みを指しています。それらを丹念に調べて(シャルトル大聖堂のガラスって死ぬほど多いんだよ!)統計的に処理することで一定の傾向を導き出し、そこから一歩踏み込んで新しい解釈を主張するという流れになっています。

従来、ステンドグラスは彫刻も含めて文字が読めない人々にキリスト教の内容を教える為の「図説聖書」みたいな理解をされてきたが、木俣氏の主張では、確かにそうした点はあったものの、ステンドガラスだけ見ても聖書の内容など分かるはずもなく、必ずその理解には、聖書の知識とステンドグラスの指し示す意味の両方を理解している人の存在が前提であり、むしろそういった特別な人々を対象の中心にしたのが、ステンドグラスではないか?ということが述べられている。

また、実力をつけてきた商人などがステンドグラスの代金を寄進したので彼ら自身がデザインにまで意思を反映したから、寄進者としての商人などがステンドグラスに描かれた。と一般に理解されてきているが。

寄進の事実はあったにせよ、ステンドグラスのデザインは教会側があくまでも神の栄光の為に指示したのであって、その過程でそれぞれが自らの立場で現在の職業に励むことが望ましいことであり、それをデザインに反映したのも教会側からの意図に他ならないのではと述べられている。

ごく一部しか読んでないので、私の誤解等の可能性はご容赦願いたいが、結論的な部分については非常に面白いと思う。怠け者の私としては、結論だけ分かり易い形で書かれたものを読みたいなあ~。本書は大部でし、国会図書館は借り出せないから、その場で読破は
無理。おまけに一番大切かもしれない、細かい説明は読んでていて飽きてしまう・・・。

う~ん、どなたか詳しい方、結論だけ教えて~!と切に言いたい。
【目次】
第1章 シャルトル大聖堂のステンドグラスへの問いかけ―序にかえて
 1.1 「文字を読めない人々の聖書」をこえて
 1.2 解釈の前提 図像テクストの作り手と受けて
 1.3 テクストとしてのイメージ

第2章 分節システムと幾何学的構成―枠とイメージを結ぶプロセス
 2.1 はじめて
 2.2 シャルトル大聖堂におけるステンド・グラスの分節システム
 2.3 パネルと場面
 2.4 分節システムの3つのタイプとその基本的様相
 2.5 おわりに

第3章 比喩としての物語の実現―“放蕩息子の譬え話”の窓
 3.1 はじめに
 3.2 たとえ話とその視覚表現
 3.3 シャルトル大聖堂《放蕩息子の譬え話》の窓
 3.4 おわりに

第4章 幾何学的構成のはたらき―“使徒聖トマス伝”の窓
 4.1 13世紀フランス人における《使徒聖トマス伝》の図像表現の展開
 4.2 シャルトル大聖堂《使徒聖トマス伝》の窓

第5章 「ぶどうの木」としてのカトリック教会―“聖レオビヌス伝”の窓
 5.1 はじめて
 5.2 分節システムと幾何学的構成の特質
 5.3 中央軸線上の場面と《聖レオビヌス伝》
 5.4 周縁と中心、階層性、ネットワーク
 5.5 ぶどうの木がつなぐもの

第6章 「寄進者像」を読み直す―教会論的視点
 6.1 「寄進者像」の問題点
 6.2 「働く人々」と中世の教会論
 6.3 パンとキリストの身体、そして教会

第7章 聖像と偶像―13世紀初頭のカトリック教会とイメージ
 7.1 はじめに
 7.2 問題の所在
 7.3 偶像表現の特質
 7.4 偶像とキリスト教の信仰との対比
 7.5 「イメージの中のイメージ」としての聖像(1)
 7.6 「イメージの中のイメージ」としての聖像(2)
 7.7 おわりに

第8章 聖ニコラウス像を罰するユダヤ教徒―宗教的イメージをめぐるポレミカルな図像
 8.1 はじめに
 8.2 聖人像への懲罰
 8.3 「イコノクラストとしてのユダヤ教徒」というトポス
 8.4 イメージを信仰するユダヤ教徒
 8.5 おわりに
シャルトル大聖堂のステンドグラス(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
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2007年03月12日

「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社

わざわざ国会図書館まで行って、読んできました。探しても見つからなかったもので。

定価で一万円ですが、ちょっと暴利貪り過ぎって感じします。高名な紀信氏の写真ですが、正直言って全然良くない。使えません。写真向きの印刷に適していない紙というのもあるのでしょうが、たくさんのシャルトルの印刷物を見てきた感想としては、良くない部類に入ります。

また、磯崎氏の説明も同様に不要。中世の建築物を現代建築の視点で捉えようとしているようで、あくまでも中世の建築をただ&ただ知りたい私には読んでいるだけ無駄。

本書で唯一にして、読むだけの情報的価値を有するのは前川氏の「シャルトル大聖堂とゴシック建築」の部分。実際、本書のうちで60頁弱を占め、シャルトルに関する歴史や伝承を含め、ゴシック建築全般に至るまで大変勉強になり、有用。特にシャルトルの伝承に関する部分は、他の本でも散見するが、結構まとまっている方なので押さえておきたいところでしょう。

なお、本書のゴシック建築に関する記述部分は前川氏の「ゴシックということ」で詳しく述べられているのでそちらを読んだ方が良いかも?

そうそう、巻末の参考文献も前川氏によるものでこれも使えます。できれば、一切の不要なところを除いて前川氏の文章と参考文献だけで廉価版を作って欲しいですね。二千円以下だったら、欲しいところです。私は必要なところだけ、1枚25円で40頁ほどコピーしたので十分でした。

でも、前川氏の部分だけなら、決して悪くないのにもったいない感じがしてなりません。
【目次】
シャルトル大聖堂―ゴシックの光と構造  磯崎新
示現の装い  磯崎新
図版  撮影・篠山紀信
シャルトル大聖堂とゴシック建築  前川道郎
図版解説  磯崎新・前川道郎
図版 
  平面図
  南立面図
  北扉口
  縦断面図
   (身廊部横断面図、内陣部横断面図、クリプト平面図、地下部分年代図、北扉口断面図、断面の透視的概略図)
参考文献  前川道郎
図版 クレジット
凍れる音楽 磯崎新+篠山紀信 建築行脚シリーズ 6(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
ゴシックということ~資料メモ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin
「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社
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2007年02月23日

「世界の大聖堂・寺院・モスク」アンリ スティルラン 創元社

mosuku.jpg

ほとんどが世界遺産になっているものだと思います。タイトルの通り、大聖堂やモスク、寺院など、宗教建築の代表的なものを空中から撮影した写真集。

特徴的なところとしては、四つ折になっている大きな写真がテーマ毎に一つついていて広げると大変大きなサイズの写真を見ることができます。大判の写真集だと非常に場所を取り、困るものですが、これは四つ折の為、大変コンパクトなサイズで本棚の普通サイズに十分入れられます。

しかし、それ以上の長所は特にありません。空からの撮影というのは、写真集としては確かに珍しいかもしれませんが、TBSの世界遺産を見慣れている目には、別に・・・というのが率直な感想。また、四つ折の大きな写真も他の写真と比べて何か工夫されているようでもなく、ただサイズが大きいだけでしかない。

新しいうちはいいのですが、古くなってきた時に写真の折り目が汚くなりそうで不安なのですが・・・大丈夫なのだろうか?

採り上げている建築物の選択はいいと思うのですが、写真はどれも大したことないように感じてしまいます。個人的には地上から写したものと空から写したものを組み合わせて、うまく立体的になったら面白かったのではと思いましたが、基本は全て空からの撮影です。

自腹では買う気がしません。図書館で借りれて幸いでした。こないだも本屋で平積みしていましたが、値段が値段だけに出版社さんも大変だろうなあ~と思いました。
【目次】
聖シメオン聖堂―一人の苦行者に奉献された礼拝堂
エフェソスの聖ヨハネ大聖堂―使徒ヨハネに献上された大聖堂
アヤ・ソフィア―ビザンチン芸術の頂点
メッカ―イスラム教の心臓部
岩のドーム―イスラム教の最初の建造物
サマラの大モスク―ジグラットに似せたミナレット(尖塔)
法隆寺―世界最古の木造建築
バイヨン―千の顔を持つ仏陀
ラリベラ―聖ギオルギスの岩窟聖堂
ピサのドゥオモ広場―大理石で出来たロマネスク芸術の粋〔ほか〕
世界の大聖堂・寺院・モスク(amazonリンク)
ラベル:書評 建築 大聖堂
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2007年02月12日

「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin

malcolm.jpg

フランスのシャルトル大聖堂を見に行った際に大聖堂前の土産物売り場の店で購入したものです。これが値段で比較して一番ステンドグラスの説明が多く、写真も綺麗だったので購入したのですが・・・。実は、英語だったんでしばらく読んでいませんでした。

帰国してから、国内にあるシャルトル大聖堂に関する本をあらかた読んだ後、しかたない洋書に手を出すかとamazonで探していてまさにカートに入れた後、決済直前に気がつきました。自分が現地で購入したのと同じものであることを! ふう~危なかった。持ってる本を買うとこでした(苦笑)。

とまあ、こんな経緯があってすぐに本書を読んだのでした。でも、うちのブログで採り上げていなかったし、今も再読しているところなので改めて書いておきます。

シャルトル大聖堂の解説は、非常に定評のあるマルコム・ミラー氏による文章で、とっても簡潔ですが実に分かり易く、豊富で美しい写真と共にシャルトル大聖堂の魅力を益々増加させていきます。

大聖堂に行ったことのある人、これから行く人には絶対に目を通して欲しい本だと思います。この値段でこれだけの内容はまずありませんから! 現地のフランスで買うより日本のamazonで買った方が安いというのはいささか皮肉ではありますが、決して損をしたとは思わないでしょう。大変薄くて軽いので旅行カバンに一冊忍び込ませておきたい本です。

そうそう、ただ32頁という紙面の少なさから、サブタイトルの通りシャルトル大聖堂のステンドグラスと彫刻に絞って解説されています。大聖堂の歴史については冒頭に2頁分説明され、あとは個々のステンドグラスの主題の説明と扉口などの彫刻の説明になります。

従って、ゴシック建築に特徴的な飛び梁(フライング・パットレス)やリブ・ボールトなどの純粋に建築的な説明は、ほとんどありません。そこは残念ですが、その分、ステンドグラスの写真が充実していますので是非押さえておきたいアイテムです。とっても綺麗ですしね。

マグダラのマリアがイエスの足を洗っている姿を主題にしたステンドグラスなども採り上げられています。
【Contents】
ANCIENT CHARTRES

The 12th Century
The Royal Portal
The Blue Virgin Window
The west Lancets

THE GOTHIC CATHEDRAL

The 13th Century
The West Rose Window
The North Porch
The North Rose Window
The South Porch
The South Rose&Lancets
The North Aisle Windows
The South Aisle Windows
The Transept Windows
The Ambulatory Windows
The Upper Storey Windows
Chartres Cathedral - The Mediaeval Stained Glass and Sculpture(amazonリンク)

関連ブログ
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
ステンドグラス(朝倉出版)~メモ
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
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2007年02月07日

