公陳丸の墓を少し綺麗にしようと,海砂や貝殻を拾いに行きたいと思っていた。
末っ子もウミガメの上がる海岸を見に行きたいと言いだした。
産卵のための上陸と子ガメの孵化との端境で,ラッセル,シャワーラッセルなど探すのは無理っぽいのだが,末っ子には見せていなかったので,丁度良いかなと思って家族で出掛けた( DSC-TX5でSonyお得意のスイングパノラマを使って写し撮ってみた。結構良くできている。良い海岸なので,クリックして大きくしてみて下さい)。
それでも,子供達には,発見があったようだ。
ちなみに採材と生物観察しか端ッから頭にないが,基本的にここは外洋に開いており離岸流もあって遊泳禁止地帯。
海に入っているように見える家族も,波打ち際で遊ぶ程度という場所。それも勿論自己責任。
そういうこともあって,午後からの時間帯,見渡す限り,私たちと合わせて全部で4家族だけ。
最近は,流石に話を聞かないが,密猟船や不審船情報通報の立て札もある。
ある意味生物屋とかウミガメ屋とかキス釣りとかシタビラメとか,そういう方面に縁の無い人にとっては,ひょっとしたら一回見に来て,おーっと言って,それで終わる場所かもしれない。そうでなかったら,真からこういう場所が好きな人。
昔,ここでウミガメの産卵を観察していて,密猟者と揉めたことがある。観察しようとした「ウミガメ」が,妙なことに前肢で穴を掘っていて,え,ウソと思ったらいきなりそのウミガメだと思っていたものが立ち上がったものだからとても驚いた。ウミガメだと思いこんだものは密猟者だった。実際,ウミガメは,その密猟者が掘っていた穴のすぐ前にいて,卵を産んでいたのだった。
ウミガメの卵は,熱をかけても簡単に固まらないので食べると言っても鶏卵と混ぜて焼くぐらいと思っている人もいるが,生卵毎味噌漬けにすると,高級料亭でも簡単に口に入らない珍味になる。1個あたりの値段と総産卵量を考えると結構な小遣い稼ぎになっていた。まあ,ずっとそれを利用してきている人の中には,ある時から密猟者にされるのも納得いかない人が出てきたりするのも十分予想できたが,それでも,多くのボランティアの活動により産卵されたものをチェックして保護する今の仕組みが出来てからは,保護の状況は予断は許されないものの改善した。タマゴの味を知る人も,今はそんなにおられないだろう。関西などにあった一部の料亭も,食材から外して久しいと思う。ここには書けないが,全長数十キロの海岸で効率よく産卵中のウミガメを探す方法が存在したが,今は道義的に使えない方法だというのもある。
戻ると,子供達に任せて,海砂と貝殻で墓廻りを飾ってもらった。
昨晩,チコが庭で啼いているのに,ワイフが気がついた。
バトルをするときの威嚇音ではなく,いつもの甘える「ナァー」声。庭で最も公陳丸が常在したところに座り,墓の方向(これは多分,偶然かも)を向いて啼いては,外に出たワイフの顔を見て啼き,また,墓の方向を向いて啼く。
猫が仲間を失って,喪失感に襲われる状況というのは,珍しいことではない。情緒活動が発達した動物だから過去履歴とか個体差とかもある。実際,子猫の時から公陳丸とはもう少し緩い関係だったナッチ&ユッチについては,特に大きな変化を感じない。
チコは,最も気があっていた弟分のジタンを失って,喪失感から異常行動をとるようになっていた公陳丸を思って,我が家の一員としてやってきたのだが,それはそれは計算外の子猫だった。
公陳丸にずっと面倒を見て貰ったというか,殆ど起きている時間中,噛みつきじゃれまくって公陳丸に悲鳴を上げさせていたチコだが(あまりにも酷かったので,ワイフが一度叱ったことがある),食事はちゃんと公陳丸を優先させて譲っていた。
最も自分が寝たいと思った場所は,噛みついてでも公陳丸からぶんどっていた好い性格で,その辺りはチコらしいところだけれど。今,チコがそういう状況になっていると知って,チコを見てもちょっと困った状態になってしまった。
コウチンを埋葬するときにチコも立ち会わせれば良かったかなとか,一瞬,考えてしまった。この後,1時間ほど,外で雲を見ながら,彼がパトロールに出掛けるまで付き合った。意味があったかどうかは分からないが,私にも彼にも,必要なことだと思った。
全く大した猫だったよ,君は・・・コウチン・・・・コッコ。