ミスタードーナツといえば、昔は店員さんにカウンターの下の陳列ケースからドーナツを取ってもらうのが一般的だった。
いつの間にか、多くのお店でセルフサービスで各自が選んで取る方式に変わったよね。
久々に「店員さんがドーナツを取ってくれるミスド」を見つけたので、懐かしさを味わいました。
「店員さんが取ってくれる」がスタンダードだった
初めてのミスタードーナツは、友達とその親に連れられて。
新潟県は長岡駅前の大手通りにあったミスド。
ビルの1Fがミスドで、地下はニューコロムビアという喫茶店だった。
↑そのミスドがあった場所もいまは
友達のお母さんからドーナツを買ってあげるから選ぶように言われた僕。
友達の親にお金を出してもらうなんてとんでもないと遠慮した私は、一番輝いて見えた「チョコファッション」が食べたいと言えず、せめてもの気持ちでチョコがかかっていなくて10円安い「オールドファッション」をお願いした思い出。
なんて健気。
それからはいつも「チョコファッション」なのである。
あの日の少年が食べられなかったチョコファッションを大人になった僕が食べている。
そんな感慨も、「店員さんがドーナツを取ってくれるミスド」とともにある。
最近はセルフサービス方式の店舗が主流だが、久しぶりにあの感じを味わいたい。
いざ「店員さんがドーナツを取ってくれるミスド」へ
そんな折に見つけたのが、新潟市にあるミスタードーナツ寺尾ショップ。
最近は商業施設に入居するミスタードーナツが多い中、路面店のお店は珍しいなと眺めていたら、なんと店員さんが取ってくれるミスドだったのだ。
店内は残念ながら撮影禁止となっているが、外から見てもカウンターのショーケースが確認できる。
ケーキ屋さんのようにドーナツが並ぶ光景。
そうそう、これこれ!
懐かしい!
「ご注文をどうぞ」
今日は初心にかえってチョコファッションではなく、オールドファッション。
カウンターの下のガラス戸を開け、私のためにドーナツを取ってくれる店員さん。
お肉屋さん、お惣菜屋さん、ケーキ屋さん…システム自体は何も珍しくない。
食べたいものを店員さんに告げて取ってもらう、ただそれだけ。
だけど、それがミスドというだけでこんなにも懐かしい気持ちになるのはどうしてだろう。
店員さんは若い女性。
近くの新潟大学の学生さんだろうか。
「このお店みたいに店員さんがドーナツを取ってくれるミスドって珍しくなりましたよね」
何気ない会話を装って尋ねてみれば、
「本当ですか、ありがとうございます」
となんだか嚙み合わない返答。
こちらの感慨がまったく伝わっていないような、でも、困惑を煮詰めた反応ながらも、精一杯の愛想を含んだトーンで返してくれた。
ごめんなさいね、リアクションに困るようなこと言って。
店内には思い思いの時間を過ごす人がぽつぽつと。
この中でどれくらいの人が、「店員さんが取ってくれる」ことに興奮を覚えているのだろうか。
数年前、ミスドの各店の外観は、黄色とオレンジを基調としたものから、シックな色合いに変わっていった。
↑かつての外観(イトーヨーカドー長岡店にあったいまはなきミスド)。このイトーヨーカドーのミスドにも思い出がいっぱい。
この寺尾ショップも、数年前まで黄色とオレンジの色合いの外観を残していたようだが、いまや他店と同じようにリブランドの波に飲み込まれた。
だけど、セルフサービス方式には転換せず、ドーナツを並べるカウンターは残ったということか。
その場所から、登場しては消えていく数多のドーナツや飲茶を、ノベルティグッズを、そしてお客さんの笑顔を、ずっと見てきたのだろう。
「ごちそうさまでした」
いまや「店員さんがドーナツを取ってくれるミスド」自体が”オールドファッション”。
この先もずっと残るといいな。
店を後にしようとする自分の姿が、ドーナツの並ぶショーケースのガラスに反射する。
その姿に重なるように、あの日の僕が見える気がした。