グローは最後に合成すべし
- 2016/08/20
「グローを合成する手順」を間違える初心者は、少なくありません。手順を間違えると、グローの一部が手前のオブジェクトで遮られるような絵になってしまい、リアルに見えにくく、なじみも悪くなります。
左は正しい処理。右は不適切な処理で、光のにじみが手前のオブジェクトの上に乗っていない。
理屈の上では、グローはレンズフレアと同じです。レンズフレアは、光源が奥にあったとしても、必ず一番手前に現れます。
レンズフレアが一番手前に現れる理由は、カメラのレンズで起きる現象だからです。実際の空間にレンズフレアという物体が存在しているわけではありません。 そのため、光源の距離に関係なく、必ず「一番手前」に現れます。つまりコンポジット作業では、一番手前のレイヤーとして、最後に追加すべきです。そして、グローもまたレンズフレアと同じカメラ効果です。レンズフレアと同様に、一番手前に現れます。
では、このような効果を表現するための、実際のコンポジット作業の手順を説明してみたいと思います。
1. 光源レイヤーを前景でマット抜きする
まず光源レイヤーを、前景レイヤーのアルファチャンネルを使ってマット抜き、マスク処理します。
前景でくり抜かれた爆発ができました。これがグローの元素材となります。
2. ブラーでグロー効果を加える
この素材に対して、グロー処理を加えます。グロー処理そのものは、単純なブラーと加算(スクリーン)で行うことができます。
これで、光源から均等に光がにじむような画像になりました。
3. 一番上から「加算」または「スクリーン」などで合成する
グローさせた画像を、一番上から合成します。
「一番上から合成する」というのは、「一番手前に合成する」という意味です。レイヤー合成は下から(奥から)行われるので、内部処理の順番で言えば「最後に合成する」と言うこともできます。レンズフレア、グローといった「光モノ」のレイヤーは、基本的には最後に上から追加すると、非常にうまくいくのです。
4. After Effects でマット抜きする方法
ちなみにAfter Effectsでマット抜きする場合、トラックマット機能の「アルファ反転」を使うのが一番シンプルな方法です。しかし、前景レイヤーが複数あるとか、光源レイヤーが複数あるなど複雑な場合は、トラックマットではレイヤーがどんどん多くなって面倒なことになります。そういう場合にはトラックマットを使うのではなく、合成モードの「シルエットアルファ」を利用する方が便利です。
どちらの方法でやるにしても、このグロー素材の作成は、「プリコンポジション」として作成することが必須です。ここでいったん合成結果を固めておいて、それに対してグロー処理を適用しなければならないからです。
5. NUKE でマット抜きする場合
NUKEだと、Mergeノードの(Stencil)オペレーションがシンプルですが、他にもさまざまな方法があると思います。
「グローは手前に合成すべき」という主張には、実は例外もあります。以下の写真では、手前にあるオブジェクトよりも奥の空間でグローが発生している箇所を見つけることができます。
これはカメラ効果のグローではなく、大気中の光の散乱です。スティーブ・ライト氏は著書『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』の中で以下のように説明しています。
空気中にホコリ、水蒸気などが多い状況では、グローのようなものが空中に発生します。この場合は、奥にグローがあっても正しいのです。
リアルな画づくりをしたい場合は、このように現象の理屈を考えたり、観察することがとても大事です。もちろん、理屈を理解した上で、わざとリアルではない効果を狙ってつくるというケースも多々あります。コンポジット作業って、まじ楽しいですよ。
左は正しい処理。右は不適切な処理で、光のにじみが手前のオブジェクトの上に乗っていない。
カメラ効果としてのレンズフレア、グロー
理屈の上では、グローはレンズフレアと同じです。レンズフレアは、光源が奥にあったとしても、必ず一番手前に現れます。
レンズフレアが一番手前に現れる理由は、カメラのレンズで起きる現象だからです。実際の空間にレンズフレアという物体が存在しているわけではありません。 そのため、光源の距離に関係なく、必ず「一番手前」に現れます。つまりコンポジット作業では、一番手前のレイヤーとして、最後に追加すべきです。そして、グローもまたレンズフレアと同じカメラ効果です。レンズフレアと同様に、一番手前に現れます。
コンポジットの手順
