yoshiepen’s journal

さまざまな領野が摩擦しあい、融合し、発展するこの今のこの革命的な波に身を任せ、純な目と心をもって、わくわくしながら毎日を生きていたいと願っています。

『二人の風来坊』in 都若丸劇団@明生座11月2日昼の部

とても席がとりづらいと聞いていた明生座公演。でも席はまだいくつも開いていて、意外でした。噂だけが、あるいは思い込みが先走ることってあるんですよね。初日も当日に席がとれたと、お隣に座った方がおっしゃっておられて、これにもびっくりしました。劇場に直接電話して席を確保するのが早道のようです。

噂といえば、「座長が15日に弁天座へゲスト」というのも流れているそうで、これはデマ。また恋川純さんが16日に明生座へゲストというのもデマだそうです。口上で若丸さんが、「弁天にゲストに出れるくらいなら、劇団公演でも乗れますよ。古い方はご存知でしょうが、そこはいろいろとありまして」とおっしゃっていました。あらためて、このトップ劇団がY演芸社にひどい扱いを受けていることに怒りを覚えました。旧態依然とした慣行に逆らえば干されるなんて、まるでヤクザの世界ですよね。例の島田某のアンダーグラウンドとの繋がりを思いました。そういう体質は大衆演劇にもあるのでしょうが、それを変えて行かない限り、大衆演劇の低迷に拍車がかかるのは間違いありません。まあ、その世界にズブズブの当事者が「変革しよう」なんて意識をもつことはないでしょうから、観客、ファンが若丸さんを応援して行くという形で、風穴を開けるしかないでしょう。

都若丸劇団を観たのは何回もないのですが、実力が文字通りトップであると同時に、それに応じた人気がものすごいのもよく分かりました。芝居をすれば松竹新喜劇級の充実度で、舞踊ショーでも演出、構成が一歩抜きん出ています。だから当然ですよね。

座長の知性が光っています。それと人柄の温かさも滲み出ています。それでいて芯が通っていて、曲がったことが嫌いという正義感の強さも窺えます。さわやかな方です。大衆演劇的泥臭さはみじんもありません。

都若丸劇団は座長も劇団も、ドロドロした体質の大衆演劇界では異質の光を放っています。まだご覧になったことのない方はぜひ劇場に足をお運びください。興行師のいじめで劇場から閉め出しを食らっているため、乗れる劇場は少ないのです。明生座は関西で乗れる数少ない劇場のひとつですから。

『二人の風来坊』はこの日誕生日だった英樹さん主演でした。

旅をかけていたやくざ者、銀次(英樹さん)が昔行き倒れたところを助けてくれた料亭の主人を訪ねてくる。しかしその主人はすでに亡く、料亭もつぶれてしまっていた。今は娘二人が(かおりさんと京香さん)茶店を開いている。妹娘は土地のやくざの親分(城太郎さん)にその知り合いの若旦那(剛さん)の妻になるようにいわれてる。嫌がる娘を借金のかたに無理矢理連れて行ことした親分とその一味。銀次が止めに入り、一味を退散させる。怒った親分は一家にわらじを脱いでいたやくざ者、半二(若丸さん)に加勢を頼む。で、銀次を待ち伏せした半二。しかし銀次と半二は兄弟分の契りをした仲だった。というわけで、二人は芝居を打って、親分から金を巻き上げた上に娘たちを救い出す。銀次と半二は二人で旅をかけることにする。

こう書いてくれば大衆演劇そのものの泥臭い芝居と思うでしょう。でもこれが完全に換骨奪胎されていたんですよね。あらすじを書いてみて、若丸さんが(おそらくはもともとあった話を)まったく演出を変えてやられたというのが推察できました。おなじみの(?)筋書をここまで変貌させることのできる演出力は並外れています。

親分の城太郎さんからお金をせしめる若丸さんの演技、また英樹さんとゆかりさん、ゆかりさんと城太郎さんのかけあいも、おかしくてずっと笑いっぱなしでした。その上、この芝居のハイライトは、なんといっても剛さんの元のお顔がまったくワカラないほどの極めつけメークでした。彼が舞台中央に立っているだけで、芝居がすべてそこに持って行かれていました。

英樹さんの誕生日ということで、ケーキも三つ上がりました。ファンの方たちもものすごい声援でした。以前のブログにも書いたのですが、ここの観客は品がいいのです。そしてとても温かい。ほのぼのとした雰囲気の中で観劇できるというのも、この劇団の魅力の一つなのに違いありません。