リアルな実写合成(VFX)にはノイズ除去が重要
- 2015/05/15
「本当にリアルな実写合成」を目指すなら、ノイズを除去する = デノイズ(Denoise)というテクニックを知っておくことは重要です。撮影された素材には、必ずビデオノイズ(Video noise)やグレイン(Film grain=フィルムの粒子)と呼ばれる細かいザラザラ模様が含まれています。
ノイズは重要な「実写らしさ」のエッセンスです。しかし、合成作業の中では邪魔になる場合もあります。今回は、どのようなときにノイズを除去をすればクオリティーの高い実写合成ができるのか、紹介したいと思います!
素材のノイズを除去した方がクオリティーの高い合成ができるケースは、大きく3つに分けることができます。
1. スチル写真素材(特に空の写真)
動画の中にスチル写真素材を合成する場合、スチルのノイズを除去した方が良いかもしれません。「止まったノイズ」が問題になることがよくあるからです。顕著なのは「空の写真」を合成をしたときです。写真には、ノイズがあります。ギュッと縮小して使えばノイズは消えますが、そのままのサイズで使ったり、少し拡大して使ったりするとノイズが目立つようになります。
これでは空に「止まったノイズ」が張り付いているのが見えて、不自然な合成映像になってしまいます(3Dの天球に空の写真素材をマッピングする場合も同じです)。しかし、あらかじめスチル写真素材からノイズを除去しておけば、このような失敗を避けることができるのです。
ちなみに、3DCGやスチル写真に「動くノイズ」を加えると、本当に撮影されたようなリアルな映像になります。つまり写真からは「止まったノイズ」を除去した上で、最終的には「動くノイズ」を追加するという、ちょっと込み入った工程になります。
2. キーイング素材
VFXのテクニックとして有名なグリーンバック・ブルーバック合成を行う際、コンポジターはKeylightやPrimatte Keyerなどのツールを使ってキーイング作業を行い、「マット」をつくります。ここで言う「マット」というのは、映像をくり抜くのに使用する、不透明度を表す白黒画像のことです。アルファチャンネルのことだと捉えてもらって問題ありません。
さて、キーイングすると被写体のエッジがチリチリ動いたり、ザラついた不自然なエッジになるという問題がよく発生します。撮影素材に含まれるノイズが原因で、ノイジーなマットがつくられるからです。
これでは本物らしい合成は望めません。そこで、デノイズを行い、ノイズが除去された素材というのをつくります。
あらかじめノイズを除去しておけば、マットのエッジのザラザラやチラつきは無くなります。デノイズによって、より自然でクオリティーの高い合成映像をつくることができます。
基本的には、ノイズを除去した素材はマットの作成にのみ使います。マットを使ってくり抜く中画(RGBチャンネル)は、ノイズ付きの元素材を使います。
3. ノイジーな映像素材
3つ目は、ノイジーな映像素材を扱う場合です。たとえば、実写合成では「黒バックで撮影した煙素材」をよく重ねます。もちろん、ノイズを含んでいます。このような素材を合成していくと、合成結果がどんどんノイジーになっていくことがあります。程度がひどいようなら、煙素材もノイズを除去してから使った方が良いかもしれません。
また、素材を拡大して使う場合などには、ノイズの粒子も一緒に拡大されてしまい、非常に汚い映像になってしまうことがあります。この場合も、最初にノイズを除去しておくと良いかもしれません。
他には、ノイズの多いカメラで撮影した素材や、古いフィルム映像を使う場合などもあるかもしれません。映画のシーンの中に、突然ノイズの強いカットが出てくると、見ている方は違和感を持つでしょう。やはり一度デノイズした上で、他のカットとマッチするノイズを追加し直すといった処理を施すと良いと思います。
多くの画像処理ソフトには、標準でノイズを除去したり軽減するためのツールが用意されています。Photoshopにもノイズ除去機能があります。探してみると、様々なデノイズ用ツールが見つかるかもしれません。
しかし、ノイズを除去すると「映像が不自然にボケる」とか「形状が不自然に変わる」というようなやっかいな問題を抱えている場合があります。低品質なデノイズツールを使ってしまうと、上述したメリットを受けられないばかりか、かえって映像のクオリティーが悪化する場合があります。よく注意する必要があります。
多くのコンポジターは専用のツールを使ってデノイズしています。有名なものはABSoft社が販売するNeat Videoという製品(プラグイン)です。強力にノイズを除去しながら、正しい形状を残してくれるクオリティーの高さから圧倒的な評価を得ています。もちろんノイズと一緒に細かいディティールも消えてしまう部分はありますが、他のツールと比較すると非常に望ましい結果を得られます。
今回は以下のケースでデノイズ(ノイズ除去)をすると良いという説明をしました。
・写真素材(特に空写真)を使うとき
・キーイングをするとき
・その他、ノイズの強いフッテージを使うときなど
しかし、繰り返しになりますが、ノイズ除去を行うと多かれ少なかれディティールを損失します。これはむやみやたらとノイズ除去をすれば良いとは限らないことを意味しています。より良い結果を得られているか、注意深く判断することが大切だと思います。
ノイズは重要な「実写らしさ」のエッセンスです。しかし、合成作業の中では邪魔になる場合もあります。今回は、どのようなときにノイズを除去をすればクオリティーの高い実写合成ができるのか、紹介したいと思います!
