yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

「歌舞伎俳優共演・舞踊づくし」NHK eテレ「にっぽんの芸能」

昼食時、何気なくつけたテレビに見入ってしまった。見ることのできた幸運!eテレ再放送の「歌舞伎俳優共演・舞踊づくし」。

<概説>
宗家藤間流藤間会公演から歌舞伎俳優の共演による舞踊を放送する。坂田藤十郎ほかの出演で「三番叟」。中村時蔵、中村又五郎ほかの出演で「金谷丹前・春駒」。石田ひかり。

<番組内容>
宗家藤間流藤間会公演から歌舞伎俳優の共演による舞踊を放送する。最初は文化勲章受章者の坂田藤十郎を筆頭に中村鴈治郎、中村扇雀、中村壱太郎、中村虎之介という親子孫三代が顔をそろえた「三番叟」。続いて藤間流の名執である6人が出演する「金谷丹前・春駒」。藤間勘三郎(中村時蔵)、藤間●(中村梅枝)、藤間勘蔵(中村又五郎)、藤間勘助(中村歌昇)、藤間萬(中村萬太郎)、藤間勘暁(中村種之助)の出演。石田ひかり。

以下の三舞踊があがっていた。

「三番叟」
坂田藤十郎
中村翫雀
中村扇雀
中村壱太郎 (吾妻流家元、吾妻徳陽)
中村虎之介

「三番叟」は、全員が揃ったところでちょっと踊り、そのあとすぐ引っ込んでしまった壱太郎が群を抜いてよかった。藤間流の会で登場する歌舞伎役者のほとんどが藤間流の人たち。彼はお祖母様が舞踊の名手だった吾妻徳穂さん(吾妻流宗家)。私は実際には拝見していないけど、彼女の自伝を読んだことがある。フランス人とのハーフだった十五世羽左衛門の娘と言われている。壮絶な生き様を通しつつも、実生活でも舞台でも美しさを失わない方だった。進取の気性に富んだ人。息子に中村富十郎。孫娘が吾妻徳穂を継いだのだけど、彼女が壱太郎のお母さま。踊りが上手いのは曽祖母、母譲り。そういえば、大叔父の富十郎も踊りの名手だった。ちょっと出てきただけで、お父上と叔父さんを凌ぐほどの存在感だった。確認できてよかった!

「金谷丹前」

中村勘三郎(時蔵)
中村朙(梅枝)

人形を模した時蔵の美しいこと。人形が現実世界に出てきて恋に悩む娘をからかう趣向。人形と娘との二人舞。娘の白昼夢を描いている?だからこの舞台空間そのものがファンタジーの世界でもある。娘役の梅枝も美しい。可憐であどけない。年端のゆかない娘の純真さが匂い立つ。でもまだまだ、虚構界からこちらに飛び出してきた人形の美しさにはかなわない。娘はあくまでも現実に生きている普通の人だから、この対比を際立たせるのは難しいと思われるけど、時蔵と梅枝の息のあった連舞が、この対比をこれ以上ないほど明確に示していた。

「春駒」
藤間勘蔵(中村又五郎) as 工藤祐経
藤間勘助(中村歌昇)as 曽我五郎
藤間勘暁(中村種之助)as 茶道珍斎
藤間萬(中村萬太郎)as 曽我十郎

こちらは一転。曽我兄弟の仇討ちを扱っているけど、明るい。滑稽感に満ちている。ここで素晴らしかったのが五郎役の歌昇。踊りのテンポ、間の取り方、完璧。表情も計算されていて、五郎になりきっている。2年前に浅草歌舞伎で見て以来目覚ましい成長を遂げられているのだと、しみじみ嬉しい。珍斎役を踊った弟の種之助の頑張りにも目を見張る。彼は平成19年の歌舞伎座での歌舞伎公演でも「當年祝春駒」中で同じ役で踊っているんですね。ウキウキと楽しげで、軽やかさがこの役にぴったり。二人のお父上の又五郎丈も二人のご子息の踊りをきちっと最後に締められていた。