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情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

てえへんだ、てえへんだ…国会図書館が裁判権放棄を裏付ける文書を急きょ閲覧禁止に!

2008-08-10 13:29:30 | ãƒ¡ãƒ‡ã‚£ã‚¢ï¼ˆçŸ¥ã‚‹ãŸã‚ã®æ‰‹æ®µã®ã‚り方)
 国会図書館は、国会が法律を制定するにあたって、必要な資料を提供することを一番の目的とし、また、同じ資料を市民に明らかにし、法律制定についての是非を判断する材料を提供することを第2の目的としているはずだ。そうであれば、マスメディアなどで報道され、世間で騒がれている事案に関する文書を示すのは当然であり、折りに触れ「こういう文書が国会図書館にはある」という公報をするべきだろう。ところが、それまで開示していた文書を、世間で騒がれるようになったら、隠したというのだから、とんでもないことだ。国会図書館に抗議し、非開示を求めた法務省を徹底的に非難しなければならない。場合によっては、法的手続きをとってでもこの暴挙に抗するべきではないかと思う。

 軍事問題研究会の「ニュースの背景:「国会図書館に封印された日米秘密合意」によると、非開示にされた文書は、「我が国では秘密とされてきた日米合同員会の合意事項が掲載されている「検察資料」(1972年)と題する法務省刑事局の文書」で、非開示にした事実を赤旗が伝えているという。ここでいう合意事項とは、在日米軍の軍人が犯罪を犯した場合の裁判権を日本政府が放棄したという問題だ。

 この件は、北海道新聞がいち早く伝えたようだ。すでに道新のウェブサイトには掲載されていないが、鈴木宗男議員議員の質問主意書には、【本年五月十八日付の北海道新聞は、同月十七日までに機密解除された米国立公文書館の複数の文書(以下、「文書」という。)により、日本に駐留する米兵らの事件に関し、「重要な案件以外、日本側は裁判権を放棄する」との密約(以下、「密約」という。)に日米両国政府が一九五三年に合意し、その後約五年間に起きた事件の九十七%の第一次裁判権を放棄していたことがわかったと報じている。】と書かれている。

 この記事を踏まえ、鈴木議員は、次のように質問した。


【一 「道新記事」を外務省は承知しているか。

二 「道新記事」によると、「文書」は一九五八年から一九六六年にかけて作成されたものであるとのことである。その中の一つに、「日米安全保障条約改定に応じるに際し、日本側から裁判権放棄について意思表示を取り付けるべきだ」とする、一九五八年十月二日付の当時のダレス国務長官が在日米国大使館あてに出した秘密公電も含まれているとのことであるが、外務省、または在米国日本国大使館は、これらの「文書」を直接確認しているか。

三 一九五四年から一九五九年の間に、日本駐留米兵が起こした刑事事件の件数並びに、そのうち起訴され、我が国の裁判にかけられた件数につき、それぞれ年ごとに明らかにされたい。

四 「道新記事」によると、我が国は一九五三年以降の約五年間、日本駐留米兵が起こした事件のうち九十七%に対して第一次裁判権を放棄していたとのことであるが、右は事実か。

五 「密約」は事実か。

六 当時「密約」が結ばれた理由を説明されたい。

七 過去十五年間の、日本駐留米兵が起こした刑事事件の件数並びに、そのうち起訴され、我が国の裁判にかけられた件数につき、それぞれ明らかにされたい。

八 「密約」は現在も効力を有しているか。】

 これに対し、政府は、次のように答え、密約を否定した。

【一について
 外務省として、御指摘の記事については承知している。

二について
 御指摘の「文書」については、具体的に何を指すのか明らかではないが、刑事裁判権に関し、我が国が一定の場合に、我が国の当局が有する裁判権を行使する第一次の権利(以下「第一次裁判権」という。)を放棄することについてアメリカ合衆国側との間で合意していたとの事実はなく、外務省として確認することは行っていない。

三について
 昭和二十九年から昭和三十四年までの間に、警察が検挙した米軍の構成員(以下「米軍人」という。)による警察庁の犯罪統計の区分における刑法犯及び特別法犯に係る検挙件数の合計数は、これらのうち警察庁の犯罪統計で確認のできるアメリカ国籍を有する者についてお答えすると、昭和二十九年は二千九百七十五件、昭和三十年は二千四百八十六件、昭和三十一年は二千百六十五件、昭和三十二年は千六百十五件、昭和三十三年は八百九十八件、昭和三十四年は五百四十件である。
 また、同期間の米軍人による犯罪に係る我が国の裁判所への起訴件数については、資料がなく、お答えすることは困難である。

四について
 米軍人による犯罪について、我が国の当局が有する第一次裁判権を放棄したことはない。また、お尋ねの期間に我が国の当局が第一次裁判権を行使しないこととした米軍人による犯罪に係る事件の件数については、資料がなく、お答えすることは困難である。

五、六及び八について
 刑事裁判権に関し、我が国が一定の場合に、我が国の当局が有する第一次裁判権を放棄することについてアメリカ合衆国側との間で合意していたとの事実はない。

