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絶滅したステラーカイギュウ(Hydrodamalis gigas、ステラーダイカイギュウとも)の復元図。ベーリング海にすんでいたカイギュウ目の一種で、人間の乱獲のせいで18世紀に絶滅した。マナティーやジュゴンの仲間。(RICHARD ELLIS, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 1741年11月8日、博物学者のゲオルク・ヴィルヘルム・シュテラーは、名もなき島の海岸を歩いていた。この荒涼たる島に彼がたどりついたのは、ヴィトゥス・ベーリングの遠征に参加したためだった。 ベーリングは、シベリアから米大陸に至る海路を見つけようとしていた。船員たちはその使命を果たし、アラスカの海岸に到達したものの、帰路で悲劇に見舞われた。船が難破し、のちに船長の名を取ってベーリング島と名付けられることになる不毛の無人島に流れ着いたのだ。 薪の備蓄が少なくなっていたため、シュテラーは流木を探しつつ、島の
世界を股にかけて活躍する土の研究者の藤井さんは『土と生命の46億年史』(講談社ブルーバックス)や『土 地球最後のナゾ』(光文社新書)の著者で、『博士が愛した論文』(日経ナショナル ジオグラフィック)の共著者でもある。 「大さじのスプーンに土をすくったとします。ここには、1万種類、100億もの微生物がいるんですよ。でも、これらの微生物が何をしているのか、よくわかっていないことが多く、まだまだ謎だらけなんです」 藤井さんは、土の複雑さを表現するとき、このように語り起こす。「地球最後の謎」「ファイナルフロンティア」といった表現が決して大げさではないほど、土はミステリアスだ。本連載の最初で、「岩石が分解したものと、死んだ動植物がまざったものが、土」と教えてもらったけれど、その中にはおびただしい種類、数の微生物がうごめいており、植物と相互作用しつつ、土を土たらしめている。 「ゼロから土を作るのは難し
清潔な白い防護服に身を包み、白い靴と白い手袋もはめ、ナショナル ジオグラフィックの写真家でエクスプローラー(探求者)のパオロ・ベルゾーネ氏は横になって自分と同じほどの幅しかない開口部に体を滑り込ませた。まるで「星の中に入っていくようでした」と氏は言う。 少なくとも地球上でそれに一番近い体験をできるとすれば、この場所だろう。ベルゾーネ氏は、ドイツのグライフスバルトにあるマックス・プランクプラズマ物理学研究所に設置された実験核融合炉「ヴェンデルシュタイン7-X」の内部をメンテナンス中に独占的に見学し、撮影することを許された。滅多に許可されない特別な措置だ。
ホットフラッシュや気分の落ち込み、睡眠障害などの症状は、閉経後に徐々に治まっていくが、すべての症状がなくなるわけではない。閉経後の女性の27~84%が「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」を経験している。(ILLUSTRATION BY SHUBHANGI GANESHRAO KENE, GETTY IMAGES) 閉経に至るまでの期間、いわゆる「閉経周辺期」には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が減り、多くの女性がホットフラッシュや寝汗、膣の乾燥、睡眠障害、気分の落ち込みといった不調に悩まされる。閉経(医学的には月経が止まってから1年後)を迎えると、こうした症状は徐々に和らぎ、やがて消えていく。ただし、1つだけ目立つ例外がある。 それは「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」と呼ばれる、膣や泌尿器系に現れる不快な症状の数々だ。症状は加齢とともに改善するどころか、むしろ悪化していく
海上から見ると、メキシコ、レビジャヒヘド諸島の小島ロカ・パルティーダは、水面から小さな頂が2つ顔を出しているに過ぎない。しかし水中では、この孤島は豊かな海洋生態系を育んでおり、ネムリブカ(Triaenodon obesus)、パシフィッククレオールフィッシュ(Paranthias colonus)、バーバーフィッシュ(Johnrandallia nigrirostris)、ツノダシ(Zanclus cornutus)などがひしめいている。(Enric Sala, National Geographic Pristine Seas) 熱帯の東太平洋に設けられた7つの海洋保護区(MPA)でサメについて調べたところ、大陸から遠く離れた海洋島の、漁業に対する厳しい取り締まりが行われているエリアでは大いに繁栄している一方、沿岸に近く漁業が盛んなエリアでは著しく減っていることが明らかになった。この結果