デノイズした方が良いケース
素材のノイズを除去した方がクオリティーの高い合成ができるケースは、大きく3つに分けることができます。
1. スチル写真素材(特に空の写真)
動画の中にスチル写真素材を合成する場合、スチルのノイズを除去した方が良いかもしれません。「止まったノイズ」が問題になることがよくあるからです。顕著なのは「空の写真」を合成をしたときです。写真には、ノイズがあります。ギュッと縮小して使えばノイズは消えますが、そのままのサイズで使ったり、少し拡大して使ったりするとノイズが目立つようになります。
これでは空に「止まったノイズ」が張り付いているのが見えて、不自然な合成映像になってしまいます(3Dの天球に空の写真素材をマッピングする場合も同じです)。しかし、あらかじめスチル写真素材からノイズを除去しておけば、このような失敗を避けることができるのです。
ちなみに、3DCGやスチル写真に「動くノイズ」を加えると、本当に撮影されたようなリアルな映像になります。つまり写真からは「止まったノイズ」を除去した上で、最終的には「動くノイズ」を追加するという、ちょっと込み入った工程になります。
2. キーイング素材
VFXのテクニックとして有名なグリーンバック・ブルーバック合成を行う際、コンポジターはKeylightやPrimatte Keyerなどのツールを使ってキーイング作業を行い、「マット」をつくります。ここで言う「マット」というのは、映像をくり抜くのに使用する、不透明度を表す白黒画像のことです。アルファチャンネルのことだと捉えてもらって問題ありません。
さて、キーイングすると被写体のエッジがチリチリ動いたり、ザラついた不自然なエッジになるという問題がよく発生します。撮影素材に含まれるノイズが原因で、ノイジーなマットがつくられるからです。
これでは本物らしい合成は望めません。そこで、デノイズを行い、ノイズが除去された素材というのをつくります。
あらかじめノイズを除去しておけば、マットのエッジのザラザラやチラつきは無くなります。デノイズによって、より自然でクオリティーの高い合成映像をつくることができます。
基本的には、ノイズを除去した素材はマットの作成にのみ使います。マットを使ってくり抜く中画(RGBチャンネル)は、ノイズ付きの元素材を使います。
3. ノイジーな映像素材
3つ目は、ノイジーな映像素材を扱う場合です。たとえば、実写合成では「黒バックで撮影した煙素材」をよく重ねます。もちろん、ノイズを含んでいます。このような素材を合成していくと、合成結果がどんどんノイジーになっていくことがあります。程度がひどいようなら、煙素材もノイズを除去してから使った方が良いかもしれません。
また、素材を拡大して使う場合などには、ノイズの粒子も一緒に拡大されてしまい、非常に汚い映像になってしまうことがあります。この場合も、最初にノイズを除去しておくと良いかもしれません。
他には、ノイズの多いカメラで撮影した素材や、古いフィルム映像を使う場合などもあるかもしれません。映画のシーンの中に、突然ノイズの強いカットが出てくると、見ている方は違和感を持つでしょう。やはり一度デノイズした上で、他のカットとマッチするノイズを追加し直すといった処理を施すと良いと思います。
デノイズツール
多くの画像処理ソフトには、標準でノイズを除去したり軽減するためのツールが用意されています。Photoshopにもノイズ除去機能があります。探してみると、様々なデノイズ用ツールが見つかるかもしれません。
しかし、ノイズを除去すると「映像が不自然にボケる」とか「形状が不自然に変わる」というようなやっかいな問題を抱えている場合があります。低品質なデノイズツールを使ってしまうと、上述したメリットを受けられないばかりか、かえって映像のクオリティーが悪化する場合があります。よく注意する必要があります。
多くのコンポジターは専用のツールを使ってデノイズしています。有名なものはABSoft社が販売するNeat Videoという製品(プラグイン)です。強力にノイズを除去しながら、正しい形状を残してくれるクオリティーの高さから圧倒的な評価を得ています。もちろんノイズと一緒に細かいディティールも消えてしまう部分はありますが、他のツールと比較すると非常に望ましい結果を得られます。
最後に
今回は以下のケースでデノイズ(ノイズ除去)をすると良いという説明をしました。
・写真素材(特に空写真)を使うとき
・キーイングをするとき
・その他、ノイズの強いフッテージを使うときなど
しかし、繰り返しになりますが、ノイズ除去を行うと多かれ少なかれディティールを損失します。これはむやみやたらとノイズ除去をすれば良いとは限らないことを意味しています。より良い結果を得られているか、注意深く判断することが大切だと思います。
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