「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会

中世美術の碩学アンリ・フォションによるゴシックの本です。非常に有名な本ですが、私にはほとんど理解できませんでした。なんとか読破したものの、説明されている文章内の単語で分からないものが頻出するうえに、章の区切りはあるものの、節らしいものに分けられていても節のタイトルがなく、何について書かれているのか非常に理解しづらい。

実際に文章を読んでみても個々の説明以上に、どういった論旨で何を説明しているのか全体像がつかめないので個別の説明に振り回されてしまい、私には大いに欲求不満を感じた。

勿論、私自身の知識不足にもその原因はあると思う。ただ、それだけではないようにも感じる。翻訳者は何故か仏文学専門の先生達だが、美術史や建築の専門ではないようだ。失礼ながら、翻訳者ご本人がよく分からないままに文字だけを訳しているよう可能性があるのかもしれない。

少なくとも今までこの分野の本を何冊か読んできてこれほど理解できないのは初めてだった。勿論、原本自体が難解な可能性もあるのだが、とにかく私には読んでも何も得られない本だった。期待が大きかっただけに非常に残念である。

他の人の感想も是非、聞きたいところである。ちなみに書評で有名な松岡正剛氏の千夜千冊というサイトでも本書が取り上げられている。たまに興味深い書評が書かれていることもあるのだが、本書に関する限り、そこの書評を読んでも納得できない。

確かに本書では、他の書物ではほとんど採り上げないオジーブについて多くの紙面が割かれているが、それがゴシックの本質だろうか? 素人の私なりに疑問を感じる? 私が本で理解した範囲の知識ではむしろサン=ドニで体現された光の形而上学の思想こそが本質的なものに思えるのだが・・・。

逆にその点にほとんど触れられていないのも、時代のせいなのか分からないが、本書が偏っているようにも感じられる。もっといろいろな本を読んだうえで比較しないといけないのかもしれません。手元にまだ何冊かゴシック関係の本があるので、おいおい読んで勉強していくことにしましょうか。

本書を読んで自らに課題を残すことになりました。
(実は下巻も買ってあるのだが、フランス以外のゴシックについての話だし、意味分からなそうだから、しばらく積読にしておこうと思う)

ゴシック 上(amazonリンク)
【目次】
第一章 初期ゴシック芸術

 1オジーブ芸術の誕生、多様にわたる諸実験、イル=ド=フランス地方のロマネスク芸術として出現したゴシック建築、オジーブについてその機能の問題と論争、オジーブ構造体系の発達、飛びアーチの原初的形体

 2サン=ドニ修道院付属教会堂とシュジェ、トリビューンつき大型教会堂と身廊立面の四層構成、円形袖廊の教会堂群ーノワイヨンの大聖堂・ソワッソンの大聖堂、ランの大聖堂の将来、パリのノートル=ダム大聖堂、身廊立面の三層構成ーサンスの大聖堂

 3シトー派芸術、ブルゴーニュ地方における発祥と地方色、聖ベルナール、シトー派芸術のロマネスク時代ーフォントネー修道院付属教会堂、ゴシック時代ーポンチニー修道院付属教会堂、派生的変種、ラングドック地方の教会堂群、ヨーロッパ全土へのオジーブの伝播

 4ゴシック彫刻の出現、黙示録に基づく図像体系の枯渇、タンパンに嵌め込まれた聖母像型聖遺物匣、先触れびとたちのテーマの発案、その様式ー人像円柱、ロマネスク彫刻の最終段階、様式技法の忘却、新しい探求

第二章 古典時代

 1初期ゴシック芸術の偉大さと生命力、古典時代、フランスの偉大な大聖堂群、三層構成形式の流行、シャルトルの大聖堂とそのグループーランス・アミアン、この形式と多層式内部立面構成の組合せ、ブールジュの大聖堂とそのグループーマン・クータンス、ブールジュとパリの両大聖堂の差異

 2レイヨナン芸術派革新ではなく洗練化である、壁体廃除、縦目石、パリのサント=シャペル、十二世紀の教会堂の改修、バラ窓

 3多様化と相互影響、ノルマンディー地方におけるフランス芸術、ブルゴ-ニュ地方におけるラン地方・ソワッソン地方の芸術、ラングドック地方におけるフランス芸術、独創的な諸形体ーアルビの大聖堂、輸入されたものージャン・デシャンが築いた教会堂、地中海沿岸地方のゴシック、イタリア、二つのスペインーゴシック的スペインとムデハル的スペイン

 4イングランドの建築、その進展の独立性、初期イングランド様式、曲線様式、南部ネーデルラント、レイヨナン芸術の流行、ドイツにおけるロマネスク的ゴシック

第三章 モニュメンタルな彫刻とゴシックの人間主義

 1宗教的感情の三段階、十三世紀の図像体系、福音書のキリスト、聖母の戴冠、若々しさ、世界の絵巻と百科全書的精神、さまざまなる「鑑」、ヘレニズムの人間主義、ゴシックの人間主義、仏教の人間主義

 2様式、建築と彫刻との新しい繋がり、枠組みー柱頭・ヴッシュール・タンパン・側柱、モニュメンタルな様式、プロポーションと処理技法における遠近法、壁面風の肉付け

 3各地の工房と様式進化、初期、十三世紀前半におけるフランスの大聖堂の工房、ゴシック彫刻のプラクシテレス的時代、パリの芸術と都会的洗練味、枠組みと型式の進化、十四世紀の聖母像、貴材芸術、墳墓用肖像、フランスにおける伝播、ローヌ河流域の南仏とトゥールーズ地域の南仏、フランドル問題

 4イタリアのゴシック、帝政期ローマへの妄執とトスカナ地方の典雅趣味、スペインーロマネスク的伝統の生命力、フランスの影響、ドイツ・サクソニア流派、バンベルク、ナウムブルク、イングランド彫刻の独創性、モニュメンタルな枠組み、ひょろ長い形体、アラバスター彫刻

第四章 十三、十四世紀のゴシック絵画

 1中世の二種類の絵画、光の模倣、遮られた光、フランスの焼絵ガラス、その起源と初期の工房、サン=ドニ修道院、フランス及びイギリスにおけるシャルトルの影響、パリの焼絵ガラス職人、サント=シャペル、バラ窓、十四世紀、グリザイユ、技術上の革新、様式の進化

 2イタリアのモニュメンタルな絵画の偉大さ、ダンテの築いた大伽藍、ジオット以前の絵画、トスカナ地方のビザンチン芸術ーチマブーエ、ローマの教皇庁芸術ーカヴァルリーニ、シリアの修道僧の逃避から初期フランチェスコ派の聖画像に至る民衆的芸術、ジオットと聖フランチェスコ、、ジオットの芸術がフランチェスコ会の思想に形を与える、ジオットとジオット派、シエナ派、トスカナ地方の絵画の東方趣味、ボヘミア・カトロニア・アヴィニヨンにおけるシエナ派絵画の伝播

 3フランスの絵画、新しい枠組みと焼絵ガラスの影響を受けて進化した壁画、世俗的主題の絵画におけるモニュメンタルな様式、絵画の間戦士達、祈祷所の絵、フランスの細密画、ウィンチェスターとヴィラール・ド・オンヌクールの規範、十三世紀の建築における枠組み、十四世紀最初の三分の二世紀、ジャン・ピュセル、単彩画、版画の発明、空間の構造に関する十四世紀待つの偉大な探求、ジャックマール・ド・エダン、ジャック・コエーヌ、ランブール兄弟
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ゴシックということ~資料メモ
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「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
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2007年01月30日

「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社

いつもゴシック建築等で勉強させてもらっている馬杉氏による紀行文?つ~かエッセイ?

第二部のサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼に期待して購入したのですが読むべき内容がほとんどなく、大外れ! 期待が大きかっただけに、残念でした。

特に第一部については、正直どうでもいいかな~ってぐらいです。もっと面白くて為になる本がたくさんありますのでカタルーニャやガウディについては、他の本を読んだ方がいいでしょう。

また、肝心の第二部ですが、著者は車で見て回っていますがそりゃ駄目でしょう!って声を大にして言いたい。勿論、巡礼路を巡るだけではなく、その道沿いの辺鄙なロマネスク建築の建物も回りたいから、という意図は分かるんですが、巡礼の途上にある宗教建築物を真に理解するには、やっぱり徒歩で巡礼して欲しかった!!

まして専門家なんですし、本書は学術的な内容ではなく、エッセイもどきの紀行文のノリなんだから、そうでなければ、説得力のある文章にはなりえないでしょう。実際、著書の他の本と比べて、内容は二番煎じで使い回しだし、読んでいてもあまり勉強にならない。車で回っているんでは、紀行文としても論外でしょう。手を抜き過ぎではないかと?

おまけに致命的な欠陥がある。勿論、専門家として様々な建物についてそこそこの説明はしているものの、写真が最悪。モノクロは許せても小さいし、数が少なくて説明されても意味分からんて、もう~(若干、怒りモード)。

それでなくてもこの手の建築物は、実際に自分で見るしかないんですが、写真さえもないのでは解説自体が独り善がりの何物でもない。写真もなしに、本書の説明で理解できる人がいたら、その人はスゴイと思うなあ~。

これまでも非常に勉強させて頂いていただけに、本書は残念です。まあ、著書も数があれば、たまには外れもあるでしょう。あ~あ。

本書ではモサラベ美術についてもいろいろ解説されています。もったいないなあ~。別な本でもうちょっとなんとかしてくれれば、もっといい本で使える本になるのに。サンチャゴ巡礼とかについて知りたければ、芸術新潮で特集されたものをお薦めします。非常に美しく素晴らしい写真が豊富にあり、説明も簡にして要を得ています。本書も見習って欲しいもんです。

そうそう、そうは言っても本書で初めて知った言葉もあったのでメモ。
クリスム:
不可視的な神キリスト像を具体的な人間の姿で表現することをよしとせず、その代わりに抽象的・象徴的なもので表現しようとしたもの。八つに区切られた円で表現されたりする。
読んでいて思ったのですが、これって仏教の仏足跡や法輪とかと同じ意味だよね。法輪もまさに円だし。

どの宗教も当初は偶像崇拝を禁止するのですが、やがて徐々にね・・・。まあ、人間ってどこまでも即物的だから目で見えないと駄目なんだろうなあ~。まあ、疑りぶかいトマスってことでしょうネ。
【目次】
第1部 光と影の道カタルーニャ

カタルーニャの色彩
影に沈むモンカダ通り 若きピカソの街・バルセローナ
陽のあたる丘モンジュイク―ミロ美術館
ロマネスク美術の宝庫―カタルーニャ美術館
鬼才ガウディと聖地モンセラの山
異端の贈物―ベアトゥス本写本と天地創造のタピストリー
レコンキスタへの願い―ピレネーに眠るリポールの扉口彫刻

第2部 星の道 サンチャゴ巡礼

千年王国―サンチャゴ伝説と巡礼
ピレネーを越えて
王妃の橋
星隆る町
過酷な地
ブルゴスからレオンへ
レオン王国
星の輝く野―聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラ
旅の終りに
スペインの光と影―ロマネスク美術紀行(amazonリンク)

関連ブログ
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「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「星の巡礼」パウロ・コエーリョ 角川書店
「スペイン巡礼の道」小谷 明, 粟津 則雄 新潮社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
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2007年01月16日

「Cathedral Of The Black Madonna」Jean Markale  Inner Traditions

chartresruids.jpg

日本語で読めるシャルトル大聖堂の資料が減ってきたので、重い腰を上げて久しぶりに手を出した洋書。年明けてから配達されて、いざ、意気込んで読むとすっごいくだらない低レベルの本。正直泣けてきた。

amazonの商品の説明に学問的な密度はある読者には欲求不満にさせるかも?って書かれてたが、これかい、この事だったとは・・・。読んでから気がついたよ。あ~あ、ひどい(泣)。

最初の一章を読むと、著者個人の思い出やらなにやらシャルトル大聖堂と直接結びつくとは思えないゴミのような戯言(たわごと)で本当に一章全てが終わっているんですよ~。もう、唖然として絶句!

