VFX制作のコンポジット作業で注意すべき10項目
- 2016/07/01
映画やテレビドラマ等のVFX制作では、「いかに自然に合成するか」を求められます。VFXにおけるコンポジット作業の中で、どんなことに注意すべきか、という10項目をまとめました。これからリアルな実写合成にチャレンジしよう、という方の参考になれば幸いです。
VFXにおけるコンポジターの重要な仕事のひとつは、色の管理です。全てのレイヤーのカラーが馴染んでいるかチェックします。最も重要なのはブラックポイントのマッチングです。
ガンマや露出を上げ下げすると不自然な色のズレを発見しやすくなります。また、RGBチャンネルを個別でチェックし、カラーの数値が低すぎたり高すぎる部分がないか確認します。
もの「そのもの」が正しい色に見えるか、というのも重要なポイントです。例えば人物の肌が自然な色に見えるか、といったことなどです。
グリーンバック合成などではグリーンの色成分をキャンセルするため、オリジナルと異なる色に転んでしまう色があります。そのような色転びが問題にならないレベルにおさまっているかチェックします。
また、そもそも映画作品の中で合成カットだけ異なる色にならないように注意するのも大切です。そのカットが「前後カットに馴染んでいるか」いうのも重要なチェックポイントになります。
実写プレートにCGやマットペイントなどの要素を追加する場合、追加要素だけが「シャープすぎる」ということがあります。すべてのレイヤーのボケ加減がマッチしているかチェックします。
一方で、被写界深度による「ボケ表現」は、つい過剰に加えすぎてしまう場合もあります。不用意にボカしすぎではないか、という点にも留意します。
実写合成ではグレイン(ノイズ)のマッチングも重要です。RGBチャンネルごとに再生し、グレインの粒子の大きさや強度がマッチしているか、チェックします。合成ソフトにはグレイン・マッチ機能を持つものもありますが、常に正確に働くわけではなく、手動での調整が必要になります。
なお、スチル(写真)素材を使った場合や、静止画に加工したレイヤーが使われている場合、「静止グレイン」が残っていないかチェックします。
実写合成ではマスク処理(ロトスコープ)がたくさん必要な場合があります。1フレームずつ手作業で調整が必要な場合が多く、その分ヒューマンエラーの起きやすい工程でもあります。1フレームずつチェックして、マスクのズレがないか入念にチェックします。
マスク処理・グリーンバックのキーイングなどによって、エッジが不自然になっていないか確認します。エッジが固すぎないか?またはボケすぎではないか?チラついていないか?白エッジ、黒エッジが顕著に出ていないか?
合成した影のボケ具合、影の濃度、色味が適切かをチェックします。過剰に濃すぎる影、あるいは薄すぎる影は不自然に見えます。
爆発や炎、ビームなどのエフェクトを合成する場合、周囲に「照り返し」を加えることでより自然な合成にできます。また、窓ガラスや水面などには「映り込み」を加えることで、より説得力のある合成ができます。効果を加えるべき箇所がないかチェックします。
映像にモーションブラーを追加することもコンポジット作業のひとつです。CG素材にモーションブラーを追加したり、2Dで動きを加えたレイヤーにモーションブラーを追加します。
モーションブラーの入れ忘れや、量が極端に少ないということがないか気を付けます。逆にモーションブラーの量が多すぎても不自然な印象になります。
一般的に見慣れている映像のシャッター開角度は180度が多いため、フレーム間での物体の移動量の半分程度の長さが自然なモーションブラーの量と言えます。モーションブラーが適切か、コマ送りでチェックします。
すべてのレイヤーで色収差をマッチさせるのもコンポジターの仕事のひとつです。色収差のマッチングについては、RGBチャンネルを個別に表示させ、切り替えながらチェックします。
1. カラーはマッチしているか?
VFXにおけるコンポジターの重要な仕事のひとつは、色の管理です。全てのレイヤーのカラーが馴染んでいるかチェックします。最も重要なのはブラックポイントのマッチングです。
ガンマや露出を上げ下げすると不自然な色のズレを発見しやすくなります。また、RGBチャンネルを個別でチェックし、カラーの数値が低すぎたり高すぎる部分がないか確認します。
2. 正しい色か?
