
正直、舞台がアメリカのワシントンDCという点で、もう興味がありませんでした。発売前からの人気が高く、その内容自体はいろいろとニュースで漏れ伝えては聞いていましたが、かえってそれらから関心を薄くさせられたような気もします。
その為、販売されてからもずっと読んでいませんでした。
いつものように近所の図書館へ本を返却に行ったら、外国小説の棚にこれが置かれていたので、ふと読んでみようかと思い、読んでみました。
【以下、ネタバレ有り。未読者注意!】
このラングドンシリーズで最大の特徴である、謎解きに際して膨大な薀蓄を語るスタイルは本書でもしっかり踏襲されています。勿論、それはそれとして面白いんですけど、謎部分の大半が、アメリカだからフリーメイソンネタにほぼ限定されてしまうのが残念です。
どうしても散々使い古されたネタ感があって、今更どう料理しても新奇さは打ち出せていません。
料理でもそうですが、素材が新鮮で珍しい生きのいいネタなら、料理の腕の良さも際立つのでしょうが、鮮度の落ちた日常見慣れた素材を、どう料理してもなかなかそれは、最高の料理にするのは、難しい。
・・・・そんな感じです。
イエール大学とかも出てきたのでスカル&ボーンズネタにも触れるかと思いましたが、あくまでもフリーメイソンの話に集約することで軸をぶらさずにストーリーを進めています。内容は読み易かったですね。
ただ、ギリギリの時間に切迫されて物語を常に先へ先へと半ば強制的に進めさせるような仕掛けが今回はありません。さすがにそれをやると、いい加減読者もパターン化し過ぎて、拒否られると思ったのかは知りませんが、今回は淡々と読み進める形になります。
あと、これは個人的な関心や経験にも左右されているのかもしれませんが、ローマやパリは何度か行っているし、地名や建築物も知っているので、より親しみが湧き、謎解きの興奮も増すのでしょうが、ワシントンDCでしょ。
行ったこともないし、行きたいとも思わないし、死ぬまで行きたいと思わないもん!
チュニジアやリオ・デ・ジャナイロ、プラハには行ってもワシントンDCに行く事はないなあ~。
アメリカに行くとしても、せいぜいNYにまた行くだけだろうし・・・ネ。
申し訳ないが、歴史を絡めた謎解きの舞台としてのアメリカは、有り得ない!というのが個人的なイメージであり、読後の感想でもあります。本書も、すっごい失礼な言い方をすると映画の「ナショナル・トレジャー」を何倍かまともな読み物にしたもの。そ~んな感じです。
かなり否定的な感想を述べていますが、内容はあまり期待していなかっただけに実は、そこそこ面白かったというのが本当のところです。読み物としては、及第点だと思います。世界的ベストセラーの続きだと思うと採点はかなり辛くなって、厳しいかもしれませんが、シリーズ物だとこんなものかと。
あとね、ネタバレ有りで書いてますので気にせず書くと、デューラーの「メランコリア」とか、サインとかは、個人的に大好物な作品ですのでそれが謎解きに出てきたのは嬉しかったです♪
2日前にもデューラー版画展の図録を購入したばっかりだしね(←勘違い、ブリューゲルのだった)。タイミング良過ぎ(笑)。むしろ、デューラー絡めた謎解きの方に力点があったら、個人的には嬉しかったですね。ニュートン関係は、やっぱり食傷気味でした。
それでも、それなりに頑張って書かれた作品だと思います。
でも・・・アメリカ国内市場向けですね。アメリカ人以外には、アメリカの歴史とか言われてもねぇ~。
うちの近くの神社でさえ、延喜式内神社に載ってたものだったりするから、軽く千年前からあるし~。アメリカの歴史は、日本的には最近のことだもんね。歴史の教科書にアメリカってほとんど出たきたことを覚えてないもの。
まあ、割り切って読む分には、楽しい小説でいいんじゃないですか?
期待はしない方がいいですけどね。やっぱり、歴史的な舞台としてなら、プラハとかロンドンとかの方がいい作品作れそうですけどね。
そういやあ~作品公開前から、流れてた噂のCIAのところに置かれているクリプトス。
しっかり出てきてましたねぇ~。でも、全然興味惹かないんだけど・・・・。
まだ、エシュロンとかの方が個人的には興味湧くなあ~。著者さんもそちらも好きなはずですけど。
別な作品で扱ってたぐらいだしね。
ラングドンシリーズは本作以降も出るのかな?
だいぶネタ的には、難しそうだけれど・・・。
本作はあえてお薦めはしないが、否定もせず、もし、次回作があるならば、改めて大衆受けする新しい素材での料理を期待します♪
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「フリーメーソンの秘密」赤間 剛 三一書房
闇の超世界権力 スカル&ボーンズ
アルブレヒト・デューラー版画・素描展 in 国立西洋美術館
「デューラー版画展図録」西武美術館 1980年