あまりにもタイトルに関係ない事ばかりで他の章も飛ばし読みしつつ内容を確認すると、余談というか本来、この本に期待されるシャルトル大聖堂自体に関する内容以外のことばかりで全然資料として使えない。エッセイ以下のレベル。この人本当にソルボンヌでケルト研究を教えていたのか、はなはだ疑問に感じます。

あちこち読んでいると時々、ケルトに遡った話が出てくるのですが、そんなの『黒い聖母』に関する本を読んでるとどんな本にでも出てくる基本中の基本レベルで正直失望を隠せない。

特に核心部分である「黒い聖母」の章でさえ、もう吐いて捨てるほど聞いたようなありきたりな説を不十分な説明なままで典拠も無しに場当たり的に説明されても勘弁してよと言いたくなります。もう他の章を読む気力も失せました。

後半部分のドルイドのミステリ関係の章は、どう考えても内容なさそうだし、その部分は結局読まないままで断念しています。なんかねぇ~わざわざ苦労して洋書を読む必要がありませんでした。

日本語ではるかに使える資料(例:馬杉氏の本とか)がたくさんありますので本書を読むのは時間の無駄だと思います。でもねぇ~洋書って結局、自分で読んでみないと使えるかどうか判断できないから・・・とっても困る。値段も高いのが多いしさあ~(愚痴愚痴)。
【contents】
Part1 THE SITE
1The Entrance to the Labyrinth
2The Vibrating stories
3Chartres over the Course of History

Part2 THE VIRGIN'S GREAT SHADOW
4The Mother of God
5Worship of the Virgin
6The Black Madonna

Part3 THE MYSTERY OF THE DRUIDS
7The Forest of the Carnutes
8Gargantua's Itinerary
9Our Lady of Under Ground
10The Virgin of the Druids
Cathedral Of The Black Madonna: The Druids And The Mysteries Of Chartres(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社
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2006年12月23日

「ヨーロッパの歴史的図書館」ヴィンフリート レーシュブルク 国文社

ストラフ修道院付属図書館 プラハ

ヨーロッパにある図書館で歴史的な背景と蔵書を有し、一見に値するところを簡潔な説明と写真で紹介する本。結構前から興味を持っていたんですが、値段の高さから二の足を踏んでいた本です。

で、実際に読んでみると・・・。
う~ん、ここで紹介されている図書館は圧倒的にドイツ国内のものが多く、ついでチェコの図書館とかなり採り上げられているものには偏りが見られる。また、簡潔で若干冷めた感じの解説は悪くはないのだけど、端的に言うと物足りない。著者による率直な感想や思い入れが出てこないのは、かなり味気無さを覚えるのもまた事実だ。

観光地でパンフを見るような素っ気無さを良しとするかは、個人の好みにも左右されるかもしれない。私の場合は、あえてその点での付加価値がないのをマイナスに評価しています。

また、本書では図書館の美的な側面も評価の要素として紹介しているのにもかかわらず肝心の図書館の写真は、モノクロだったりする。これはいただけない。全然、図書館の持つ美しさが伝わらない&分からない。

本書を読んで行ってもいいかな?と思う図書館はあったが、強烈に是非行きたいと思った図書館はなかった。これは写真がモノクロであることにも大きな原因がある。あの美しいプラハのストラホフ修道院でさえ、本書の紹介ではぱっとしない。実に!実に!もったいない話だ。

目を通して悪い本ではないが、こんな高いお金を出して買うほどの本ではない。最低限カラーの写真を使用するべきだろう。そして、簡略な説明と自らが行った際に感じた『生』の良さが書かれていたら、本書は素晴らしいものになったかもしれない。しかし、現状はたいしたことのない本だと感じた。実に残念でしかたがない。

写真は、プラハで購入した絵葉書より「ストラホフ修道院付属図書館」
【目次】
序文

イスニー 聖ニコラウス教会図書館
ベルンカステル・キュース クザーヌス修道院図書館
ジュトフェン 教会図書館
チェゼーナ マラテスタ図書館
フィレンツェ メディチ家ラウレンツィアーナ図書館
リューネブルク 市役所図書館
ブジエズニツェ 城内図書館
ベルンシュタイン 城内図書館
ヴィリニュス 大学図書館
ヘリフォード 大聖堂図書館
オックスフォード ボドリーアン図書館
ケンブリッジ トリニティ・カレッジ図書館
ダブリン トリニティ・カレッジ図書館
ローマ ヴァチカン法王図書館
ゴータ フリーデンシュタイン城研究図書館
プラハ ノスティッツ宮殿図書館
ウイーン オーストリア国立図書館
レーゲンスブルク トゥルン・タクシス侯爵家図書館
ドナウエシンゲン フュルステンベルク侯爵家図書館
ポツダム サンスーシー宮殿内図書館
プラハ シュトラホフ図書館
ネーレスハイム ベネディクト会大修道院図書館
オットーボイレン ベネディクト会大修道院図書館
ヴァルトザッセン シトー会女子大修道院図書館
プラハ クレメンティヌム
メルク ベネディクト会修道院図書館
フォーラウ アウグスチヌス会司教座聖堂参事会図書館
アインジーデルン ベネディクト会修道院図書館
チェンストホヴァ 聖パウロ会修道院図書館
マリエンタール シトー会女予修道院図書館
ザンクト・ガレン ベネディクト会修道院図書館
アドモント ベネディクト会修道院図書館
ブダペスト 神学校図書館
エゲル 教育大学図書館
ワイマール ドイツ古典主義中央図書館
ゲルリッツ オーバーラウジッツ学術図書館
ベルン 市立および大学図書館
ワイマール ゲーテハウス図書館
ケストヘイ ヘリコン図書館
ツルグ・ムレッシュ テレキ・ボーヤイ図書館
サンクトペテルブルク サルティーコフ・シチェドリン図書館
カチーナ 城内図書館
キンジュヴァルト メッテルニヒ図書館
パノンハルマ ベネディクト会人修道院図書館
ヘルシンキ 大学図書館
クルニック 城内図書館
パリ サント・ジュヌヴィェーヴ図書館
ロンドン 大英博物館
パリ 国立図書館

訳者あとがき
図書館所在地地図
写真出典
参零文献
地名索引
ヨーロッパの歴史的図書館(amazonリンク)

関連ブログ
「世界の図書館」徳永 康元 丸善
魔女と錬金術師の街、プラハ
図書館のいろいろ(5月8日、日経朝刊の記事)
ラベル:図書館 書評
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2006年12月15日

「カテドラル」デビッド・マコーレイ 岩波書店

サブタイトルのまんま、中世に生まれたゴシック大聖堂(カテドラル)が出来上がるまでを絵本という形にしたもの。

絵本といいながらも、きちんとツボを押さえてかなり正確に土台たる基礎を作るところからも絵で説明されている。でも・・・やっぱり子供向き。私が幼稚園の園児や小学生だったら目をキラキラ輝かせて読む(見る?)かもしれないが、大人の現在ではちょっとやってらんない。つ~か、読んでらんない。

とりたてて珍しい部分が絵になっている等の付加的な価値はないので、私的には全く不要。まあ、書名からずっと気になっていたので一応、チェックしてみただけの本。

そもそも絵自体がペン画なのですが、私はこういうの嫌いなのでその意味でも×でした。

カテドラル―最も美しい大聖堂のできあがるまで(amazonリンク)
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2006年11月03日

「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社

買おうかどうしようか、値段の高さから散々悩んだのですが、購入して大正解の本でした。目次を見てもらっても分かりますが、ゴシックについてこれだけ内容があり、しかも簡潔にまとまっているものは例がないほどです。

しかも通俗的なゴシックの説明ではなく、しっかりとした骨太の説明というか解説であり、定評ある先行する研究成果を加味してそれらに対してもきっちりと説明したうえで、それを踏まえた著者独自の見解なども述べられていて本当に勉強になる一冊です。

一般向けのゴシックの説明は卒業し、一歩進んだ知識を得ようと思う私のようなひよっこには、本当に目からウロコというか感動で目から涙とでも言えちゃいそうなとっても嬉しい内容の充実ぶりです。

建築の本質は空間にあるとして、形態はそれ自体が建築造形の目的ではなく、空間構成の手段であるとする。その空間認識からゴシック建築を捉えた本書は実に&実に、読み応えのある本である。

あとで本書からのメモを大量に紹介するつもりですが、最初のゴシック建築とされるサン・ドニ修道院を生み出した修道院長シュジェ(シュジェール)がいかにして《光の壁》(=ステンドグラス)を採用していったか、またそれを思想的に支えたディオニシオウ偽書の光の形而上学の説明等、知れば知るほど楽しくってしかたなくなる知識が盛りだくさんです。

ゴシック建築に対する捉え方を学べば学ぶほど、より一層の好奇心を刺激されると共に改めてゴシック建築の素晴らしさを実感しないではいられない本です。

観光者向けのゴシック本に飽きたら、是非、本書をどうぞ!!但し、腹をくくって読みましょうね。かなり哲学入ってます。本書の中ではスコラ哲学の説明までありますから(勿論、簡略化したものですが)、深~い思索無しには理解できませんし、読んでてもつまらないです。

その代わり、お好きな人には涙モノの傑作でしょう。本書を通じて、次に誰のどんな本を読んでいくべきか、知識を深める道しるべともなります。参考文献などはまさに宝の山です。是非是非、ゴシック好きなら読んでおきましょう。本書を読んで、一度挫折したパノフスフキーの「ゴシック建築とスコラ学」をまた読んでみなければと強く思った私でした。もっと&もっと勉強しないとあの本の素晴らしさが分からないみたいです。よ~し、再チャンレンジだ!!
【目次】
第Ⅰ部 教会堂の聖なる空間
 第1章 建築空間史へのいざない―ヨーロッパの教会堂
   一 はじめに―空間と機能
   二 神に至る通路―キリスト教のバシリカ
   三 光のドーム―ハギア・ソフィア
   四 建築的機能主義―シトー修道会の空間
   五 光の壁―ゴシックの空間
   六 近世のドーム―寸言 
   七 おわりに

 第2章 シトー修道会の聖なる空間―プロヴァンスの三姉妹。とりわけル・トロネの粗い石
   一 はじめに
   二 シトー修道会とその建築
   三 三姉妹の建築概観
   四 粗い石
   五 ル・トロネの建築の機能主義
   六 ル・トロネの<聖なる空虚> 
   七 ラ・トゥーレットとル・トロネ
   八 おわりに

 第3章 サン・ドニとシュジュ
   一 はじめに
   二 サン・ドニの改建
   三 光の空間
   四 アナゴジカルな働き
   五 おわりに

 第4章 ランスのノートルダム
   一 その小史
   二 修復ということ
   三 ゴシックの古典

第Ⅱ部 ゴシックということ
 第1章 ゴシック建築の性格についてのいくつかの考え
   一 北方的性格
   二 キリスト教精神的な理想主義
   三 地上的感覚性の芸術
   四 ヴォーリンガーとドヴォルジャーク
   五 構造的合理性
   六 ゴシック建築の空間論に向けて

 第2章 現代のゴシック建築論
   一 フランクルとシャンツェンとゼードルマイア
   二 ゴシック建築とスコラ学
   三 超越的実在の象徴としてのゴシック聖堂
    1 ゴシック建築とは何か―そのイメージ
    2 ゴシック建築の特徴―そのイメージ表現の方法
    3 ゴシック聖堂の思想的基盤
ゴシックということ(amazonリンク)

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ゴシックということ~資料メモ1
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「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
シュジェール ゴシック建築の誕生 森洋~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシックと現代/吉川逸治~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシック建築の成立/堀内清治~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシック空間の象徴性/高階秀爾~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
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2006年10月15日

「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社

chartre1015.jpg確かフランスのシャルトル大聖堂前のお店で売っていたシャルトル大聖堂の解説本です。実際にシャルトルを見ていた時は本書よりもっとステンドグラスの写真が多かった別の本と絵葉書、しおりを購入したんですが、ヤフオクで偶然本書を見つけ速攻で落札しました。

購入して正解(満面の笑み)!!