もの「そのもの」が正しい色に見えるか、というのも重要なポイントです。例えば人物の肌が自然な色に見えるか、といったことなどです。
グリーンバック合成などではグリーンの色成分をキャンセルするため、オリジナルと異なる色に転んでしまう色があります。そのような色転びが問題にならないレベルにおさまっているかチェックします。
また、そもそも映画作品の中で合成カットだけ異なる色にならないように注意するのも大切です。そのカットが「前後カットに馴染んでいるか」いうのも重要なチェックポイントになります。
3. ボケ加減は自然か?
実写プレートにCGやマットペイントなどの要素を追加する場合、追加要素だけが「シャープすぎる」ということがあります。すべてのレイヤーのボケ加減がマッチしているかチェックします。
一方で、被写界深度による「ボケ表現」は、つい過剰に加えすぎてしまう場合もあります。不用意にボカしすぎではないか、という点にも留意します。
4. グレイン(ノイズ)はマッチしているか?
実写合成ではグレイン(ノイズ)のマッチングも重要です。RGBチャンネルごとに再生し、グレインの粒子の大きさや強度がマッチしているか、チェックします。合成ソフトにはグレイン・マッチ機能を持つものもありますが、常に正確に働くわけではなく、手動での調整が必要になります。
なお、スチル(写真)素材を使った場合や、静止画に加工したレイヤーが使われている場合、「静止グレイン」が残っていないかチェックします。
5. マスク処理は適切か?
実写合成ではマスク処理(ロトスコープ)がたくさん必要な場合があります。1フレームずつ手作業で調整が必要な場合が多く、その分ヒューマンエラーの起きやすい工程でもあります。1フレームずつチェックして、マスクのズレがないか入念にチェックします。
6. エッジは自然に見えるか?
マスク処理・グリーンバックのキーイングなどによって、エッジが不自然になっていないか確認します。エッジが固すぎないか?またはボケすぎではないか?チラついていないか?白エッジ、黒エッジが顕著に出ていないか?
7. 影は自然か?
合成した影のボケ具合、影の濃度、色味が適切かをチェックします。過剰に濃すぎる影、あるいは薄すぎる影は不自然に見えます。
8. 照り返し・映り込みは適切に加えているか?
爆発や炎、ビームなどのエフェクトを合成する場合、周囲に「照り返し」を加えることでより自然な合成にできます。また、窓ガラスや水面などには「映り込み」を加えることで、より説得力のある合成ができます。効果を加えるべき箇所がないかチェックします。
9. モーションブラーの量は正しいか?
映像にモーションブラーを追加することもコンポジット作業のひとつです。CG素材にモーションブラーを追加したり、2Dで動きを加えたレイヤーにモーションブラーを追加します。
モーションブラーの入れ忘れや、量が極端に少ないということがないか気を付けます。逆にモーションブラーの量が多すぎても不自然な印象になります。
一般的に見慣れている映像のシャッター開角度は180度が多いため、フレーム間での物体の移動量の半分程度の長さが自然なモーションブラーの量と言えます。モーションブラーが適切か、コマ送りでチェックします。
10. 色収差はマッチしているか?
すべてのレイヤーで色収差をマッチさせるのもコンポジターの仕事のひとつです。色収差のマッチングについては、RGBチャンネルを個別に表示させ、切り替えながらチェックします。
参考文献
1. Wright, Steve. Digital Compositing for Film And Video Third Edition. Focal Press, 2010. (スティーブ・ライト, Bスプラウト訳. 『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』. ボーンデジタル, 2012)
1. Wright, Steve. Digital Compositing for Film And Video Third Edition. Focal Press, 2010. (スティーブ・ライト, Bスプラウト訳. 『ノードベースのデジタルコンポジット -コンポジターのための理論と手法-』. ボーンデジタル, 2012)
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