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     リチェルカトーレ(Ricercatore)。

     英語ならResearcherにあたるイタリア語だが、その意味の幅はより広く、キノコ探しの職人から、図書館Bibliotecaにすくう「本の虫」に至るまで、イタリアではそう呼ぶ。

     フランス語には rat a bibliotheque「図書館のネズミ」という表現があるが、サルトルは『嘔吐』で、そうした人物に悲惨な結末を与えている。図書館の本を片っ端からアルファベット順に読んでいくという独学者は、図書館内で忌まわしい行為を犯し、追放されてしまう。

     南方熊楠も大英博物館図書室に入室が許されていた頃、人を殴って追放されてしまうのだが、我々が知る熊楠は、むしろそこからはじまる。

     では、リチェルカトーレについて紹介している若桑みどり氏の図書館論を引こう。

    「イタリアには図書館で生涯を送る人々がいる。それをリチェルカトーレ(探求者)という。大学の教授か、退職した教師か、素人学者か、市民か、それは問題ではない。図書館の原点である修道院、信心会図書館には「瞑想・沈思」の空間的環境がある。疲労した研究者には花の咲き乱れる中庭と噴水,ベンチがある。
     ヴァティカン図書館(ビブリオテーカ・アポストリカ)には目覚めるためのカフェ、喫煙所が設けられている。但し図書を破壊しないためにそれは屋根の上の開放的空間におかれる。図書館が機能的利用機関ではなく瞑想的生(Vita Contemplativa)の空間であることは人々のなかで定着した観念である。」

    http://web.archive.org/web/20010514173426/http://www.ulis.ac.jp/library/Choken/2000/6_2.html
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