あの柱のプロパーションに引きずられつつも独自の造形へと移行していく彫刻が何を題材としているのか、また、あの神の栄光ある世界をかりそめに現出するステンドグラスの題材について、個々に詳しく述べてあるのが非常に嬉しい。これ持ってあのステンドグラスを見るべきだった~。

シャルトルをじっくり見るなら、これ必携ですね。逆にこれだけ読んでいてもイメージが湧かない。だいぶじっくり見たはずだし、この手の解説本にしては、図版も豊富なんですが、シャルトルのステングラスや彫刻を全て網羅するなんて事実上、無理。従って、必然的に解説だけしかないものも多く、これは何を描いたものと言われても・・・分かんなくて・・・(涙)。

一万円ぐらいでシャルトルのステンドグラスを全て捉えた写真集とかあればなあ~。もっと&もっとステンドグラスについて知りたいのだが・・・。ふう~。まあ、とりあえずシャルトル大聖堂のファンは、絶対に購入しておきましょう♪ 行く前にユイスマンスの「大伽藍」にも目を通しておくと更にいいかも?

そうそう、言うまでもないことですが「黄金伝説」も読んでおかないとステンドグラスの主題が分かっても、意味が分かりませんよ!
【目次】

巡礼
大聖堂の沿革
建築
西扉口=王の扉口
北扉口
南扉口
内陣の周囲
ステンドグラス
聖ピア礼拝堂のステンドグラス
扉口の略図
大聖堂平面図・・・表紙裏
クリプト平面図・・・裏表紙裏
南東側から眺めた大聖堂・・・表紙
美しいステンドグラスの聖母・・・裏表紙
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「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
シャルトル大聖堂の案内パンフ
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
黄金伝説 Golden Legend コロンビア百科事典による
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2006年09月18日

「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社

gothic0917.jpg原著はLouis Grodeckiによる"Gothic Architecture" Rizzoli International Publication。

本書はゴシック建築を思想的・建築学的に深化して捉えた記述(フォン・ジムソン「ゴシックの大聖堂」、ゼーデルマイヤ「大聖堂の生成」、パノフスキー「ゴシック建築とスコラ学」etc.)に対して、相互的影響という観点からゴシック建築全般について記述した包括的且つ詳細な歴史書である(訳者あとがきより)。

目次を見ても明らかなように、まずはゴシック建築の定義から始まり、その定義を構造的定義・空間的定義・歴史的定義・図像学的定義の4つの観点から位置づけようと試みる。「ゴート人による、ゴート人様式の」と当初言われた由来とは別に、現在においてもその定義には種々の説があり、明確な定義をなしえていない事が述べられる。それと共に現在においてそれぞれの立場からの定義が明らかにしてきた研究の成果を踏まえて、よりゴシック建築の実像に迫るべく概観する。

その後、具体的に個々のゴシック建築を比較しながら、地方ごとに微妙に異なる部分と明らかに影響を受けている部分、影響を与えている部分を見ていく。

また、その比較はフランスを中心にスタートしながらも西欧各国に広がっていき、それがどのような国際的色彩を帯びるのかについても解説をしている。

これもゴシック建築を考えるときに目を通しておくべき資料なんだろうね、やはり。そこそこいい感じですが、値段がねぇ~高い(涙)。どうしてこんなに高いかなあ~。大判の本で場所をとるうえに値段も高くて踏んだり蹴ったり、図書館で借りてみてますが、手元に置いておきたい基本書なんじゃないかなあ~? う~ん、買ってしまうか悩んでいる最中です。

そうそう、個人的にメモ。
今、SD選書でアンリ・フォションのゴシック(上下)を読んでいるんだけど、アンリ・フォションの弟子が本書の著者ルイ・グロデッキなんだそうです。しかもグロデッキはアメリカに渡ってパノフスキーのもとにいたそうだし、狭い世界だなあ~。ちなみに本書を訳された前川道郎氏はルイ・グロデッキの元にいたそうで、みんな弟子と師匠の関係なんですね。う~む。

グロデッキはロマネスクとゴシック芸術、ステンドグラスの権威なんだそうです。こういった関係を頭に入れてから、本を読んでいくと役に立ちそうです。

そういえば、ゴシックの図像学的定義でエミール・マールのことが出ていましたが、中世図像学の大家であるエミール・マールはこの場合、どういう位置付けになるんでしょう? お弟子さんとかで有名な学者とかいれば、そういう人の著作も読んでみたいなあ~。

私の場合、その辺の情報が入らないから適当に面白そうなものでゴシック関連の本を読んでいるけど、こう考えるとみんな相互に影響しあっているんですね。ふむふむ。
【目次】
第1章 定義と学説―歴史的・物的状況
第2章 12世紀のゴシック建築
第3章 ゴシック建築の古典期
第4章 地方的様式―イギリス
第5章 ドイツと神聖ローマ帝国のゴシック
第6章 イタリアとイベリア半島のゴシック
第7章 むすび


図説世界建築史(8)ゴシック建築(amazonリンク)

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「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
デモンズ3(1988) ダリオ・アルジェント製作
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2006年08月27日

「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社

daiseidoumonogatari.jpg以前にも木俣氏の本を読んでいたんで、これは絶対に読んでおいて間違いないはずと思いつつ、他の本を読むのが忙しくて後回しになっていた一冊。

実際に読んでみると、想像以上に素晴らしい内容です。大聖堂を表すのに最適に近い素敵な写真が多数有り、しかもここで書かれている解説の種類と幅の広さ、内容ともに本当にバランスが良い!! 基本的なことはこれ一冊でほとんどカバーしており、まさにゴシック建築や大聖堂、ステンドグラスに関心を持つ人には、これ以上の入門者はありません。もう、断言しちゃいます。私的には絶対のお薦め。

だってね、大聖堂の構造から始まってそれがいかにして生み出されたか、それを支えた技術や人々。そこに描かれた彫刻やステンドグラスの図像の数々。解説書が何冊あっても足りないぐらいの内容が実にコンパクトにまとめられています。本書に書かれている内容を他の本から得ようと思うと、どれだけの時間とお金がかかることか・・・。

しかも、値段だけ高くて全然役に立たないことしか書かれていない本もあるし・・・。それを考えたら、まずこの一冊を読んでから、類書や関連書を読むことをお薦めします!! 大聖堂やゴシック建築に関心を持ったら、まずは本書を読みましょう♪ きっと後悔しないと思いますよ。実に良い本です。
【目次】序章 ゴシックの誕生
第1章 壮麗なる空間をめざして
第2章 大聖堂の建立
第3章 大聖堂の時代と新しい視覚文化
第4章 大聖堂探訪
図説 大聖堂物語―ゴシックの建築と美術(amazonリンク)

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2006年08月13日

「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房

相変わらず、ステンドグラスやゴシック建築関係の本が読みたくて購入したもの一冊。寝る前に少しづつ読んでいたから読了まで一週間もかかってしまった。

パリのノートル・ダムってフランス革命時にステンドグラスはほとんど割られ、彫刻もだいぶ壊されてしまって、現在のものはたかだか19世紀に修復されたものでしかない、そんなことが念頭にあり、どうしても素直に好きになれないパリのノートル・ダムでした。

それとあまりにも多い観光客の集まる観光スポットという点でも正直私の中では大聖堂としての評価はかなり低い場所でした。勿論、初めてパリに行って見た時は、そんなこと知らないし、単純に初めてみたステンドグラスにうわあ~綺麗だなあって感動していたんですが、去年シャルトル大聖堂のステンドグラス見るまでは、ゴシック建築そのものへの関心もいまひとつでした。表面的な関心以上のものを私には及ぼさなかったのです。

そんな、いささかさめた私の感性を根底からゆすぶってくれたのがシャルトル大聖堂のステンドグラス。ユイスマンスが、はまってしまうのは当然といえば、当然でしょう♪ それ以来、私も折に触れてはシャルトルやステンドグラス、ゴシック建築をキーワードに関連する本を読み漁っている日々です。そして、本書もその流れであまり買う気はなかったのですが、シャルトル大聖堂の解説本を書かれている著者の馬杉氏の本なんでようやくためらいつつ、買ったものだったりします。

最初に感想を言ってしまうと、やっぱりシャルトル大聖堂にはかないませんね。他のを差し置いてでも一気に読破しきるほどの面白さはなかったです。ただ、パリのノートル・ダムもゴシック建築史上においては、十分に意義のある存在だったことが分かりました。

最初のゴシック建築とされるサン・ドニから、パリのノートル・ダムを経てシャルトルにつながる図像学的な変遷や人像彫刻やゴシック建築としての推移など、中世のとある時代に突如としてシャルトル大聖堂が現われるのではなく、ロマネスク様式から徐々に推移して後期ゴシックへとつながるその過程も、他の大聖堂との比較を通じてより鮮明に認識できることを知りました。

個々の具体的な建築物を見ながら、帰納的にゴシック建築というものの姿を捉えることができたように感じます。

建築の平面図からは、そこに表現されるゴシックに特徴的な垂直な方向性と水平的な方向性との調和が見てとれることや、タンパン(正面の彫刻)に描かれる図像的な表現形式や表現対象の推移なども非常に勉強になります。

扉の柱にしばしば刻まれる人像彫刻も、シャルトルで私は初めてその流麗な表現に強い印象を受けましたが、それはあくまでも柱としての空間に合わせて彫刻を行うロマネスク式の影響下にあったものであることもこの本で再確認できました。ノートル・ダムの方は、逆にゴシック的でその空間に収まらずに抜け出そうと志向している点も大変面白いです。

