ヤオコー 川野社長/25年度7店計画、南関東の既存1店で大型リニューアル
2025年01月06日 11:00 / 経営
ヤオコーは、2026年3月期にヤオコーを7~8店舗出店し、南関東エリアの1店舗で大型リニューアルを実施する。2024年12月20日、川越市の本社で開催した年末記者会見で、川野澄人社長が明らかにした。都心から20~40km圏内のドーナツエリアを中心とした出店戦略を継続する。現時点での計画は、2025年上期に東京都で「(仮称)ヤオコー杉並桃井店」、千葉県で「(仮称)ヤオコー松戸古ヶ崎店」をオープンする予定。主な会見内容は以下の通り。
――来期の出店計画は
川野 新店は今期と同程度を計画している。旗艦店の新規オープンは予定していないが、南エリアで既存の超大型店を改装して、南のモデルを作りたい。南エリアと北エリアで人口構成・消費のパワーが異なる。南北の政策は引き続き深めたい。
南エリアの旗艦店は和光丸山店(埼玉県和光市)だが、来期は既存の店を改装して、和光丸山店をバージョンアップさせたような取り組みを行う。具体的な内容はこれから詰めていく。
※ヤオコーでは、さいたま市よりも北部の埼玉県、群馬県、茨城県、栃木県を北エリア、さいたま市よりも南を南エリアと定義している。今期は9月に北エリアの新旗艦店「久喜吉羽店」(埼玉県久喜市)をオープンした。
――来期の課題について
川野 高齢化・人口減少が続く。子育てを終え、食費にお金をかけても良いと考える団塊ジュニア世代を取り込むことに将来のチャンスがある。
ライフスタイルの変化にも対応していく必要がある。二極対応も引き続き大きなテーマだ。その中で賃上げも想定する。サービスの価格上昇、コストアップ、ゆるやかな物価上昇も進む。上がるコストが見えている中で、いかにトップライン・粗利を上げるのかが、あらゆるSMの課題。来期は改めて美味しさを磨くことに注力する。
――顧客の支持を集めた今期の取り組みは
川野 具体的にはトマトの鮮度管理、売り切りだ。野菜のカテゴリの中では、トマトカテゴリの売上が高い。ミニトマトも皮がパリパリで鮮度の良いものを毎日提供しようと、商品の絞り込みや価格設定の見直し、徹底的に売り切るということに取り組んだ。結果として鮮度も良くなり、当然、在庫も減ることで作業性も上がり、売上につながる良い循環ができた。
極めて当たり前のことだが、来期は商品・カテゴリごとに取り組んで、美味しさを改めてお客様にお伝えしたい。
――業界再編などSMのトレンドをどう捉えるか
川野 SMはまだ上位集中度の低い業界だが、これから優勝劣敗がはっきりしていく。M&Aされる会社あるいは廃業する企業もあるだろう。当たり前だが、その中で強みを持った企業が生き残る。あるいは強みがあるもの同士の競争になる。その1つはディスカウントで、価格が安くて怒るお客様はいない。集客面で強く、当社もエイビイ業態で低価格の魅力を提供する。
ヤオコーは、広域集客・薄利多売のモデルだが、店の近くに住むお客様に毎日の生活を楽しんでもらう、高い頻度でご来店頂いて冷蔵庫あるいはキッチン代わりに使って頂く存在であり続けたい。路線を変えずに磨いていく。その中でお客様に提供する価値としては、美味しさを第一にこだわっていきたい。
――DS業態(エイビイ、フーコット)の状況は
川野 エイビイはヤオコーよりも収益率が高い状況。プロセスセンターで集中加工するモデルができているが、センターのキャパシティを超えると新しいセンターを作らないといけない。利益率が階段状になる可能性がある。現在センターのキャパが上限に近づいており、今後広げていかなければならない。一時的には利益率が下がる可能性もあるが、出店を継続していれば恐れる話ではない。
エイビイの売上は振れ幅が大きいが、1店舗平均50億円。年に1店舗できれば4年かけて200億円ということになるので、それくらいのペースで伸びを見込んでいる。
フーコットについては、センターの稼働率を十分に上げるための売上が足りていない状況。いまの5店舗でなんとかトントンに近づいてきている。エイビイ並みの利益率・売上を目指しているが、北関東・埼玉の立地は非常に競争が激しい。
――人口減少と商圏シェアをどう捉えるか
