経済縮小政策の効果の一試算例
経済成長主義の過ちに気付いて、人類自らの意思で、経済を縮小していく場合には、しっかりと文明が生き残る可能性も高いでしょう。
・・・その経済縮小の試算をしてみましょう・・・・
環境負荷を 経済規模=GDP にほぼ比例すると考えて試算してみます。
例えば、地球の環境再生回復能力を年間 a
現在の地球に対する環境負荷を年間 2a とします。
つまり、現在の地球の環境負荷は、地球の再生能力の2倍と考える訳です。(もっと詳しくやるのなら、環境負荷の部分も再生可能な部分と不可能な部分があるから区別するほうが良いでしょう。・・しかし、複雑にしても焦点がぼやけますので、今回はこの単純な仮定で押し通します。
例えば、現在は、差し引き、年間 2a - a = a だけ環境が悪くなっていくと考えるのです。(・・この差し引きが持続可能な限界を超えた・・と言われる部分です。)
環境負荷が100aになったらゲームオーバー、つまり、地球環境が再生不可能になり、ガイア地球が死んでしまう・・即ち地球上の人類を含む生き物が死滅してしまうと考えましょう。もしくはそこまででなくとも、人類が生存出来ない環境になってしまうと考えてもいいかと思います。地球環境崩壊トリガーとでも呼びましょう。つまり、地球環境崩壊トリガーとは、この値まで環境負荷のストックが溜まれば、カタストロフィーが始まり、崩壊が止められなくなってくる値とでも定義しましょう。(実際は、もう、100aなんて残ってないかも知れません。)
経済成長率を年3%として計算してみます。(方程式を立てても解けない方程式なので、数値を代入して調べました。 )
38年後の環境負荷は、6.15aで、現在の2a のほぼ3倍にもなります。これが指数関数の恐ろしいところです。
38年後までの環境負荷の合計は138.3aで、回復する分は38aですから、差し引き100aを超えてゲームオーバーになります。つまり38年で人類は絶滅と言う事です。
次に 、経済縮小の合意に達し、経済縮小政策を始めると仮定致します。
これから年3パーセントで経済を縮小させていくと考えます。
すると、23年後の一年間の環境負荷は、0.99aで、地球の再生回復能力aを下回り、これ以降環境は回復していく事になります。・・つまり、ここで人類は持続可能な経済レベルまで落とすのに成功した・・・と言える事になるでしょう。・・
この23年後までの環境負荷の合計は、33.57a で、回復する分の23aを引くと、およそ10aとなります。つまり現在の地球の残された余裕の10%程度までしか環境を荒らさずに、それ以降環境は回復していくと言う事です。・・でも、年間 3%縮小しても、現在の年間の10倍の環境破壊まで達すると考えると、それもなかなか大変です・・他の条件は変えずに地球環境崩壊トリガーだけを 10a 以下にすると、23年以内に地球環境が崩壊し、人類が生存出来ない環境になってしまうと言う事です。・・その可能性も小さくないと考えます。
さて、さらに計算を続けると、54年後の環境負荷は、0.19a で現在の5分の1くらいになります。
54年後までの環境負荷の合計が、53.79a で、それまでの環境回復54aとほぼ同じくなります。
これは、54年後にやっと現在の環境破壊レベルまで回復すると言う事です。 ・・経済縮小しても、道のりは遠いと言う事でしょう。
まとめますと、この条件の試算では、年間3パーセントずつ経済縮小して行くと、23年までは環境負荷は増えて行き、10a になります。それから環境は回復をはじめ、54年後に現在のレベルまで回復し、それ以降もっと環境はよくなっていく・・・と言う事です。
以上の簡単な試算でも分かるように、成長率が+3% と -3%では、雲泥の差が生じますね。
因みに年3%の増加で環境負荷が増える場合、環境負荷と回復の差し引きの値が環境トリガー 100a を超える38年後の1年間の環境負荷はおよそ6aでしたが
逆に、年3%で経済縮小する場合、38年後は、年間の環境負荷はおよそ0.6aになり、年3%の増加の場合と比べて、10分の1です。環境負荷と回復の差し引きは、8aほどです。地球環境崩壊トリガーの8%ほどです。十分に余裕がある事になります。
早急に経済成長を止めて、経済縮小を始めれば、文明崩壊を免れる可能性があると言う事です。・・若干希望の持てる試算結果になりました。
勿論、あくまでこれは一つの試算例です。成長率がマイナスになると崩壊までの時間が長くなり、地球環境崩壊トリガーに至らずに持続可能な社会を築く事が可能だと言う事で、その希望もあると言う試算例です。勿論要因はもっと沢山有り複雑でしょう。単純化し過ぎましたが、年3%の経済成長と経済縮小では、これほど大きな違いがあると言う事です。
ここで論じている事は、世界中の大部分の経済人や経済学者が言うように、経済成長すれば、社会は幸福になる・・・と言うのとはまるっきり正反対です。経済成長は破滅への道であり、経済を縮小して行けば、持続可能な社会にランディング出来る可能性があると言う試算例です。
用いた仮定や数値がかなりアバウトで、定量的な事は信頼出来る筈も御座いませんが、(・・でも信頼出来なそうな値ではないように感じます・・)定性的な本質的な事は結構説明出来ていると思います。
これ以上のシミュレーションを色々なパラメータを用いて計算する事もそれはそれで意味はあるでしょうけれど、基本的な事はこれでも十分感じ取れるでしょう。
一刻も早く 経済縮小政策=環境負荷縮小政策 に同意して、経済縮小を始めれば、崩壊を免れる事が出来る可能性が高まるのです。
経済発展して、環境負荷を地球にかけている場合ではないのです。
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