それと私もパリの本屋で購入したガーゴイルのポストカード集ですが、それらは全てノートル・ダムのガーゴイル達ですが、この本ではそのガーゴイル達にも詳しい説明をしています。た・だ・し・・・。
その説明、どっかで見たなあ~と思ったら、著者の他の本でも触れていた話で記述内容はほとんど同じ。う~ん、それはちょっと興醒めでした。
喉を意味するラテン語のgurgulioから派生し、動 詞gargariser うがいをするを語源と考えられている。石と石を接着する漆喰を雨で溶かしてしまうのを防 ぐ為、雨樋の必要からゴシック建築とともに表れてきた。

伝説では、セーヌ河畔の洞窟にガルグイユ(フランス語のガーゴイル)という名の竜が住んでいた。竜 は舟人達を飲み込み、口から出す炎で全て焼き尽し、洪水を引き起こすほどの水を吐き出した。ルーア ンの町の住人達は竜をなだめる為に毎年生きたままの人間を生贄に差し出していた。竜は処女を好ん だが、罪人で済む場合もあった。520年頃ロマヌスという司祭がルーアンにやって来て、町の住人が洗 礼を受けて教会堂を建てる約束をすれば怪獣を追い払うと言った。ロマヌスは重い罪人を伴い、竜と対 決して捕え、薪で燃やしたが頑強な頭と首だけは燃え残った。そこで人々はそれを町の城壁にさらした 。これを基にしてガーゴイルが作られたとも言われる。

なお、ガーゴイルには様々の意味が付されているが、中心となるのは悪霊から大聖堂を守護し、水を 吐き出すという行為により、そこから悪霊を追い出し、人々に罪を犯すことの恐ろしさを警告することである。
これは、同じ著者による「黒い聖母と悪魔の謎」に書かれたもの。

本書だけ読んでも、それほど面白いと思いませんが、ゴシック建築全般に関心を持っていて、その中でパリのノートル・ダムに関心を持つのならば、とっても勉強になるし、いい本だと思います。でも他の本を合わせて読まないと、それほど楽しめないかも?
【目次】
Ⅰ歴史としてのノートル・ダム
 1歴史としてのパリ
 2歴史としてのノートル・ダム大聖堂
 3ノートル・ダムとは
 4ノートル・ダ(聖母)崇拝の高まり
 5大聖堂(カテドラル)とは
Ⅱ大聖堂としてのノートル・ダム
 1ノートル・ダムとゴシック建築
 2プラン(平面図)から見たノートル・ダム大聖堂
 3「神の国」の実現、壁面構成と天井構造
 4ステンドグラスの輝き
Ⅲ彫刻としてのノートル・ダム
 1一二世紀の扉口彫刻
 2一三世紀の扉口彫刻
 3《最後の審判》
 4ノートル・ダム大聖堂内部の彫刻
Ⅳ図像としてのノートル・ダム
 1中世美術における「悪徳」の表現
 2「王ギャラリー」
 3ノート・ダムの怪物群とガルグイユ
Ⅴユゴーの見たノートル・ダム
パリのノートル・ダム(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
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2006年08月01日

「名画を見る眼」高階 秀爾 岩波書店

meiga.jpg絵を楽しむ為の、もう一歩。普通に見てても感動するし、素敵なんだけど、知っていると同じ物を見ていても全然違って見えてくる。まさにそんな絵画に関する知識、というよりも絵画を見る時の視点や着眼点を教えてくれる一冊です。

私自身は、観る前からあまり知識がばかりが先行している頭でっかちな絵の見方って嫌いなんですが、一度本物を観てその段階での自分の印象を大事にしたうえで、更にその対象物について調べて再度本物を見直してみる。こういうやり方が大好きだったりする。

旅行に行った時でも美術館や建築物は気に入ると2、3回行っちゃうもんね。一度目はあまり知識を入れずに率直に感動し、その晩感動を胸いっぱいにして関連する本を読んでから、また翌日に行く。アルハンブラ宮殿やウフィッツィ、ブラド博物館、テート・ギャラリー等々、みんな二度以上通ったから、記憶力のない私でも鮮明に記憶に焼きついてます。

この本は、まさにその二度目に見る時に素晴らしい名画を隅から隅までしゃぶり尽くそうとする楽しみ方にはうってつけかもしれません。専門家ではない以上、素人の私の見方には当然限界があり、そこに描かれた主題さえも十分に理解できていないことも多々ありますが、こういう本があるととても心強いですね。

ただ、読んでから見るのは私個人としてはお薦めしません。まずは自分の目で見てからでないと、絶対に事前に入れた知識によって絵の見方にバイアスがかかってしまいそうだから・・・。少なくとも私の場合はね。

それさえ分かっていれば、どんなものにせよ「知識」は自分の体験を強化し、より深く掘り下げることのできる貴重な武器になると思います。実際に、この本を読んで今更ながらに、あの絵ってそういう意味があったんだあ~と気付いているしょうもない私。

入門書としては、確かにいい本かも。でもね、個人的にはこの本のポイントはそれほど高くないです。単純に好みの問題なんですが、取り上げられている絵がねぇ~。あまり私の好みじゃなかったりする。ラファエロ以外だと、感動にうちふるえて、その絵の前に延々と立ち尽くしたり、見ているうちに胸が熱くなってくるようなことはなかったもの。

採り上げられている絵は、結構本物観たことあるけど、個人的にはちょっとね。まあ、人それぞれですけど。

名画を見る眼(amazonリンク)

関連ブログ
「世界名画の謎」ロバート・カミング著 ゆまに書房
「世界名画の旅 2」朝日新聞社
「美の巨人たち」日本経済新聞社 感想1
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「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会

ゴシック建築やステンドガラスに関する資料を探していて見つけた雑誌です。あの鹿島が出しているんで、実にしっかりした内容です。いやあ~掘り出し物でした(大満足)。

だってね、この特集の執筆陣みてもなかなかのもんでしょう。高階氏に柳氏ですもん。新進気鋭の研究者といった頃でしょうか?

読んでいて楽しいうえに、非常に勉強になります。そして何よりも研究対象となるものに、熱烈なる愛情を注いでいるその姿勢が素晴らしいです。

今から40年も前の雑誌の特集ですが、ちょっと侮れません。通り一遍な解説ではなく、対象を深く掘り下げて行こうという強い意思が感じられ、ゴシック建築好きなら目を通しておくべきだと思います。かなり古いのでなかなか入手するのは難しいかもしれませんが、それだけの価値があると思います。
(本にしてくれれば、絶対に即買いです!)

個人的には、光というものに対する捉え方やゴシック建築が志向するモノについてなど、本当に勉強になります。勿論、他の本で読んだことにも重複しますが、この記事は十分に面白いし、一読の価値有り。あと10年したら著作権切れるから、ネットで紹介したいぐらいです、ホント。

どっかで見つけたら、速攻で買いましょうね。大きな図書館で探してみて下さい。楽しいですよ~(ニコニコ)。

ただ、ショックだったこともありました。以前、読んで挫折した本が文中に出てきたのでした。アーウィン パノフスキーの「ゴシック建築とスコラ学」。う~ん、以前読んだ時は自分の無知故に挫折したが、もう一度チャレンジすべきか??? 大いに悩むなあ~。
【特集の内容:記事のタイトル】
高階秀爾「ゴシック空間の象徴性」 
柳宗玄「ゴシックのガラス絵」
堀内清治「ゴシック建築の成立」
ゴシックと現代/吉川逸治
森洋「シュジェール ゴシック建築の誕生」
関連ブログ
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
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2006年07月09日

「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会

amiyan.jpg1952年刊行です。あの柳宗玄氏の本だから、期待したんですけどねぇ~。昭和32年ではさすがにこの程度か。残念!

とにかく白黒の写真が物足りない。最近は大聖堂の非常に美しい写真がたくさん出回っているし、何よりもカメラも印刷技術もいいので写真では格段に違いが出てしまいます。

解説も本書の場合は、お飾り程度のもので全然足りない。せっかく探し出して購入したのにさあ~(ブツブツ)。ただ分かったことはアミヤン大聖堂も見ておかなければならないゴシック建築の一つで大聖堂の大きさとしては、ゴシック建築の一つの到達点を示すものであること。と、同時にステンドグラスは、近代に入ってからみんな安っぽいガラスに取り替えてしまったのでその点では、観る価値がないこと。そんなとこかな?

まあ、こういう時もありますね。もう一つ買ってある柳宗玄氏の「黒い聖母」に期待しましょうか。

関連ブログ
「秘境のキリスト教美術」柳 宗玄 岩波書店
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
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2006年06月04日

東京人「宗教建築」2006年07月号 都市出版

関口教会 
本屋で平積みされていて、パラパラと眺めて見ると・・・。あっ、これ行った、これ知っているといったものがたくさん紹介されています。

建築関係がお好きで宗教性が物質的に具現化されたようなものにも御興味のある方にはいいんじゃないかな? 難しい理屈は抜きに、見て面白いです。たいがいは無料で見学できるしね(笑顔)。

ニコライ堂

載っているのをざっと挙げると、築地本願寺、東京、聖イグナチオ教会、ニコライ堂、カトリック関口教会、東京ジヤーミイ等々。他にもいろいろとあって、ちょっと寄ってみたいと思うものがいっぱいです。

散策候補として使おうかな?って思って眺めています(ワクワク)。具体的な場所や見学時間等も書いてあってちょっと便利かも。

東京人 2006年 07月号 [雑誌](amazonリンク)

関連サイト
東京ジャーミィ・トルコ文化センター

関連ブログ
とある街の風景
日本にあるルルドの聖母~カトリック関口教会
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2006年05月22日

「塔のヨーロッパ」佐原六郎 日本放送出版会

昭和46年の本だから、アマゾンでも扱ってないようです。

世界中の塔に関して、これでもかと紹介してくれます。何しろ著者が塔大好き!塔LOVEの方みたい。実際に自分の足で稼ぐタイプで実地で見学した感想と塔にまつわる話などを適宜入れながら、普通には見られない本となっています。

今の時代じゃないからね。著者が海外を回って塔をひたすら探して見学してたの。社会学の学者さんだけど、専門と直接関係無いから趣味でやっていたんじゃないかな? かなりのオタクです、ホント!

珍しい本だと思うんだけどなあ~。あまり塔に関する本読んだことがないので滅多なこといえませんが、保存しておこうか、置き場所に困るんで売ろうか悩んでます。部屋が狭くて・・・(涙)。類書で手に入るなら、持ってなくてもいいんだけど、絶版なだけに困るなあ~。

あっ、ただ誤解して欲しくないんですが、興味深いのと読んでて面白いかというのは別です。本書の致命的な欠陥があって、他の人にはお薦めしません。だって、図版が少な過ぎ。文字での説明には限界があり、大量の図版と相まって生きる説明ですが、この本ではちってもイメージが湧かず、異様に悲しくなります。

ただ、ジョットの塔とかガウディとか、実際に私自身も行ったことのあるところはかなり楽しめました。逆に言うと、行ったことがあるか、写真等で分からなければ駄目。旅行に行く時に、持って行くと一番楽しめるんでしょうね!

