今回は、相加平均相乗平均の関係について話たいと思います。
まあ高校数学では
a>0,b>0に対して
(a+b)/2≧√(ab)
が成り立つって言うのを相加平均相乗平均の関係とか言う定理として習うけど、一般的には
n個の正の数a_1,a_2,…,a_nに対して
(a_1+a_2+…+a_n)/n≧(a_1a_2…a_n)^(1/n)
が成り立って、n=2の場合を高校では習うわけや。
それで、なんで相加平均相乗平均の関係の話をするのかと言うと、これを数学的帰納法で証明する時の証明の仕方を勉強して欲しいねん。
証明は微分するのが一番簡単やねんけど、それは最後に紹介するとして、この数学的帰納法での証明で
○数学的帰納法の仮定の使い方
○任意の自然数mに対してn=2^mで成り立つことを証明してから全体を証明する。
の二つの大切なポイントがあるねん。
それを今日はお伝えできたらええかなと思いました。
○数学的帰納法の仮定の使い方
の方は、難しい数学的帰納法の問題でよく使う考え方が出てきて
○任意の自然数mに対してn=2^mで成り立つことを証明してから全体を証明する。
はこんな証明法は余り見かけないけど、これを覚えておけば恐らく最近の入試問題では一番難しい類の問題やった互いに素の整数問題、京都大学2009年度理系乙の第6問が解けるわけと思うねん。
と言うことで、早速証明を書いていこか。
n個の正の数a_1,a_2,…,a_nに対して
(a_1+a_2+…+a_n)/n≧(a_1a_2…a_n)^(1/n)…(*)
がすべてのmに対してn=2^mで成立することを数学的帰納法で証明する。
(i)m=1(n=2)の時
これは普通に授業とかで習うやつで
(√a_1 - √a_2)^2≧0
⇔
a_1 - 2√(a_1a_2) + a_2≧0
⇔
(a_1+a_2)/2≧√(a_1a_2)
よってm=1の時も成立。
(ii)m=kの時(n=2^k)の時、(*)成立を仮定すると
ここでb_i=(a_(2i-1)+a_(2i))/2(i=1,2,…,2^k)
とおくと、b_1,b_2,…,b_2^kは2^k個の正の数になるけど、これが2^k個の正の数やから帰納法の仮定が使えるねん。
これがちょっと難しいかもしれんけど、勉強して欲しい方法なわけやな。
(b_1+b_2+…+b_2^k)/2^k≧(b_1b_2…b_2^k)^(1/2^k)
(*)のm=k(n=2^k)の仮定の意味は、2^k個の任意の正の数で相加平均≧相乗平均になるってことやから、a__nとかb_nの記号にとらわれたらあかんわけや。
そういう記号上の思い込みも、また数学で難しいとこなわけやねんな。
不等式の左辺は
(b_1+b_2+…+b_2^k)/2^k
=((a_1+a_2)/2+(a_3+a_4)/2+…+(a_2^((k+1)-1)+a_2^(k+1))/2)/2^k
=(a_1+a_2+…+a_2^(k+1))/2^(k+1)
なんでb_i=(a_(2i-1)+a_(2i))/2とか置いたのかは、
2^(k+1)個の正の数を2^k個の正の数には、2個セットを使っていかなあかんからな。
こうすれば、ちょうど上手くいってるのがわかると思う。
でもこれで右辺もちゃんと2^(k+1)の形にならなあかんから
でb_i=(a_(2i-1)+a_(2i))/2≧√(a_(2i-1)a_(2i))に注意すると
(b_1b_2…b_2^k)^(1/2^k)
=(((a_1+a_2)/2)((a_3+a_4)/2)…((a_2^((k+1)-1)+a_2^(k+1))/2))^(1/2^k)
≧(√(a_1a_2)√(a_3a_4)…√(a_2^((k+1)-1)a_2^(k+1)))^(1/2^k)
=(a_1a_2…a_2^((k+1)-1)a_2^(k+1))^(1/2^(k+1))
これで
(a_1+a_2+…+a_2^(k+1))/2^(k+1)
≧(a_1a_2…a_2^((k+1)-1)a_2^(k+1))^(1/2^(k+1))
m=k+1(n=2^(k+1))の時も成立
したがって(i)(ii)よりすべての自然数mに対してn=2^mで(*)は成立する。
これで
