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分かり合えなくてもいいんだ。なぜ分かり合えないかが分かりさえすれば…
願いが叶うのは16年後?「涼宮ハルヒの憂鬱」公式サイトで七夕イベント開催
> ちなみに、作中でハルヒが説明していましたが、地球からアルタイルまでは16光年、ベガまでは25光年離れているので、それぞれ16年・25年先に叶えて欲しい願い事を書くために2つあるそうです。

織り姫と彦星が出会うのは16年後、という、現代科学からの類推があるが、なぜそういう解釈になるのかが分からない。なぜ「織り姫と彦星が出会う際の乗り物を支配している法則は、僕たちが知っているものとは違うものだろう」というふうな類推ではないのだろうか。どちらも等価値のはずだが。
「月にはウサギがいる」という伝説と自然科学との整合性に関する話でもそうだ。なぜ「月にはウサギがいない」と、そうやすやすと結論づけるのかが分からない。いや、分かってるけどさ。半分くらいはね。

「月にはウサギがいない」「織り姫と彦星が出会うには16年かかる」というような結論を出して楽しいかどうかだ。

伝説が伝える事実を、自然科学における観測結果と同列に扱うとすると、そこからどのような理論が紡ぎ出されるかを考えたほうが、SF的にはおもしろい。

月にウサギがいる伝説も、七夕伝説も、どちらもSFの世界観なのだから、SFの世界観と整合性が取れるように解釈したほうが、私たちのこころをより豊かにするのではありませんか?

現実の自然科学というのは、どういう観測データが得られるかということに強く依存している。しかしSFはそれから自由だ。つまり、「言い伝え」を観測データであると解釈しても許されるということだ。

自然科学には自然科学の領分がある。同様に、SFにはSFの領分がある。七夕伝説の解釈問題というのは、つまるところ、この伝説をどちらの領分に帰属させるかという問題でもある。

七夕伝説を自然科学を領分に帰属させて整合的に解釈すると、確かに会うには16年かかるのかもしれないが、そういうことを言っておもしろいかどうかが問題だ。16年かかるということは不自然であるという考えになぜ至らないのか。

私たち人間に、「言い伝え」をバカにする権限は与えられていない。与えられていない以上、「言い伝え」を「観測データ」と同じくらいの偉さで扱っても、バチは当たらなかろう。

自然科学というのは所詮、「言い伝えをバカにするとすると、こういうことがいえる」ということでしかないのだ。

では、この「言い伝えをバカにする」という自然科学の伝統はどのようにして形成されたのだろうか。それは、「観測データとそれに基づく推論を重視する」ということからただちに演繹されることである。それを重視するということは、それ以外をそれよりも重視しないということだからだ。

繰り返すが、自然科学は、「言い伝えをバカにする」という仮定のもとでのみ成り立っている。この仮定が取っ払われたら、たちまちのうちに自然科学の営みもその成果も灰燼に帰してしまうのだ。

七夕伝説という言い伝えを自然科学にではなくSFに帰属させるという選択は、言い伝えをバカにしなくても成り立つように、「言い伝えをバカにする」ということを仮定しなくてもなりたつようにするということと等価な主張である。

つまり、「言い伝え」に「観測データ」と同レベルの権限を認めることによって、七夕伝説の16年解釈はめでたく棄却され、「深淵にして未知なる法則の存在」を認めざるを得ないという、「知的関心をかき立てる結末」に話を落とし込むことができるのである。これは自然科学に貢献する立場である。


実際に、「深淵にして未知なる法則の存在」が実在するかどうかは、実はどうでもいいことなのだ。大事なことは、それを発見しようとする営みのなかに、人間の内側を豊饒にするものがあると言えることのほうだからだ。「言い伝え」の教育的意義はそこにある。

つまり自然科学的な態度の教育的意義は、言い伝えをいったんはバカにしつつも、ときどきは言い伝えを認める側に立ち返らざるを得ない、追究への動機を補充するために、そこに回帰してこざるをえないということなのだ。

私たちは、「言い伝えにしたがう」というところに原点を取ることなしに、さまざまな余暇的な活動への動機を備給することができない。

自然科学者は、いったんは言い伝えを疑うけれども、そして言い伝えと辻褄が合わない観測データを見つけて、言い伝えの一部を否定した気になって悦に入ることがあるけれども、言い伝えのすべてを否定することはできなかったという事実の前に、最終的にはひざまずかされるのである。

そして、その結果、言い伝えの凄さと権威を逆にますます認めざるを得ない結果を生むのである。これが、狭隘な自然科学者にかけられた「呪い」であり、より大きなものを見ている自然科学者にのみ開示される「真実」である。
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