ノルウェーの木造教会とか、TBSの世界遺産で見たから、納得できたけどじゃないとなあ~。全然説明がわかんない???本書だけで完結しない本です。

でも、建築に興味が有り、あちこち海外旅行で史跡巡りするタイプにはいいかも? 一般人には不向きだし、オタク向きのような気がします。どうしようかなあ~。そろそろ整理していらない蔵書を処分しないと部屋の床が心配なんだよねぇ~。あ~あ、部屋がかび臭くなりそうだし。
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2006年05月13日

「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会

カテドラル=聖堂(大聖堂は司教座教会を指す)、あれだけ巨大なまさに天を衝くような高みにまで人を押し上げようとする底知れぬ信仰心の賜物。それを生み出したのは、現代の高層建築では絶対に得られないあの崇高な気高さをも生み出した、縁の下の力持ちである人々であった。

社会階層上は平等とは決して言えなかった当時において、神の前でのカテドラルの建設だけは、その情熱において全ての人が平等であったのは、驚くべき事だと思った。確かにその都市の全人口1万人を収容できる広さを持った大聖堂では、庶民の隣に貴族が、僧侶が、国王までもが一緒にいられる特別な空間だった。

聖職者は確かにその建築に関わりはしたが、実際に資金を集め、設計者を見つけて発注し、石工を雇って最終的な完成までの責任を持っていたのは参事会員であったことを知ったのも本書のおかげでした。

石工の給料から、その人員調達。同じ石工と言われても、単なる切り分けるだけの単純労働者から各種の石切場や石材の特性を知りぬいたうえで彫刻を施すものではその質が全く異なる。後者はやがて彫刻家として、隔絶した立場を築き上げ、自らの特権的な立場を守ろうとして、閉鎖的な各種の符丁や知識の独占を行っていく。そういった過程から、いわゆるフリーメイソンが生まれていくことなどの説明も実に(!)興味深いです。

また、建築家に至っては更に破格の扱いであり、卑しい身分でありながら、桁違いの報酬と大聖堂に自らの名や彫像を残す名誉。更に、大聖堂内に埋葬される栄誉にまであずかることになる。かくまでも手厚いもてなしを受けながら、彼らはこの奇跡のような建築物の設計を生み出していったのである。

彼らが、その奇跡の設計を可能にした技術として、イスラム経由で伝えられた幾何の知識も紹介されている。というか、思わず数学の教科書と思うような幾何の話題についてもかなりの頁が割かれている。

とにかく、出来上がった大聖堂を見る視点ではなく、それを同時並行して作り上げていく人々の視点を持っている本だと思います。実に興味深いし、類書はほとんどないのではないでしょうか。

ゴシック建築のよくある美術上の説明なんかとは一味も二味も違いますのでゴシック好きなら是非、読んで欲しいところです。これはきっと楽しめる本だと思います。西欧中世というと、すぐ思い浮かべてしまう阿部先生の視点にも通じる職人や庶民の視点が実に新鮮で生き生きとしていてイイ♪

阿部氏の本が好きな人なら、これもきっと楽しめると思いますよ~。お薦めです(満面の笑み)。もっとも私の場合は、「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで」の上下巻の合間に読んでいたので、時々話が複雑にオーバーラップして、どっちの本を読んでいるのか分からなくなることも(苦笑)。

しかし、両方の本とも同じ物をどういった角度から見るかといった違いでしかない場合も多く、別な意味で面白かった。知識が深まれば深まるほど、理解が深まり、もっと&もっと知りたくなりますね。いやあ~、ヨーロッパの大聖堂巡りを近いうちにやらねばなるまい!! 古代ローマ遺跡巡りは、カルタゴ行ったから、しばらく休んでそちらを優先だな。ふむふむ。

更にいうと、だてに鹿島から出ていません。他にもアルハンブラ宮殿のものとか持ってますが、鹿島の出している建築関係のこのSDシリーズは良書が非常に多いんだよね。他にも買う予定はあるんだけど、いつ買えることやら・・・。

カテドラルを建てた人びと(amazonリンク)

関連ブログ
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「中世の窓から」阿部 謹也  朝日新聞社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
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2005年12月31日

「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社

seiyoukentiku.jpg綺麗な歴史的な建築物でも見ようかと思って読み始めたんですが、どうしてどうしてそんな甘い考えを打ち壊すようなしっかりした内容を持った本でした。初心者向きに書かれた正統派建築史の紹介とでも言えばいいのでしょうか? 恥ずかしながら、本当に基本的な事柄なんだと思いますが、この本を読んで初めて知ったことがたくさんあり、本書に書かれている内容ですら完全に理解したとは言い難かったりします。

中世の建築家は、単なる技術者以上の存在であり、神の棲家である天まで届く巨大な大聖堂を設計し、現実化するその技術は、当時の人々の想像を絶するものであった。それゆえ、ある種の魔術師(マギ)と同等に位置づけられたのも故なきことではない。また、当時の建築はその本質が哲学と数学にあると見做されていたことが本書の中でも述べられています。まさに、エリートのお仕事だったんですねぇ~。本書を読んでその事が実感できました。

建築の概念に「オーダー」というものがあり、オーダーとは円柱とそれが支える水平材からなる建築の最も基本的な構成部分なんだそうです。このオーダーはギリシア人によって普遍的な美の規範にまで高められ、現在の建築にはこのオーダーの造形原理に従う系統(古典系)とロマネスクやゴシックに代表される中世建築の造形原理に従う系統の二つが大きくあるんだそうです。

即ち、ギリシア建築の「柱」の論理に対し、ゴシック建築の「壁」の論理があり、前者が重力感にあふれる立体的な柱の建築を特徴とし、調和や均衡といった普遍的な美を目指す一方、後者は線状要素による重力感を喪失した壁の建築を特徴とし、神秘的・超越的な空間の美を目指す違いがある。実に、的確でなるほどと首肯される指摘です。建築を学んだ人達ならきっと常識なんでしょうけど、私は本書で初めて知りました。改めて自己の無知を認識させられましたが、非常に刺激を受けました。もっと&もっと勉強せねば、強く思いました!!

来年はゴシック建築に関する本を重点的に読みたいなあ~。ホントにいい刺激を受けれて良かったです(笑顔)。口で言うほど勉強するのは簡単ではないと思いますが、何よりも面白いし、もっと&もっと知りたいです建築のこと。建築って奥が深いですねぇ~。

そんなふうに思えただけでも価値ある一冊でした。ヴィトルヴィウスの「建築書」が単なる建築関係の書を越えて、後世に広く読まれたのもそこに描かれた世界観が素晴らしかったからなんですね。ふ~む、古典が広く学ばれた意味についても本書では説明されています。興味深いなあ~。

こういう本を読んでから、ヨーロッパに旅行に行くとまた楽しさが倍増しそうです。シャルトル大聖堂やサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂、サン・ロレンツォ教会等々、私が知っているところも一部は出てきますが、それこそ無数の建築物が紹介されていてあれも観たい、これも観たいって思ってしまいます(苦笑)。

一読してすぐ理解できる本ではないですが、建築物を観たり、訪れたりするのが好きな方には一度目を通しておいて損はない本です。おっと、この本のレビューを書いているうちに年を越してしまいました。

今年も読書三昧で終わりそうですね。このブログを訪れてくれた皆さん、昨年中はどうも有り難うございました。本年も宜しくお願いします。皆さんにとっても良い年でありますように!!

【目次】
第1章 様式の二つの流れ(二つの世界様式の二つの系統 ヨーロッパ建築の流れ ほか)
第2章 古典系建築の流れ(ギリシア建築 ローマ建築 ルネサンス ほか)
第3章 中世系建築の流れ(キリスト教建築の始まり ロマネスク建築 ゴシック建築 ほか)

図説 西洋建築の歴史(amazonリンク)
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2005年12月18日

「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店

先日、黒江光彦氏の「中世の美術」 に感激し、氏の書かれてた本を探していて見つけたもの。値段が2万円とべらぼうに高く、よっぽどのことがなければ買えないし、どっかにないかなあ~と思って図書館で見つけた一冊(感謝&感謝)。

どんなに綺麗なステンドグラスの写真があるのかなあ~とドキドキしながら見てみると・・・、アレレ? 全然大したことなかったりする。これなら以前購入したステンドグラスの本の方がよっぱどいい。気を取り直して、目次をめくると大・大・大好きなシャルトル発見! シャルトルってゴシック建築じゃなかったっけ?と思いつつ、とりあえずその頁を読んでみる。

う~ん、イマイチ。ケルト時代以来の聖地とか、マリア信仰とかの絡みの説明がほとんどなく、あくまでも建築として説明していてもやっぱり物足りない。思いっきり期待外れ。やっぱり2万円という以上、感動させて欲しかった。そしたら、無理してもなんかの機会で買うことを検討したのに・・・。ちぇっ、残念。

もっとも時間がなくてたくさんある章のうち、シャルトルとサン・ドニ関係のところしか読んでないので全体としての評価をするのは、早計かもしれませんが私の場合、これは買う対象ではないな。

また、暇のある時に借りてみてみよう。それで十分な気がしました。

【目次】
第1章 ロマネスクのステンドグラスの諸問題―機能・建築における配置・技法
第2章 起源、古代から12世紀初頭まで
第3章 フランス西部のステンドグラス
第4章 サン=ドニ,シャルトル,パリ
第5章 12世紀のシャンパーニュ地方とモザン芸術
第6章 12世紀のロレーヌ地方、アルザス地方およびライン河流域
第7章独立した二派―ローヌ河流域地方とイギリス
第8章 ロマネスク末期の諸問題

ロマネスクのステンドグラス(amazonリンク)

関連ブログ
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
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2005年08月23日

「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房

sharutoru.jpgようやく求めていた本に巡り合ったという感じでしょうか? 先月初めてシャルトル大聖堂に行って、その素晴らしさに驚愕し、あれだけ素晴らしい建築やステンドグラスの事をもっと&もっと詳しく知りたいと思いつつ、資料を探していました。

ステンドグラスについては、そこに描かれる宗教画としての絵解きについて絶好の解説書をGETしましたが、ゴシック美術全般を含めてシャルトル自体についても詳しく知りたいという欲求は、この本でようやくある程度満たされました(満面の笑み)。一度でもシャルトル大聖堂に行って心の底から感動した人なら、きっとこの本の面白さ、素晴らしさを共感してもらえると思います。

逆に、本だけ読んでもたぶんそんなに面白くはないかも? まず、体験ありき! 説明はそれからですね。あくまでも私の勝手な考えですが、順序としては最初に一切の予備知識無しで、シャルトルに向かい、ひたすら大聖堂建築と、ステンドグラス、彫刻、塔からの眺望を楽しむ。それから、おもむろに本や解説書で個々の意味を一つ一つ理解しながら、もう一度見る。これがベストの楽しみ方ではないでしょうか? 最低でも半日はここの中で過ごしましょう。じわじわと神の領域に近づいているような錯覚(?)に浸れること間違い無し!! 

