yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『船弁慶』in 「観井会春季大会」@湊川神社神能殿4月16日

能役者、吉井基晴師のお弟子さんたちの発表会。こういう発表会は初めてで、あまり期待せずに出かけた(すみません)。能の色々な演目、仕舞がみられるから、能初心者の私が「勉強する」にはうってつけと考えたこともある。ところがこの『船弁慶』はプロの能役者の方々の舞台だった。折良く全部見ることができた。

以下にこの日の演者をアップしておく。

• 子方(源義経)吉井晟朝
• ワキ(武蔵坊弁慶) 福王知登    
• ワキツレ(義経従者) 喜多雅人
• アイ(大物浦の漁師) 善竹忠重
• 前シテ(静御前) 船井佳子
• 後シテ(平知盛) 船井佳子 

 大鼓  山本哲也
 小鼓  成田逹志
 笛   野口亮
 太鼓  中田弘美

シテの船井さんのみがプロ役者ではなく後はすべてプロフェッショナルな能役者さんたち。壮観。そして圧巻!ワキの福王さんとワキツレの喜多さん、大鼓の山本さんもはなんども見ている。そういえば昨年10月に芸文センターで観た「創作能『船弁慶』」にも福王さん、中田さんは出ておられた。記事にしているので、リンクしておく。この舞台に吉井基晴さんも地謡で出ておられたのに、今気づいた。

以下、「the 能.com」からの『船弁慶』の「あらすじ」と「みどころ」。

<あらすじ>
平家追討に功績をあげた源義経でしたが、頼朝に疑惑を持たれ、鎌倉方から追われる身となります。義経は、弁慶や忠実な従者とともに西国へ逃れようと、摂津の国大物の浦へ到着します。義経の愛妾、静(しずか)も一行に伴って同道していましたが、女の身で困難な道のりをこれ以上進むことは難しく、弁慶の進言もあって、都に戻ることになりました。別れの宴の席で、静は舞を舞い、義経の未来を祈り、再会を願いながら、涙にくれて義経を見送ります。
静との別れを惜しみ、出発をためらう義経に、弁慶は強引に船出を命じます。すると、船が海上に出るや否や、突然暴風に見舞われ、波の上に、壇ノ浦で滅亡した平家一門の亡霊が姿を現しました。なかでも総大将であった平知盛(とももり)の怨霊は、是が非でも義経を海底に沈めようと、薙刀を振りかざして襲いかかります。弁慶は、数珠をもみ、必死に五大尊明王に祈祷します。その祈りの力によって、明け方に怨霊は調伏されて彼方の沖に消え、白波ばかりが残りました。

<みどころ>
誰もが知る義経や弁慶、静御前が登場するわかりやすい能で、弁慶を中心に物語はテンポよく進みます。
この曲の前後のシテは、美しい白拍子と恐ろしい怨霊という、まったく異なった役柄となっています。優美さと勇壮さの対照で織りなされ、前場には優美な舞が、後場では薙刀を振るう荒々しい舞働が用意されており、謡い・囃子の強弱、緩急も全く異なったものとなります。変化に富む大変劇的な曲です。
また、舞台が大物の浦の船宿から大海原へ展開していく様子は、作り物の舟だけで見せていきます。ここは、アイの船頭の腕の見せ所で、船をこぎながらのワキとのやりとりや嵐が始まってからの棹さばきなど、本当に荒れ狂う海が見えるかのような所作が見られます。

趣向として面白いのは、前シテが静御前なのに、後シテが知盛の亡霊になるところ。演者としての力量が問われるけど、船井さんは女性のしなやかさを生かした舞がとても良かった。またセリフも静と知盛との違いもしっかりと謡い分けていた。とくに知盛を演じる際、薙刀を振り回すのだけど、それがとても優雅だった。雄壮ではないところがたおやかな前シテの静と重なって、男性が演じるのとは違った魅力になっていた。

またアイの吉井基晴さんの作り物の船を操る棹さばきが見事だった。知盛の亡霊によって荒れる海。その大物浦の荒れ狂う波が見えるかのような所作がリアルだった。

感心したのが(おそらく吉井師のご子息であろう)子方の吉井晟朝君。非常にしっかりとした足さばきに台詞回しに未来の「大物」を感じた。

大鼓の山本さんは先日「篠山春日能」で拝見(拝聴?)したばかり。あの力強い大鼓を打つ音と地の底から滲み出るような囃し聲が圧巻。小鼓方の成田逹志さん、笛の野口亮さん、そして太鼓の中田弘美さんたちプロの演奏者の合奏によって紡ぎ出される音の素晴らしさに酔いしれた。