雑草の言葉

経済縮小政策の効果の一試算例

2010/05/25
Sustainability 12
有限の地球で、無限の経済成長を続ける事は無理である事は当然の事です。現在、人口も経済レベル(GNP)も十分に膨らみ過ぎて、近い将来、経済は望むと望まざるとに関わらず、縮小せざるを得なくなるでしょう。経済成長をしようと対策を練って、あがきながら制御出来ずに縮小していく場合には、大混乱が起こるでしょう。それこそ文明崩壊レベルでしょう。このまま自動的に崩壊が始まるまで成長路線を進む事が一番愚かな選択肢ですが、現在の世界はその最も愚かな選択肢を選んでいます・・いつになったら気付くのでしょう?。
 経済成長主義の過ちに気付いて、人類自らの意思で、経済を縮小していく場合には、しっかりと文明が生き残る可能性も高いでしょう。

・・・その経済縮小の試算をしてみましょう・・・・
 環境負荷を 経済規模=GDP にほぼ比例すると考えて試算してみます。

 例えば、地球の環境再生回復能力を年間 a
現在の地球に対する環境負荷を年間 2a とします。
つまり、現在の地球の環境負荷は、地球の再生能力の2倍と考える訳です。(もっと詳しくやるのなら、環境負荷の部分も再生可能な部分と不可能な部分があるから区別するほうが良いでしょう。・・しかし、複雑にしても焦点がぼやけますので、今回はこの単純な仮定で押し通します。

例えば、現在は、差し引き、年間  2a - a = a  だけ環境が悪くなっていくと考えるのです。(・・この差し引きが持続可能な限界を超えた・・と言われる部分です。)

環境負荷が100aになったらゲームオーバー、つまり、地球環境が再生不可能になり、ガイア地球が死んでしまう・・即ち地球上の人類を含む生き物が死滅してしまうと考えましょう。もしくはそこまででなくとも、人類が生存出来ない環境になってしまうと考えてもいいかと思います。地球環境崩壊トリガーとでも呼びましょう。つまり、地球環境崩壊トリガーとは、この値まで環境負荷のストックが溜まれば、カタストロフィーが始まり、崩壊が止められなくなってくる値とでも定義しましょう。(実際は、もう、100aなんて残ってないかも知れません。)


 経済成長率を年3%として計算してみます。(方程式を立てても解けない方程式なので、数値を代入して調べました。 )
 38年後の環境負荷は、6.15aで、現在の2a のほぼ3倍にもなります。これが指数関数の恐ろしいところです。
 38年後までの環境負荷の合計は138.3aで、回復する分は38aですから、差し引き100aを超えてゲームオーバーになります。つまり38年で人類は絶滅と言う事です。



 次に 、経済縮小の合意に達し、経済縮小政策を始めると仮定致します。
 これから年3パーセントで経済を縮小させていくと考えます。
すると、23年後の一年間の環境負荷は、0.99aで、地球の再生回復能力aを下回り、これ以降環境は回復していく事になります。・・つまり、ここで人類は持続可能な経済レベルまで落とすのに成功した・・・と言える事になるでしょう。・・
 この23年後までの環境負荷の合計は、33.57a で、回復する分の23aを引くと、およそ10aとなります。つまり現在の地球の残された余裕の10%程度までしか環境を荒らさずに、それ以降環境は回復していくと言う事です。・・でも、年間 3%縮小しても、現在の年間の10倍の環境破壊まで達すると考えると、それもなかなか大変です・・他の条件は変えずに地球環境崩壊トリガーだけを 10a 以下にすると、23年以内に地球環境が崩壊し、人類が生存出来ない環境になってしまうと言う事です。・・その可能性も小さくないと考えます。
 さて、さらに計算を続けると、54年後の環境負荷は、0.19a で現在の5分の1くらいになります。
54年後までの環境負荷の合計が、53.79a で、それまでの環境回復54aとほぼ同じくなります。
これは、54年後にやっと現在の環境破壊レベルまで回復すると言う事です。 ・・経済縮小しても、道のりは遠いと言う事でしょう。
 まとめますと、この条件の試算では、年間3パーセントずつ経済縮小して行くと、23年までは環境負荷は増えて行き、10a になります。それから環境は回復をはじめ、54年後に現在のレベルまで回復し、それ以降もっと環境はよくなっていく・・・と言う事です。

 以上の簡単な試算でも分かるように、成長率が+3% と -3%では、雲泥の差が生じますね。
因みに年3%の増加で環境負荷が増える場合、環境負荷と回復の差し引きの値が環境トリガー 100a を超える38年後の1年間の環境負荷はおよそ6aでしたが
 逆に、年3%で経済縮小する場合、38年後は、年間の環境負荷はおよそ0.6aになり、年3%の増加の場合と比べて、10分の1です。環境負荷と回復の差し引きは、8aほどです。地球環境崩壊トリガーの8%ほどです。十分に余裕がある事になります。

