鉄道駅には、いろんな「前駅」がある。
公園前駅、大学前駅、市役所前駅…
そんな「前駅」の中でも、情緒あふれる「スキー場前」を巡った。
「スキー場前駅」ってどんな場所だろう
「スキー場前駅」と聞いたら、どんな駅を想像するだろうか。
レジャーのワクワク感を携えた、非日常の空気に満たされる場所か。
それともスキーブームからの経年を感じさせる寂しさを含んだ場所か。
今回「スキー場前駅」を5か所巡った。
それぞれが携えるのはどんな雰囲気だろうか。
非日常な?それともどこかセンチメンタルを感じさせる場所?
なお駅名に「スキー場前駅」と付かない駅でも、立地がスキー場前であるならばそれは「スキー場前駅」と認定させてもらった。
そして鉄道ファンではないのでぼんやりと雰囲気を味わいます(何対策の言い訳?)。
恋しさと、せつなさと、上越国際スキー場前駅
最初に訪れたのは、新潟県南魚沼市にある上越国際スキー場。
その前にあるのがJR上越線「上越国際スキー場前駅」だ。
スキー場前はペンションや土産物屋が並ぶ完全なレジャーゾーン。
にもかかわらず少し切ない気持ちになるのはなぜだろう。
これはあれだ、地方の観光地の土産物屋で味わうあの感じ、伝わるだろうか。
「この土産用のデカいポッキー、ホコリかぶっちゃってるよー」的な。
でもこの雰囲気、嫌いじゃない。
ポッキー買っちゃうし。
駅舎?と呼んでよいのかわからないが建物があり、乗り場へは階段を上がっていく。
↑最初はこれが駅だとわからなかった
↑ホームからゲレンデが臨める。まごうことなき「スキー場前駅」である。
上越国際スキー場前駅
スキー場前駅度 :★★★★★
非日常感 :★★★
センチメンタル :★★★★
「これ駅なの?」度:★★★★
異議あり!岩原スキー場前駅
続いて訪れたのは、JR上越線「岩原スキー場前駅」(新潟県南魚沼郡湯沢町)。
「岩原」は「いわっぱら」と読ませるのだ。
かっこいいな。
このスキー場前駅、どうやら様子がおかしい。
「スキー場前駅」でありながら、駅近くにスキー場がないのだ。
↑駅前の様子
カーナビで当駅から「岩原スキー場」を検索すると
↑まあまあ遠いな!
そうなのだ。
「スキー場前駅」と名乗りながら、スキー場まで地味に遠い。
「なんだよそれ!」
と思ったのだが、調べてみてもそのことについてツッコミを入れているサイトや文献もあまり見当たらなかった。
この距離はみなさん許容範囲な感じ?
「前駅」の解釈が厳しいの私だけ?
↑道路看板だと「岩原駅」に略されている
岩原スキー場前駅
スキー場前駅度 :★
非日常感 :★
センチメンタル :★★★★
「岩原」の読み方:★★★★★
ここはもうテーマパーク!ガーラ湯沢駅
駅名には「スキー場前」と付かないのだが、意味合いからすれば完全なスキー場前駅がある。
それが上越新幹線(支線)の「ガーラ湯沢駅」(新潟県中魚沼郡湯沢町)である。
ガーラ湯沢というスキー場に行くための駅であり、スキーシーズンのみ営業。
駅というよりスキー場の一部ですわな。
東京から新幹線で乗り換えなしでスキー場へ!ってのは夢がある。
↑そこはもうゲレンデ
駅構内に入ってみると、平日にもかかわらず結構な人。
外国人が多いようだ。
そして雰囲気はテーマパークのようなレジャー感。
キャラメルポップコーンの香りでも漂ってきそうな感じだ。
スキーはしなくても、テーマパークのあの雰囲気を味わいたくなったら来てもいいかな、と本気で思った。
情緒とかはこの際いいです。
↑駐車場はガラガーラ(ガーラ湯沢だけに)。それだけ新幹線で来てるということか。
ガーラ湯沢駅
スキー場前駅度 :★★★★★
非日常感 :★★★★★
センチメンタル :
ダジャレ言いたい度:★★★★
スキー場前駅の体現者 越後中里駅
つづいても「スキー場前」と駅名に付かないけれど、スキー場前駅。
それが越後中里駅(新潟県中魚沼郡湯沢町)である。
駅の裏手がすぐにスキー場で、ホームからスキー場が見渡せる。
ガーラ湯沢駅のような垢抜けた雰囲気はない。
が、それがこの駅のよいところで、「スキーブーム」のころを思わせるような風情が残っていてたまらない。
↑駅構内にて
この情緒、まさにスキー場前駅の良さを体現している駅だ。
越後中里駅
スキー場前駅度 :★★★★★
非日常感 :★★★
センチメンタル :★★★★
私をスキーに連れてって:★★★★★
さよなら ヤナバスキー場前駅
最後に訪れたのは長野県大町市にあるJR大糸線「ヤナバスキー場前駅」。
「ヤナバスノーパーク」というスキー場の前に立地するのだが、2019年3月16日のダイヤ改正をもって廃止されたのだ。
廃止の報を受け、まさにその当日ヤナバスキー場前駅に駆け付けた次第だ。
↑シンプルな造りでリゾートの華やかさはない
↑廃止の報を受けてだろうか、同じように駅舎を撮るおじさんがいた
↑国道の高架下をくぐり
↑徒歩1分ほどで
↑そこはスキー場、でも誰もいない
そう、ヤナバスノーパーク自体が営業を数年前から休止しているのだ。
「ヤナバスキー場前駅」が廃止になる理由もスノーパークの休止によるもの。
撮影日をもって廃止となったが、ずっと前から電車の停まらない休止状態だったのだ。
↑看板は風化し
↑駅名標はすでに外されていた(仕事が早い!)
1985年開業、2019年廃止。
休止期間があったといえ、人でいえば勤続34年といったところか。
風化も勲章だろう。
そこに残るのは、営業していないスキー場と、営業していない駅。
その場所を後にしながら、物見遊山に少しの罪悪感が頭をもたげた。
ヤナバスキー場前駅
スキー場前駅度 :★★★★
非日常感 :★★
センチメンタル :★★★★★
長い間おつかれさまでした:★★★★★
まとめ:スキー場前駅はほぼセンチメンタル
スキー場前駅はレジャーのワクワク感よりも、どこか寂しさを湛えた場所が多かった。
だけどその情緒が私にはたまらなく愛しく思えた。
暖冬、スキー離れ、モータリゼーションの影響…
最後に紹介した「ヤナバスキー場前駅」のように、スキー場前駅たちが今後休止・廃止となることがないとも言い切れず、心配である。
その一因はスキー場前駅に車で訪れ、スキーもせず帰っていく私のような人間にもあることも自覚しているのである。
↑スキー場近くの土産物店の前時代的な豪華さが好き。メガネのパリミキではない。
※このエントリはデイリーポータルZの投稿コーナー「自由ポータルZ」に掲載されました↓