これまでに観測された中で最も長く続いたガンマ線バースト「GRB 250702B(中央左)」の様子を描いたイラスト。2025年7月2日に検出されたこの現象は、7時間以上にわたって継続した。(NOIRLab/NSF/AURA/M. Garlick) これは2025年に宇宙で起こったことの中でも最大の「ミステリー」と言えるだろう。ブラックホールはどうやって恒星を破壊したのか? そしてどのようなブラックホールであれば、そんなことが可能なのだろうか? 世界中の天文学者たちが、2025年7月2日以降、この“未解決事件”の解明に取り組んでいる。 その日、彼らのもとに、NASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡がガンマ線を検出したとの知らせが届いた。ガンマ線は、知られている中で最もエネルギーの高い光の形態であり、ブラックホールが恒星などの天体を破壊する際に現れる典型的な兆候として知られている。莫大なエネルギー
日本での研究で、森林の植物と土の関係が「調律」されていることを見出した藤井さんは、インドネシアの森林でもその関係に普遍性が見られることを確認した。と同時に、インドネシアの畑で起きている土壌劣化の問題をどうしたら解決できるかという「応用問題」にも取り組み始めた。 その際、まず藤井さんが着目したのは、インドネシアで日本の先人たちが行ってきた研究だ。 「僕たちの調査地の近辺は、ずっと昔から山火事が問題だったんです。自然に山火事が起きたわけではなくて、原因は人にあります。畑が3年で劣化したら、また森を切り開くので、みんな乾期に無計画に火をつけてしまいます。エルニーニョがひどいとき、それが拡大して、山火事になってしまうんです。原因は、一人一人の善良なる農民たちの明日のご飯が食べたいっていう思いによって引き起こされているという……。その山火事の跡地で、現地の大学、日本のJICA(国際協力機構)、森林総
音の処理と言語理解を支える脳の横側頭回(おうそくとうかい=前部は緑、後部はオレンジ)の図解。(KATERYNA KON, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 加齢によって脳が一夜にして変わってしまうことはまずない。だが、思い出すのに時間がかかるようになった、注意が散漫になったなど、老化の兆しは徐々に現れる。多くの人が本当に知りたいのは、そうした認知機能の衰えが起きるかどうかでなく、衰えを遅らせる方法があるのかどうかだ。 短期的な記憶力や認知機能を鍛えるには、頭を使うゲームや難解なクロスワードパズルがよいという話がよく出る。しかし最近の研究が、認知機能の低下を食い止めるのに最良の方法の1つを示唆している。それは、使える言語を増やすことだ。(参考記事:「クロスワードパズルは本当に脳にいいのか、認知症を防ぐ実力は」) 「多言語社会での暮らしが、加齢に伴う認知機能や生活機能の衰えを実際に
サーモンのような脂身に富む魚は北欧式ダイエットを構成する重要な食材だ。(David Maupile, laif/ Redux) 健康的な食事で知られる地域といえば、多くの人が地中海の国々を思い起こすだろう。 しかし、北欧式ダイエットもまた、「世界で最も優れた食事法」の名を冠するのにふさわしい内容を誇る。デンマーク、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンに暮らす人々の伝統的な食習慣は、地中海食(地中海式ダイエット)と共通する多くの健康効果をもたらしてくれる。 「北欧式ダイエットは、地中海食の寒冷地版と言えます」と語るのは、米国の登録栄養士ドーン・ジャクソン・ブラトナー氏だ。「地中海食と非常によく似ていますが、北欧式ダイエットは寒冷な気候で育つ食品が多く含まれている点が特徴です」 栄養士、科学者、料理人のグループによって2004年に考案された「新北欧式ダイエット」は、地元でとれる