 早急に経済成長を止めて、経済縮小を始めれば、文明崩壊を免れる可能性があると言う事です。・・若干希望の持てる試算結果になりました。

勿論、あくまでこれは一つの試算例です。成長率がマイナスになると崩壊までの時間が長くなり、地球環境崩壊トリガーに至らずに持続可能な社会を築く事が可能だと言う事で、その希望もあると言う試算例です。勿論要因はもっと沢山有り複雑でしょう。単純化し過ぎましたが、年3%の経済成長と経済縮小では、これほど大きな違いがあると言う事です。
 ここで論じている事は、世界中の大部分の経済人や経済学者が言うように、経済成長すれば、社会は幸福になる・・・と言うのとはまるっきり正反対です。経済成長は破滅への道であり、経済を縮小して行けば、持続可能な社会にランディング出来る可能性があると言う試算例です。

 用いた仮定や数値がかなりアバウトで、定量的な事は信頼出来る筈も御座いませんが、(・・でも信頼出来なそうな値ではないように感じます・・)定性的な本質的な事は結構説明出来ていると思います。

これ以上のシミュレーションを色々なパラメータを用いて計算する事もそれはそれで意味はあるでしょうけれど、基本的な事はこれでも十分感じ取れるでしょう。
 一刻も早く  経済縮小政策=環境負荷縮小政策  に同意して、経済縮小を始めれば、崩壊を免れる事が出来る可能性が高まるのです。

経済発展して、環境負荷を地球にかけている場合ではないのです。
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Comments 12

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仙田

はじめまして!

自然の摂理は最強と最近思いました。
自然の摂理に逆らって持続できるものはないかなと。。。
おからさんのブログから来ました。
新潟で「降りてゆく生き方」の上映をしている者です。
いつか観てくださいね。
新潟でもそのうちあると思います。

2010/05/25 (Tue) 03:36

雑草Z

    仙田さん

「降りてゆく生き方」

と言う映画は多少興味がありましたし、新潟なら近くていいかとも思いました。あなたの自然の摂理に対する拘りも伝わりました。

 ただ、おからさんは、わざわざ昔の関連記事を探してコメントを下さいましたが、あなたのようにあまり関連のない(少し関連ありますが・・)最新記事に、「はじめまして!」と書かれて記事の内容とは別の宣伝文だけ書かれてもね・・。機会があれば・・とも思いましたが、ちょっとその気も失せました。
 

2010/05/25 (Tue) 22:04

guyver1092

森林面積

 過去に森林の消失に焦点をあててコメントしたことがありますが、あまり変わらない結果ですね。指数関数的な経済成長を有限の地球上ですると、何を焦点にして考えても大して違わない結果になるのでしょうね。
 対策は、江戸時代と同じく、倹約(マイナス成長)と、更新世資源の回復といったところでしょうね。現代なら何が最も必要かということを理論的に数値化できるので、江戸時代よりも環境を早く回復させることは能力的にはあるでしょうが、実行に移すという点では、あまり期待できないですね。
 理由は相変わらず選挙となると、候補の口から出る言葉は、経済成長一本槍で、環境を主張するものは泡沫候補にもいないということです。
 日本の定員削減が始まったら、こういう人々から削減対象にしてもらいたいと思います。

2010/05/25 (Tue) 23:02

仙田

関連のないコメント

コメントは、その記事に対してのものですものね。
伝えたいメッセージを関連の少ない記事に対してしてしまって失礼いたしました。

2010/05/26 (Wed) 19:15

雑草Z

『降りてゆく』の意味

    仙田さん

 そうですね。ここのコメント欄は記事に関してのコメント及び、そのお返事の欄です。
 記事に関してのコメントの後に、ついでに別の事を書くのなら有りかも知れませんが、他の宣伝等のみのコメントなどはお断り致します。

 この地球上でこの人口でこの経済規模ならば、これからは、望む望まざるに関らず、殆どの人が、降りてゆく生き方をしなければならないでしょうね。
そう言う意味でここのサイトの主題と「降りてゆく生き方」は通じるものがありますね。
 まあ映画を見ていないので何とも言えませんが、『降りてゆく』の意味が、脱経済成長などを意味すると考えた場合です。・・・

2010/05/26 (Wed) 21:16

雑草Z

>倹約(マイナス成長)と、更新世資源の回復

    guyver1092さん

>指数関数的な経済成長を有限の地球上ですると、何を焦点にして考えても大して違わない結果になる

その通りですね。単純な等比数列として考えても、スーパーコンピューターを使った二酸化炭素温暖化説の脅威よりも、ずっと遥かに脅威です。

>対策は、江戸時代と同じく、倹約(マイナス成長)と、更新世資源の回復といったところ

そうですね。それが大切なのに、全く逆効果の事しかしていない現代社会の各国政府です。

>候補の口から出る言葉は、経済成長一本槍で、環境を主張するものは泡沫候補にもいない

・・・いや、泡沫候補ではそろそろ出てきてますよ・・・地方自治体レベルでは・・・
でもまあ、今になっても
 経済成長戦略なんてばかり言っている人類は本当に愚かな存在なのでしょうか?? 

