yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

芝居『やくざ心中乱れ花』in 都若丸劇団@新開地劇場4月25日昼の部

若丸座長にしては珍しく、救いのない不条理劇だった。ヤクザ一家に寄宿した旅人、清二郎と一家の若い衆、鉄五郎との、親分の娘をめぐる血で血を洗う争いを描く。旅人を剛さん、娘の婚約者で、近い将来跡目を継ぐことになっている一家の若い衆を若丸さん、そして親分の娘をひかるさんという配役だった。

舞台が開いた当初は、若丸さんらしいどこかのんびりしたコミカルな空気だった。若丸さんは絶妙な間の取り方をするんですよね。天性のものなんでしょう。藤山寛美の舞台を観たことはないのだが、きっとこんな感じだったのでは。

そのコミカルなムードは一転、途中からは俄然悲劇の様相を呈してきた。一家のお嬢さん、つまり親分の娘が一家にやってきた旅の若い男に恋心を抱いたがため、嫉妬に狂った鉄五郎は彼に闇討ちをかける。止めを刺そうとしたところを、一家の代貸(キャプテン)の妹(ゆかり)に助けられる。

清二郎は代貸の妹宅で養生していたが、鉄五郎とお嬢さんの祝言があると聴き、手負いの身体で祝言の場に乗り込む。鉄五郎を詰問する清二郎。鉄五郎はシラを切るが、言い逃れられなくなると、開き直って自己正当化をする。この場面、実に興味深かった。こういう趣向、大衆演劇の芝居では初めてだった。ほぼ近代劇といえる。座長の演技力、もうただ脱帽。

代貸はなんとかその決着をつけようと、鉄五郎を刺す。手負い同士で闘わせようとするのだ。清二郎、鉄五郎の闘いは凄惨を極めたもので、最後に鉄五郎が清二郎を倒す。止めを刺そうとしたところを、代貸に止められる。その場には誰一人として彼に同情する者がいないことを見てとった鉄五郎。自身の腹に剣を突き刺して自害する。

「お嬢さん、あなたのかるはずみな行動が二人の惜しい男を殺してしまった」という代貸のことばに、泣き崩れる娘。なんと彼女は鉄五郎の死体に取りすがって泣くのだ。そして花嫁衣装の打ち掛けを彼にかけてやる。対する代貸は、
自らの紋付の羽織をぬぎ、それを清二郎にかけてやる。なんとも救いのない芝居だった。

これだけの込み入ったプロットと心理的葛藤を芝居として説得力のあるものにするには、優れた構成力が不可欠である。それをみごとに成功させた座長の力(頭脳と感性)にあらためて敬意を表したい。

舞踊ショーも圧巻。今回の新開地公演、すべてが一新されていた。洗練度のアップが目覚ましかった。照明は上からと下からのものが舞台上で立体交差。それをさまざまに使い分けながら、音楽と舞踊の合うように調整されていた。

個人舞踊が増えていた。それに合わせて座員さんひとりひとりの実力がパワーアップ、充実した舞踊が楽しめた!

印象的だった舞踊は中途の座長を中心とした群舞、「なみだぐさ」。新作だと思う。幻想的、どこか東洋的(ちょっと国籍不明)の凝った舞踊だった。

剛さんの「ワダツミの木」は支那服での舞踊。