スマートフォンの普及で、本業の写真フィルムが消える──。会社存亡の危機から約20年。富士フイルムホールディングスが事業構造改革でよみがえった。危機が去った後には大企業病が再発し、勢いを失う会社が多いなか、富士フイルムはカメラや医療、半導体などの事業を成長させ、最高益を更新し続けている。カリスマ経営者・古森重隆氏(前会長)の退任後に、何が成長の原動力になっているのか。知られざる改革の全貌を解き明かす。(写真=NorGal/stock.adobe.com)
シリーズ
富士フイルム 変身再び

11回

第11回
楠木建氏「富士フイルムの構造改革は最大の成功例、懸念はBtoC事業」
識者は富士フイルムホールディングスの構造改革や今後の戦略をどのように評価しているのか。一橋大学・特任教授の楠木建氏と、SMBC日興証券・シニアアナリストの德本進之介氏に話を聞いた。

第10回
富士フイルムHD後藤社長「負けるばくちは打たない」 バイオ薬に巨額投資
富士フイルムホールディングス後藤禎一社長は、「ナンバーワンになりたい」という思いを事業成長の原動力にしてきた。主力のヘルスケア事業は、M&Aを駆使して売上高1兆円を超える規模まで育ちつつある。1兆円投じる医薬品の開発製造受託(CDMO)の収益性に自信を持つ。

第9回
「脱ゼロックス」で世界展開 富士フイルムBI、複合機からIT企業に
富士フイルムビジネスイノベーションは複合機からIT企業へ転換する。顧客の業務フローや情報管理方法に精通していることが強み。文書のデジタル化サービスなどを提供して生産性向上につなげる。

第8回
富士フイルム、「配属ガチャ」防ぐ徹底説明 古い人事制度が変態生む
会社存続の危機を乗り越え、さまざまな「改革者」を生み出し続ける富士フイルム。そのサイクルを回す人事制度を、人材マネジメントの専門家である学習院大学守島基博教授は「古めかしい制度」と評する。どのような違いが成長を生んでいるのか。

第7回
富士フイルム、事業部長から現場まで大胆入れ替え 厳しい任務で能力引き出す
富士フイルムホールディングスの後藤禎一社長は幹部人材に畑違いの事業部を任せ、潜在能力を引き出す。上司が積極的に失敗談を語り、挑戦する企業文化の浸透に力を入れる。変革のスピードを高めることが、さらなる収益力の向上には不可欠だ。

第6回
TSMCに食らいつけ 富士フイルム、半導体材料で究極のご用聞き
富士フイルムの半導体材料事業は、幅広い製品と世界20カ所の供給体制が強み。写真の現像技術を生かし、顧客と二人三脚で先端品の開発に取り組む。後発ながら半導体材料のトップ企業に躍り出ることはできるのか。

第5回
「バイオ医薬界のTSMCに」 富士フイルム、日欧米で1兆円投資の勝算
医薬品の供給の水平分業が進み、開発製造受託(CDMO)が急拡大している。富士フイルムは11月から買収先のデンマークで、大型タンクを稼働させた。写真フィルムの製造で培った量産技術とスピードを糧に、世界と勝負する。

第4回
「富士フイルムを超える」 健診事業で狙う時価総額5兆円、若き開拓者の野望
富士フイルムホールディングスが世界で健康診断サービスを展開している。リーダーは、メディカルシステム事業部新規事業統括の守田正治氏だ。インドとモンゴル、ベトナムと3カ国の7拠点で展開しており、これまでに累計で6万人以上が健康診断を受けた。

第3回
富士フイルム、世界トップの医療画像システム AIエンジニアの開発物語
富士フイルムホールディングスは画像診断に用いる画像管理システムで、世界一のシェアを誇る。AIエンジニアが医師の癖まで把握し、診断を助けるサービスを次々と開発。診断の基盤ソフトを押さえ、それを取り巻く医療機器の販売に加速をつける。

第2回
富士フイルム、カメラ事業でキヤノン・ニコン超え利益率26%のからくり
富士フイルムのカメラ事業が躍進を続けている。2024年4~9月期が大幅な増収増益となり、売上高営業利益率はキヤノンやニコンの同事業を上回る20%を超える水準となっている。独占的な市場をもつ「チェキ」をマーケティングの力で活かし、世界と勝負する。

第1回
富士フイルム、止まらぬ変態 「両利きの経営」カリスマ後も
富士フイルムホールディングスはインスタントカメラ「チェキ」の販売好調やヘルスケア事業の収益拡大で、2025年3月期は4期連続で営業最高益を更新する見通しだ。写真フィルムや複写機の強みと弱みを見極め、アナログとデジタルの掛け合わせで既存事業の構造改革も進めている。
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