七について
 平成五年から平成十九年までの間に、警察が検挙した米軍人による警察庁の犯罪統計の区分における刑法犯及び特別法犯に係る検挙件数の合計数は、平成五年は百九十一件、平成六年は百七十七件、平成七年は百四十二件、平成八年は六十八件、平成九年は九十三件、平成十年は六十件、平成十一年は七十件、平成十二年は百十二件、平成十三年は百六十六件、平成十四年は百件、平成十五年は百五十六件、平成十六年は百三十二件、平成十七年は百三件、平成十八年は八十七件、平成十九年は百三件である。
 また、我が国の当局が第一次裁判権を有する米軍人による犯罪に係る事件の受理人員数及び起訴人員数は、法務省の資料で確認のできる米軍人若しくは軍属又はそれらの家族による犯罪の受理人員及び起訴人員の各合計数を平成十三年から平成十九年までの間についてお答えすると、受理人員数は、平成十三年は六百三十二人、平成十四年は七百二十四人、平成十五年は九百二十九人、平成十六年は八百九十九人、平成十七年は八百三十九人、平成十八年は七百五十三人、平成十九年は七百二十二人であり、起訴人員数は、平成十三年は二百四十一人、平成十四年は二百八十一人、平成十五年は三百九十九人、平成十六年は四百人、平成十七年は三百五十五人、平成十八年は四百一人、平成十九年は三百五十一人である。】


 ところが、政府の回答はまったくの虚偽だった。8月4日付け共同通信配信記事によると、

【日本に駐留する米兵の事件をめぐり、1953年に法務省刑事局が「実質的に重要と認められる事件のみ裁判権を行使する」との通達を全国の地検など関係当局に送付、事実上、裁判権を放棄するよう指示していたことが4日までに、同省などが作成した複数の内部資料で分かった。

 法務省は地検に「慎重な配慮」を要請し、事件の処分を決める際は批判を受ける恐れのある裁判権不行使ではなく、起訴猶予とするよう命じていたことも判明。地検の問い合わせには日米地位協定の前身となる行政協定に基づき、日本が第1次裁判権を行使できない「公務中の事件」の定義を広く解釈するよう回答していた。

 日本側の裁判権放棄については日米両政府による53年の秘密合意が明らかになっているが、合意を受けた具体的対応が分かったのは初。現在も米兵の交通事故など多くの事件が起訴されておらず、通達の効力は維持されているとみられる。

 内部資料は、法務省刑事局と警察庁刑事局が54年から72年にかけて作成した「外国軍隊等に対する刑事裁判権関係」などの実務資料。日米関係研究者の新原昭治氏や共同通信が入手した。】

 というのだ。


 本当に、現在の与党政府は、市民を完全に愚弄しきっている。普通の国なら、この問題が報道されただけで、首相の首が飛んでもまったくおかしくない。

 …とはいえ、不思議の国日本、いや、未開の国日本だから、こんなことがあっても、市民は政権批判をしようとしない…。もちろん、未開の原因はこのようなニュースを大々的に伝えないメディアにあるのだが、インターネットによる情報伝達が可能な現在、このニュースが全世帯のパソコンに大々的に伝えることは可能であり、市民の無関心ぶりもちょっと悲しい。

 さて、ここからが、本題です。我々は、こういう情報隠しをさせないために、情報公開や国会図書館というツールを持っているわけだ。ところが、国会図書館がこのニュースが発覚した後、情報を隠したというのだ。ツールが本来の機能を果たしていないのだ。



 上記のとおり、確かに7月21日付け赤旗で、国会図書館が関連文書を非開示にしたことが書かれている。それなのに、なぜか、各紙ともこの記事を追いかけていない。その後、共同配信記事のように、国会図書館が非開示にしたことは無視して、関連文書の内容のみが伝えられている。

 この関連文書が国会図書館で開示されていたことは、軍事問題研究会の次のような資料から明らかだ。



 同会は、この資料について、次のように解説している。

【国会図書館の蔵書資料をまとめた書籍として「国立国会図書館蔵書目録 平成3年-平成7年」(平成8年9月26日発行 国立国会図書館)が存在する。同書は、平成3~7年の間に同館が収集した資料の目録である。同書第1編「政治・法律・行政.議会・法令資料(1)」120頁に掲載されている「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料」と題するものが、この消された資料の正式なタイトルである(添付ファイル〔「国立国会図書館蔵書目録 平成3年-平成7年」〕参照。なお上記記事とは文書の日付が異なるのは誤植のせいかもしれない)。】

 同会によると、【「真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立」(国立国会図書館法)されたはずの国会図書館が、なぜ今回のように資料の閲覧禁止の措置を取った】のか、その根拠は、【「国立国会図書館資料利用規則」第8条】に【「館長は、人権の侵害等により利用に供することが不適当と認められる資料の利用の制限(利用を禁止し、又は利用について一定の条件を付することをいう。以下同じ。)をすることができる」と定めており、今回の措置も建前上これに基づく措置となっている】というのだ。

 しかも、【実は公表されていないが、同図書館には「国立国会図書館資料制限措置に関する内規」という規則が存在する。これによると、同図書館が所蔵する行政資料に関しては当該官庁から閲覧禁止等の要求があった場合、それに従う旨が定められて】おり、【どうやら資料の国会図書館所蔵を知った法務省が、同館に閲覧禁止を申し入れた結果、今回の成り行きとなった次第のようである】らしい。

 こういう内規があることが問題だ。ツールを使えるものとするためには、今回の閲覧禁止措置を断固として追求し、内規を改正させなければならない。

 皆さん、情報を伝えられないまま、米軍による犯罪が見逃され続けたことに抗議を!

 そして、このような仕組みを是正するよう野党に働きかけ、与党を徹底的に批判しよう!

 必要があれば、法的手続きをとってでも! 





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★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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図書館の危機 (むくのきやすお)
2008-08-14 21:42:56
昨年、国立国会図書館の所蔵書籍に因縁をつけた衆議院議員について書いたことを思い出し、結びつけて文章を書きました。図書館は正しくあって頂かないと困るので、今のうちに対処しておきたいです。

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