父の代の良さを残しながら、社員の働き方を見つめ直してきた。超長期休暇の導入から、会議改革、オフィス作りなど取り組みは多岐にわたる。生産性一辺倒でなく、「社員の人生」という視点も重視しながら改革を進める。
「スーパーリフレッシュ休暇」は、どの社員も原則として10営業日連続での有給休暇を年1回取得する仕組みで、公休日を含めると最大で16連休になります。社員の中には子育てなど様々な事情から5営業日連続での有給休暇と公休日をつないだ1週間の連休を2回取得したいケースもあり、申請すればその形も可能です。
全社的に毎年4月初めにこの有給休暇の取得日を決めますから、社員は予定が立てやすいと思います。海外旅行などの場合、航空券などを早く安く購入できるメリットもあるでしょう。最近は5営業日連続を1回だけ取得したケースも含めれば約8割、10営業日連続に限定した場合には約6割の社員がこの仕組みを活用しています。
私が社長になる前の当社は週休2日にはなっていましたが、長期休暇の仕組みはなかったので社員は人生を磨く時間を設けにくい状態だったと思います。私の前の勤務先の証券会社には5営業日連続で有給休暇を取得する仕組みがあり、私は早くから当社にも取り入れたいと考えていました。欧州の企業では3~4週間休む仕組みがありますから、日本でもできない理由はありません。導入するなら中途半端にやるのではなく、しっかりした制度にしたいと思い、今の形になっています。
最初は業務への影響がどうなるか心配な点もあったのですが、実施して非常に良かったと思っています。社員はそれぞれの考えで休暇を活用し、社内では休暇の使い方についてのコンテストも開いて情報共有をしています。
さらに、これは後付けになるのですが──ある社員が1週間ほど職場にいなくても何とかなりますが、2週間以上だと業務をきちんと引き継がないと乗り切れません。企業である以上、特定の社員でなければできない仕事になってはいけないと私は考えており、連続休暇の導入が仕事を個人依存にしない効果も生んでいます。
一般社員も管理職も対象の制度なので、それぞれの部署では休暇中の業務をお互いがカバーします。上司が部下の、部下が上司の仕事をそれぞれ知る機会になり、気付きが得られ、視野が広がる。カバーしたときの気付きを共有して、業務改善できれば、パフォーマンスを上げられます。16日連続休暇を長いと思うかもしれませんが、1年で考えれば365日の16日に過ぎません。残りの日をそれまでよりも高い目線を持って仕事したら、それくらいはすぐ取り返せます。
長い目で人生を考える契機
ただ、生産性向上だけがこの制度の目的ではありません。長い休みの使い方を毎年考えて経験しておけば、その分、視野が広がります。私はそれが会社を去り仕事を終えた後の人生も豊かにすることにつながるはずだと考えています。反対に仕事しかしていなかったら、いつか会社を去ったときに何をすればよいのか分からなくなってしまう。社員が長い目線で人生を豊かにするきっかけにしてほしいと思います。まとまった休暇を取得してもらう制度は日本企業では難しいと思われがちですが、十分に実現可能な取り組みだと思います。
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