写真のプランクは、全身の体幹の筋肉を鍛えられる運動の一つだ。体幹の筋肉は、私たちの背骨を支え、バランスをとり、生涯にわたって動けるようにしてくれる。(YACOBCHUK, GETTY IMAGES) 腹直筋(お腹の前面中心を走る縦長の筋肉)が6つに割れて見える「シックスパック」は健康の証のように思われるかもしれないが、実は驚くほど健康状態とは関係がない。健康的に年齢を重ねる上で本当に重要なのは、外から見える筋肉ではなく、体幹をつくる複雑な深層筋(インナーマッスル)の方だ。 体幹の深層筋は背骨を安定させ、腰を保護し、ほとんどすべての動作の原動力となる。しかし、外から見える筋肉を鍛える標準的なトレーニングだけで深層筋を鍛えようとすると害の方が大きいと指摘するのは、米スペシャル・サージャリー病院(HSS)の運動生理学者であるベン・ヤムダー氏だ。 「そういうトレーニングでは、体幹の筋肉のごく一部し
モロッコのカサブランカの洞窟で見つかった初期のヒト族の下顎骨の化石。今回発見された数点の化石は、これまで知られていなかったヒト族のもので、人類の起源に関する物語を揺るがしうる。(HAMZA MEHIMDATE, PROGRAMME PRÉHISTOIRE DE CASABLANCA) 今から約77万年前、今のモロッコのカサブランカ南西部にあたる地域に小さな洞窟があった。当時、この地域には、ガゼル、ハイエナ、アンテロープ、マングース、クマ、絶滅した大型種のゲラダヒヒなどが豊富に生息していた。そして、これまで知られていなかった初期人類の集団も。2026年1月7日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文で、この洞窟で見つかったヒト族(ホミニン)の化石が新たに報告された。 化石の年代は、ホモ・サピエンスの祖先が分岐し、後にネアンデルタール人やデニソワ人となる複数の系統へと多様化しはじめた時期にあ
福島国際研究教育機構の研究施設は現在建設中とのことで、この日の取材は、藤井さんが間借りしている宇都宮大学で行った。 では、調律された森の土と、土壌劣化が起きている畑の土はどこが違うのか。このテーマは、人類の課題である食料問題にも直結するものでもある。藤井さんは農学部出身だが、いきなり「応用問題」に取り組むのではなく、背後にあるサイエンス(科学)、特にケミストリー(化学)を理解した上で進みたいという思いがあった。そして、10年かけてその足場をある程度整えられるところまで来たのだった。 藤井さんが見出した、森と畑の違いとは──。 「森でも畑でも、硝酸化成といって、微生物の働きで土の中の窒素分が硝酸になっていきます。植物は通常、窒素を高分子のタンパク質のままでは吸収できず、主にアンモニウムイオンや硝酸イオンとして取り込むんです。硝酸化成は多くの土壌で起きているのですが、森だとその年必要とする栄養
テレビで放送され、一般書に書かれているような「環境問題」への関心から、土の研究を始めた藤井さんだが、いざデータを取り始めると、むしろ、土の中で起きている、植物・微生物の営みそのものに惹きつけられていった。 「吉田山で見たことには普遍性があるのか、違う場所に行って生態系が違ったときには、微生物、植物の土への働き方が変わるのかを検証するために、日本国内では京都府丹後半島、長野県八ヶ岳、海外ではインドネシア、タイ、カナダといろいろなところに行って、同じような研究をしました。そして、一般性があることを確認していったんです」 つまり、雨が降れば植木鉢の受け皿とホースとボトルを使って、層位ごとに土壌溶液を採取し、地上では土から放出されるガスを得る。植物の成長を根気よく測定し、落ちた葉の量を記録する。そういった地道な調査を、長期間にわたって行う。 福島国際研究教育機構・土壌ホメオスタシス研究ユニットリー
幼いTレックスと獲物をめぐって争うナノティラヌス・ランセンシス。ナノティラヌスは白亜紀後期の小型の捕食者で、最近の研究により、幼いTレックスではなく、別種の恐竜だったことが示唆されている。(ANDREY ATUCHIN, CLEVELAND MUSEUM OF NATURAL HISTORY) 小型の肉食恐竜ナノティラヌスは、2025年10月に学術誌「ネイチャー」に発表された画期的な研究によって一人前の恐竜として「小さな王」の位についたばかりだが、独自に研究を進めた別の古生物学チームが、再び同じ結論に達した。すなわち、ナノティラヌスは幼いティラノサウルス・レックスではなく、別種の恐竜だという。論文は2025年12月4日付けで学術誌「サイエンス」に発表された。(参考記事:「幼いTレックスか別の恐竜か、40年来の論争についに決定打か」) 新しい研究は、数十年にわたる論争のきっかけとなった標本の
