2026-02-23

26歳、女。ちゃんとしている。遅刻はしないし、締め切りも守るし、約束も忘れない。飲み会幹事も、旅行のしおり作りも、なんとなく私の役になっている。「あの子がいれば大丈夫」という一言の中に、どれだけの「考えるのをサボっていい」が含まれいるか、言われた本人だけがよく知っている。

26歳、女。会社では「助かる〜」「しっかりしてる」と言われる。資料の抜けを見つけるのも、会議段取りを整えるのも、締め切り前日に静かに穴を埋めるのも、だいたい私だ。「そんなに頑張らなくていいのに」と言う人ほど、自分では最後までやり切った経験が少なかったりする。「頑張らなくていいよ」の裏に、「でも何かあったらちゃんとしてるほうが被るんでしょ?」という現実が透けて見えるから、私はあまり素直にうなずけない。

26歳、女。「私がやったほうが早いし、ちゃんと終わる」と思っている自分がいる。その自覚は、気持ちのいいプライドと、どうしようもない疲労をいっしょに連れてくる。任せて失敗されてイライラするくらいなら、自分でやったほうがましだ、と何度も思ってきた。そのたびに、「また私か」と心の中でつぶやきながら、自分自分の首を締めている感覚がある。私が段取りを覚えたぶん、誰かは永遠に覚えないままでいられる。

26歳、女。デートでも、似たようなことが起きる。彼が一生懸命考えてくれたらしいプランが、細かいところでちょこちょこ噛み合わない。待ち合わせ時間と移動時間計算が甘くて、予約の時間微妙に間に合わなさそうだったり、レストラン映画館位置関係がチグハグだったり。そんなとき、私は「大丈夫だよ、こっちの出口から出たほうが早いよ」とか「この店も良さそうだよ」とか、なにげない一言ルート修正する。彼は、自分プランが半分くらい私の調整に支えられていることに気づいていない。「今日プラン、なかなか良くなかった?」と満足そうに言う彼を見て、私は「うん、良かったね」と笑う。私が差し込んだ小さな修正は、また一つ、「ちゃんとしてる私」の棚に静かにしまわれていく。

26歳、女。ちゃんとしている自分に、ちゃん文句も言っている。「そこまでやらなくてよかった」「それ引き受けたらまた同じだよ」と、帰り道のエスカレーター自分会議が始まる。次は断ろう、次は見て見ぬふりをしよう、と決めるのに、いざその場になると「しょうがないな」と笑ってしまう。私の「しょうがないな」は、誰かの「助かった〜」とセットで機能している。ちゃん反省して、ちゃんと同じことを繰り返している。私の「ちゃんと」は、もはや習慣ではなく、半分くらい職業病だ。

26歳、女。たまに、少しだけ力を抜く。既読をすぐ返さない、誘いを即答しない、飲み会幹事を「今回は他の人に任せようよ」と提案する。そうすると、「どうしたの?」「珍しいね」と言われる。「らしくない」とまで言われることもある。あなた勝手に決めた「らしさ」のために、私がどれだけ自分を締め上げてきたかについては、考えたことがあるだろうか。らしくないと言われるたび、「そこまで私のこと知ってるつもり?」と、少しだけ笑ってしまう。

26歳、女。恋愛の場面でも、「ちゃんとしてるほう」に自然と回される。翌日の予定を考えるのも、避けて通れない話題を先に口にするのも、だいたい私だ。場の空気が変な方向に行きそうになったら、冗談で戻す。曖昧な態度が続きそうになったら、「どうしたいの?」と聞く側に回る。そのたびに、「こういうの、たまには誰かにやってもらいたいな」と思いつつ、自分が黙っていると何も決まらない未来も見えてしまう。結局、私が「ちゃんと」言葉にすることで、物事は前に進む。

26歳、女。ちゃんとしていることに疲れている。ちゃんとしている自分をやめられない自分にも、疲れている。それでも、「何も考えてこなかった人」と同じ場所まで自分を落とすことは、プライドが許さない。ここまで積み上げてきた「ちゃんと」をゼロにするのは、あまりももったいない。だから私は、この位置に立ったまま、「ここまで来るのも、それなりに大変だったんだよ」という事実だけは、ちゃんと覚えておいてほしいと思っている。

26歳、女。私は今日ちゃんとしている。誰かにとって都合のいい「ちゃんと」かもしれないけれど、その都合のよさを作るために、どれだけ自分をすり減らしてきたかについては、私だけがよく知っている。もしあなたが、誰かの「ちゃんとしてる」に何度も助けられてきた側なら、次に「助かる〜」と言うとき、一瞬だけでいいから思い出してほしい。そこにはたぶん、「26歳、女。」みたいな誰かがいて、あなたの見えないところで、今日ちゃんと疲れている。

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