米ワシントン州に住むジェン・ワトソンさん(41)はてんかんや線維筋痛症など複数の慢性疾患を抱え、何年も前から医師と相談しながら適切な薬物治療を探してきた。医師はワトソンさんの神経痛を和らげる医薬品をいくつか見つけてくれたが、低所得層向けの公的医療保険「メディケイド」に基づき医療保険大手ユナイテッドヘルスケアが提示したプランでそれら医薬品の保険適用を断られ、痛みが原因で職探しもままならないという。

 「症状がうまく管理されていないため15分以上は耐えられず、あっという間に激痛が走る。それもあって職探しに苦労している」

 ユナイテッドヘルスケアのブライアン・トンプソン最高経営責任者(CEO)がニューヨーク市マンハッタンで射殺された先週の事件をきっかけに、医療を受けられない、もしくは医療費が高くて払えない米国民の間で怒りが噴出している。CEOを射殺したと疑われる男は9日に拘束された。

 ニューヨーク市警察幹部はこの男について「米ビジネス界に対して何らかの恨みを持っているようだ」と述べた。

 射殺事件は医療保険に対する不満の根深さを改めて示すことになった。

 最近のデータでは、医療保険請求を却下されたり、保険料や医療費の支払いが増加したり、保険が適用されないために想定外のコストに直面する可能性がますます高まっていることが分かる。病院や保険会社の統合もコスト増大の一因だ。

 ユナイテッドヘルス・グループ傘下のユナイテッドヘルスケアは米医療保険最大手で、シグナとCVSヘルスがそれに続く。

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