神経建築学の分野からは、季節性感情障害(SAD)の症状の軽減を促すため、住まいの環境を整えるさまざまな方法が提唱されている。(SOPHIE STIEGER/13PHOTO/REDUX) 毎年、多くの人が「季節性感情障害(SAD)」に悩まされる。SADとは、主に秋から冬にかけて発症するタイプのうつ病を指し、「季節性うつ病」や「冬季うつ病」とも呼ばれる。世界では5%の人がSADに苦しんでいるという。 SADの症状には「気分の落ち込み、極度の疲労感、社会的引きこもり」などがあると、ポルトガル、リスボン大学建築学部で神経建築学を研究するエルトン・リマ氏は言う。神経建築学は、デザインによる介入が、人間の心理や生理にどのような影響を与えるかを探る学問だ。 SADの一般的な治療法としては、自宅で光療法用のライトを使う方法が知られている。だが、神経建築学の観点から見れば、SADになりにくい住まいをつくるた
2002年の研究により、ホルモン補充療法(HRT)は深刻な健康リスクを引き起こすと多くの人が信じるようになったが、最新の科学によると、それは誤りだという。(OLEKSANDRA TROIAN, GETTY IMAGES) ほんの数年前でも、更年期症状のホルモン補充療法(HRT)について医師に相談すれば、ためらいを見せられたり、軽くあしらわれたり、代わりに抗うつ薬のパンフレットを渡されたりしたかもしれない。 HRTは、更年期に減少する卵巣ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を補い、「ホットフラッシュ」と呼ばれるほてりや寝汗など、さまざまな症状を緩和する治療だ。2002年の研究で、この治療が乳がんや心臓発作と関連付けられて以来、医師や患者の間で論争の的となってきた。その結果、安全性の懸念から、多くの人がこの治療を避けてきた。 しかし近い将来、HRTに対する見方が変わるかもしれない。米国では
私たちの体は、ダイエットをするためではなく、飢餓を生き延びるために進化してきた。研究者たちは、代謝や空腹感やホルモンが減量を困難にするしくみを解明しつつある。(BIG CHEESE PHOTO , GETTY IMAGES) 体重を減らすのは難しく、やせた状態を維持するのはさらに難しい。研究によれば、減量した人の80〜95%が3〜5年以内にリバウンドしているという。 科学者たちは、これは意志が弱いからではないと言う。ホルモン、遺伝、そして進化までもが、減量した体をリバウンドに駆り立て、空腹感を強め、代謝を低下させ、元の体重に戻そうとするのだ。 「この生物学的な綱引きは、世間ではほとんど認識されていません」と、米国肥満医学委員会の医療ディレクターであるキンバリー・グジューニ氏は言う。「多くの人は、いちど体重が減りさえすれば、魔法のようにその状態を維持できると思い込んでいます。残念ながら、現実
PHOTOGRAPH BY ALFRED T. PALMER 子ネコの重さでひっくり返る?! ……なんて心配はご無用。頑丈なオオオニバスの葉は直径約2.5 メートル。裏側の太い葉脈と空気層によって浮力が高められ、約45 キロの重さに耐えられる。1935年にフィリピンで撮影。
ヒレに鮮やかな黄色い帯。実にカッコよく、かわいらしくもある見慣れないハゼを、生物系ライターの平坂寛さんが釣り上げた。場所は沖縄県・石垣島沖の、わずかな光が届く海域「トワイライトゾーン」。母校の琉球大学で同期だった小枝圭太・同大助教に知らせると「ヤツシハゼ属の新種では?」。研究の結果、他の特徴もあり新種と判明した。 ヒレの模様が人気漫画「ドラゴンボール」のキャラクターを思い起こさせるとして、その名をヒントに「Vanderhorstia supersaiyan(バンダーホルスティア・スーパーサイヤン)」と命名。標準和名は、体から放電するように見える模様をもとに「エレキハゼ」を提唱した。 こんなに面白い姿の魚が、発見されていなかったなんて意外だ。「沖縄のトワイライトゾーンに、まだまだ未発見の未記載種や希少種が多くいる可能性が高い」と研究グループ。 同大と黒潮生物研究所で研究グループを構成。成果は
笠雲、つるし雲、旗雲――富士山の周りには、多彩な面白い形の雲ができることが知られている。それらができる条件を明らかにしたと、筑波大学などの研究グループが発表した。山を取り囲むカメラで長期に観察し、観測データと合わせて詳しく調べた。ほぼ経験的に語られるにとどまっていたこれらの雲の性質を、初めて科学的に検証したという。 日本一の霊峰を飾るこうした雲は見応えがあり、親しまれている。それぞれの形ができる大まかな仕組みは考えられたものの、十分に解明されてこなかった。そこで研究グループは2019年1月~21年12月の3年間、富士山を囲む実質7台のライブカメラで雲を観察。また気象庁の観測データを基に、富士山の風上側の700ヘクトパスカルの高度、つまり概ね上空3キロの風向と風速を調べた。高度別の風速なども検証した。 その結果、それぞれの雲で次の特徴を見いだした。(1)山が笠を被ったように見える「笠雲」は、