2010/05/26 (Wed) 21:27

guyver1092

泡沫候補

 地方のレベルでは泡沫候補の中にいたのですか。私の近くでは、そのような主張を聞いたことはありません。
 私の近くは遅れているようですね。まあ日本の平均かもしれませんが。

2010/05/27 (Thu) 19:58

雑草Z

当選者もいますよ。

    guyver1092さん

 私の近くの選挙区にもいませんが、政治参加を目指している脱成長を掲げる「緑の党」系の団体が日本にも存在します。・・泡沫候補・・と呼ぶのは失礼かと思います。
そして、その中から何人かが当選して地方議会の議員をしていますよ。
 地方選挙だけでなく、前回の国の参議院選挙にも1人立候補して、初当選致しました。・・・しかし彼は当選するとすぐに、その団体を脱退してしまいましたので、彼が「緑の党」系の団体に支援されて参議院議員になった事を知っている人は少ないようです。

2010/05/27 (Thu) 22:11

BEM

頭がゲームオーバーです。

今回の試算は私には難しくて思考停止してしまいました(笑)

このままの経済成長が続いて人類が生存できない環境となる・・・。
現実的に考えると人間ってかなりしぶといものだから、どれだけ過酷な環境になったとしても数百年、数千年単位で絶滅することはないような気がします。
絶滅して欲しいのは現在の経済至上主義なんて人達なんですが。

ノギャルだとか、ケバケバな女の子達が農作業を体験しているとかありますが、妻に言わすと男以上に女は逞しいとか。
開拓の村に行った時、養蚕の様子を展示しているものを見ていた若い女性が「絶対ムリー!」と言って出てってしまいました。

数字だけを動かして儲けようとしている人間はどれだけの変化に耐えられるでしょうか。庶民は草を食べてでも結構生き抜くかもしれませんよ♪

2010/05/28 (Fri) 14:32

guyver1092

失礼しました

 そうですね。失礼なことをしてしまいました。
 地方議員で当選している人もいるのですか! 国政に出て当選した人はなぜすぐにやめてしまったのでしょうか。
 絶対数ではまだまだ足りないですが、この傾向が進めばよいですね。

2010/05/28 (Fri) 21:01

雑草Z

ゲームオーバー

    BEMさん


>現実的に考えると人間ってかなりしぶといものだから、どれだけ過酷な環境になったとしても数百年、数千年単位で絶滅することはないような気がします。

これだけドーピングされた現代文明は高々数十年ですから、

>数千年単位で絶滅することはないような気がします。

と言う事は現代人の根拠の薄いオプティミズムでしょう。100年前と今とを比べても全然違う状態です。100年前に経済も人口も成長が止まっていれば、少なくとも数千年は持続可能な社会でしたでしょう。
しかし、現代は条件がかなり違います。これから1000年も現代文明が持続する事は不可能でしょう。

 ただ、「絶滅」と言う表現は違うかもしれませんね。「文明崩壊」と言った方がより適切で広い意味になるでしょう。
 記事の試算は定量的には不確実なものですが、それでも、成長戦略を21世紀の間続けていく事は不可能で、成長戦略を続けて行けば今世紀中に必ず制御不可能な文明崩壊がやってきて、これまで成長を続けて来た、人口、経済、工業・・・といったものが急激なスパイラルで崩壊して、何分の一かのレベル(一桁以上縮小のレベル)で崩壊するでしょう。

>庶民は草を食べてでも結構生き抜くかもしれませんよ

現在の人口過多で環境破壊により自然が痛めつけられて、食料不足になれば、食べられる草も一気に減少するでしょう。そう甘くはありません。
 環境をこんなにずたずたにした張本人達よりも、慎ましく生きていた庶民が最初に環境悪化の犠牲になる可能性もあるでしょう。

2010/05/29 (Sat) 00:03

雑草Z

経済優先で無い政治家

    guyver1092さん

>地方議員で当選している人もいるのですか!

はい、3年ほど前に複数名いました。実際にお会いして話した事もあります。その団体の代表者も関西の県議さんです。
現在は日本で数十名・・・百名近くいるかも知れませんよ。

・・・新年の記事にかきましたが、脱成長を主張する人々は、議員を含め、最近(超)指数関数的に増えているようです。

 例えば滋賀県知事の嘉田 由紀子さんも、経済よりも環境を優先する知事さんですね。


>国政に出て当選した人はなぜすぐにやめてしまったのでしょうか

脱成長の団体には、議員になる前から顔を出して、勉強していたようですが、ちょっと考えが及ばなかったのかもしれません。当選して間もなく袂を分かったようです。無所属で当選して、脱成長を主張していたのでは孤立すると思ったのかもしれませんが、将来の読みが甘かったのではないかと思います。

 遠くない将来に経済成長を主張する事は愚かであると言われる時代となるでしょう。どんなに遅くとも今世紀中にはそうなるでしょう。

 

2010/05/29 (Sat) 00:30
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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