シャルトル大聖堂正面

さて、内容。シャルトルに関する基本的な事が盛りだくさんに入ってます。用語として「大聖堂」は大きな聖堂の意味ではなく、cathedra(司教の座る椅子)のある聖堂のことで、聖堂建築のうち、司教のいるものを大聖堂というそうです。実は…物を知らない私は、聖堂と大聖堂の区別って、大きさか何かとずっと疑問に思っていたので、これ読んで初めて謎が解けました(いやあ~笑ってやって下さいまし)。

西欧都市における中世の聖母マリア崇拝については、以前読んだ本で知ってはいたが、シャルトルが西欧のあらゆる国から、巡礼者を集めた聖母崇拝の中心地であることまでは知りませんでした。確かに、聖母の聖遺物あるのは知ってるけど。火災に際して、「聖母マリアの衣」という聖遺物を持ち歩いて寄付を募ったとか、日本でも秘仏の出開帳とかで資金を集めた話があるが、どこの国でも一遜ですね。

大聖堂内部

そして民衆が主導になってこれらの再建がなされたと共に、そこまでするの?って思ったことがありました。ローマ教会は、聖堂建築の責任者に対し、聖堂建設に協力した人々に免罪符を与える権利を認めていたそうです。人々は罪を贖う為に、十字軍に参加する代わりに、聖堂建設に協力すれば良かったんでそうです。これは、かなりの驚きですね。聖堂建設は、聖地奪回の聖戦に匹敵する行為だったわけです。う~む、あれだけの建築物が可能になる背景が納得行きますね。

他にも、なかなか素敵な情報が書かれています。歴史的には、そもそものシャルトルがキリスト教以前からの聖地であり、シーザーの「ガリア戦記」で「一年間のある時期みガリア(フランス)の中心地と思われているカルヌーテース(carnutes)族の領地の神聖なる場所に会合する。争いのあるものは、すべて各地からここに集まって僧侶の裁決を待つ」と書かれているそうだ。シャルトルの地名がこのカルヌーテースから来てるんだって。この神聖な場所に大聖堂が建っているのだから、そりゃ神聖に他ならないです。キリスト教の聖地がドルイド教における聖地のうえに教会を建てたものという話は、ここで当てはまる事実であったらしい。

また、この聖地には地下に泉があった。水は清め、浄化させ、新しい生命を与えるのみならず、治癒・豊穣をもたらすものであった。実はこの泉の歴史は、今も生きている。大聖堂外陣南側入口からクリプトに入ると「サン・フォールの井戸」と呼ばれる泉があるんだって。かつてたくさんの人々が、この地下の泉に病気の治癒を求めてやってきたが、17世紀にその崇拝を嫌った聖職者が井戸を埋めてしまった。1901年に再び発見されたそうだが、知らなかった!! クリプト入れるんだ。で、そこにそんなものが隠されていたとは…。うっ、絶対に&絶対にまた行かねばなるまい(堅く心に誓う私)。もし、これから行く人には是非、それがどんな泉かレポート希望(御辞儀)。

「柱の聖母」残念ながら、地下聖堂の聖母ではありません

はいは~い、お待たせしました。さらに出てきました地下聖堂の黒い聖母(上の写真は、残念ながら「柱の聖母」で違います)。キリスト教以前のドルイド教の時から既に崇拝されていたそうです。この本では、先ほどの聖なる泉。聖なる水の崇拝と結びついた大地母神との関連が挙げられている。大地と結びつくのは、やはり黒い土なのでしょう。その辺の説明もなかなか楽しい。

そして忘れてならないステンドグラス。王侯、貴族の寄進による他、ギルドによるものなど非常に多彩である。まさに市民による大聖堂であることは、その寄進者をみるだけでも明らかだそうだ。パン組合がもっともいい場所を占めているというのも、その勢力の大きさが分かるし、毛皮商などもだいぶ流行っていたらしい。

聖母

そもそも光によって神の持つ聖なるものを現そうとする時、一つはモザイクによる光の乱反射であるが、それはあくまでも南欧の強い光が必要とされる。そこで強い光が得られない北欧で解決策として採られたのが、外部の光を透過させるだけのステンドグラスであった。偶然ではないんですね。必然性があって選び取られた選択が、現在に至るこの美しさ、壮麗さを産み出しているんだそうです。

薔薇窓 

ロマネスク時代の「美は物質的美しさの中に求めてはいけない」から、ゴシック時代の「貧しき心は、物質によりて真実へと高まる」に変わっていく中で、まさにステンドグラスにより表現される神の光が、宗教的境地へと高まっていくのを実感します。あの場所で、あのステンドグラスと建築を見たら、そう思わずにはいられません。おそらく、誰しもが。

他にも描かれた彫刻についての説明や、ステンドグラスの絵解きなどまだまだたくさんあるんですが、とにかく、興味がある方は読んで損は無いです。シャルトルにはまってる方は、いますぐ買いましょうネ!(高いけど) 私には大満足の一冊でした。

欠点を挙げるとすると、入っている絵や図版が白黒なんで分かりにくい。これは是非ともカラーにして欲しかった。値段もそれなりにするのだからね。一見すると、ボリュームがありそうだが、文章はそれほど多くなく、面白いのですぐ読めます。今、もう一度この本を読み返しながら、シャルトルで撮ったデジカメの画像を見直してます。もっと、もっとたくさん写真撮れば良かった。そしてクリプトいき損ねたのは、悔しい~。リベンジを強く願う。

【追記】
そうそう、ユイスマンスの「大伽藍」ってこのシャルトル大聖堂だったんですね。ずいぶん前に読んでいたので読んだ内容が全然記憶になかった。改めて読んでみたいなあ~。どこにしまってあるかな???

シャルトル大聖堂―ゴシック美術への誘い(amazonリンク)
【 目次 】
I ゴシック美術の時代─シャルトル大聖堂の時代とその美術
1. ゴシックとは─その語源と意味
2. 西欧中世(美術)の再評価
3. 中世という時代─キリスト教の勝利
4. サン・ドニ修道院長シュジェールとゴシック精神
5. 大聖堂とは─都市の民衆の聖堂
6. 大聖堂で表現されているもの─「神の国」の実現
7. 大聖堂の建造を支えたもの─聖母マリア崇拝と都市の民衆
8. 大系としての大聖堂
9. シャルトル大聖堂の偉大さ
II シャルトル大聖堂
1. 聖なる地と泉─ボースの地とシャルトル
2. 謎の黒い聖母
3. シャルトル大聖堂の歴史
4. 聖母マリアの宮殿
5. ゴシック空間の演出
6. 迷宮─エルサレムヘの道?
7. 大聖堂の職人たち
8. キリストと旧約の王たち
9. 暦と月々の仕事
10. 聖母戴冠と美しき神
11. 最後の審判と人たち(道徳)
III ステンドグラス
1. ステソドグラス─神と光への賛歌
2. 光の美学の誕生と勝利
3. シャルトル大聖堂のステンドグラス
4. ばら窓─その意味と象徴性
5. シャルトル大聖堂の三つのばら窓
6. 寄進者たち─中世に生きる人びと
IV シャルトルの魅力
1. 古き町シャルトル
2. 巡礼─聖遺物崇拝と巡礼
関連サイト
増田建築研究所 HISTORY OF WESTERN ARCHITECTURE

関連ブログ
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
シャルトル大聖堂の案内パンフ
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
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2005年04月29日

「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社

romanesuku.jpgえっと、これ何ヶ月か前に読んだ本。ブログ始める前に読んで、メモがあったのでここにも貼っておきます。たぶん、以下は抜書き?

マグダラのマリアの聖遺物
修道院の前身は858年武勲詩に謳われた伯爵ジラール・ド・ルシオンと妻ベルタによって丘の麓(現在のサン・ペール)の地に創建されたベネディクト会の尼僧院にさかのぼる。873年この尼僧院がノルマン人の侵入により破壊されると、ジラールは現在の地にベネディクト会男子修道院を創建した。丘の頂からは外部からの攻撃を防ぎ易い。878年教皇ヨハネス八世は修道院を認め、献堂式が行われた。しかし、教会堂は907年と926年の火事で灰塵に帰してしまった。 
11世紀の中頃、ヴェズレーにマグダラのマリアの聖なる遺骨があり、遺骨が奇跡を起こすという評判がたった。すると参詣者の数は急増し、ここにヴェズレーの巡礼地としての繁栄が始まる。
マグダラのマリアはキリストの受難につき従い、復活したキリストに最初に出会った人である。このマリアがのちに罪深き娼婦のマリアと同一視され、こここに悔悛の女のイメージができあがる。さらにややこしいのはベタニアのマルタの妹で兄弟ラゾロの蘇生を目撃したマリアとも同一人になった。伝説によるとキリストの昇天の後、きょうだい3人は迫害を逃れて漂流し、マルセイユに上陸する。マグダラのマリアはその地で没し、以外はエクサンプロヴァンスに埋葬された。
ところが、のちにバディロンという修道士が遺骨をヴェズレーまで移送したという。一方、ヴェズレーの南東100kmほどに位置するオータンにはラザロの遺骨が奉納され、らい病に病む人々の巡礼地になった。こうしてブルゴーニュ地方のロマネスク美術の双璧をなすヴェズレーとオータンは、ともに身近な人間像であるきょうだいの遺骨を保有し、巡礼の地としての繁栄が約束された。
マグダラのマリアの祝祭は7月22日である。1120年の祭日前夜、ヴェズレーの聖堂はその遺骨を参拝する巡礼者で賑わっていた。おそらく堂内には無数の蝋燭が灯されていたことであろう。そしてその夜の出火。火の手は聖堂をなめ、男女1127人の命を奪った(「アンジュ教会の年代記」)。

1146年クレルヴォーのベルナールが罪を償うための苦行として第二回十字軍の呼びかけをしたのはここヴェズレーであった。これには国王ルイ7世と独王コンラート3世も参加した

1279年プロヴァンスのサン・マクシマン修道院でマグダラのマリアの遺体が発見されると本物論争が起こり、それに負けた結果、巡礼者がいなくなりさびれていった。


サンティアゴ・デ・コンポステラ
巡礼ブームの発端はスペインに伝道したといわれる使徒大ヤコブ(西語でサンティアゴ)の墓が9世紀初め天使のお告げにより北西部ガリシア地方で「発見」されたことにある。この墓には星(ステラ)の光が降り注いでいたという。この場所に大聖堂サンティアゴ・デ・コンポステラが建立され、11世紀以降、イベリア半島最果ての地は贖罪と奇跡を願う人々の宿願の地となった。

ヴォールト
開口部の上を二次元的に覆うアーチに対して、三次元的に空間を覆うものである

薔薇の名前(映画)の教会堂の扉口
モワサックとオータンの扉口彫刻を合成したもの

モワサックのサン・ピエール修道院教会堂(フランス西南部トゥールーズから北西70キロ)
回廊はシンボリックな意味をもつ。中世の思索家は回廊の列柱をエルサレムのソロモン神殿と比較した。この神殿には中庭を四方で囲む屋根つき歩廊があり、ソロモンの列柱と呼ばれていたからである。ヨハネ伝(10章23)にはキリストがこの柱廊を往還したことが記されている。

ロマネスク(roman-espue)
この用語は19世紀の美術史家によってつくられ、11~12世紀の西ヨーロッパに開花した建築様式が古代ローマの建築を彷彿させるところから生まれた語である。具体的には、ローマ人が好んだ半円形アーチやアーチ列、葉飾り柱頭、時には溝付き柱等を建築要素として用いたところに由来し、しだいに建築と一体になった彫刻や壁画、そこに用いられる調度・工芸品の様式にも使われるようになった。

図説 ロマネスクの教会堂(amazonリンク)

関連ブログ
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
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2005年04月21日

「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房

gosikku.jpgあの~、実はこれ読むまで私はもっと自分は理解力があると思っていたのですが…。全く、完全に少しも分かりませんでした。読解不可能。恐らく、まだ外国語の方がわかるね!数式でもはるかにわかるような気がします。

不思議なのは、文庫で出ているんだから一般向けだと思うんですが、どこの誰がこれを理解できるんでしょうか?はなはだ疑問。少なくとも、これを読む前提条件として知らなかればならないことが、無数にありそう。それを明示することもなく、いきなり、自明の論理として説明されてもなあ~。引用やら、文献やらの注が頁のかなりの部分を占めているが、たかだか文庫読むのにそこまで労力かけてらんない。

少なくとも私が読んで範囲で何を言っているのか、何を言いたいのか、誰に言っているのか?全く不明。この本は誰が読むべき対象者なのだろうか?建築専攻の友人に尋ねてみたいもんだ。私と同じように、ゴシック建築に興味があっても素人は決して買わないように。間違いなく、後悔します。わたしは実際に後悔していますから。最近では一番の失敗かも?もっと、分かり易くて興味深い本ないのかな~???