オレンジ色で示された扁桃体は脳の警報システムとして機能する。危険を感知すると視床下部に信号を発し、ストレス反応を引き起こさせる。しかし、悪いニュースなどにさらされ続け、危険信号が繰り返し発せられると、脳はストレス反応を調節できなくなる。(ILLUSTRATION BY KATERYNA KON, SCIENCE PHOTO LIBRARY) メディアが心にダメージを与えることに、米カリフォルニア大学アーバイン校の心理学・医学・公衆衛生学教授ロクサン・コーエン・シルバー氏が初めて気づいたのは1999年のことだった。 米国コロラド州リトルトンでコロンバイン高校銃乱射事件について研究していた氏は、1つの憂慮すべき傾向に気づいた。多くの保護者や生徒が、事件発生からわずか数時間後にジャーナリストから取材や撮影を求められたことを極めて苦痛に感じていたのだ。 しかし、シルバー氏がメディアの有害性を真に理
世界各地で熱波や干ばつ、豪雨といった極端な気象による被害が頻発し、その原因とされる地球温暖化・気候変動対策は待ったなしとされている。そうした中で国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第30回締約国会議(COP30)が11月10日から22日までブラジル・ベレンで開かれた。今回のCOPは第1回から30年。産業革命以降の平均気温上昇を1.5度に抑えることを目指した国際枠組み「パリ協定」採択から10年の節目で、大きな被害を出した各国の危機感も高まっていてその成果が注目されていた。 だが、大きな争点だった「化石燃料からの脱却」の合意に失敗するなど、「気候危機」を回避するための明確な道筋を示すことができないまま終わった。国際協調で対策を進める難しさが改めて浮き彫りになった。 COP30では気候変動による災害に備えるための「適応資金」を増やす約束などの成果もあり、対策強化の機運はまだ失われていない。各国
マヤの支配者テ・カブ・チャクのものと思われるモザイクのデスマスク(復元作業は現在も進行中)。考古学者のアーレン・チェイス氏、ダイアン・チェイス氏は、ベリーズのジャングルにあるカラコル遺跡でこの翡翠の仮面を発見した。(Courtesy Caracol Archaeological Project/University of Houston) 2025年は、最先端の科学的手法が考古学に新たな知見をもたらした年となった。古代のDNAの解析により、ピラミッド建設の黎明期を生きたエジプト人の起源が明らかになった。衛星画像が、アンデス山脈一帯に散在する巨大な狩猟罠の痕跡を捉えた。海中探査によって第二次世界大戦の沈没艦が再びその姿を現し、さらにはクレオパトラの埋葬地発見につながる可能性がある水没した港も見つかった。 一方で、昔ながらの地道な発掘調査もまた、すばらしい成果を上げている。 以下に、2025年
南極海の一部であるウェッデル海の底に沈んでいる、エンデュアランス号の3Dスキャン画像。(FALKLANDS MARITIME HERITAGE TRUST) 21世紀に入って早25年が過ぎようとしている。ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。しかし、科学とテクノロジーの分野における数々の目覚ましい発展は、世界をより良い方向へと導いてきた。ここでは地学と考古学の分野で過去の四半世紀に起こった最も刺激的なブレイクスルーを集めてみた。(参考記事:「過去25年間で最も偉大な科学のブレイクスルー:生命科学編」、「過去25年間で最も偉大な科学のブレイクスルー:物理学・天文学編」) 異常気象と気候変動の関連性が明確になる 人間が化石燃料を燃焼することで世界の気温が上昇し、熱波やハリケーン、森林火災といった異常気象が悪化することに、数十年前から科学者たちは気付いていた。しかし、自然災害の激しさが気候変