川野 現在の1キロ商圏シェアが平均17%~18%。北のエリアの人口密度が薄いエリアで一番高い店が約40%程である一方、南の人口密度が高いエリアは10%位の店がたくさんある。南の方は人口が多く、商圏シェアを上げる余地がある。だが、北エリアは人口がそもそも少ないのに減っている。商圏シェアが高い店をどうするのかは当社としても大きな課題だ。
さまざまな分析をしてみてもトップライン、売上が低い店は収益的に厳しい。特に薄利多売の商売ではトップラインの高さが収益性に直結する。あくまで売上を伸ばしていく。1キロ商圏シェアが40%のような店の場合、今度は3キロ商圏シェアをしっかりと上げる施策にするのが1つの方法だと思っている。
――現在の採用状況は
川野 大卒の新卒採用にやや苦戦をしている。これは当社に限らずコロナで採用を抑えていた会社が一斉に採用強化し始めているからだ。高卒を含むと当初の計画人数の採用ができている。特段、来期の採用が少ないことにはならないと思う。
ブランディングでいうと、まだまだ足りてない、できてないところがある。同業他社の中でも当社選んで頂く割合は間違いなく上がってきていると思うが、食品に興味ある人では、食品メーカーに行きたい人が割合的には多い。業界・業種を超えて選ばれるようにしていきたいと思う。
単にマーケティング、プロモーションという訳ではなく、働きやすさが高まってヤオコーで働きたい人が増えてくる状況を作りたい。そのうちの1つが女性活躍。単純に女性比率を増やすのではなく、女性にも活躍して頂ける働きやすい職場にする。当然、男性にとっても働きやすくなる。会社全体の働きやすさを実現したい。
――都心部への再出店について
川野 都心に入れば入るほど賃料も高くなるし、物件自体も少ない。その中で一定の面積が取れる物件については、一定の売上が見込めると考えている。成城店(東京都調布市)を例に挙げると、売場面積が962m2でヤオコーの中では最小の部類だが、それでも通常店(約1650m2)と比べてそこまで見劣りしない売上が実現できている。
成城店は都心からちょうど20km。20kmのところで991~1322m2(300~400坪)の売場面積を取れれば十分に戦えるだろう。来期オープンする杉並店は特別なフォーマットにせず、ヤオコーの通常MDを凝縮すれば十分に戦える。
問題は20キロから内側に入ると、極端に取れる売場面積が狭くなるということ。そこをどう攻めるのかが課題。20km圏内には1500万人の人口がいる。何らかの形で我々もシェア獲得を考えたい。売場面積を小さくした時にどうヤオコーの強み・魅力を出せるのか、大きなチャレンジにはなると思っている。
――ヤオコーの品ぞろえの強みは
川野 お客様をどう捉えるのかということについては、買物かごの中身からお客様を19のセグメントに分けており、中でも主要セグメントを10セグメント設けている。
例えば同じシニアでも、非常に保守的で昔ながらのベーシックな商品(醤油やバナナなど)を買うお客様から、幅広い商品を買う方、価格に敏感な方もいらっしゃる。若い客層でも素材を買って手づくりされるお客様から、総菜を買われるあるいは冷食を買うお客様もいる。さらには世代を問わず、こだわりの商品お買いになられるお客様もいる。
そういったセグメントを見ながら商品開発や品ぞろえをする時に、このターゲットにこういう商品が刺さるんじゃないか、支持されるんじゃないかと想定しながら品ぞろえを決めている所が他社とは少し違う点だ。
そもそも良い商品か否かが第一。あるいは面白い商品なのかが大事。その上でバイヤーが権限を持って仕入れを決めている。時々変なものを置くこともあるが、そういった失敗も含めてバイヤーが顧客目線で商品を選んでいる。
もう1つ、お店がお客様に何を提案するのか決めている。もちろんベースの企画はチラシなどだが、「この商品に力を入れたい」「この商品が面白いから良い場所で売るんだ」という部分はお店で決めている。店、店長、主任、あるいは働いてるパートナーさんの感度によっても売場は変わる。そこが面白さにつながっていると思う。
取材・執筆 古川勝平
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