ゴシック建築とスコラ学(amazonリンク)
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2005年04月18日

「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社

著者の感性と合わないのであろうか? 読んでいて全く面白さを感じないのが不思議なくらいつまらない。教科書以上に関心を呼ばない文章と言えば、より明確に私の感じが伝わるだろうか・・・。読みにくい文章ではないし、章ごとの導入部も一見して読みやすそうな感じではあるが、私に言わせれば、くだらない事柄に紙面を割く一方で、肝心の部分の説明はおざなり、大嫌いな文章スタイルの一つである。

何よりも、もっと&もっと興味深いはずの建築論なり、図像学なりについてきちんとした説明が欲しかった。読んでいて、私には全く意味が分からない文章であり、時間と紙面だけが進んでいく。本来なら、もっと興味を惹くであろう事柄が説明を読んでいると、なんかどうでも良くなってくる。学術論文を読んでいても、内容さえあれば、こんな気持ちになることはないんですが・・・。一見無機的な数式の羅列であっても、はるかに面白い論文等を私はたくさん知っている。

とにかく私の感性として、相容れないものを感じた。説明の重点の置き方が、私の考えるものと全く異なり、不要なところが多い反面、もっと詳しく説明して欲しいところは少ない等。聖堂に関する著書が多い筆者だが、改めてこの人が描いたものは今後、絶対に買うまいと思った。テーマとしては興味深いものが多いのに全くの期待外れ、著者の類書で値段が高いのに何冊か購入予定に入れていたが、全てキャンセルして正解だったかも。

なんか批判ばかりになってしまったが、本書で採り上げてるテーマは興味深いものが多いです。但し、読んでもつまらなかったし、説明に全然納得できなかったので個々に引用やコメントはする気にもなれませんが…。いくつかテーマだけ抜書きすると。
  聖母マリアの衣―聖遺物崇拝
  三つの薔薇窓の意味と象徴性
  ゴシック建築におけるスコラ哲学的発想
  《王のギャラリー》の意味(パリ、ノートル・ダム大聖堂)
  迷宮の意味―建築家たちへの賛辞
 
面白そうでしょう・・・それなのにネ。この本は外れだったので、おととい購入した「ゴシック建築とスコラ学」(ちくま)に期待しましょうか。面白いといいなあ~。でも、その前に一緒に買った中公新書の「マグダラのマリア」を読まないと。

大聖堂のコスモロジー 講談社現代新書(amazonリンク)

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デモンズ3(1988) ダリオ・アルジェント製作
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2005年03月31日

「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社

本の表紙出版している新潮社のサイト

大聖堂関係は結構好きで何冊か本も読んだし、写真集も見ましたがコンパクトな本なのにこれでもか、これでもかと素晴らしい写真が入っているのは初めて!ちょっと感動しちゃいました(ウルウル)。勿論、実際に行って経験しない限り、ゴシック大聖堂の持つ、あの独特な空間美・空間感覚・ひいては世界観まで感じさせるような「神の意思の現われか?」とさえ、非キリスト教徒の私に感じさせる感動は伝えようがないが、一度でも経験したことのある人ならそれを呼び起こすきっかけになる、そんな本です。

フライング・パットレス

大聖堂の建築に関する知識も、分かり易く(それでも結構、難しいけど)図示して書かれていて勉強になるし、何よりも大聖堂の空間をとってもうまく写真として切り取っている。構図がすごくうまいと思う。また、ポイント、ポイントごとに彫刻や飾りについてもいいものを選んで撮っているし、説明がイイ! 専門家の木俣氏のは正直言って単なる説明に過ぎず、読ませる文章を書くという点ではイマイチなのが玉に傷だが、編集者をされていた都築氏の文章はやはりうまい。何よりも率直に、大聖堂を目の当りにした時の感動を表し、思わず自分の記憶にある感動とオーバーラップして大変心を動かされた。なんか、写真見て文章を読んでるだけで感動が甦ってくるカンジ。

gothique1.jpg

まさに目で楽しみ、目で理解する世界(秩序)。天使や悪魔や怪物が、そこでは生き生きと息づいていて人々と共に生活しているのを感じる。パリのノートルダムのガーゴイルもいいが、プラハの聖ヴィート大聖堂も良かった!これには是非行きたいと思っていたアミアンやサン=ドニ、シャルトルの大聖堂も採り上げられている。いやあ~もうヨダレがジュルジュルでそうなくらいに、私のツボにはまってるかも。この下から仰ぎ見た神の神聖な空間感覚がたまらなくスキ。

ステンドグラス「ソロモン王」

薔薇窓の美しさもさることながら、ステンドガラスの読み方もすっごい為になった。実際に信者が見易いように下から上へ、左から右へ、ちょうど漫画の読み方の逆というのは知らなかったなあ~。今まで漠然と見るので終わってしまっていたのに…。

それ以外にも塔には、自分の足で登って見なければというのは、まさに私の持論でもあり、すっごく共感できる部分。私もどこの国に行ってもきちんと歩いて上ったもの。サクラダ・ファミリアしかり、フィレンツェのジョットーの塔しかり。何でも自分の五感を使って体感しないと、それはモノを自分のものにできないカンジというのかな?うまく表現できないけど…。逆に言えば、まさに登る為のものが塔であり、京都の南禅寺の大門にも登ってみないことには、何も理解できないのと一緒かな(どんな例えだか?)。

でも、これは大聖堂好き(いるのかそんな人?には、押えておくべき本ですね。でもこれ見てるとまたフラフラと旅に出たくなるなあ~。今年はそんな暇ないのに…。
【目次】
プロローグ ゴシックを味わうために 木俣元一

アミアン AMIENS Cathdrale Notre-Dame ようこそ、ゴシックへ
サン=ドニ SAINT-DENIS Basilique de Saint-Denis ゴシック生誕の地は王家の墓所
シャルトル CHARTRES Cathdrale Notre-Dame 800年前の巨大タイムカプセル
ランス REIMS Cathdrale Notre-Dame 聖処女ジャンヌは大聖堂を目指す
ストラスブール STRASBOURG Cathdrale Notre-Dame アルザスに咲いた哀しのバラ
ボーヌ BEAUNE Htel-Dieu 施療院に秘められし
ファン・デル・ウェイデン
ディジョン DIJON Claus Sluter 中世屈指の彫刻家 リューテルに会いに
ブールジュ BOURGES Cathdrale Saint-tienne 三層式の聖なる空間
ヴァンドーム VENDME glise Abbatiale de la Trinit 燃えあがるゴシック最後の炎
中世のパリをもとめて GOTHIC in Paris 都築響一
ゴシック美術談義 木俣元一

中世美術を見るヒント 木俣元一
1 ゴシックの大聖堂はこうなっている
2 ステンドグラスを読んでみよう
3 天空へのらせん階段
4 マリア様はどう変わったのか?
5 フライング・バットレスの離れ技

旅案内 MAP & GUIDE
パリ・ゴシック・ガイド
本書で紹介したゴシックたち
とんぼの本 フランス ゴシックを仰ぐ旅(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
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2005年03月12日

「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書

あんなに薄い本なのに、あれだけ多くの情報・資料が簡潔にまとめられ、しかも理路整然と説明されているのはとっても素晴らしいです。高校生時代、ユイスマンスの「大伽藍」を読み、漠然としたイメージしかなかったものが、ヨーロッパへ行き、英・仏・伊・チェコと教会建築やカタコンベ、修道院&付属図書館、礼拝堂等々を巡り歩いて実際にこの目で確かめ、そこで実感することで更に強烈な感動・感銘を受けましたが、そこで感じた諸々の印象がこの本を読むことで実にスムーズに納得がいき、素直になるほど~って思いました。

ちょっと毛並みは違うんですがホラー映画「デモンズ3 (1989)」 でテーマになるまさに、大聖堂ゆえの恐怖感が聖なる存在であると共にオーバーラップしてきますね。この本を読んでまず最初にあの映像が生々しく甦ってきました。

より詳しく内容に触れると、また高校生時代の世界史の知識が役立ってくるのですが、中世的停滞が終わり、11世紀の大開墾時代の到来辺りから始まります。農業生産高が著しく向上する当時、農村人口が増え、それは新たな農地拡大を求めて、更なる森林伐採・開墾を促す循環をなしていた。もともと、農村はキリスト教以外の土着宗教が繁栄し、まさに異教の温床であった。ダ・ヴィンチ・コードの解説を待つまでもなく、ラテン語の村人を意味する pagaanus がフランス語の異教徒 paien を指すのもそれを如実に現している。特に土地(農村)に根差した地母神信仰が切っても切れない存在であった。

そのような状況下、農村で食えなくなった農民は都市に向かい(いわゆる商業革命がこの頃)、いわゆる都市住民が現われてくる。こうした都市部への人口移動と開墾による自然消滅という2点を中心にして、農村が有していた地縁・血縁的結びつきから離れた都市住民は大いなる不安心理にかられていた。

都市住民は、それぞれが異なる背景を持つ故にその不安は既存の地母神ではカバーできず、その結果、有力になってくるのが普遍性を有する聖母マリア信仰であった。これは普遍的な心の拠り所としての地母神崇拝に他ならなかった。かくして、大聖堂はマリアに捧げられるようになっていく。大聖堂内における薄暗さや樹葉の彫刻は、失われた森林への愛着を満足させる代替物でさえあった。

このようなことが前半に書かれている。まさにユイスマンスの「大伽藍」以外の何物でもない。
その後も、いかにしてゴシック建築が高く、高くひたすら高く、神へより近づく為か高さを指向することになったかや、至る所で沸きあがった建築熱(熱狂)の理由にも言及されている。

さらに、そのゴシック建築が歴史という避けようのない時間の侵略をいかにしてくぐり抜けて今日まで残ったのか、その辺りも非常に興味深い。是非、その辺りの事がお好きな方には読んでもらいたい一冊ですね。旅行先で教会を回るのが楽しくなりますよ~。

そうそう、ネットで見ていたら私もすっごくはまったプラハの聖ヴィート教会のことが書かれていたブログを発見!素敵な写真もありました。個人的には、私のブログでも左に写真貼ってあるプラハのストラホフ修道院図書館が一番のお薦め。本好きには、もう感動で涙ものの素晴らしさ。ラテン語読めたらなあ~。アテネ フランスでラテン語講座あるのでマジ行きたかったりする。
ゴシックとは何か 講談社現代新書(amazonリンク)

プラハ城 聖ヴィート大聖堂
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