作品概要・解説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 16:19 UTC 版)
本作の磁気テープに脳波パターンを記録し、他人へ転送するというアイディアは、ジェリー・アンダーソンがフィルム編集者として働いていた時代にまで遡る。そこで彼は目に見えないものをテープが記録しているのと同じように、電気信号で働いている脳も記録し、さらに他人の脳へ転送できると考えた。このことは9歳の少年でもジェームズ・ボンドのようになれるという考えかたに繋がった。 「ジョー90」という呼称は『宇宙船XL-5』の構想時にまで遡る。もともとライブ・アクションと人形劇の融合として計画がなされた際に、パイロットになることを夢見るアメリカ人少年に与えられたパイロット名が「ジョー90」であった。 本作も前作『キャプテン・スカーレット』と同様にスーパーマリオネーションで撮影された。しかし、次作のテレビシリーズ『ロンドン指令X』で実写と模型・人形セットを融合させた制作を行っているが、本作でも「幽霊教会の対決」等一部のエピソードで同様の方法がとられ、その流れを垣間見ることができる。 英米のテレビ界は、冷戦影響もあり、英国では1960年の『秘密命令』、翌年の『おしゃれ㊙探偵(英語版)』、その翌年の『セイント 天国野郎』などが、米国では1964年の『0011ナポレオン・ソロ』、1966年の『スパイ大作戦』などスパイ物が多く製作された時代であった。また映画界も1963年の『ドクター・ノオ』に始まる一連の007シリーズがヒットしていた。アンダーソン作品においてスパイ物は1965年の『サンダーバード』の頃から垣間見え、次作『キャプテン・スカーレット』でもその空気感は受け継がれた。その流れで本作は本格的にスパイ物として製作された最初の作品であり、次作『ロンドン指令X』や、そして『謎の円盤UFO』を経た『プロテクター電光石火』に繋がっていくこととなる。 また、子供向けのスパイドラマを作るにあたって、8シリーズが製作され海外でも放映された子供がMI5スパイとして活躍する作品『フリー・ウィーラーズ(英語版)』(1968-73)が参考にされた。そしてこれまでセンチュリー・21・テレヴィジョン・プロダクションズが得意としてきたサイエンス・フィクション(サイ・ファイ)ものと組み合わせた「スパイ・ファイ」ものとなった。 時代設定はこれまでのアンダーソン夫妻の作品よりも幾分過去の1998年または2013年とされる。また過去の作品と違いメカ等に重点を置いたものではなく、本作はシリアスさや軍隊的組織がないため、既存の作品と比較するとより家族的なものをもたらしている。実際、その方針はレギュラー・メカの少なさにも現れ、レギュラー・メカはデレク・メディングスのデザインしたマックレイン教授の車マックス・カーのみであった。その一方で、登場人物描写は、前作『キャプテン・スカーレット』では『スパイ大作戦』のような登場人物の性格描写を抑え、時にシリアスと呼ばれたことと異なり、本作では登場人物の性格描写を入れている点でよく現れている。脚本上ではマックレイン親子の養父―養子関係にたびたび重点が置かれ、さらにサム・ルーヴァーとシェーン・ウェストンの交わすユーモアに溢れた会話が前作との違いをより強調している。 また、場面転換演出が『スカーレット』に続いて採用されており、 映像の周りに色枠がつく 色枠が大きくなって映像が中央で小さくなる 映像が切り替わって大きくなって 色枠が消える というもの。 日本でのコミカライズを一峰大二が担当した点も『キャプテン・スカーレット』と同じである。
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