n=2,4,8,16,32,64,…
の時は証明されたわけや。
でもn=3とか5とか6とか間のはどうなってるねんってしばかれそうな話やろ。
そこで、n=kで(*)が成り立つと仮定した時にn=k-1で成り立つことを示すわけや。
すると、(*)がn=2^mで成り立てば2^m-1でも成り立って、2^m-2でも成り立って、2^m-3,2^m-4,…,2まで成り立って2≦n≦2^mとなる全ての自然数nで成り立つことになりますやん。
だから、任意の自然数Nに対してN≦2^MとなるMが存在してn=2^Mでは(*)が成り立つからn=Nでも(*)は成立。
つまり(*)は全ての自然数nで成立と言えるわけや。
こうやってまず2,4,8,16,…,2^m,…とか部分列で成り立つことを証明してから、それを使って全ての自然数で成り立つことを言うって論法は互いに素の整数問題、京都大学2009年度理系乙の第6問のように使うと簡単になることがあります。
証明をすると
(*)がn=kの時成立を仮定、つまりk個の正の数、a_1,a_2,…,a_kに対して
(a_1+a_2+…+a_k)/k≧(a_1a_2…a_k)^(1/k)
と仮定すると、これも任意の正の数a_1,a_2,…,a_kに対して成り立つと言う意味やから
a_k=(a_1a_2…a_(k-1))^(1/(k-1))
を代入してみます。
なんでこんなことするか言うたら、そうしたら右辺がk-1の時の形になるからやねんけどたしかにちょっと思いつくの難しいかもしれんけどな。
(a_1+a_2+…+a_k)/k≧
((a_k)^(k-1)a_k)^(1/k)=a_k
⇔
a_1+a_2+…+a_(k-1)≧(k-1)a_k
⇔
(a_1+a_2+…+a_(k-1))/(k-1)≧a_k=(a_1a_2…a_(k-1))^(1/(k-1))
よって(*)はn=k-1の時も成立。
これで2≦nとなるすべての自然数nで(*)は成立で相加平均相乗平均の関係は証明されたわけやな。
まあn=1の時のa_1≧a_1を含めてもええねんけど。
と言うことで、数学的帰納法の仮定の使い方の勉強になるし、まずn=2^mとか部分列で示して全体を示すとか言う論法の勉強にもなるし、相加平均と相乗平均の関係は有名やからこの証明の仕方を覚えたら力になると思います。
最後に、こういうn個の文字が出てくる不等式の証明はいかにも代数的な問題に見えるけど、見方を変えてどれか一つの文字の関数と見るとあほみたいに簡単に解けることが多いです。
だからほんまは、まず関数として考えてみて欲しいねん。
そしたら、この問題でも(*)がn=kで成立してると仮定すると、n=k+1でも成立が簡単に言えます。
(a_1+a_2+…+a_k)/k≧
(a_1a_2…a_k)^(1/k)
と仮定する。
f(a_(k+1))=(a_1+a_2+…+a_k+a_(k+1))/(k+1)-(a_1a_2…a_(k+1))^(1/(k+1))
(a_(k+1)>0)
を考えると
f'(a_(k*1))=1/(k+1)-(a_1a_2…a_k)^(1/(k+1))/k+1・a_(k+1)^(-k/(k+1))
=(1/k+1)・(1-(a_1a_2…a_k)^(1/(k+1))a_(k+1)^(-k/(k+1)))
増減表を書くとa_k=(a_1a_2…a_k)^(1/k)の時最小値をとることがわかるから
f(a_(k+1))≧f((a_1a_2…a_k)^(1/k))
=(k/(k+1))・((a_1+a_2+…+a_k)/k-(a_1a_2…a_k)^(1/k))
≧0
と綺麗に仮定した形が出てきてn=k+1の時も成立。
あんなに苦労した証明も、関数と考えたら機械的に簡単に解けてしまうわけやな。
むしろ微分の問題としては簡単な問題やからな。
こうやって、一見代数の問題に見えても解析的に考えたら簡単に解けてしまうことよくあるねん。
だからちょっと関数として考えてみるって最初にやってみると、これから先、役に立つことが多いと思う。
高校数学の公式や問題の解説
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