では、このような効果を表現するための、実際のコンポジット作業の手順を説明してみたいと思います。
1. 光源レイヤーを前景でマット抜きする
まず光源レイヤーを、前景レイヤーのアルファチャンネルを使ってマット抜き、マスク処理します。
前景でくり抜かれた爆発ができました。これがグローの元素材となります。
2. ブラーでグロー効果を加える
この素材に対して、グロー処理を加えます。グロー処理そのものは、単純なブラーと加算(スクリーン)で行うことができます。
これで、光源から均等に光がにじむような画像になりました。
3. 一番上から「加算」または「スクリーン」などで合成する
グローさせた画像を、一番上から合成します。
「一番上から合成する」というのは、「一番手前に合成する」という意味です。レイヤー合成は下から(奥から)行われるので、内部処理の順番で言えば「最後に合成する」と言うこともできます。レンズフレア、グローといった「光モノ」のレイヤーは、基本的には最後に上から追加すると、非常にうまくいくのです。
4. After Effects でマット抜きする方法
ちなみにAfter Effectsでマット抜きする場合、トラックマット機能の「アルファ反転」を使うのが一番シンプルな方法です。しかし、前景レイヤーが複数あるとか、光源レイヤーが複数あるなど複雑な場合は、トラックマットではレイヤーがどんどん多くなって面倒なことになります。そういう場合にはトラックマットを使うのではなく、合成モードの「シルエットアルファ」を利用する方が便利です。
どちらの方法でやるにしても、このグロー素材の作成は、「プリコンポジション」として作成することが必須です。ここでいったん合成結果を固めておいて、それに対してグロー処理を適用しなければならないからです。
5. NUKE でマット抜きする場合
NUKEだと、Mergeノードの(Stencil)オペレーションがシンプルですが、他にもさまざまな方法があると思います。
補足。例外もあるよ!
「グローは手前に合成すべき」という主張には、実は例外もあります。以下の写真では、手前にあるオブジェクトよりも奥の空間でグローが発生している箇所を見つけることができます。
これはカメラ効果のグローではなく、大気中の光の散乱です。スティーブ・ライト氏は著書『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』の中で以下のように説明しています。
光の散乱によって、光源の周囲にハロー(円形の光、暈)が生じたり、懐中電灯の光のような光錐が現れたり、遠近感を出す霞みの効果が生まれたりします。(略)散乱による輝きは光源の近くの「局所的」なものであるため、光源が登場人物の背後にある場合、その登場人物が輝きを遮る場合もあります。(略)フレアと逆の現象です。フレアの場合、登場人物が光源に対してどの位置にいるかに関係なく、その人物の上に現れます。
引用元: スティーブ・ライト
『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』
空気中にホコリ、水蒸気などが多い状況では、グローのようなものが空中に発生します。この場合は、奥にグローがあっても正しいのです。
リアルな画づくりをしたい場合は、このように現象の理屈を考えたり、観察することがとても大事です。もちろん、理屈を理解した上で、わざとリアルではない効果を狙ってつくるというケースも多々あります。コンポジット作業って、まじ楽しいですよ。
参考文献
・Wright, Steve. Digital Compositing for Film And Video Third Edition. Focal Press, 2010. (スティーブ・ライト, Bスプラウト訳. 『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法』. ボーンデジタル, 2012. p.173-174)
・Wright, Steve. Digital Compositing for Film And Video Third Edition. Focal Press, 2010. (スティーブ・ライト, Bスプラウト訳. 『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法』. ボーンデジタル, 2012. p.173-174)
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