ヒッグス粒子を発見した欧州合同原子核研究機構(CERN)の施設。(FONS RADEMAKERS, CERN/SCIENCE PHOTO LIBRARY) 21世紀に入って早25年が過ぎようとしている。ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。しかし、科学とテクノロジーの分野における数々の目覚ましい発展は、世界をより良い方向へと導いてきた。ここでは物理と天文学の分野で過去の四半世紀に起こった最も刺激的なブレイクスルーを集めてみた。(参考記事:「過去25年間で最も偉大な科学のブレイクスルー:生命科学編」) グラフェンの発明 炭素原子が六角形の格子状に並んだグラフェンは、知られている限り最も薄く、それでいて最高レベルの強度を持つシート素材だ。1947年に初めて提唱されたが、実際に研究室で初めてグラフェンが作られたのは2004年になってからだった。この功績に携わった科学者たちは、2010年にノー
英ケンブリッジのサンガーセンターに保管されているこの60枚のトレーには、人間の全ゲノムが、2万3040個の異なるクローンDNAの断片として納められている。(JAMES KING-HOLMES, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 21世紀に入って早25年が過ぎようとしている。ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。しかし、科学とテクノロジーの分野における数々の目覚ましい発展は、世界をより良い方向へと導いてきた。ここでは生命科学の分野で過去の四半世紀に起こった最も刺激的なブレイクスルーを集めてみた。(参考記事:「人々に希望を与える2025年の医療のブレイクスルー9選」) ヒトゲノム計画の完了と合成生命の誕生 米国立衛生研究所(NIH)主導の下、ヒトゲノムの全塩基配列解読を目指して1990年に始まったヒトゲノム計画は、2003年に完了した。この、史上最大の生物学共同プロジェクトは、
「適度な飲酒」の本当の意味や「安全」な飲酒量について、科学者たちは従来とは違った考え方をしている。(GETTY IMAGES/CAVAN IMAGES) 何十年ものあいだ、夕食時にグラス1杯のワインを飲む、週末だけカクテルを飲むなどの「適度な飲酒」は、健康的なライフスタイルの一部とされ、心臓に良いとさえ考えられてきた。けれども研究の結果、本当に「安全」な飲酒量など存在しないことが示されつつある。 「飲酒に健康を守ったり増進したりする効果があればいいのにという私たちの願いに反して、そうした効果を証明できた研究は1つもありません」と、飲酒が体に及ぼす影響について研究している米ルイジアナ州立大学健康科学センターの生理学研究者のパトリシア・モリーナ氏は言う。 とはいえ、どの一口にも同じリスクがあるわけではないため、「適度な飲酒」とはどういう意味で、どこからが飲み過ぎになるのかという新たな疑問が出て
ローマ帝国初期の解放奴隷の男女のレリーフ(紀元前30〜前15年、英国ロンドンの大英博物館収蔵)。新たな証拠は、古代ローマ人の障害者に対する姿勢が、従来考えられていたほど画一的ではなかったことを示唆している。(LANMAS, ALAMY STOCK PHOTO) 古代ギリシャ人やローマ人は強さや権力を重んじるあまり、障害のある赤ちゃんや成人のことは見捨てていたという通説がある。紀元1世紀の哲学者で伝記作家のプルタルコスは、スパルタ人は新生児を長老会に連れて行き、そこで障害があると判定された子どもたちは、屋外に放置されて死を待つことになったと記している。 古代人は障害者に対して残酷だったという認識は、以来2000年近くの間、人々の間に広く浸透することになった。イタリア、ローマ大学の研究員であるマルティナ・ガット氏は、この俗説は深刻な影響を及ぼしたと言う。後世の社会が、「古代ギリシャ人もこうして
福島国際研究教育機構・土壌ホメオスタシス研究ユニットリーダー、藤井一至さんは、土の研究者であり、多くの一般書でも知られる。『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』(講談社)は、第41回講談社科学出版賞、第79回毎日出版文化賞(自然科学部門)をダブル受賞した。 前回紹介したように、藤井さんの語りに耳を傾けると、太古から未来まで、足元から宇宙までが、土という媒介を経て一つながりになっていると感じられてやまない。地球の歴史の中で岩石圏と生命圏をめぐるビッグヒストリーとして理解できる土の進化、今、わたしたち人類が抱えている食糧問題、さらには近未来、宇宙で農業をするかもしれない人々のために宇宙で土を作る試みに至るまで、すべて藤井さんの守備範囲だといえばその凄みを感じ取ってもらえるだろうか。 それでは、藤井さんがどのような道筋で、こういった研究の道に入ったのか、そして、どのような研究を行ってきたの
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