静電気学とは? わかりやすく解説

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静電気学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/18 22:10 UTC 版)

帯電したCDに引き寄せられるの切れ端

静電気学(せいでんきがく、または静電学Electrostatics)は静止またはゆっくり動く電荷による現象を扱う科学の一分野である。

古典古代より、琥珀のような物質をこすると軽い粒子を引き寄せることが知られていた。英語においては、ギリシャ語で琥珀をあらわす ήλεκτρον という単語が electricity(電気)の語源となった。静電現象の原因となっているのは、電荷が互いに働かせるである。この電荷による力はクーロンの法則によって記述される。静電的に誘起された力はやや弱いとみなされがちだが、電子陽子間に働く静電力(水素原子を作り出している)は、同粒子間に働く重力の1040倍もの強さがある。

静電現象には数多くの事例があり、パッケージからはがしたプラスチック包装紙が手に吸い付くという身近で単純なものから、穀物サイロがひとりでに爆発するという現象まである。さらに生産中に電子部品が破損したりと害になることもあれば、一方ではコピー機の原理に用いられていたりする。静電気学には物体の表面に他の物体の表面が接することにより、電荷が蓄積されるという現象が関わっている。荷電交換は2つの表面が接触し、離れるときにはいつでも起きているものの、表面のうちの少なくともどちらか一方が高い電気抵抗をもっていなければ通常その効果には気づかない。高い抵抗をもつ表面には電荷が長時間蓄えられ、その効果が観測されるためである。蓄えられた電荷は接地へとゆっくり減少してゆくか、放電によってすぐに中性化される。例えば静電気ショックの現象は、不導体の表面と接触することにより人体に蓄えられた電荷が、金属などに触れたときに一気に放電し、中性化する現象である。

基礎的な概念

クーロンの法則

静電気学の基本的な方程式は、点電荷の間に働く力を記述するクーロンの法則である。クーロンの法則によると2つの点電荷間に働く静電力はそれぞれの電荷の大きさの積に正比例し、電荷間の距離の2乗に反比例する。数式を用いてあらわすと

1832年にマイケル・ファラデーが電気の正体についての実験結果を公表する以前には、物理学者は静電気は他の充電とは何らかの点で異なるものだと考えていた。マイケル・ファラデーは磁石による誘導電流、電池によるボルタ電気(ボルタ電池による二種類の金属と電解液の反応で生じる直流電流)、そして静電気がどれも同じものであることを証明した。

静電気は通常、ある物質を他のものとこすり合わせることによって生じる。例えばプラスチックとウール、靴のかかととカーペットなどである。この帯電は片方の表面にある電子が他の表面へとひきつけられ、移動することによって生じる。

静電気の放電は、電子により負に帯電した物質が正に帯電した導体と触れたとき、またはその逆の場合に起きる。

静電気はゼログラフィー (en)、エアフィルター、自動車塗装などに広く用いられている。小さな電子部品などは、静電気によって故障しやすい。よって部品製造業者などでは帯電防止装置などを用い、静電気による故障を防いでいる。

静電気と化学工業

異なる素材をくっ付けて引き離すと帯電が起き、一方は正に帯電しもう一方は負に帯電する。カーペットの上を歩いた後に接地した物体に触れた時に受けるショックは、靴とカーペットの摩擦による体への過剰に蓄積した電荷の例である。体に蓄積した電荷は強い静電放電を生じさせる。静電気を感じる実験は楽しいが、一方で燃えやすい物質を扱う工業などでは静電気が爆発性の混合物に引火し、深刻な災害を引き起こすこともある。

同様の帯電現象がパイプラインを流れる電気伝導率の低い流体でも起こることがある。これを流動帯電と呼ぶ。電気伝導率の高い(50 ピコジーメンス毎メートル [pS/m] 以上)流体では電荷が分離するとすぐに再結合し、よって電荷生成は重要ではない。石油化学工業では、50 pS/mは流体から電荷を十分取り除くのに推奨される最低値とされている。

絶縁流体において重要な概念は停滞による緩和時間である。これはRC回路における時間定数 (τ) に類似している。絶縁物質では、物質の静的誘電率を電気伝導率で割った値が緩和時間となる。炭化水素流体では、18を電気伝導率で割った値と近似されることがある。よって電気伝導率が1 pS/cmの流体は約18秒の緩和時間をもつ。流体に蓄えられた過剰な電荷は緩和時間の4、5倍でほぼ完全に放出される。上記の炭化水素の例では90秒程度で放電が完了する。

電荷生成はより早い流体速度やより大きなパイプ直径の場合に増加し、特に20 cm以上のパイプでは著しく大きくなる。こういったシステムでの電荷生成を制御するには、流体の速度制限が最も有効である。イギリス規格の『BS PD CLC/TR 50404:2003 Code of Practice for Control of Undesirable Static Electricity』では速度制限を規定している。水分の含まれる流体では誘電率が著しく大きくなるため、水を含む炭化水素の制限速度の推奨値は1 m/sである。

接合と接地は電荷の蓄積を避ける一般的な手法である。10 pS/m以下の電気伝導率の流体では、結合と接地だけでは電荷放出には不十分であり、更に追加の静電気防止対策が必要となる。

適用規格

  1. BS PD CLC/TR 50404:2003 Code of Practice for Control of Undesirable Static Electricity
  2. NFPA 77 (2007) Recommended Practice on Static Electricity
  3. API RP 2003 (1998) Protection Against Ignitions Arising Out of Static, Lightning, and Stray Currents

静電誘導の商業への応用

静電誘導の原理は工業分野へと長年にわたり応用されている。応用は経済的な工業用静電塗装システムに始まり、自動車、自転車などのエナメル塗装・ポリウレタン塗装などにも用いられている。

関連項目

参考文献

  • Faraday, Michael (1839). Experimental Researches in Electricity. London: Royal Inst 
  • e-book - プロジェクト・グーテンベルク
  • Halliday, David; Robert Resnick; Kenneth S. Krane (1992). Physics. New York: John Wiley & Sons. ISBN 0-471-80457-6 
  • Griffiths, David J. (1999). Introduction to Electrodynamics. Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall. ISBN 0-13-805326-X 
  • Hermann A. Haus and James R. Melcher (1989). Electromagnetic Fields and Energy. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall. ISBN 0-13-249020-X 

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